『ヤァ!ブロード・ストリート』:1984、イギリス

人気ミュージシャンのポールは車を運転している最中、ニューアルバムの曲を録音したマスターテープが、まだ届いていないと連絡を受けた。会社の従業員ハリーが届けるはずだったのだが、そのハリーも行方不明になっているというのだ。
ポールが車を飛ばしてオフィスに到着すると、スタッフが集まって相談を始めていた。会社は経営難に陥っており、このままテープが見つからずにニューアルバムの発売が中止にでもなれば、ミスター・ラス率いるラスボーン社に身売りしなければならなくなる。
捜査を開始した警察は、窃盗の前科があるハリーに疑いを目を向ける。ポールはハリーの前科を知っていたが、自分に更正を誓った彼の無実を信じると語る。しかしポールは仕事をしながら、ハリーがテープを盗んだイメージばかりを思い浮かべてしまう…。

監督はピーター・ウェブ、脚本&音楽はポール・マッカートニー、製作はアンドロス・エパミノダス、製作協力はピーター・マンリー、撮影はイアン・マクミラン、編集はピーター・ベストン、美術はアンソニー・プラット、衣装はミレーナ・カノネロ、振付はデヴィッド・トゥガリ、音楽製作&音楽監督はジョージ・マーティン。
主演はポール・マッカートニー、共演はブライアン・ブラウン、リンゴ・スター、バーバラ・バック、リンダ・マッカートニー、トレイシー・ウルマン、ラルフ・リチャードソン、イアン・ヘイスティングス、フィリップ・ジャクソン、アンソニー・ブラウン、ドナルド・ダグラス、ジョン・ベネット、クリストファー・エリソン、ルーク・マクマスターズ、マーク・キングストン、マリー・コレット他。


ポール・マッカートニーが脚本、音楽、主演の3役を担当した作品。ポールとリンダ・マッカートニー、リンゴ・スターとバーバラ・バックという2組のカップルが出演している。
ポール達3人はミュージャン役(というか本人役)で、バーバラは記者を演じている。

劇中では何度も演奏シーンが登場し、ビートルズの曲とポールのソロになってからの曲が流れる。一応はミュージカル映画としてジャンル分けされているようだ。
しかし、物語と演奏シーンは全くリンクしていない。
物語とは全く関係無い形で、演奏シーンが登場する。
まあ物語なんて無いに等しいので、リンクさせるのは無理かもしれないが。

劇中で流れる曲の内、『Ballroom Dancing』ではジョン・ポール・ジョーンズ、『Silly Love Song』ではスティーヴ・ルカサーとジェフ・ポーカロ、『So Bad』と『No More Lonely Nights』では元10ccのエリック・スチュワートが演奏に参加している。ただし、『No More Lonely Nights』に関しては演奏シーンは無く、曲が流れるだけ。

やはり見所としては、ポールとリンゴが一緒に演奏するシーンを挙げないけにはいかないだろう。ただし、ビートルズ時代の曲で、リンゴがドラムを叩くことは無い。
『Yesterday』と『Here,There And Everywhere』の演奏場面では、リンゴはスタジオにいるのだが、ワイヤーブラシを探している内に演奏が終わってしまう。

「これは決して映画ではないのだ、ポールのプロモーション・ビデオを繋げて作った宣伝用フィルムなのだ」と、最初から割り切って観賞すべきだろう。
そうとでも思わないと、あまりに退屈で最後まで見ていられない可能性がある。
ポール・マッカートニーがニューアレンジでビートルズ時代の曲を演奏する。
ポールとリンゴが一緒に演奏する。
ジョン・ポール・ジョーンズやスティーヴ・ルカサーなども何曲かは演奏に参加する。
観賞する人は、それだけで満足しなければならない。

ポール・マッカートニーのファンならば、彼の演奏シーンがたっふりと見られるのだから、それだけで楽しめるはずだ。
ただし、ビートルズのファンに関しては、楽しめるかどうかは微妙なところだ。
個人的には、『The Long And Winding Road』のニューアレンジ・ヴァージョンなどは、ちょっとヤバイ匂いがするのではないかと思ったりしたが。

大事なテープが無くなったからといって、ポールが必死になって探し始めるわけではない。だからテープを探す中でサスペンスが生まれたり、ドタバタ劇が展開されたりするとか、そういうことは全く無い。
「テープが無くなって困った」と言ってる次のシーンでは、ポールは何事も無かったかのように平然とスタジオでの演奏を始めている。
たまにハリーのことを誰かに尋ねたりすることはあるものの、基本的にポールは、テープのことなどお構い無しである。
というか、この映画自体がテープを捜すことに強い関心を示さず、ほとんどポールが色んな場所で歌ったり演奏したりしているだけだ。

テープ捜索は一行に進まないまま、映画は終盤を迎える。
そして偶然に、唐突に、あっさりと、テープとハリーは発見される。
で、その直後には、「実は今までのは、ぜ〜んぶポールの夢でした」という、誰も期待していないオチが待っている。
ダラダラした話を垂れ流した挙げ句、最もやってはいけないコトをやらかすのだ。

 

*ポンコツ映画愛護協会