『メリッサ・マッカーシー in ザ・ボス 世界で一番お金が好き!』:2016、アメリカ

1975年。少女のミシェルは引き取った養母に「貴方とは合わない」と言われ、孤児院へ戻された。1980年、またミシェルは養親に嫌われて孤児院へ戻された。その度に院長のシスターは、落ち込む彼女を慰めた。しかし1985年に孤児院へ戻されたミシェルは車で去った養親に向かって「ムカつく」と吐き捨て、院長が励ましの言葉を掛けると「家族なんてくだらない。一人でも成功してやるわ」と口にした。大人になった彼女は実業家として大成功し、ラッパーや大勢のダンサーを呼んで大々的なショーを催す人気者となった。
ショーを終えたミシェルは、秘書のクレア&運転手のティトと共に自宅へ戻る。ティトは絶対的なイエスマンで、ミシェルが何を言っても褒めちぎった。クレアは3年間も昇給が無いことを指摘するが、ミシェルは「覚えてないわ」と軽く受け流す。クレアはミシェルが1年前に昇給を約束したことを書き残しており、シングルマザーだが全ての雑務を切り盛りしていることを訴える。クレアが昇給と役職の昇格を求めると、ミシェルは「ようやく私の教えを分かってくれたわね。欲しい物は掴み取れ」と言う。しかし彼女は昇給の約束を守らず、高価なイヤリングを贈るだけだった。
ミシェルは元カレのルノーから電話が掛かって来ると、余裕の態度を見せた。ミシェルはタコロ会の合併話で株を買い占めるインサイダー取引で大儲けしており、そのことにルノーは腹を立てていた。ミシェルは彼を馬鹿にして、電話を切った。ゲイル・キングが司会を務めるトークショーに出演したミシェルは、恩師であるアイダ・マルケッタについて問われると「深い絆で結ばれている」と話した。ゲイルはアイダが酷評している映像を見せるが、ミシェルは全く気にしなかった。孤児院で育ったという情報をゲイルが確認すると、ミシェルは否定して「全寮制で一流の学校に通っていた。恵まれていて幸運だった」と話す。しかしゲイルが孤児院で撮影された写真を見せると、ミシェルは彼女を罵ってスタジオを立ち去った。
ルノーがFBIに通報したため、ミシェルはインサイダー取引で逮捕された。ティトは早々と元の職場へ戻り、ミシェルは懲役5ヶ月の刑を受けた。ルノーはミシェルの逮捕について報じるニュース番組を側近のステファンと見ながら、「彼女と肉体は交わっても、魂は絶えず対立していた」と語る。かつてミシェルとルノーは、同じ会社に勤めていた。ルノーはミシェルの顧客リストを盗み、ミシェルは仕返しとして彼が狙っていた副社長の座を得た。
ミシェルは弁護士から、口座は全て凍結され、ルノーが会社を乗っ取ったことを聞かされた。ミシェルは激怒して弁護士を解雇し、新しい弁護士を雇うようクレアに指示する。クレアは「新しい仕事を見つけました。子供を養わないと」と言うが、ミシェルは彼女がシングルマザーであることを完全に忘れていた。4ヶ月後、ミシェルは刑務所を出るが、自宅も会社も失っていた。ミシェルはクレアのアパートへ押し掛けるが、彼女は仕事で留守だった。娘のレイチェルが窓から顔を出すが、ミシェルを中に入れることは拒否した。
クレアは新しい職場の上司であるダナから、陰湿な嫌味を浴びせられた。クレアに惚れている同僚のマイクは助け船を出し、食事に誘う。クレアは「今は出来るだけ子供と一緒にいてあげたいの」と言い、申し訳なさそうに断った。彼女がアパートに戻ると、その前でミシェルが居眠りをしていた。クレアが困惑しながら起こすと、ミシェルは自分の荷物を取りに来たのだと説明した。クレアは仕方なく家に招き入れ、預かっていた荷物を渡した。高価な品物は全て差し押さえられたため、箱に入る程度の物しか残っていなかった。
ミシェルは落胆するが、「マーサ・スチュワートは復活したわ」と気丈に振る舞った。クレアは「私たちは味方ですわ。いつでもメールか手紙を」と言い、荷物を運び出そうとする。しかしレイチェルが「家が無いなら置いてあげれば?」と提案すると、「彼女は友達も泊まる場所もたくさんあるから大丈夫」とピシャリと却下した。だが、ミシェルが「行く当ては無い」と口にしたため、仕方なく「生活を立て直すまで」という条件で居候させることにした。
クレアはミシェルにソファーベッドを用意するが、朝になると勝手に自分のベッドへ潜り込んでいた。ミシェルは朝から洗面所を長く独占し、日焼けスプレーを体に噴射してタオルで拭いた。ミシェルは実業家のブライスを訪ね、「近い内に食品会社を買収するそうじゃない?私に経営を任せてくれたら儲けさせてあげるわ」と持ち掛ける。しかし「アンタを信頼している人間なんていないぞ。評判は最悪だ」と拒否されたため、侮辱的な言葉を浴びせて立ち去った。その様子を観察していたステファンはルノーの元へ行き、「ブライスは命令通りに行動した」と報告した。
ミシェルはソファーに寝転んで、お菓子を食べながらテレビを見る生活を何週間も続ける。クレアは娘を「ダンデライオンの会」に連れて行くようミシェルに告げ、自分は上司から残業を命じられたと告げて会社へ向かった。ミシェルはダンデライオンの会が買収できる組織なのかと考えるが、それは女性だけのチャリティー活動団体だった。リーダーのサンディーがクッキー販売の活動について報告すると、ミシェルはビジネスと捉えて質問した。
ミシェルに気付いたメンバーのヘレンは、「子供たちのいる場所に犯罪者はふさわしくない」と顔をしかめた。ミシェルは彼女を罵って、「知り合いに頼めばクッキーを安く仕入れることが出来る」と子供たちに語った。アパートに戻ったミシェルは徹夜でアイデアを練り、「ダーネルズ・ダーリンズ」というブラウニーの会社を作って大儲けしようと目論んだ。彼女はクレアに計画を説明し、「子供たちに必要なのは、大学まで進学するお金。それを稼ぐための能力とセンスを会得させるのよ」と話した。
クレアは対等のパートナーとしてブラウニーを焼くよう要請され、今の仕事を続けながら協力することを承諾した。ミシェルはレイチェルに命じて、クリスタルを始めとする複数の少女たちをスカウトさせた。ミシェルはクレア、レイチェル、スカウトした少女たちを連れてダンデライオンの会へ行き、「ブラウニーを売れば10パーセントの歩合を約束する」とメンバーの子供たちに説明する。クレアが「1箱ごとに、もう10パーセントを奨学金として積み立てる」と付け加え、ミシェルはメンバーをごっそりと引き抜いた。
レイチェルやクリスタルたちは精力的に活動し、ブラウニーを売りまくった。ミシェルはヘレンから縄張り荒らしを糾弾され、汚い言葉で罵った。2人は殴り合いになり、それぞれのメンバーも加わって乱闘が勃発した。ダーネルズ・ダーリンズは喧嘩に勝利し、ミシェルはレイチェルに「ママに内緒よ」と告げて立ち去った。ミシェルはクレアの働く会社へ乗り込み、「もっとブラウニーを焼いて」と告げる。クレアは「仕事中よ」と困惑するが、ミシェルの大ファンであるダナは興奮した。
「両立は不可能よ。レイチェルのために決断して。ダーネルズ・ダーリンズが成功すれば、暮らしは豊かになる」とミシェルに説得されたクレアは、仕事を辞めることにした。彼女はマイクにデートの約束を告げ、会社を後にした。クレアはマイクとレストランで夕食を取り、楽しく会話を交わした。翌日、ミシェルはアイダの元へ行き、ダーネルズ・ダーリンに投資してほしいと持ち掛けた。ミシェルが契約書を渡すと、アイダは署名を約束して預かった。
夜、ミシェルはクレアとレイチェルを誘い、レストランへ出掛けた。レイチェルはミシェルに、学校で作ったフォトフレームをプレゼントした。3人が楽しそうにしている写真を見たミシェルは、複雑そうな表情を浮かべた。「私たち、家族みたい」とレイチェルが抱き付くと、ミシェルは困惑して「家族って、私には重いわ」と口にした。彼女は「急に予定を思い出した」と言い、店を出た。ミシェルは「居候は卒業するわ」と置手紙を残し、クレアとレイチェルの家から姿を消した。クレアが連絡を取ろうとしても、ミシェルは電話にも出なかった。ミシェルはクレアに何も相談せず、勝手にビジネスを展開する…。

監督はベン・ファルコーン、脚本はメリッサ・マッカーシー&ベン・ファルコーン&スティーヴ・マロリー、製作はメリッサ・マッカーシー&ベン・ファルコーン&クリス・ヘンチー&ウィル・フェレル&アダム・マッケイ、製作総指揮はロブ・コーワン&ケヴィン・メシック、撮影はジュリオ・マカット、美術はラスティー・スミス、編集はクレイグ・アルパート、衣装はウェンディー・チャック、音楽はクリストファー・レナーツ。
出演はメリッサ・マッカーシー、クリステン・ベル、ピーター・ディンクレイジ、キャシー・ベイツ、タイラー・ラビーン、ティモシー・シモンズ、クリステン・シャール、エラ・アンダーソン、マイケル・マクドナルド、アニー・マモロー、セシリー・ストロング、セドリック・ヤーブロー、メアリー・ソーン、エヴァ・ピーターソン、アレクサンドラ・ニューコム、プレスリー・コーリー、ダックス・シェパード、ベン・ファルコーン、ミッチ・シルパ、ジム・キャッシュマン、マーゴ・マーティンデイル、ロブ・プラルゴ、ラリー・ドーフ、ペドロ・ロペス、マーク・オリヴァー、リコ・ボール、カーラ・フィッシャー他。


『タミー/Tammy』に続き、妻のメリッサ・マッカーシーが主演で夫のベン・ファルコーンが監督を務めた作品。
夫婦は友人のスティーヴ・マロリーと共に脚本も手掛け、プロデューサーも担当している。
ミシェルをメリッサ・マッカーシー、クレアをクリステン・ベル、ルノーをピーター・ディンクレイジ、アイダをキャシー・ベイツ、マイクをタイラー・ラビーン、ステファンをティモシー・シモンズ、サンディーをクリステン・シャール、レイチェルをエラ・アンダーソン、ブライスをマイケル・マクドナルド、ヘレンをアニー・マモロー、デイナをセシリー・ストロング、ティトをセドリック・ヤーブローが演じている。
他に、カイル役でダックス・シェパード、マーティー役でベン・ファルコーン、孤児院の院長役でマーゴ・マーティンデイル、本人役でテレビ司会者のゲイル・キングやラッパーのT-ペインが出演している。アンクレジットだが、ボーイスカウトのリーダーのチャド役でデイヴ・バウティスタが出演している。

冒頭のアヴァン・タイトルだけでも、ミシェルがどういうキャラで、どんな風にストーリーを進めるつもりなのかは何となく分かる。
幼少の頃から里親に何度も見捨てられる経験をしたミシェルは、そのせいで周囲の人間の絆を信じなくなった。
「人生は金だけ」という思いに凝り固まってビジネスまっしぐらだったミシェルが、やがて人付き合いの大切さに気付くというドラマが展開される。そんな風に予想する人は、たぶん少なくないんじゃないだろうか。
そして、その予想は物の見事に的中する。

つまり、ものすごくオーソドックスな物語ではあるのだが、それは「観客の期待を裏切らない展開」と言い換えることも出来る。
例えば吉本新喜劇を見ていて定番のギャグが訪れた時に「待ってました」と喜べるように、ベタだからこその面白味ってのも存在する。
そういう面白味で観客を満足させるためには、質の高いベタにすることや、細かい部分まで丁寧に描くことが重要となる。
そういった部分で、この映画は失敗してしまったということなんだろう。

まず初期設定の段階で、引っ掛かりを生んでいるという問題がある。
ミシェルは里親に貰われても、5年で孤児院へ戻されている。里親がどんな人物なのかは分からないが、どうやら「苦渋の選択で孤児院に戻した」ってことではなく、ミシェルに愛想を尽かしているようだ。
ってことは、里親に問題があるのではなく、ミシェルに問題があるようにしか思えない。
1度ならともかく3度も里親に見放されるのは、どう考えてもミシェルの性格や言動が原因だ。

そうなると、「幼少期の不幸な体験」を理由に、ミシェルに同情することは難しくなってしまう。
それと、「なぜミシェルが3度も里親に見放されたのか」という理由が分からないのも、何だかモヤモヤしてしまう。
いっそのこと、「ヒロインは性格がネジ曲がった実業家」という状態から話をスタートさせて、後から「実は幼少の頃に辛い体験があって」という事情を回想シーンで挿入する構成にでもした方が良かったんじゃないか。
そうすれば、見せ方次第ではあるが、前述した問題はそんなに気にならなかったかもしれない。

ミシェルには、自分が悪いこと、間違ったことをしているという認識が全く無い。
インサイダー取引にしても、「その程度で逮捕するのは間違っている」と本気で主張するような女だ。身勝手を繰り返し、周囲に迷惑を掛けても、まるで気にしていない。
自覚症状が微塵も無いってのは、ホントに厄介だ。
ただし、自己中心的な主人公なんて、映画では良く出てくる。
ここでポイントになるのは、そのキャラクターや、「そいつに周囲の人間が振り回される」という様子を笑えるかだ。コメディー映画としては、そこが生命線だ。
この映画では、そこが全く笑えないモノになっている。

理由は簡単で、一言で表現するなら「可愛げが無い」ってことだ。
そこを何とかするために、「子供の頃に何度も里親から捨てられた不幸な経験が、ミシェルを歪んだ性格にしてしまった」という設定を用意しているんだろうとは思う。
しかし前述したように、そんな幼少期のシーンには問題がある。
それに、そこで同情心を誘ったとしても、「笑えるかどうか」ってのは、また別の問題なのよね。

この映画がコメディーとして全く弾けられない原因は、実は受け手の側にも問題がある。
受け手ってのは、クレアのことだ。
ミシェルが身勝手なせいで彼女は振り回され、迷惑を被り続けている。そんな彼女はミシェルに対して真面目に腹を立てるばかりで、コミカルな反応を見せることが無い。
「ひたすら耐え続ける」ってのを真面目な様子で描かれると、「クレアが不憫だ」という印象しか受けない。
受け手であるクレアの描写に笑いの要素が皆無なので、ミシェルが単なる悪者になってしまうのだ。

ミシェルが居候することになった時には、そもそも最初は泊めることを拒もうとしている。
だから「ミシェルのワガママを全て無条件で受け入れている」ってわけではないが、結局は居候させている。
「寝る場所をクジで決めない?」という提案は即座に拒否しているように、ある程度のルールは守らせようとしている。
だけど、結局はミシェルのペースに巻き込まれている。そんな中で、クレアのリアクションに喜劇芝居が全く見られないので、「どうやって観客を笑わせようとしているのか」と疑問に思ってしまう。

レイチェルはミシェルが訪れた時、冷たい態度を示して決して家に入れようとしない。ところがクレアが帰宅すると、今度は「家が無いなら置いてあげれば?」と言い出す。
そんな同情心を示すのなら、最初の冷淡な態度は何だったのかと。
そりゃあ、「ミシェルが落胆している様子を見て同情心が湧いた」と解釈することは可能だよ。
だけど、レイチェルの態度に一貫性が無い形にしてあることのメリットは皆無でしょ。だったら最初から同情心を見せればいい。

「それだとクレアが帰宅する前にミシェルが家に入っちゃうから困る」ってことかもしれないけど、そんなのは大した問題じゃないのよ。
仮に「レイチェルがミシェルに同情し、クレアの言い付けを破って家に招き入れる」という展開を採用したとしよう。
それで物語の展開として厄介な問題が起きるのかというと、何も無いよね。
「クレアが帰宅するとミシェルが家にいる。クレアはミシェルに荷物を渡し、すぐに追い出そうとする」という流れにすれば、何の問題もなく消化できるはずでしょ。

ブライスはミシェルが訪ねて来た時、彼女を批判して拒絶する。しかし、それはルノーの指示を受けての対応という設定だ。
ってことは、「ミシェルを信頼している人間なんていない。評判は最悪だ」ってのも、真実ではないってことになる。それはどうなのかと。
ミシェルが自己中心的な性格で、周囲の人間を信頼せずにビジネスを展開してきたことは事実なんでしょ。
だったらルノーが後ろから手を回しているという設定にせず、ホントに「ミシェルが周囲を信頼せず身勝手を繰り返してきたので、困った時に手を差し伸べてくれる人間もいない」という形にしておけばいいんじゃないのか。

厄介なのは、「クレア以外の人からすると、ミシェルはそんなに嫌な奴じゃない」ってことだ。
ミシェルはヘレンを罵倒するが、「ヘレンをウザいと思ってる人?」と質問すると大半の子供たちが挙手する。つまりヘレンの方が嫌われ者であり、それを罵るミシェルに子供たちは味方するわけだ。
また、そこにいる子供たちだけでなく、レイチェルもミシェルに懐いている。そしてミシェルの方も、言動に荒っぽい部分はあるものの、子供たちに嫌なことを押し付けたり、迷惑を掛けるようなことは無い。
ようするに、ミシェルのせいで迷惑を被っているのは、クレアぐらいなのだ。
アイダにしても、映像ではミシェルを批判していたが、会いに行くと歓迎しているし。

こうなると、話がまるで変わってくる。
ミシェルは周囲の人間を信頼せず、「人生は金」ってことで生きて来た女性だ。そのせいで一気に転落し、周囲が誰も助けてくれない中で再起を図るという展開になっている。
それなら、「今までのワガママのせいでしっぺ返しを食らい、人間関係の大切さに気付く」というドラマを描くべきだろう。そのためには、ミシェルがクレア以外の人間にとっても身勝手で迷惑な奴であるべきなのだ。
そこの描写がヌルくなっているのは、大きな間違いだ。
そのおかげでミシェルは前半から不快指数がそんなに高くないけど、それと引き換えに物語の根幹が破綻してしまっている。

しかも、クレアもミシェルがアパートへ来た時は迷惑そうにしていたけど、ダーネルズ・ダーリンの活動が始まるとノリノリで協力しているんだよね。
もう彼女の中にも、不満は全く見えなくなる。かつて昇給の約束をホゴにされたことも、すっかり忘却の彼方だ。初期設定で予想されるような展開からは、大きく逸脱する。
「それはテメエが勝手に予想して外れただけだろ」と思うかもしれないが、そういうことではないのよ。「本来は進むべき道がハッキリと見えているのに、そこを外れている」ってことなのよ。
それでも「意外ではあるが面白くなっている」ってことなら結果オーライだけど、完全に失敗しているだけだからね。

後半に入り、ミシェルはクレア&レイチェルと距離を置こうとして、勝手にビジネスを展開してクレアを侮辱する。それは「親しくなると相手を遠ざけようとする」ってことであり、「それは子供の頃の経験が影響している」という設定なわけだ。
「人を信じる経験が無いので、信じるべき状況になると、どうすればいいか分からなくなって間違った行動を取ってしまう」という風に見せたいのは分かるけど、それが上手く表現できているとは到底言えない。
さらに問題なのは、「そのせいでクレア&レイチェルと不仲になるが、あっさりと仲直りに至る」ってことだ。そして、「一度はルノーに売却した会社を取り戻そうとする」という行動が、クライマックスに用意されている。
でも、この物語で収束すべき場所は、そこじゃないでしょ。大事なのは「会社を取り戻して実業家として復活する」ってことじゃなく、「人を信じることの必要性を学び、大切な仲間との絆を築く」ってことじゃないのかと。
会社を取り戻すための行動を最後に残すのはいいとして、「ミシェルがクレア&レイチェルと和解する」ってトコを雑に片付けちゃダメだよ。

(観賞日:2019年11月1日)

 

*ポンコツ映画愛護協会