『名犬ウォン・トン・トン』:1976、アメリカ

チャイニーズ・シアターのツアーガイドは、観光客の面々に手形と足形を見せた。その中には肉球があり、ガイドはウォン・トン・トンの物だと告げる。観光客から「知らない」という声が上がったので、彼は1923年4月20日に肉球を残したウォン・トン・トンについて詳しく語り始めた。2人の野犬捕獲業者は何匹もの犬を捕まえ、収容所に運び込んだ。一匹のジャーマン・シェパードは気絶の芝居で彼らを騙し、檻に閉じ込めた。ジャーマン・シェパードは他の犬たちを解放し、自身も逃げ出した。
女優志望のエスティー・デル・ルースは、ルームメイトのフラフィー・ピータースに「ニューエラ・スタジオの新作に先住民役で出られるかもしれない」と告げた。彼女はオーディションを受けるためにスタジオへ向かう途中、ジャーマン・シェパードと出会った。ハリウッドのツアーガイドとして働くグレイソン・ポトチャックは、バスを運転して観光客に名所を案内した。西部劇スターのフィリップ・ハートと代理人は、ニューエラ・スタジオの所長のJJ・フロムバーグを訪ねた。ハートがポスターに文句を言うと、JJは秘書に「担当者をクビにしろ」と命じた。彼はハートの新作が酷評で大赤字だと知り、本人と代理人にクビを通告して追い出した。
グレイソンは以前からJJに何度も脚本を持ち込み、門前払いを食わされていた。その日も彼は諦めずに持ち込むが、自信満々のアイデアを一蹴された。エスティーはスタジオに到着し、監督のステビーを呼んでもらう。しかし彼女は監督だと騙されていたが、実際は小道具係だった。スタビーはエスティーを奥の部屋に連れ込み、演技指導をするから服を脱げと指示した。そこへジャーマン・シェパードが飛び込み、スタビーを襲ってエスティーを救った。
その様子を見ていたJJは感動し、犬を主人公とする映画を作ろうと考えた。付きまとって粘っていたグレイソンはJJに調子を合わせ、アイデアを売り込む。JJが「さっきの犬を連れ戻せ」と言うと、彼は「僕の犬です」と嘘をつく。ジャーマン・シェパードはエスティーに懐き、家まで付いて来た。しかしペット禁止のルールなので、エスティーはジャーマン・シェパードを残して家に入った。そこへ2人の野犬捕獲業者が来て、ジャーマン・シェパードを連行した。
グレイソンはエスティーが住む家を突き止めて訪ね、犬が連行されたことを知った。彼は収容所へ行き、ツアーバスを担保にして犬を引き取った。グレイソンはJJの元へ犬を連れて行くが、まるで言うことを聞かなかった。JJから犬の名前を問われた彼は、少し考えてからウォン・トン・トンだと答えた。グレイソンはJJから脚本と犬の訓練代として週給50ドルを約束され、エスティーの元へ赴いた。彼はエスティーに、犬に言うことを聞かせるために協力してほしいと持ち掛けた。グレイソンは「有名監督になって君をスターにする」と約束し、エスティーの了承を得た。
エスティーはウォン・トン・トンを連れてスタジオへ行き、グレイソンの指示を受けて芝居をさせた。ウォン・トン・トンの初主演作は試写会で好評を得て、JJは兄のマレーから「ヒット間違い無しだ」と告げられた。JJはウォン・トン・トンをスター犬として大々的に売り込み、主演作は立て続けにヒットした。エスティーは全く映画に出してもらえないので、「役をくれないと協力しない」とグレイソンに告げた。ようやく小さな役を貰えたエスティーだが、キスシーンの相手役をウォン・トン・トンが襲って落馬させる。JJは激怒し、エスティーにクビを通告して降板させた。
グレイソンはウォン・トン・トンのギャラで豪邸を購入し、エスティーに同居を持ち掛けた。エスティーは「貴方と同室?」と嫌がるが、「寝室は分けよう」とグレイソンが言うので承諾した。新作の公開記念セレモニーで、ウォン・トン・トンはチャイニーズ・シアター前で肉球を押した。全米映画協会賞の式典が開かれ、ウォン・トン・トンは最優秀主演男優賞を受賞した。トロフィーを受け取ったウォン・トン・トンは、給仕として会場にいたエスティーに渡した。これを受けて、新聞には「ウォン・トン・トンの活躍はグレイソンの功績ではなく、女性の功労者がいる」と報じる大きな記事が掲載された。
それより何ヶ月も前から、グレイソンはエスティーに「JJと話をする」と約束していた。一向に約束を守らないグレイソンだが、「全く立場が変わらない」とエスティーに文句を言われ、「今度こそ話すよ」と告げる。彼はエスティーをモーテルに泊まらせ、JJの元へ赴く。グレイソンはJJに新作でルディー・モンタギューの起用を提案し、彼のイメージを変えようと告げた。彼がルディーにカスター将軍を演じてもらってウォン・トン・トンが助けるアイデアを話すと、JJは了承した。
グレイソンはルディーをアポを取り、彼の屋敷を訪れた。しかしルディーは女装して外出し、グレイソンは全く気付かなかった。ルディーは映画館に入り、自分の主演作を観賞した。同じ映画館にはルディーの大ファンであるエスティーが来ており、映画を見て感動していた。エスティーは相手が本人だと気付かず、ファン仲間として一緒にカフェへ行く。ルディーはエスティーの名前を聞き、ウォン・トン・トンの訓練士だろうと指摘した。エスティーが「本当は役者なのにチャンスが無い」と漏らすと、彼は「スターにしてあげる」と告げた。彼は屋敷へエスティーを連れ帰り、正体を明かした。
ルディーはグレイソンを屋敷に呼び、出演オファーを承諾する。彼は「相手役の女優は自分で選ぶ」と言い、エスティーを紹介した。新作の発表会見が開かれると、記者の質問はグレイソンとエスティーの関係とウォン・トン・トンの話題に集中した。腹を立てたルディーは殺し屋のニックに連絡を取り、グレイソンとエスティーとウォン・トン・トンの始末を依頼した。撮影現場に潜入したニックはエスティーを殺そうとするが、反撃を食らって逃げ出した。新作映画『勇者カスター』は完成し、プレミア試写が行われた。すると観客の反応は嘲笑と退屈ばかりで、JJはグレイソンとエスティーとウォン・トン・トンとルディーに揃ってクビを言い渡した…。

監督はマイケル・ウィナー、脚本はアーノルド・シュルマン&サイ・ハワード、製作はデヴィッド・V・ピッカー&アーノルド・シュルマン&マイケル・ウィナー、製作協力はティム・ジマーマン、撮影はリチャード・H・クライン、美術はウォード・プレストン、編集はバーナート・グリッブル、音楽はニール・ヘフティー。
出演はブルース・ダーン、マデリーン・カーン、ロン・リーブマン、アート・カーニー、フィル・シルヴァース、テリー・ガー、ロバート・アルダ、モーリー・アムステルダム、アーミー・アーチャード、リチャード・アーレン、ビリー・バーティー、エドガー・バーゲン、ミルトン・バール、ジャネット・ブレア、ジョーン・ブロンデル、ロリー・カルホーン、ジョン・キャラダイン、ジャック・カーター、シド・チャリシー、ジャッキー・クーガン、ブロデリック・クロフォード、デニス・デイ他。


1920年代にタレント犬として1931作の映画に主演したジャーマン・シェパード、リンチンチンをモデルにした映画。
監督は『メカニック』『狼よさらば』のマイケル・ウィナー。
脚本は『ファニー・レディ』のアーノルド・シュルマンと『結婚専科』のサイ・ハワードによる共同。
グレイソンをブルース・ダーン、エスティーをマデリーン・カーン、ルディーをロン・リーブマン、JJをアート・カーニー、マレーをフィル・シルヴァース、フラフィーをテリー・ガーが演じている。

ウォントントンのモデルになったリンチンチンは、第一次世界大戦に従軍した空軍のリー・ダンカンがドイツから連れ帰ったジャーマン・シェパード。
最初はヴォードビルの劇場に出演して芸を披露しており、ワーナー・ブラサーズがスカウトして1922年に映画デビューした。
そんなリンチンチンの名前をウォントントンに変えている時点で、大きなマイナス。
事実とは全く違う内容なので、リンチンチンの名前は使えないってことなのかもしれない。ただ、普通にリンチンチンの伝記映画を作れば良かったと思うのよ。

全くの別物にするなら、リンチンチンをモデルにする意味すら怪しくなってくる。
そもそも、リンチンチンの実話と全く別物の映画にした理由が良く分からないんだよね。そこにあるメリットが、何も見えて来ない。
エスティーとウォントントンの絆の物語が厚いわけでもなく、エスティーとグレイソンの恋愛劇の中でウォントントンを上手く使っているわけでもない。
ウォントントンがスター犬として人気になるシンデレラストーリー的な部分に、魅力があるわけでもない。

色んなことをやろうとして、何もかもが薄味で中途半端に留まっている。
結局、あまりに多すぎるゲストスターを見てもらう顔見世ショーと化している。用意されたストーリーは、映画の体裁を整えるためだけのモノになっている。
最初から「ゲストを見せるための映画」と割り切っているわけでもなくて、そういう意味でも半端だと感じる。
「ゲストを見せる」という目的だけで作られた映画が優れているとは思わないけど、この作品を見た限り、それぐらい開き直った方が少しはマシだったかもしれない。

タイトルロールで主要キャストとしてクレジットされるのが、ブルース・ダーン、マデリーン・カーン、ロン・リーブマン、アート・カーニー、フィル・シルヴァース、テリー・ガーの6名。
その後に「guest stars」としてクレジットされるのが、なんと66名もいる。
その数だけを聞くと、「豪華な映画だな」と思うかもしれない。しかし実際に顔触れを見てみると、お世辞にも「スター」と呼べない人も多い。
「リンチンチンと関わりの深かった面々」を集めているわけでもなくて、単純に「guest stars」ってのが誇大広告なのだ。

それでもホントにスターと呼べる人はいるので、全員は無理だが登場順に何名か抜粋して紹介しよう。
ツアーバスに乗っている老人は、『くまのプーさん』シリーズでプーの声を担当したスターリング・ホロウェイ。
スタジオの守衛は『レディ・イヴ』や『ジョルスン物語』などに出演しているウィリアム・デマレスト。
ミス・バッテリーは『虹を掴む男』『死の谷』のヴァージニア・メイヨ。
ハート役は実際に西部劇スターだったロリー・カルホーン。

序盤で撮影されている映画の助監督は、小人症俳優のビリー・バーティー。
その映画の出演者には『サヨナラ』『母の旅路』のリカルド・モンタルバンがいて、裏方にはTVシリーズ『アダムズのお化け一家』のジャッキー・クーガンがいる。
ステビンス役は『俺たちは天使じゃない』『グリーン・ベレー』のアルド・レイ、ゴシップ・コラムニストのヘッダ・パーソンズ役は『アニーよ銃をとれ』など数々のブロードウェイ作品で主演を務めたエセル・マーマン。
エスティーが暮らす家の大家は『ブルックリン横丁』『シンシナティ・キッド』のジョーン・ブロンデル。

ォントントン初主演作の特殊効果マンは、『オール・ザ・キングスメン』『崖』のブロデリック・クロフォード。
次の出演作の裏方には、『類猿人ターザン』シリーズのジョニー・ワイズミュラーがいる。
全米教会映画賞の司会者はマルチタレントのジョージ・ジェッセルで、本人役のプレゼンターは『鷲と鷹』『OK牧場の決斗』のロンダ・フレミング。
主演男優賞の候補者は『紳士協定』『かもめの城』のディーン・ストックウェル、歌手のディック・ヘイムズ、『愛欲と戦場』『草原の野獣』のタブ・ハンター、『アメリカ交響楽』『外套と短剣』のロバート・アルダ。

女性の清掃員に化けてスタジオに忍び込む2人組は、コメディアンのリッツ兄弟。
ルディーが参加する会見では、記者の中にサイレント時代のスターだったカーメル・マイヤーズがいる。
殺し屋のニック役は、『荒野の決闘』『サムソンとデリラ』のヴィクター・マチュア。
プレミア試写には『ローズ・マリー』『メリイ・ウィドウ』のフェルナンド・ラマス、『結婚協奏曲』『赤い風車』のザ・ザ・ガボール、『バンド・ワゴン』『いつも上天気』のシド・チャリシーが来ている。

バーレスクのショーのためにウォントントンを引き取る芸人のプロフェッサー・クイックサンドは、腹話術師でコメディアンのエドガー・バージェン。
グレイソンとエスティーが新たに契約するマーク・ベネット所長のスタジオでは、シナトラ一家のピーター・ローフォードと共演する。
ウォントントンを盲導犬として使う盲目の老人は、『おかしなおかしなおかしな世界』『暗黒街の顔役』のミルトン・バール。ウォントントンに酒を飲ませる酔っ払いは、『怒りの葡萄』『フランケンシュタインの館』のジョン・キャラダイン。
会社を立ち上げたグレイソンの秘書を務めるのは、『ミニヴァー夫人』『キュリー夫人』のウォルター・ピジョン。
そんな感じで、なかなか日本人だと「誰が誰やら」という人も多いだろうけど、とにかく「ゲストスターを見てね」という作品だね。

(観賞日:2025年11月20日)

 

*ポンコツ映画愛護協会