『モンスターズ/新種襲来』:2014、イギリス

デトロイトに暮らすマイケル・パークス二等兵は在軍して2年になるが、まだ派兵経験は無い。兵士を望んだわけではないが、他に仕事も無いので彼は入隊した。地球を破壊するモンスターを一掃するため空爆が実施されたが、民間人に犠牲が出たことを受けて武装勢力の勢いが増した。それを排除すべく、部隊が配備された。在軍17年になるノア・フレイター二等軍曹は危険地帯に潜入し、これまでに多くの武装勢力を抹殺してきた。
ずっとデトロイトを出たがっていたマイケルは、兄貴分のフランキー・マグワイア二等兵や妻が出産したばかりのショーン・ウィリアムズ二等兵、幼馴染のカール・インケラール特技兵と共に危険地帯へ出征することになった。出発の前日に彼らは街へ繰り出し、バーで酒を飲んだりドラッグをキメて女と遊んだりする。軍用ヘリで危険地帯に向かったマイケルたちは、大量のモンスターがいる砂漠を通過してレネゲード基地に到着した。
モンスターを空爆する音が聞こえる中、フレイターはマイケルたちに「これが日常だ。感情に動かされるな」と忠告した。フレイターから後を任されたフォレスト三等軍曹は、「主な仕事は武装勢力を止めることだ。つまり通行禁止区域の偵察と、地域住民との関係だ」と説明した。町へパトロールに出たマイケルたちは不安を抱きつつも、住民と積極的に交流した。夜になって通行禁止区域を偵察した彼らは不審な男を見つけるが、農地の所有者だった。男は家族を殺されており、米軍を非難して激しく喚き散らした。そこへモンスターが出現したため、フレイターたちは発砲して退治した。
基地に戻ったマイケルたちは、フレイターから「なぜ民間人に気付かなかった?自爆テロの犯人かもしれないんだぞ。お前らのために死ぬのはゴメンだ」と叱責された。フレイターは妻に電話を掛け、幼い娘の声を聞かせてもらった。マイケルは赴任から3ヶ月10日が経過し、パトロールは42回で殺したモンスターは1匹だった。そんな中、アルテア部隊との通信が途絶えたため、フレイターの部隊が救出へ向かうことになる。アルテアは危険地帯の深部であり、空爆やテロ活動も頻繁な地域だった。
行方不明の部隊が最後に確認されたのはアルテア村であり、フレイターたちはヘリと車を使って現場へ向かう。その途中でモンスターと遭遇した部隊は、攻撃して退治した。その直後、部隊は武装勢力に襲われ、フォレストと部下のライアン・コンウェイが即死した。さらにショーンも両足を失い、カールが必死で応急手当てを施すが死亡した。フレイターは援軍を要請し、無人機が来たことで部隊は武装勢力から逃れて移動できた。
フレイターたちは態勢を整えようとするが、すぐに武装勢力が攻撃してきた。カールは死亡し、フランキーも銃弾を浴びて深手を負った。武装勢力が迫るのを見たフレイターはマイケルに「俺と同じことをしろ」と指示し、両手を挙げて降伏の意志を見せた。フレイターたちは武装勢力に捕まり、頭から袋を被せられてアジトへ連行された。3人は椅子に拘束され、フランキーは衰弱して死亡した。フランキーに必死で呼び掛けていたマイケルは、バランスを崩して椅子ごと倒れ込んだ。
フレイターは隙を見て見張り役を始末し、銃を奪った。彼はマイケルに「裏にバイクが2台ある。そこで待て」と指示し、監禁されていた部屋を出た。アジトを抜け出したマイケルは、モンスターを目撃した。フレイターが武装勢力を一掃する銃声を聞きながら、マイケルは涙を流して現実逃避した。フレイターはマイケルを連れて、バイクでアジトから逃亡する。彼はショック状態で生気を失っているマイケルに、「救出地点まで90キロほどだ。行方不明の兵士を見つけて帰る。俺の言う通りにすればいい」と述べた…。

監督はトム・グリーン、原案はジェシー・アトラス&ブレント・ボナコーソ&ジェイ・バス、脚本はジェイ・バス&トム・グリーン、製作はアラン・ニブロ&ジェームズ・リチャードソン&ローリー・エイトキン&ベン・ピュー、製作総指揮はギャレス・エドワーズ&ルパート・プレストン&ニック・ラヴ&ナイジェル・ウィリアムズ&デヴィッド・ピュー&スクート・マクネイリー、撮影はクリストファー・ロス、美術はクリスチャン・ミルステッド、編集はリチャード・グレアム、衣装はライザ・ブレイシー、VFXスーパーバイザーはセバスチャン・バーカー、クリーチャー・デザインはクリスチャン・ブル、特殊効果監修はデヴィッド・ハリス、音楽はニール・ダヴィッジ、音楽監修はロル・ハモンド。
出演はジョニー・ハリス、サム・キーリー、ジョー・デンプシー、カイル・ソーラー、ニコラス・ピノック、パーカー・ソーヤーズ、フィリップ・アルディッティー、ソフィア・ブテラ、ミカエラ・コール、ハッサン・シェア、ウリエル・エミル・ポラック、ジェシー・ナギー、ワエル・バグダーディー、ジャクリーン・ヒックス、アマンダ・キャスパー、ドナ=マリー・フォスター、オーランド・イーバンクス、トーニャ・モス=ロバーツ、ビリー・R・ロバーツ他。


ギャレス・エドワーズが監督&脚本&撮影&美術&視覚効果を担当した2010年の映画『モンスターズ/地球外生命体』の続編。
ギャレス・エドワーズは製作総指揮に回り、TVドラマ『Misfits/ミスフィッツ - 俺たちエスパー!』のトム・グリーンが監督を務めている。
脚本は『ダイナソー・プロジェクト』のジェイ・バスとトム・グリーンによる共同。
フレイターをジョニー・ハリス、マイケルをサム・キーリー、フランキーをジョー・デンプシー、カールをカイル・ソーラー、フォレストをニコラス・ピノック、ショーンをパーカー・ソーヤーズが演じている。

映画はマイケルのナレーションによって進行し、導入部では「マイケルが生まれ故郷のデトロイトをクソだと感じて辟易しており、早く出たいと思っている」ってことが語られる。
その後には、出征を控えたマイケルと仲間たちがバカ騒ぎをする様子が描かれる。危険地帯に移動するとジョークを飛ばしながら喋る様子や、地元住民の視線に不安を覚えながらも積極的にコミニュケーションを取ろうとする様子が描かれる。そして、もちろん戦地で武装勢力と戦う様子も描かれる。
ザックリと言うならば、これは「故郷での暮らしに閉塞感を抱いていた若者が軽い気持ちで出征し、過酷な体験を重ねることで戦場の現実に打ちのめされる」というドラマである。
こう書いただけで、勘のいい人であれば、1つの疑問が浮かんだはずだ。
「モンスターの存在意義は、どこにあるのか?」という疑問である。
その答えは明白で、「存在意義など無い」ってことになる。

マイケルたちがレネゲード基地へ行く途中でモンスターの群れを目撃するが、そのシーンをカットしてもストーリー進行には全く支障が無い。偵察中やアルテア村へ向かう途中でモンスターと戦うシーンがあるが、これまたカットしても問題は無い。武装勢力のアジトを脱出したマイケルがモンスターを目撃するシーンも、特に意味は無い。
むしろモンスターの存在なんて全て排除し、普通に「戦争ドラマ」として描いた方が絶対にいいと断言できる。
ただし誤解の無いよう説明しておくと、そのように作れば面白くなるとは、微塵も思わない。
ただ、無意味な物が無くなるので、スッキリした構成になる分、遥かにマシってことだ。

前作の『モンスターズ/地球外生命体』でも、「モンスターが地球を襲って来た」という設定は、あくまでも背景に過ぎなかった。作品として描きたいのは、主役2人の恋愛劇だった。
ものすごく大まかに言うならば、ある意味では「セカイ系」みたいなことをやろうとしていたわけだ。
正直なところ、そんなロマンスが面白いとは全く思わなかったし、メインのキャラ2人にも魅力を感じられなかった。
しかし、その仕掛けが受けたのか、低予算ながらも高い評価を受け、世界的にヒットした。

前作のヒットを受けて続編が作られることになったわけだが、「モンスターは背景」という仕掛けは踏襲されている。
そこをシリーズのパターンとして引き継いだ上で、「前回は恋愛劇だったので、今回は戦争物」というトコロで変化を与えているわけだ。
ただ、今回は武装勢力との戦闘があることで、「モンスター・アクション」との距離が前作よりも圧倒的に近くなっている。
それによって、「モンスターと戦う話をメインにしろよ。そうじゃないなら、モンスターなんか出すなよ」という気持ちが強く湧くことに繋がっている。

そもそも、基本設定に大きな無理を感じるのだ。
「大量のモンスターがワラワラと出現する地域で、そいつらを排除することよりも、米軍と武装勢力が互いを排除しようと躍起になって戦っている」ってのが、愚の骨頂だろうと。米軍にしろ武装勢力にしろ、そんなことで必死になっている場合じゃないだろうと。
町の住民が普通に暮らしているけど、それも不自然極まりないし。
世界観のディティールを丁寧に構築していないから、そこにリアルな手触りや説得力が感じられないのよね。

モンスターを背景にする中で米軍と武装勢力の戦いをメインに据えたのは、ゾンビ映画みたいに「最も恐ろしいのは人間」というテーマを掲げようとしているのかもしれない。
しかしが実際のところは「人間の恐ろしさ」いう印象など全く感じず、バカバカしさが全てを塗り潰してしまうぞ。
現実の世界情勢を投影しようとする意識も透けて見えるが、「だとしても普通の戦争映画として撮れよ」と言いたくなる。
モンスターが邪魔なノイズでしかないし、背景としての仕掛けさえ空回りしてるんだから。

終盤に入り、マイケルが死に掛けている少年を見つけて助けようとするが、モンスターとは何の関係も無い。
マイケルとフレイターが村人に歓迎されるのも、マイケルが村の娘と仲良くなるのも、これまたモンスターとは何の関係も無い。
行方不明だった兵士が全滅しているとフレイターが知るのも、正気を失った彼が民間人に発砲するのも、止めようとしたマイケルが撃つのも、やはりモンスターとは何の関係も無い。
終盤の展開ですら、モンスターの存在を完全に除外しても成立してしまうのだ。

根本的な問題として、「なぜ続編なんて作ろうとしたのか」と言いたくなるんだよね。
いや、もちろん前作がヒットしたから、まだ稼げるだろうと考えたとは容易に推察できるのよ。
だけど『モンスターズ/地球外生命体』で使われた仕掛けってのは、1回きりだから受けるアイデアであって。2度もやるようなことじゃないでしょ。
実際、1作目に比べると製作費は桁違いに増額されているけど、作品の評価はガクンと落ちたし、興行的にも失敗したし。

(観賞日:2018年4月1日)

 

*ポンコツ映画愛護協会