『Mr.ズーキーパーの婚活動物園』:2011、アメリカ

動物園で飼育員として働くグリフィン・キーズは、恋人のステファニーと浜辺でデートする。事前に用意してあったボトルを発見させ、中に入っていた手紙を読ませる。その手紙には、「僕と結婚して下さい」と綴られている。グリフィンは婚約指輪を見せて、彼女に求婚する。自信があったグリフィンだが、ステファニーは申し訳なさそうに、「嬉しいけど、無理。仕方が無いわ、こうなったら別れましょう」と告げる。グリフィンが動揺していると、彼女は「動物飼育員ってことが、どうしても気になって。私が求める理想の男性像に変わってくれると思ってたんだけど」と述べた。
5年後。グリフィンは主任に昇進し、相変わらず同じ動物園で働いている。今の彼が最も気に掛けている動物は、ゴリラのバーニーだ。10年前に襲われた担当飼育員のシェーンは、バーニーに近付こうともしない。その事件があって以来、バーニーはコンクリートの壁に包囲された地下壕で飼育されている。バーニーは飼育員に全く心を開かず、部屋の隅で座ったままだ。グリフィンは信頼を得るため、古タイヤの遊具を作ってみた。しかし吊り下げた木が折れてしまった上、バーニーは背中を向けたままだった。
ワシ育成の責任者であるケイトは優秀な獣医で、アフリカのナイロビ動物園から仕事のオファーが来ている。まだ考えている最中だというケイトを、グリフィンは祝福する。グリフィンは兄のデイヴと婚約者のロビンのために、夜の動物園でパーティーを催す。グリフィンは2人に、ケイトと爬虫類担当の飼育員であるヴェノムを紹介した。壇上に立って挨拶を始めたグリフィンは、ステファニーの姿に気付いて狼狽した。デイヴはグリフィンに、ロビンが招待したことを説明した。
ステファニーはロビンに、「あの別れ方は彼に酷いことをした。改めて制服姿を見たら可愛いって思った。何かある男だと感じた」と話す。その会話を、キリンのモリーや猿のドナルドが聞いていた。グリフィンはデイヴから、「お前は申し分のない男だが、分かっていない。ウチの会社で一緒に働かないか。今の年収を1ヶ月で稼げる。ステファニーのような女性とも交際できる」と誘われた。グリフィンは即答しなかったが、ゲイルは「考えておいてくれ」と告げて立ち去った。
ステファニーはグリフィンに声を掛け、デザイン学校を卒業して百貨店のバイヤーをしていることを話す。彼女に「ロビンが明日、動物園を見たいと言ってるの。プライベート・ツアーを頼めないかしら?」と言われたグリフィンは、「今からだと手続きが出来ないんだ」と説明する。ステファニーは「じゃあ残念だけど、2人で回るわ」と言い、グリフィンの元を立ち去る。まだ彼女への未練があるグリフィンは、「デイヴが正しい。転職すべきかも」と呟いた。
全ての飼育員が帰った閉演後、モリーの号令で動物たちが集合した。雌ライオンのジャネット、牡ライオンのジョー、象のバリー、熊のジェロームとブルース、ダチョウ、狼のセバスチャンたちが集まる中、バーニーだけは地下壕から出て来なかった。モリーとドナルドは、ステファニーが戻って来たことを語った。動物たちは人間の言葉を話すことが出来たが、普段はバレないようにしているのだった。
動物たちは人間の言葉が分かるので、グリフィンがステファニーへの思いを断ち切れずにいたことも知っていた。今までで一番の飼育員であるグリフィンのために、動物たちは彼の恋路を手助けしてやろうと考える。ドナルドは「明日、ステファニーは動物園に来る。そこでグリフィンがイケてるところを見せれば、ヨリが戻って動物園も辞めず、みんながハッピーだ」と語る。ジョーは仲間たちに、「ただしグリフィンと喋ってはいけない。それが掟だ」と釘を刺した。カラスも会議に参加するが、動物たちは冷たくあしらった。
翌日、グリフィンはバーニーのために新しい遊具を設置したが、やはり反応は無かった。ステファニーとロビンが動物園にやって来たので、ドナルドは飼育員の目を盗んでライオンのゲートを開けた。ジョーがゲートの外に出て、ステファニーとロビンを脅かした。それを目撃したグリフィンは急いで駆け付けようとするが、溝に落ちてしまった。何とか這い上がったグリフィンを見たジョーは、思わず人間の言葉で「そのザマは何だ」と叱責してしまった。グリフィンは仰天し、動物園から逃げ出して家に舞い戻ってしまった。
次の日、グリフィンは動物園で働きながらも、怯えた様子でジョーを気にしていた。するとジョーはグリフィンの前に現れ、「話したいことがあるなら話そう」と告げた。グリフィンは慌てて逃げ出そうとするが、鉄柱に頭をぶつけて気絶してしまった。深夜になって意識を取り戻したグリフィンは、動物たちに囲まれていた。グリフィンは動物たちが以前から普通に話せることを知った。ジョーはステファニーとの関係について、「お前が変わらないと無理だ。動物的本能のある男に変えてやる」と述べた。
翌日、グリフィンはバーニーに、新メニューであるオーガニック・ジャンバラヤを差し入れる。相変わらず反応しないバーニーに、彼は「もしも要望があれば言ってくれ」と告げた。グリフィンが出て行こうとすると、バーニーは背中を向けたまま「ドアの所に置いて行ってくれ」と述べた。熊を挑発していた少年がモートに落下したのを目撃したグリフィンは、慌てて駆け付けた。グリフィンはジェロームとブルースをなだめ、少年をモートの外に出した。ジェロームとブルースは「弱気は駄目だ」と言い、自分たちの歩き方を真似るよう促した。グリフィンは困惑しながらも真似をするが、大勢の客が集まっていることに気付き、慌てて取り繕った。
グリフィンはバーニーの元へ行き、ポップコーンを差し入れした。するとバーニーは「シェーンを襲ってない。あいつは嘘つきだ。動物に何の敬意も払わない。あの時は、尖った棒で殴ろうとしたから掴んだら、あいつが転んだだけだ」と語る。「人間は嘘つきだ」とバーニーが言うので、グリフィンは「全員がそうじゃない。酷い目に遭ったけど、時には過去を忘れて未来に目を向けないと」と説く。「僕に何か出来ることは無い?」と彼が訊くと、バーニーは「外に戻してくれ。外の景色が見たい」と告げる。グリフィンは「力になりたいけど、前の場所は売店になってるんだ」と語った。
グリフィンはセバスチャンから、「今夜のパーティーがチャンスだ。女は男の何に魅力を感じるか分かるか。それはオシッコだ。匂いとフェロモンで、自分が優位に立てる縄張りを確立するんだ」と聞かされる。セバスチャンに促され、グリフィンは狼のモート内で立ち小便を始めた。そこへケイトが通り掛かったので、グリフィンは慌てて「セバスチャンがサソリに刺されたから、オシッコを掛けて毒を中和してやってるんだ」と説明した。
その夜、グリフィンはパーティー会場で誰にも気付かれないように気を付けながら、装飾用の植物に小便を引っ掛けた。彼はステファニーと話し、「結婚式に一緒に行ってほしい」と申し入れようとする。だが、そこにステファニーの元カレであるゲイルが現れた。ゲイルはステファニーとヨリを戻したがっており、グリフィンを無視して彼女に話し掛ける。ステファニーから「何か言おうとしてたわよね?」と訊かれたグリフィンだが、ゲイルに睨まれて怖気付き、すごすごと退散してしまった。
動物園に戻ったグリフィンは、動物たちに事情を説明した。ジョーは「他のオスがいたら、お前に勝ち目は無い。次は2人きりになって、彼女の心を掴め」と助言した。次の日、グリフィンはステファニーがゲイルや仲間たちとサイクリングしている様子を発見し、後を追った。ゲイルが妨害して来たが、グリフィンは何とか引き離した。ステファニーに追い付いたグリフィンは、「結婚式へ一緒に行く相手のことだけど」と話し掛ける。するとステファニーは、「やっぱりゲイルと行くことにしたの」と告げた。
グリフィンから結果報告を受けたジョーは、「野生の暮らしは無理だな」と口にした。グリフィンが「動物園で生まれて、僕がミルクを飲ませたのに野性だって?」と反発すると、ジョーは「俺が言いたいのは、ライバルに勝つには攻撃の前の作戦が大事ってことだ」と話す。グリフィンはジャネットに、「彼をするのはメスだよね?」と確認した。するとジョーは不機嫌になり、ジャネットに「それなら、お前がアドバイスしろ」と述べた。ジャネットは「他のメスといる姿を見せ付けなさい。式に同伴するのよ」と助言した。
グリフィンはケイトに作戦を説明し、結婚式への同伴を依頼した。ケイトは渋るが、グリフィンは頼み込んで承諾してもらった。バーニーの誕生日、グリフィンはケイトの作ったゼリーケーキを差し入れした。深夜、彼は「仮装パーティーだと思えばいい」と言い、バーニーを動物園から連れ出す。グリフィンはバーニーを車に乗せ、彼が興味を持っていたレストランへ連れて行く。店員や客に本物だと気付かれることも無く、グリフィンとバーニーは大いに楽しんだ。バーニーは礼を述べ、「お前は俺の親友だ」と口にした。
結婚式の朝、グリフィンが動物たちと話していると、そこにバーニーが現れた。彼は「一緒に行こうか。万一の時にはサポートできる」と持ち掛けられるが、グリフィンは「自分でやるよ」と遠慮した。バーニーが「困った時には連絡してくれ」と言うので、グリフィンは携帯を預けた。ヴェノムから借りた車でケイトを迎えに行ったグリフィンは、ドレスアップした彼女を見て「あまりにも綺麗すぎるよ。芝居だと気付かれる」と困った様子を見せた。
グリフィンが結婚パーティーの会場に入ると、ゲイルが自信たっぷりの態度でトークを繰り広げ、客の笑いを誘っていた。グリフィンがステファニーの元へ行くことを尻込みしていると、ケイトは「そんなに弱気じゃ目的は達成できないわよ」と言う。彼女はグリフィンの手を握って席へ行き、楽しそうなフリをするよう促した。グリフィンに気付いたゲイルはマイクを握り、「俺とステファニーはダンス大会で優勝した。新郎新婦にダンスをプレゼントする」と告げた。
ダンスのBGMとして流れて来たのは、グリフィンにとってステファニーとの思い出の歌だった。グリフィンは「当て付けだ」と憤り、ケイトをダンスに誘って対抗しようとする。しかしステファニーたちのダンスはレベルが高すぎて、まるで敵わなかった。彼女たちの踊りが終わった後、ケイトはスタッフに指示して別の歌を流してもらった。彼女はグリフィンに「私たちの曲よ」と言い、会場に設置されているリボンを使ったダンスを教えた。
グリフィンはリボンで宙を舞い、すっかり気分が良くなった。しかし調子に乗り過ぎた彼はロビンにぶつかって転倒させた上、氷像を破壊してしまった。ゲイルから「ステファニーの気を引くな」と要求されたグリフィンは、「小細工は無しで、男らしく勝負するか」と挑発した。しかしゲイルが「喧嘩に負けたことは無い」と凄まれ、すっかり怯えてしまう。彼はバーニーに電話を掛け、助けを求めた。
ジョーはグリフィンに、「相手を調子付かせるな。正面から威嚇しろ。女を冷たくあしらえ。邪険にした後、思いきり褒めるんだ。彼女がその気になったら、冷たく立ち去れ」とアドバイスした。グリフィンはステファニーに偉そうな態度で話し掛け、それから褒め言葉を口にして、その後で冷たい態度を取った。グリフィンは楽しい気分のまま、ケイトと共に車で帰ろうとした。するとステファニーが追って来て、「2人だけで話があるんだけど」と言う。ジョーの助言通りの行動が、ステファニーの心を掴んだのだ…。

監督はフランク・コラチ、原案はジェイ・シェリック&デヴィッド・ロン、脚本はニック・ベケイ&ロック・ルーベン&ケヴィン・ジェームズ&ジェイ・シェリック&デヴィッド・ロン、製作はトッド・ガーナー&ケヴィン・ジェームズ&アダム・サンドラー&ジャック・ジャラプト&ウォルト・ベッカー、共同製作はエイミー・キーン、製作総指揮はバリー・ベルナルディー&ジェフ・サスマン&チャールズ・ニューワース&ジェニファー・イーツ、製作協力はジーノ・ファルセット、撮影はマイケル・バレット、編集はスコット・ヒル、美術はカーク・M・ペトルッチェリ、衣装はモナ・メイ、視覚効果監修はピーター・G・トラヴァース、アニマトロニック・キャラクター効果デザイン&創作はアレック・ギリス&トム・ウッドラフJr.、音楽はルパート・グレッグソン=ウィリアムズ、音楽監修はマイケル・ディルベック。
主演はケヴィン・ジェームズ、共演はロザリオ・ドーソン、レスリー・ビブ、ケン・チョン、ドニー・ウォールバーグ、ジョン・ローガン、ナット・ファクソン、トム・ウッドラフJr.、ステファニア・デ・ラ・クルス、ニック・ベケイ、ジャッキー・サンドラー、ニック・タートゥーロ、トーマス・ゴットチョーク、ブランドン・キーナー、ロビン・ベケイ、ゲイリー・ヴァレンタイン、タナー・ブレイズ、ティム・ゲイジ、ジーノ・ファルセット他。
声の出演はシェール、ニック・ノルティー、アダム・サンドラー、シルヴェスター・スタローン、ジャド・アパトー、ジム・ブリューアー、ジョン・ファヴロー、フェイゾン・ラヴ、リッチー・ミネルヴィーニ、マーヤ・ルドルフ、バス・ルッテン。


アダム・サンドラーのハッピー・マディソン・プロダクションズが制作し、サンドラーの主演作『ウェディング・シンガー』『ウォーターボーイ』『もしも昨日が選べたら』を撮ったフランク・コラチが監督を務めた作品。
主演のケヴィン・ジェームズは、『チャックとラリー おかしな偽装結婚!?』『アダルトボーイズ青春白書』でサンドラーと共演している。
ケイトをロザリオ・ドーソン、ステファニーをレスリー・ビブ、ヴェノムをケン・チョン、シェーンをドニー・ウォールバーグ、ゲイルをジョン・ローガン、デイヴをナット・ファクソンが演じている。
ジャネットの声をシェール、バーニーをニック・ノルティー、ドナルドをアダム・サンドラー、ジョーをシルヴェスター・スタローン、バリーをジャド・アパトー、カラスをジム・ブリューアー、ジェロームをジョン・ファヴロー、ブルースをフェイゾン・ラヴ、ダチョウをリッチー・ミネルヴィーニ、モリーをマーヤ・ルドルフ、セバスチャンを元UFC世界ヘビー級王者のバス・ルッテンが担当している。

冒頭シーンでステファニーが「動物飼育員というのが気になる」と求婚を断るので、グリフィンが飼育員のまま再アタックしても絶対に成就しないことが先読みできる。デイヴが自分の会社に勧誘しているので、グリフィンが転職を決意する展開も先読みできる。
その辺りは、あまりにも分かりやすく伏線を張り過ぎて、ストーリー展開が先読みできてしまう状態になっている。他にも、バーニーがグリフィンとの交流で元気になるのも、グリフィンがケイトとカップルになるのも、色んなことが丸見え状態だ。
しかも単に先読みできるというだけでなく、ものすごくオーソドックスでベタベタな物語なのだ。それは予定調和の面白さを生み出さず、「凡庸でありきたり」という印象だけになってしまう。
「まず意外性ありき」だけで物語を考えてもロクなことにならないけど、しかしオーソドックスな内容であっても、もうちょっと考えた方がいいんじゃないか。
例えば冒頭ではステファニーが求婚を断る理由を示さず、グリフィンが再び求婚した時に「いい人だけど、飼育員なのがネック」と言わせるのだ。
そこで初めてグリフィンが彼女に断られる理由を知る展開にするだけでも、随分と違った感じになるような気がするんだけどなあ。

5年後にジャンプした後、最初の段階でグリフィンと動物たちの関係をもっと厚く見せておいた方がいい。ドナルドやバーニーとは絡んでいるけど、大半の動物とは絡まないし、名前も分からない。
そこで「グリフィンがいかに飼育員として優れており、動物たちに対する愛に溢れているか」というのをアピールしておくべきだ。それをバーニーとの絡みだけで表現するのは上手くない。
それだと「バーニーだけは特別扱い」という風にも見えるしね。
後で動物たちが「グリフィンは一番の飼育員。世話になったから助けてやろう」と言い出すんだから、その前の段階で、もっとグリフィンと動物たちの深い絆を描写しておかないと。

ジョーが人間の言葉を喋った時、グリフィンが怯えて家まで逃げ帰るってのは、そこで笑いを取ろうという狙いで大仰にリアクションを取らせている部分はあるのかもしれない。
だが、それをやると「グリフィンは動物から愛されている一番の飼育員」という設定にブレが生じる。
いきなり動物が人間の言葉を喋るのだから、驚くのは当然だろう。でも、怯えるのは違うわ。
そこはリアクションを間違えている。

ジョーが喋った時、グリフィンは仕事を放り出して家へ逃げ帰っている。
ところが、そのことでスタッフの誰も自宅に電話を掛けたり、翌日になって「昨日は何があったのか」と尋ねたりしない。
次の日、失神したグリフィンは深夜になって目を覚ますが、スタッフは彼が失神してから深夜まで誰も気付かず、戻って来ないのに連絡を取ろうともしない。
それは不可解だわ。他の連中はともかく、少なくともケイトはグリフィンの姿が見えないことを気にしなきゃおかしいだろ。

「動物たちが言葉を話せることをグリフィンに教えないまま恋の手助けをしようとする」という作戦は、あっさりと終了する。
そんなに簡単に終わらせるのなら、最初からグリフィンに話し掛けて作戦を展開していく形にしてもいいんじゃないか。
いや、いっそのこと、もう最初から「グリフィンだけは動物たちと会話を交わしている」という設定にしてもいいかもしれない。
「動物が喋れると知ってグリフィンが驚く」というところで喜劇としての盛り上がりは作れるけど、どうせ対して面白い仕上がりじゃないし。

「動物たちがグリフィンに恋の手ほどきをすることを説明する」というシーンを用意したら、そこからは動物たちがグリフィンに恋愛指南する様子をテンポ良く繋げていくべきだ。そこに集中して物語を進行した方がいい。
グリフィンとバーニーの絡みを挟むのは、流れを停滞させてテンポを悪くするだけだ。
ただし、実は動物たちの中で際立って魅力的なのはバーニーなんだよな。それ以外の動物たちは、出番の割には、そんなに個性や存在感を発揮できていない。ただの賑やかしに留まっている。
いっそのこと、アドバイスを送る役割をバーニーに任せてしまえば、他の動物たちは要らなくなる。

動物たちに負けず劣らず、ケイトの存在感も薄い。
最終的にグリフィンとカップルになるんだから、2人の関係性は序盤からもっと厚くしておくべきだろう。
しかし実際には、グリフィンが同伴を依頼するまでは、まるで本筋に絡まず、単なる脇役の一人に過ぎない。彼女がグリフィンに好意を抱いている雰囲気も、全く無い。
例えばケイトが心を開かないバーニーに苦労している設定にしたら、バーニーを通じてグリフィンと彼女の関係描写を厚くすることも出来ただろう。

ケイトはグリフィンの作戦が成功した時、残念そうな様子を微塵も見せない。
そこに寂しさは無く、本気でグリフィンの友人として協力しているだけのようなリアクションになっている。
2人をカップルにするための流れが、まるで作られていない。
グリフィンが動物園を辞めた後で「ここに気になる人がいたけど、彼には相手がいて」と言い出しても、「グリフィンへの恋心なんて、今までは全く匂わせていなかったじゃねえか」と言いたくなる。

どう考えたって、動物たちのアドバイスは「動物として相手を落とし、生殖行為を成功させるための方法」でしかない。
人間が同じことをやっても、まるで役に立ちそうには思えない。
だから、グリフィンが動物の真似をして練習する様子は、悪い意味でのバカバカしさを強く感じてしまう。
「なんで素直に真似しちゃうんだよ」と。そこは「客やケイトに目撃される」というところで笑いを取るために、無理をしているように思えてしまうんだよな。

しかも「グリフィンは役に立ちそうにないと思いながらも仕方なく真似している」ということなのかと思ったら、パーティーの植物に小便を引っ掛けて「これで優位に立てる」とか言ってるんだよな。
それは受け入れ難いぞ。
彼が「動物を信じるイカれた男」ということならともかく、そうじゃなくて動物を良く知っている飼育員なんだからさ。それが「動物として相手を落とすための行為」であることぐらい、理解しているはずでしょうに。
そこも笑いを取るために、キャラに無理のある行動を取らせているようにしか思えない。

グリフィンが動物たちから色々とアドバイスを貰うのであれば、「それを次々に試して、結果がどうなるかを見せる」という手順を用意すべきだろう。
しかしジェローム&ブルースから貰ったアドバイスを、グリフィンは実践していない。
セバスチャンから貰ったアドバイスは実践しているが、植物に立ち小便したことは誰にも気付かれないし、「成功か失敗か」というところに繋がらない。
上手く行かないのであれば、立ち小便がバレるとか、それがきっかけでトラブルが起きるとか、そっちの方向に話を振るべきだろう。
「何の意味も無いし、完全にスルーされる」ってのはダメだわ。

結局、グリフィンが試して、その結果がちゃんとした形で表現されるのは、ジョーとジャネットの助言だけだ。
しかも、それは「2人きりになれ」とか「他の女といる姿を見せ付けろ」とか、ものすごく普通の助言で、「いかにも動物ならでは」という内容ではない。
ジョーの「正面から威嚇して邪険に扱い、その後で褒める。彼女がその気になったら冷たく立ち去る」という助言で、ようやく「役に立ちそうにない恋愛指南だが、なぜか上手く機能し、ステファニーの心を掴むことに成功する」という風に喜劇として機能する。
それだと少なすぎるし、「それまでの助言は何の役にも立たず、その一発だけでステファニーの気持ちを掴む」ってのも雑だと感じる。

パーティーや結婚式など様々な場所でグリフィンがゲイルと競っても、ステファニーと話しても、そこに動物たちが直接的に絡むことは出来ない。
動物たちは自由に外に出たり、グリフィンに同行したりすることは不可能だからだ。
だから、どうしても動物たちがカヤの外になっているシーンが多くなってしまう。
グリフィンと動物たちの関係を重視したいのなら、なるべく舞台が動物園から離れないように物語を構築すべきだったのだ。

諸々を考えると、グリフィンとバーニーの関係を活かそうとすると、どうやっても他の動物たちの存在意義を充分に発揮させるのは難しい。
根本的な問題として、欲張り過ぎているのだ。
グリフィンが動物たちから恋の手ほどきを受ける話をメインに考えるのなら、バーニーとの絡みはバッサリと削るしかないと思う。
しかも、そこだけで既に消化不良なのに、ゲイルを登場させてグリフィンを彼を競わせ始めるもんだから、ますます動物たちの存在感が薄くなってしまう。
極端な話、バーニー以外の動物たちとの絡みを排除し、別のキャラに助言の役回りを担当させても、そんなに大差が無いんじゃないかと思っちゃうぞ。

(観賞日:2014年7月12日)


第32回ゴールデン・ラズベリー賞(2011年)

ノミネート:最低助演男優賞[ケン・チョン]
<*『ビッグママ・ハウス3』『ハングオーバー!! 史上最悪の二日酔い、国境を越える』『トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン』『Mr.ズーキーパーの婚活動物園』の4作でのノミネート>

 

*ポンコツ映画愛護協会