『ミート・ザ・ジェンキンズ』:2008、アメリカ

RJ・スティーヴンスは、「チーム・オブ・ミー(自分を頼れ)」を合言葉にして、変わり者ばかりをゲストに迎えるテレビ番組の人気司会者だ。前妻と離婚して以来、一人息子のジャマールと共に暮らしていた彼は、サバイバル番組の優勝者であるビアンカと婚約した。それをきっかけに番組の視聴率もアップし、順風満帆な生活を送っている。彼が豪邸でパーティーを開いている最中、故郷で暮らすママから電話が掛かって来た。「結婚記念日のことなら覚えてるよ。50周年記念だから50インチのテレビを送った」とRJが言うと、ママは「それよりブランカに会いたいわ。絶対に来てよ」と婚約者の名前を間違えたまま、帰郷するよう求めた。
RJが「ジャマールのサッカーの試合があって行けない」と断ると、ママは「知ってる」と言う。ジャマールがパパと連絡を取っていると知り、RJは驚いた。「ルシンダやクライドも来るわ」というママの言葉にRJが困惑していると、電話を代わったパパが「必ず家族の顔を見に来い」と強い口調で命じる。RJはジャマールからも、田舎へ行きたいと言われてしまう。RJは乗り気ではなかったが、行くことに決めた。ビアンカの尻に敷かれているRJは、彼女に「4日間だけだ」と言う。ビアンカから「世間に私たちの絆をアピールするのよ。両親のパーティーで貴方がスピーチする姿を撮影すれば視聴率が取れるわ」と告げられ、RJは笑顔を見せる。
飛行機で田舎へ向かう途中、RJは飲み物を服にこぼしてしまう。航空に到着すると、機長のクローゼットに預けておいた荷物が紛失していた。ビアンカが買ってくれた着替えのズボンはサイズが小さく、色も派手でピエロみたいだった。町に戻ったRJは、従弟のレジーと遭遇する。RJはビアンカに「所持品に気を付けろ。奴は盗みの天才だ」と警告した。レジーは恋人のエイミーと一緒だった。レジーが「お前のママから氷を頼まれた」と300ドルを請求するので、RJは呆れる。だが、レジーにおだてられたビアンカが「300ドルぐらい、大したお金じゃないわ」と言うので、RJは仕方なく金を渡した。
RJはが帰宅すると、両親が現れた。パパは本名のロスコー・ジェンキンズではなく芸名を使って活動している息子に対し、皮肉っぽい態度を取った。保安官をしている兄のオーティスは、いきなりRJの首を絞めてからかった。RJの姉ベティーが攻撃的な口調で饒舌に喋るので、ビアンカは困惑した。RJが送ったテレビを、パパは「ウチのテレビはまだ映る」と言って使っていなかった。RJが「日曜のフットボールを大画面で見られるぞ」と告げると、パパは「実際に観戦に行く。クライドがチケットをくれた」と嬉しそうな顔で言い、クライドのことを褒めた。
RJはオーティスとレジーに、従兄のクライドと初恋の相手ルシンダについて質問する。「ルシンダは婚約を解消して、クライドとヨリを戻した」と聞かされた彼は、「彼女はクライドと1度も付き合ってないぞ」と訂正する。オーティスたちは「お前も彼女を狙えよ」と言い、ニヤニヤして。2人からポークリブを食べるよう勧められたRJは、「ビアンカに言われて低脂肪の食事を努めてる」と断った。だが、結局は我慢できずに食べてしまった。
ビアンカはベティーから出演した番組のことを言われ、「勝つためなら何でもするわ。それはRJも同じよ」と口にした。するとベティーは鼻で笑い、「彼は勝利と無縁の男。いつもクライドに負けてた。1985年の障害物競走以外は、全てにおいてクライドが勝ってた」と語る。障害物競走はジェンキンズ家の恒例行事で、RJとクライドは勝った方がルシンダをダンスパーティーに誘うと決めていた。タッチの差で勝ったRJは、ルシンダを誘う。しかし「さっきクライドに誘われちゃった」と言われて断られた。悔しくて賭けのことをバラしたRJは、パパに叱られて罰を受けた。しかし口が上手いクライドは、パパに叱られずに済んだ。
クライドがルシンダを連れて車で現れると、みんなが大歓迎した。クライドは早速、RJをバカにした。カー・ディーラーとして3つの店を経営しているクライドは、ルシンダとの結婚願望を何の照れも無く口にした。「お前は成功したかもしれないが、俺には勝てないぞ」と彼に挑発されたRJは、「俺に一度負けたことを気にしてるのか。乗り越えろよ」と言い返す。ルシンダのことで嫉妬心を見せるビアンカに、RJは「彼女のことは忘れた。今は君に夢中だ」と告げて機嫌を取る。だが、実際はルシンダのことが気になっていた。
翌日、ジェンキンズ家はソフトボール大会を開く。ジャマールが三振した時、ルシンダは塁に出ていたビアンカが「使えないガキね」と呟くのを耳にする。RJが打席に入ると、クライドが交代でピッチャーになった。クライドが余裕の態度を取るので、RJは腹を立てた。彼は思い切りバットを振るが、打ったボールがママの額をが直撃してしまう。コブが出来て治療を受けたママに、RJは必死で謝った。ママは何も咎めなかったが、パパは静かな口調でRJを批判した。
RJはオーティスに、「兄貴がヒザを怪我しなかったら、今頃はフットボールの名選手だろうな」と話し掛ける。するとオーティスは、「俺は人生に失敗したとは思っていない。素晴らしい家族と地域の人々に囲まれている。お前はどうだ。金と名声の他に何がある?」と問い掛けた。小言にイライラしたRJは、生意気な態度で兄をバカにした。するとオーティスは一発のパンチでRJをKOした。
RJの額に出来たコブを見たベティーは、「アンタの番組で弱虫の弟の特集をやれば」とバカにして笑う。RJが「次の特集は刑務所のアバズレだ」と逆に嘲笑すると、ベティーは彼を叩きのめした。帰宅したRJの傷を見たルシンダは、彼を手当てする。RJが「こんな傷、大したことない」と言うと、彼女は「強がらないで。昔のロスコーは素直だった」と口にする。「今の俺はRJ・スティーヴンスだ。ロスコーの時より進化してる」とRJが胸を張ると、ルシンダは「昔のままで良かったと思うわ」と述べた。そこへクライドが来たので、RJはルシンダの手を握って勝ち誇った態度を見せた。
翌朝、飼い犬の散歩に出たRJは、ルシンダと遭遇する。彼は番組について、「負け犬だった俺が、やっと特技を見つけたんだ。観客とは気持ちが通じ合う。家族の誰よりも」と語る。「家族は口が悪いものよ。貴方も口が悪いわ。特にクライドに対しては」とルシンダに言われ、RJは「奴こそ高慢な態度を慎むべきだ」と反論する。「どうして仲が悪いの?」という質問に、彼は「勝つためなら何でもする汚い奴だからだ」と答えた。ルシンダが「彼に何を奪われたの」と訊くと、RJは「絶好の機会だ」と答える。「もう一度、その機会を作ってみれば」と持ち掛けられた彼は、「そうだな」と述べた。
帰宅したRJは、クライドからサイコロでの対決を持ち掛けられる。挑発に乗ったRJは、勝負を始める。すっかり熱くなった2人は、取っ組み合いの喧嘩になってしまった。翌日、恒例の障害物競争が開催されるが、スタート前からRJとクライドは熱くなる。パパが「20年前のケリを付けろ」と言い、2人は真剣に競争する。ロープで壁を越える障害に到達した時、RJはジャマールから「登れない」と助けを求められる。RJはは手を貸そうとするが、ビアンカの「子供は放っておいて、クライドに勝つのよ」と声を掛けられる。RJはジャマールに「自力で頑張れ」と告げ、壁を乗り越えてクライドを追い掛ける…。

脚本&監督はマルコム・D・リー、製作はスコット・スチューバー&メアリー・ペアレント&チャールズ・カスタルディー、製作協力はダリス・ロリンズ&アレクサ・フェイガン、製作総指揮はマルコム・D・リー&ティモシー・M・ボーン&ゲイリー・バーバー&ロジャー・バーンバウム、撮影はグレッグ・ガーディナー、編集はジョージ・バワーズ&ポール・ミルスポー、美術はウィリアム・エリオット、衣装はダニエル・ホロウェル、音楽はデヴィッド・ニューマン、音楽監修はボニー・グリーンバーグ。
出演はマーティン・ローレンス、ジェームズ・アール・ジョーンズ、セドリック・ジ・エンターテイナー、マーガレット・エイヴリー、ジョイ・ブライアント、ルイス・C.K.、マイケル・クラーク・ダンカン、マイク・エップス、モニーク、ニコール・アリ・パーカー、ダマニ・ロバーツ、ブルック・ライオンズ、リズ・ミケル、キャロル・サットン、ディーター・ウエスト、ブランディン・ジェンキンズ、クリスタル・マリー・ブラウド、レジナルド・デイヴィスJr.、ガス・ホフマン、エイラ・グリッグスビー、サマンサ・スミス、エリン・カミングス、アフィオン・クロケット、アンバー・デューク、アンジー・フォックス他。


『アンダーカバー・ブラザー』『ロール・バウンス』のマルコム・D・リーが監督と脚本を務めた作品。
RJをマーティン・ローレンス、パパをジェームズ・アール・ジョーンズ、クライドをセドリック・ジ・エンターテイナー、ママをマーガレット・エイヴリー、ビアンカをジョイ・ブライアント、マーティーをルイス・C.K.、オーティスをマイケル・クラーク・ダンカン、レジーをマイク・エップス、ベティーをモニーク、ルシンダをニコール・アリ・パーカーが演じている。
この映画、ジェームズ・アール・ジョーンズ(『ボクサー』で主演男優賞賞候補)、マーガレット・エイヴリー(『カラーパープル』で助演女優賞候補)、マイケル・クラーク・ダンカン(『グリーンマイル』で助演男優賞候補)と、過去にオスカー候補となった俳優が3人も出演している。
ついでに触れておくと、この翌年にはモニークが『プレシャス』でアカデミー賞助演女優賞を受賞している。
そういう風に書くと、なんか豪華なキャスティングに思えてくるよね(えっ、そうでもない?)。

まず最初に言えるのは、上映時間が114分ってのは無駄に長すぎるってことだ。
この内容のコメディー映画であれば、せめて100分以内に抑えるべきだろう。この映画で114分になってしまうというのは、その時点で演出センスに疑問符を付けざるを得ない。
実際、用意に削ることが出来るし、また削るべきだと思える箇所が幾つもある。
あと、全体的に、テンポが悪くてダラダラしている印象もあるし。

「都会での生活に染まっていた主人公が、久々に戻った故郷で素晴らしさを感じ、その考え方やライフスタイルが変化する」というのは、ものすごくベタな筋書きではある。
しかし、「都会での暮らしに馴染んでいる主人公が久々に帰郷する」という入り方をした以上、「故郷の良さを実感する」というところへ着地する以外に、選択肢は無いだろう。
そこを変に捻っても、良い方向に転がるとは思えない。

そんなわけだから、そこがオーソドックスな展開になっているのは、別に構わない。
問題は、「そういう着地をさせるなら、内容が全く伴っていないでしょ」ってことだ。
この映画の主人公は、厳密に言えば「故郷の良さ」に気付くのではなく、「故郷に住む家族の良さ」に気付く。
そうであるならば、当然のことだが、彼の家族は「素晴らしきジェンキンズ一家」でなければならない。
しかし映画を見た限り、こいつらは全く好感の持てない連中なのだ。

これが例えば、「RJが都会へ行って昔とはすっかり変わってしまったので、冷たく接したり、バカにしたりする」ということであれば、それは納得できる。
それなら、非はRJにあるのだから、家族からの扱いが悪くても仕方が無い。
だが、まだRJが都会へ出る前から、家族は彼に冷たくしたり、バカにしたりしていたのだ。
そして久々に帰郷しても状況は変わらず、レジーは盗み癖があって、タカってくる。オーティスとベティーは、バカにして嘲笑う。クライドはRJを見下し、要領の良さで上手く立ち回る。
そんなクライドをパパはえこひいきし、自分の息子には冷たく接する。

特に問題なのが、このパパの態度。
RJからすれば、クライドが嫌な奴でも、パパが自分のことを認めてくれれば、実家に戻ることへの拒否反応は薄かっただろう。
しかし、どうせ戻ってもパパは自分を認めておらず、クライドのことばかり特別扱いすることが分かっている。
実際、久々に戻っても、やはり変わっていなかった。
そうであるならば、そりゃあ実家に戻ろうとしないのも理解できる。

ジェンキンズ家の面々がアクの強いキャラ、クセの強いキャラであっても、それは一向に構わない。口が悪くても、荒っぽくても、魅力的なキャラクター、愛すべきキャラクターになっていれば、それは一向に構わない。
しかし実際には、ただ不愉快なだけの連中になっている。
にも関わらず、「全てRJが悪い」という形になっているのは、どうにも受け入れ難い。
そりゃあ、ヘタレのくせに都会人ぶった態度を取ったり、弱虫のくせに虚勢を張ったりするRJの態度に問題が無いわけじゃないけど、そういう彼を作ってしまったのは、家族の彼に対する理不尽な扱いじゃないのかと。

ジェンキンズ家の面々は人気司会者となったRJを完全否定しているが、約束を破ったクライドにルシンダを奪われ、パパからは自分だけが叱責されて罰を受け、それをきっかけに「見返してやろう」という強い気持ちで成り上がった彼の生き方を、「それは間違っている」と否定する気になれない。
で、久々に戻ったら相変わらずクライドが挑発して来たのに、それに言い返したRJに対して家族は冷たい視線を向ける。
クライドがRJをバカにすると、みんなは同調して笑う。
彼の味方をしてくれるのは、ママだけなんだよな。
そりゃあ、RJの性格が歪んでも仕方が無いだろ。

RJが障害物競走でムキになって勝利し、そのことで全員から冷たい目で見られた後、急にクライドが「俺は家族に馴染みたかっただけだ。息子の座を奪うつもりなんて無かった」と急にしおらしくなって和解を求めて来たりするのだが、取って付けた印象しか無い。
ビアンカの言うように、「急に良い人ぶっている」としか見えないのだ。
そこでRJだけを悪者にして、家族は何も悪くなかったという形で収めたいようだけど、それは無理がある。
そりゃあ、その障害物競走だけを見ればRJが悪いんだけど、そこまでのことを家族が全く悪いと思っていないのは、すげえ不愉快だ。

で、一方的に悪者扱いされたRJが、自分の方から「やっぱり家族は素晴らしい」と歩み寄っているんだけど、ジェンキンズ家の方は何も変わってないんだよね。
ジェンキンズ一家を不愉快なキャラ造形にしておいて、「やっぱり家族っていいよね」というハートウォーミングな答えに着地しようってのは無理がありすぎる。
そうそう、だからって、RJが可哀想に思えるってわけでもないのよ。
RJはRJで、幾ら過去の出来事がきっかけとは言え、あまりにも性格が捻じ曲がり過ぎていて、やっぱり不愉快な奴になっている。

(観賞日:2013年3月19日)

 

*ポンコツ映画愛護協会