『もう一度アイ・ラブ・ユー』:1997、アメリカ
モリー・デ・モーラはレストランで恋人のキース・マークスからプロプーズされ、喜んでOKした。キースが「教会を決めた。ウチの隣だ。君の両親も招待して、ウチで披露宴をやろう」と話すと、彼女は「ウチの両親は犬猿の仲よ。15年間、一度も会ってない。式に呼んだら大変なことが起きる」と難色を示した。モリーは母で女優のリリーと会い、ショッピングモールへ出掛けた。フリーカメラマンのジョーイが付いて来ると、リリーは「薄汚い追っ掛けカメラマンよ」と吐き捨てた。モリーが「裁判所に訴えた?」と訊くと、彼女は「表現の自由を盾に却下されたわ」と憎々しげに告げた。
リリーはジョーイについて、「しつこい男よ。何でも嗅ぎ付ける」と扱き下ろした。ジョーイが近付いて写真を撮ると、リリーは警備員に頼んで連れ出してもらった。リリーは娘の結婚を祝福せず、「私は早まったと後悔してる」と述べた。モリーは母に、結婚式では行儀良く振舞うよう釘を刺した。結婚式の当日、リリーは再婚相手のアラン、元夫のダンは再婚相手のロウェーナを伴って教会へ赴いた。リリーはロウェーナの悪口を、ロウェーナはリリーの悪口を、それぞれの配偶者に告げた。
披露宴が始まると、キースの父であるマークス議員はリリーに挨拶した。りりーとロウェーナは顔を合わせ、互いに嫌味を浴びせた。ダンはアランから「仲直りには絶好の機会だ」と言われるが、「黙れ、殺すぞ」と凄んで拒否した。ダンは会場に来ていたジョーイに金を渡し、左のアングルからリリーを撮るよう指示した。モリーはジョーイに写真を撮られ、スタッフに頼んで追い出してもらった。キースが「僕が雇った。腕がいい」と言うと、モリーは呆れ果てた。
顔を合わせたリリーとダンが大声で罵り合いを始め、招待客の注目を集めた。モリーは両親を叱責し、頭を冷やすよう説いて家の外へ追い出した。口論を続けたリリーとダンだが、途中で強く抱き締め合ってキスをした。2人は停めてあった車に入り、激しいセックスに及んだ。披露宴会場に戻った2人は、仲良くダンスした。ホテルの部屋に戻ったダンは、リリーに電話を掛けて誘い出す。モリーは部屋でキースとセックスしようとするが、両親の声が聞こえたので隣の部屋をキースに覗いてもらう。すると両親はベッドで裸になっており、セックスを始めた。モリーは部屋を替えてもらおうとするが、従業員から満室だと言われてしまった。
ダンを捜していたロウェーナは、彼がいる部屋を知って赴いた。するとダンの姿は無く、ベッドでリリーが余裕の笑みを浮かべていた。リリーは勝ち誇ったように、「私たち、自然発火したの」と言い放った。ロウェーナが憤慨して去った後、ダンは奥の部屋から出て来た。リリーとダンは笑い合い、ホテルから姿をくらました。翌朝、モリーはロウェーナとアランから両親の失踪を知らされた。ロウァーナはモリーとキースに、「責任を取って。貴方たちが呼んだのよ」と詰め寄った。
キースはモリーに、「僕たちにも影響する。下院選に出馬するんだ。妻の家族の不倫が発覚したら致命的だ」と告げる。彼が「マスコミにバレる前に連れ戻す」と言うと、窓の外にジョーイの姿を見つけたモリーは「もう遅いわ」と漏らす。キースは「アランとロウェーナを家まて送る。カメラマンを追い払え」とモリーに話して車で去った。ジョーイはモリーの置き手紙を勝手に読み、彼女がダンと失踪したことを知った。彼が「これは特ダネだ。金になる」と喜ぶと、モリーは捜索への協力を要請した。
ジョーイは400ドルで仕事を引き受け、クレジットカードの使用履歴からリリーに足取りを掴む。リリーはカードを解約して足取りを隠すが、ジョーイは彼女のファイルを新聞社のファイルで調べる。彼はリリーとダンの思い出のホテルを突き止め、モリーは両親の結婚前に自分が産まれていることを知った。モリーとジョーイはホテルに到着し、すぐにリリーとダンを発見した。モリーがジョーイに「後は私だけで大丈夫」と言い、金を渡して帰らせようとする。しかしジョーイは立ち去ることを拒み、「リリーに挨拶したい。ちゃんと紹介してほしい」と告げた。
リリーはジョーイに気付き、激しい怒りを見せた。ダンはジョーイに詰め寄り、ホテルから出て行くよう要求した。ジョーイはリリーに謝罪し、「あんな写真は二度と撮らない。いい写真だけを撮る」と約束した。リリーとダンは簡単に機嫌を直し、ジョーイを飲みに誘った。リリーは人前での平気でベタベタするリリーとダンに、「アランとロウィーナを傷付けて可哀想だとは思わないの。14年間も連れ添った相手よ。酷すぎるわ」と非難の言葉を告げる。するとリリーとダンは小声で相談し、「大人げなかった。帰る」と約束した。
リリーとダンはモリーとジョーイに荷造りの手伝いを頼み、部屋へ呼び込んだ。2人はモリーとジョーイを部屋に閉じ込め、荷物を持って逃亡した。リリーとダンはレストランで生き、2人の時間を楽しんだ。一方、アランはロウィーナに誘惑され、肉体関係を持った。モリーとジョーイは部屋から出られないため、ベッドで就寝した。翌朝、リリーは部屋に戻り、モリーに「騙して悪かったわ。もう一晩だけパパと過ごしたかったの。今度こそ家に帰るわ」と述べた。
モリーはキースに電話を掛け、リリーを連れて帰ると知らせた。キースは冷たい口調で、「帰ったら説明してもらうぞ」と告げた。リリーとダンはすぐにホテルを立ち去ろうとせず、他人の披露宴に参加して楽しく踊った。モリーはジョーイから「家まで送ろうか」と言われ、「いいの。何だか帰り辛くて。きっとキースに責められる」と漏らした。モリーとジョーイはリリーとダンに誘われ、ダンスに参加した。モリーとジョーイは一緒に踊り、キスを交わす。一方、キースはモリーの帰りが遅いので、ホテルへ乗り込むことにした…。監督はカール・ライナー、脚本はレスリー・ディクソン、製作はレスリー・ディクソン&ボニー・ブルックヘイマー、製作総指揮はトム・ジョイナー、撮影はスティーヴ・メイソン、美術はサンディー・ヴェネツィアーノ、編集はリチャード・ハルシー、衣装はロバート・デ・モーラ、音楽はパトリック・ウィリアムズ、音楽監修はティム・セクストン。
主演はベット・ミドラー、共演はデニス・ファリーナ、ダニー・ヌッチ、ポーラ・マーシャル、ゲイル・オグレイディー、デヴィッド・ラッシュ、ジェイミー・デントン、ブル・マンクマ、ジェイン・イーストウッド、マイケル・J・レイノルズ、ジョアン・ルシャク、マイク・ウィルモット、ルーラ・フランクリン、ジョージ・ヘヴェナー、アーリン・メドウズ、ドン・アリソン、イアン・クラーク、デヴィッド・ヒューバンド、トニー・クレイグ、キム・ボーン、カーラ・チザム、ペドロ・サルヴィン、ダグ・マーレイ、ジョン・ナイチンゲール、スコット・ギブソン、メアリー・ジョー・ユースタス他。
『オール・オブ・ミー/突然半身が女に』『マージョリーの告白』のカール・ライナーが監督を務めた作品。
脚本は『潮風のいたずら』『ミセス・ダウト』のレスリー・ディクソン。
リリーをベット・ミドラー、ダンをデニス・ファリーナ、ジョーイをダニー・ヌッチ、モリーをポーラ・マーシャル、ロウェーナをゲイル・オグレイディー、アランをデヴィッド・ラッシュ、キースをジェイミー・デントンが演じている。
ホテルのラウンジでピアノを演奏しているのは、ブル・マンクマ。モリーの叔母のアイリスをジェイン・イーストウッド、マークス議員をマイケル・J・レイノルズが演じている。上述の粗筋では省略したが、冒頭のプロボーズにはギャグが用意されている。キースはレストランのウェイターに頼み、デザートに指輪を隠してもらう。気付かずに食べたモリーが飲み込みそうになり、キースはウェイターに皿を持って来るよう指示する。キースは吐き出すよう告げ、モリーが吐き出すと指輪が彼の顔に命中する。
こういう経緯を経て、「モリーが指輪を見て喜ぶ」という流れになっている。
ただ、モリーが飲み込みそうになるのは想定外かと思ったら、キースは落ち着き払っているんだよね。
でも、ここで彼がアタフタしないと、それがギャグとして成立しないでしょ。顔に指輪が命中するのだって、アクシデントのはずなのに全く動じないけど、それだとギャグにならないでしょ。結局、そのシーンは「モリーが指輪を貰って喜びました」というだけで、ギャグになっていないんだよね。
っていうか、そもそも冒頭からギャグを用意している時点で、いかがなものかと思っちゃうのよ。
だって、まだリリーもダンも登場していないわけだからさ。
モリーがキースとの結婚を決めるのは、リリーとダンが再会する流れに向けた準備段階みたいなモンで。
そこはサラッと描いて、モリーとダンが登場してから2人の周囲でギャグを作っていった方がいいんじゃないかと。結婚式のシーンに移ると、リリーはロウェーナの悪口を言い、ダンはアランに攻撃的な姿勢を示す。リリーとダンが対面して罵り合う前に、そういう様子を描いている。
重要なのは「リリーのロウェーナに対する憎しみ&ダンのアランに対する嫌悪感」よりも「リリーとダンの不仲」のはずなのに、なぜリリーとダンの互いに対する悪口が後回しなのかと気になった。
ただ、焼け木杭に火が付く展開が来て、合点がいった。
ようは、「リリーとダンは心底から憎み合っているわけじゃなく、実は今も愛がある」と見せたかったんだろう。ただ、前述した疑問については合点がいくけど、根本的な物語としては全く納得できない。なんでリリーとダンが序盤でヨリを戻すような話にしちゃったのかと。
まだ「いがみ会っていたリリーとダンが娘の結婚式で再会し、少しずつ気持ちが変化し、最終的にヨリを戻す」という話なら、分からんでもないよ。
だけど2人がヨリを戻してから、本格的に物語が転がっていくわけで。
だからモリーとキースの結婚式って、リリーとダンをくっ付けるための餌みたいなモンなのよね。そのままだとモリーが単なる噛ませ犬になってしまうが、さすがに「それで御役御免」という雑な扱いでは済ませていない。
そこで彼女の恋愛劇も用意しているが、欲張り過ぎて収拾が付かなくなっている。
しかも、それがモリーとキースの恋愛劇じゃなくてジョーイとの関係で進めるってのは、完全に悪手だ。
どうせバレバレだから書いちゃうけど、最終的にモリーはジョーイとカップルになるんだけど、アホかと言いたくなるわ。粗筋でも書いたように、ジョーイはリリーに付きまとう薄汚いパパラッチだ。金のためなら相手の迷惑など考えず、執拗に付きまとって写真を撮る。
そんな奴をモリーの相手に選ぶって、どこに勝算を見出したのか。
しかも、別にジョーイが反省したり改心したりするわけではないからね。こいつは基本的に、何も変わっちゃないのよ。
ところが、なぜか途中から「好青年」の扱いになるんだよね。
そりゃあ、モリーの仕事を受けてからは契約に従ってパパラッチ的な写真は撮らないけど、そこは無理があるだろ。ずっと薄汚い男としてジョーイを忌み嫌っていたリリーも、ジョーイが「いい写真しか撮らない」と約束した途端、急に歓迎モードに変化するんだよね。
それどころか、「いい男じゃない」と言い出してモリーとの関係を後押しするし。
モリーも「人のプライバシーを侵害するなんて罪悪感は無いの?」と言うけど、ジョーイが「俺がカメラマンになると言った時、父と兄はバカにした。俺は自分のスタジオを持ち、そこでスターの写真を撮るのが夢だ」と語ると「夢を叶えて」と笑顔で応援するし。
どういう心境の変化なのか。ロマンティック・コメディーでは、「最初は嫌っていたけど、次第に気持ちが変化してカップルになる」みたいなパターンは幾らでもある。
だけどモリーとジョーイの場合、あまりにも急激な変化なのよね。
リリーとダンがいるホテルに着いた途端、そこからガラリとジョーイの扱いが変化するのだ。そしてモリーは彼を嫌悪していたのに、その夜には既に「好き」に変化している。
その翌日には、ハッキリとした恋心を抱いてキスまでする。
そこの「嫌いから好きになる」という変化は、あまりにも強引すぎる展開だわ。粗筋でも触れたように、直前まで激しく罵り合っていたリリーとダンは、急に抱き締め合ってキスをする。そしてセックスしてヨリを戻すわけだが、そこを「コメディーですから」ってことで乗り切ろうとしている。
でも、その強引さには付いて行けないわ。ただ陳腐なだけで、一ミリたりとも笑えないよ。
しかも、その後もラブラブが続くから最後まで徹底するのかと思ったら、終盤になって再び喧嘩して一度はアランとロウィーナの元へ戻るんだよね。
「夫婦喧嘩は犬も食わない」という言葉があるけど、それがピッタリだわ。そういうの、まるで笑えないよ。リリーとダンがヨリを戻したことを全く隠そうとせず、むしろロウェーナを挑発するような行動に出て失踪するのも理解不能だわ。
そこは例えば「ヨリは戻したけど周囲に悟られないように隠そうとする」みたいな形にした方が、コメディーのプロットとしては腑に落ちるわ。
そうすれば、「周囲にバレそうになって必死で誤魔化す」とか、「周囲にバレないように密会しようとしてアタフタする」みたいなギャグなんかも、色々と用意できるはずだし。モリーが指摘するように、リリーとダンはアランとロウィーナと14年間も連れ添って来たはずだ。それなのに、酷い裏切り行為に及んでも罪悪感を全く見せない。夫婦仲が冷え切っていたならともかく、リリーとダンがヨリを戻す直前まで、それぞれの夫婦は仲良くしていたし。
ロウィーナにキースと浮気させたりして「向こうも浮気したから、どっちもどっち」みたいにしてあるけど、それで全てクリアになんかならんぞ。
そもそも、なんで急にロウィーナがキースを誘惑するのか、なんでキースがホイホイと誘惑に乗っちゃうのか、その展開に全く付いて行けないし。
強引すぎる展開、不自然すぎるキャラの動きを全て「コメディーだから」ってことで突破しようと目論んでいるけど、それを容認できるような勢いもパワーも、この映画には備わっていない。(観賞日:2023年12月23日)
第20回スティンカーズ最悪映画賞(1997年)
ノミネート:【最悪の主演女優】部門[ベット・ミドラー]
ノミネート:【最悪のカップル】部門[ベット・ミドラー&デニス・ファリーナ]