『ミュータント・ニンジャ・タートルズ2』:1991、アメリカ&香港

ピザ店で働く少年のキーノは、エイプリル・オニールのアパートに何度もピザを配達させられることにウンザリしている。その夜も店長から配達を命じられたキーノがアパートへ出向くと、通りの向かいに不審な車が停まっていた。気になった彼が建物に入ると、3人の覆面強盗が盗みを働いていた。キーノは得意の武術で退治するが、大勢の仲間が奥から現れた。そこへタートルズのミケランジェロ、ドナテロ、ラファエロ、レオナルドが駆け付けて強盗団を退治し、キーノに警察への連絡を指示した。キーノが電話を掛けて現場に舞い戻ると、タートルズは一味を縛り上げて姿を消していた。
タートルズと師匠のシュレッダーは下水溝の住処を失って以来、ずっとエイプリルのアパートに居候していた。タートルズは居心地の良さを感じているが、シュレッダーは新しい住処を早く見つけるべきだと考えていた。倒したはずのシュレッダーがゴミ集積場で復活したことなど、彼らは全く知らなかった。シュレッダーの側近であるタツはフット団を集め、自分がボスになって復讐を果たすと宣言した。そこへシュレッダーが現れ、手下にエイプリルを監視させてタートルズの居場所を突き止めろとタツに命じた。
エイプリルは環境汚染の現状をリポートし、テクノ・グローバル・リサーチ・インダストリー社(TGRI)が浄化作業を実施する現場を取材する。彼女は責任者のジョーダン・ペリー教授にマイクを向け会社が長年に渡って埋めて来た化学廃棄物を回収する理由を質問する。だが、説明を受けても、エイプリルには全く理解できなかった。ジョーダンの部下たちは巨大化したタンポポを発見し、激しい動揺を示した。カメラマン助手として潜入していたフット団のフレディーは彼らの不審な行動を目撃し、巨大化したタンポポを発見した。
部下から報告を受けたジョーダンは、15年前に流出した溶液が漏れて土地が汚染されているのだと気付いた。フレディーからタンポポを見せられたシュレッダーは、突然変異の原因を究明して武器に使おうと考える。エイプリルの番組を見たスプリンターは長い瞑想の後、タートルズに変身の原因となった薬の容器を見せる。彼は容器にTGRIの文字があることを教え、「この中身が町中に溢れていたら、危険なことになる」と言う。
タツはフット団を率いてTGRIの研究所に侵入し、溶液を処分していたジョーダンを襲う。一味は最後の容器を奪い、ジョーダンを拘束した。タートルズが研究所へ乗り込むと、潜んでいたフット団が襲い掛かる。タートルズは容器を奪おうとするが、フット団は煙幕を使って逃亡した。ピザを持ってエイプリルの部屋を訪れたキーノは、隠れていたタートルズを発見した。スプリンターの事情説明を聞いた彼は、フット団に潜入して情報を集めることを提案する。ラファエロは賛同するが、スプリンターは「危険すぎる」と反対した。
シュレッダーはジョーダンを脅して実験装置を用意させ、凶暴な生物を溶液で変異させてタートルズにぶつけようと目論む。エイプリルの安全を考え、スプリンターを彼女に任せて下水溝へ戻って家探しを始める。しかしラファエロは納得できず、単独行動を取る。残った3人は使われなくなった地下鉄の駅を発見し、新しい住処に決めた。シュレッダーはミュータントのトッカとレイザーを誕生させ、戦闘能力を確かめようとする。しかし2匹とも赤ん坊のようにシュレッダーに甘えるだけなので、「こいつらはバカなだけだ」と呆れる。
シュレッダーはタツにトッカとレイザーを始末させようとするが、ジョーダンは「知能は高いと言えないかもしれないが、使い道はある」と説得する。2匹の怪力を見たシュレッダーは、とりあえず生かしておくことにした。ラファエロはキーノと接触し、彼がフット団に潜入する様子を張り込む。キーノは武術の腕が認められ、最終テストに合格してフット団の本部へ案内される。ラファエロはキーノを尾行して本部に辿り着くが、タツに見つかってしまう。
フット団に包囲されたラファエロは、助けを呼ぶようキーノに伝えて逃がす。ラファエロは時間を稼いで戦うが、多勢に無勢でフット団に捕まった。キーノの知らせを受けたミケランジェロたちは深夜のフット団本部へ侵入し、縛られているラファエロを発見する。だが、それはシュレッダーの罠で、3匹も捕まってしまう。シュレッダーは3匹を殺そうとするが、スプリンターが助けに駆け付けた。シュレッダーはトッカとレイザーを差し向け、タートルズを襲わせた。
タートルズはジョーダンを解放し、マンホールを見つけて下水道へ逃げ込んだ。住処へ案内されたジョーダンは、15年前に起きた出来事をタートルズに語る。誕生した溶液は何種類もの廃棄物が混合し、何らかの原因で放射線に汚染されたため、突然変異を誘発する危険な物質であることが後の検査で判明した。容器を埋める作業中、誤って1本を下水に落とした。会社は不祥事を隠蔽するため、今になって容器の回収を始めたのだと彼は語る。ドナテロがショックを受けていると、スプリンターは「変身の原因に惑わされて、力を落としてはならん。大切なのは現実の価値だ」と説く。シュレッダーはタートルズをおびき寄せるため、トッカとレイザーを町へ解き放って暴れさせる…。

監督はマイケル・プレスマン、キャラクター創作はケヴィン・イーストマン&ピーター・レアード、脚本はトッド・W・ランジェン、製作はトーマス・K・グレイ&キム・ドーソン&デヴィッド・チャン、共同製作はテリー・モース、製作総指揮はレイモンド・チョウ、撮影はシェリー・ジョンソン、美術はロイ・フォージ・スミス、編集はジョン・ライト&スティーヴ・ミルコヴィッチ、衣装はドディー・シェパード、音楽はジョン・デュ・プレ。
出演はペイジ・ターコー、デヴィッド・ワーナー、アーニー・レイエスJr.、ケヴィン・クラッシュ、レイモンド・セラ、トシシロ・オバタ(小幡利城)、ミシェラン・シスチ、リーフ・ティルデン、ケン・トローム、マーク・カーソ、フランソワ・チャウ、マーク・ギンサー、カート・ブライアント、ジョセフ・アモデイ、ニック・デマリニス他。
声の出演はロビー・リスト、ブライアン・トッチ、ローリー・ファソ、アダム・カール、デヴィッド・マクラレン、マイケル・マコノヒー、フランク・ウェルカー。


アメコミを基にした1990年の映画『ミュータント・タートルズ』の続編。
なぜか2作目から邦題に「ニンジャ」の文字が加えられた。
脚本は前作のトッド・W・ランジェンが引き続いて担当。監督は『がんばれ!ベアーズ特訓中』のマイケル・プレスマン。
エイプリル役のジュディス・ホーグは降板し、これが映画デビューとなるペイジ・ターコーに交代。スプリンター役のケヴィン・クラッシュ(前作では声優のみ)、スターンズ署長役のレイモンド・セラ、タツ役のトシシロ・オバタ(小幡利城)は、前作からの続投。
スーツアクターではミケランジェロ役のミシェラン・シスチとドナテロ役のリーフ・ティルデンが続投。ラファエロはケン・トローム、レオナルドはマーク・カーソに交代。声優ではミケランジェロ役のロビー・リスト、レオナルド役のブライアン・トッチ、シュレッダー役のデヴィッド・マクラレン、タツ役のマイケル・マコノヒーが続投。ラファエロはローリー・ファソ、ドナテロはアダム・カールに交代。ペリーをデヴィッド・ワーナー、キーノをアーニー・レイエスJr.が演じている。

ちなみに序盤でタートルズも話している通り、前作でシュレッダーを倒したのは彼らではなくスプリンターだ。
タートルズはシュレッダーに歯が立たず、武器を放棄させられる始末だった。
しかも厳密に言えば、シュレッダーはスプリンターに倒されたわけでもない。自らの意志で、ビルの屋上から墜落することを選んだのだ。
子供向け映画だから、タートルズに人殺し(シュレッダーが人かどうかはともかく)をさせたくないという意向が働いたのかもしれないが、ともかく前作のラストはピリッとしない形になっていた。

そんな前作は、最初のアクションも「ラファエロがケイシーと戦う」というピリッとしないシーンになっていた。
そもそもタートルズの全員じゃなくて単独のアクションってのが間違いだし、おまけにフット団との対決ではない(冒頭でフット団を退治する時は姿が見えない状態なのだ)。
さらにラファエロが圧倒的な強さを余裕で誇示するのではなく、ケイシーに敗北するという情けない有様だった。
そんな前作の導入部と比較すると、今回は大幅に改善されている。
何しろ、ちゃんとタートルズが全員で戦うし、ちゃんと「フット団を圧倒して退治する」という形になっているからね。

このシリーズは子供向け映画として製作されているのだが、その意識は前作より増しているようだ。
どうやら前作が公開された時に「子供向けにしては武器の危険性が高すぎる」という抗議があったらしく、サイは使われなくなった。
その一方で、三節棍やヌンチャクを使うシーンは用意されている。
どっちにしろ忍者の武器ではないのだかが、日本と中国の混同ぶりなんて気にしていたら、このシリーズは見ていられない。
で、殺傷能力の高いサイを避けて別の武器にしたってことなんだろうけど、どっちでもいいわ。プラスの影響も無ければ、マイナスの影響も無い。

前作に引き続き、今回もスプリンターはタートルズに対して「お前たちは忍者だ。人目に付いてはならんという教えを忘れるな」と注意している。
でも、前作でエイプリルが住処へ運び込まれた時、それをスプリンターは認めちゃってるからね。そして彼女とケイシーには、普通に姿を見せていたからね。
なので、今さら「人目に付いてはならん」とか注意しても、まるで説得力が無い。
彼は「所詮は人と亀だ。分かり合えることは無い」と話すけど、それも前作でエイプリルとケイシーと交流した後なので、「今さら持ち込まれてもなあ」という感想しか沸かない要素だ。

フレディーは巨大なタンポポを見つけると、なぜかシュレッダーの元へ持ち帰る。「こんな物のためにお前を差し向けたのではない」とシュレッダーは言うが、その通りだ。
ところが、なぜかシュレッダーは「突然変異の原因を究明して武器に使おう」と言い出す。
その変異をもたらした溶液がタートルズとスプリンターを誕生させているわけだから、結果的には正解だったってことになる。っていうか、そこからの逆算で「シュレッダーが突然変異の原因を究明する」という手順を用意したのは明らかだ。
でも、その計算式が上手くないので、シュレッダーの行動が不自然になっている。

シュレッダーがフレディーを派遣したのは、エイプリルを監視してタートルズの居場所を突き止めるためだ。
だけど、それって簡単な作業だよね。何しろタートルズはエイプリルのアパートで居候しているわけで。
やたらと大量のピザを注文しているし、ずっとアパートを張り込んでいれば「そこが怪しい」ってのが一発で分かる。
っていうか、そん手間を掛けなくても、いっそエイプリルを拉致しようとすればタートルズは間違いなく現れるはずだし。
なので、撮影クルーとしてフレディーを潜入させるシュレッダーはアホでしかない。

キーノはエイプリルの部屋を訪れると、隠れていたタートルズを簡単に発見する。何しろ足先が見えているんだから、そりゃあ気付くわな。スプリンターは「人目に付いてはならんという教えを忘れるな」と説教していたけど、忍者としては完全に失格だろ。
前作の場合は、「エイプリルを介抱するために住処へ運び込み、姿を見せる」という形だったので、ミスをやらかしたわけではない。しかし今回は明らかに愚かなミスだからね。コメディーだから、ある程度は許容すべきなんだろうけど、ボンクラという印象は拭えない。
ただ、スプリンターはタートルズを叱ることも無く、エイプリルの時と同じようにキーノに対して「こういう事情で変身しまして」と語るのよね。
こいつも弟子たちと大して変わらんボンクラにしか見えんよ。もはやツッコミ待ちのボケなのかと言いたくなるぐらいだ。

シュレッダーはタートルズを倒すため、突然変異のミュータントを作ろうとする。だけど、前作でタートルズを圧倒していたんだし、自ら戦えばいいんじゃないのか。
あと、「最も凶暴と思われる生物」を選んで変身させたはずだが、その生物はカミツキガメと狼。いやいや、どう考えたって、それは違うだろ。
そりゃあ、例えばサイや象を入手したり実験装置に入れたりるのは難しいだろうけど、それにしても狼はともかくカミツキガメって。どういうセンスだよ。
しかも、すぐに始末しようとして、ジョーダンの説得で思い留まる始末。まるで期待していない刺客なんて用意して、どうすんのよ。そこは普通に「自信を持って差し向ける刺客」にしておいた方がいいだろ。
っていうか、まるで期待していなかったはずなのに、タートルズを襲う時は重用しているし、どないやねんと。

ラファエロはキーノがフット団のテストに合格する様子を見張り、本部の場所を突き止めている。
だけど、最初からキーノの協力なんて無くても、簡単に本部へ潜入できたんじゃないのか。
フット団が腕に覚えのある若者たちを集めている現場を張り込んで尾行すれば、同じように本部へ潜入できたはず。
っていうか、盗みを働くフット団を退治する時、その内の1人をわざと泳がせて尾行すれば、本部なんて簡単に突き止められるだろ。

シュレッダーはトッカとレイザーを町へ解き放って暴れさせる時、「タートルズをおびき寄せるため」と言っている。
なので、「そいつらを暴れさせていたら、町を救うためにタートルズが現れるはずだ」という考えなのかと思ったら、そうではない。夜中の内に退散し、翌朝になってフレディーをエイプリルの元へ差し向け、タートルズへのメッセージを伝えさせる。で、「指定の場所に来なければ、また2匹を暴れさせるぞ」と脅して、タートルズを建築現場へ呼び出すのだ。
いやいや、それならトッカとレイザーを暴れさせる意味って無いよね。いきなり脅しのメッセージを伝えれば済むよね。
っていうかさ、どうせタートルズはシュレッダーとフット団の壊滅を目標にしているわけで、わざわざ脅さなくても、出て来るよう要求すれば来るんじゃないのか。

終盤、タートルズは指定された建築現場へ乗り込んで戦うが、ラファエロがトッカに投げ飛ばされてドアを突き破ると、そこは大勢の若者が踊っている水上ディスコ。
あまりにも強引な場面転換だが、そこはゲストのVanilla Ice & Earthquakeを登場させるために無理をしているのだ。
で、ディスコのステージで踊っていたVanilla Iceは、タートルズが飛び込むと驚くが、戦いが始まる中で落ち着き払った態度になり、ノリノリで『Ninja Rap』を歌い始める。それに合わせて、客もノリノリで踊り始める。
Vanilla Ice & Earthquakeと観客が盛り上がる中、こっちの気持ちと格闘アクションは全く盛り上がらない。そしてトッカとレイザーを簡単に退治したタートルズは、ノリノリで踊り始める始末だ。

シュレッダーが現れてスーパー・シュレッダーに変身するので、ようやくマジな戦いに突入するのかと思いきや、そんなことは無い。
それどころか、そもそも戦闘シーンさえ用意されていない。シュレッダーは暴れて足場を破壊し、その下敷きになって自滅するのだ。
変身する前より弱体化してんじゃねえか。
登場してから自滅するまで、2分も経っていない。
まるでクライマックスらしい盛り上がりの無いまま、映画は終幕へと至るのであった。

(観賞日:2016年12月18日)

 

*ポンコツ映画愛護協会