『モンスターハンター』:2020、アメリカ&ドイツ&日本&中国&南アフリカ&カナダ
新世界。夜の砂漠を進む帆船が、地中から出現した怪物のディアブロスに襲われた。大団長は舵を取って何とか突破するが、ハンターが振り落とされて置き去りになった。我々の世界。国連の共同治安活動に従事するアルテミスはB班から「嵐が接近して視界がゼロだ。何かいる」と支援要請の無線を受け、部下のリンク、ダッシュ、マーシャル、スティーラー、アックスを引き連れて現場に向かった。するとバギーと装甲車の痕跡は消えており、巨大な嵐が出現してアルテミスたちは飲み込まれた。
嵐が去ってアルテミスたちが気付くと、知らない砂漠に移動していた。GPSやコンパスは使えず、無線は反応が無かった。近くにはB班のバギーと装甲車が黒焦げで放置されており、交戦の形跡が残っていた。太陽の位置を頼りに基地へ戻ろうとしたアルテミスたちは、巨大な恐竜の骨を発見した。アルテミスたちを遠くから観察していたハンターは矢を放ち、骨に命中してチョークの粉が舞った。すると地中からディアブロスが出現し、アルテミスたちに襲い掛かった。
アックスとスティーラーが命を落とし、アルテミスたちは洞窟へ退避した。ハンターは手榴弾を取り付けた矢を放ってディアブロスを攻撃するが、ダメージは与えられなかった。ディアブロスは洞窟に入ることが出来ず、諦めて地中に姿を消した。アルテミスは洞窟に住む怪物のネルスキュラに襲われ、脈拍が停止した。リンクたちは彼女の救助を断念し、洞窟の外へ逃亡した。アルテミスが意識を取り戻すと、ネルスキュラの巣で捕獲されていた。彼女の近くでは、ダッシュとマーシャルの遺体が吊るされていた。
巣から抜け出したアルテミスは、毒で衰弱しているリンクと合流した。リンクの体にはネルスキュラの卵が産み付けられており、孵化が始まった。リンクはネルスキュラに襲われて死亡し、アルテミスは何とか地上へ脱出した。座礁した帆船を見つけた彼女が調べていると、ハンターが現れた。ハンターは言葉の通じないアルテミスと格闘して両手を縛り、住処にしている洞穴へ連行した。アルテミスは隙を見て拘束を解き、ハンターに反撃した。すぐにハンターも応戦し、2人は洞穴の外へ出た。
ハンターがネルスキュラの巣に落下しそうになると、アルテミスは彼を助けた。アルテミスは身振りぶりで敵意が無いことを示し、彼にチョコレートを与えた。途端にハンターは心を許し、アルテミスに水を差し出した。ハンターは横転している装甲車を指差し、そこへ行くことを提案した。アルテミスは彼の意図を理解し、装甲車に武器があると告げた。ディアブロスが出現すると、ハンターはネルスキュラの毒で倒すことを持ち掛けた。ネルスキュラを捕獲するため、アルテミスが囮になった。
ハンターはネルスキュラのハサミを切り落とし、アルテミスが回収した。アルテミスは「今度はアンタが囮よ」と言い、ハンターと共に逃亡した。2人は帆船へ行き、武器を準備した。アルテミスはハンターから剣の使い方を教わり、擦り合わせると炎が出ることを知った。2人はディアブロスを誘い出し、今回はハンターが囮を引き受けた。毒矢を放った彼は激しく弾き飛ばされて意識を失うが、アルテミスがディアブロスを倒した。
アルテミスはソリを作ってハンターを運び、サバイバルテントで砂嵐をやり過ごした。アルテミスはハンターに応急手当を施し、砂嵐が止んでから移動した。2人がオアシスに辿り着くと、アプケロスの群れがいた。ハンターはアルテミスに、アプケロスが草食だと教えた。ハンターは川から飛び出したガレオスを殺し、焼いて食事にした。2人が森で野営していると火事が発生し、リオレウスが飛来した。アプケロスの群れが突進してきたので、アルテミスとハンターは慌てて身をかわした。
そこへ大団長が現れ、剣で炎を作ってアプケロスの群れが避ける道を作った。それを見たアルテミスは、彼の真似をした。ハンターは崖に追い込まれるが、仲間のハンドラー、リア、エイデンが救出に来た。アルテミスが大団長に「助かった」と告げると、「礼は早い」と殴打されて意識を失った。アルテミスが目を覚ますと、大団長の帆船で檻に入れられていた。アルテミスは檻から抜け出し、厨房で料理をする猫族のアイルーと遭遇した。
ハンターが来てアルテミスの両手の拘束を解き、大団長の元へ案内した。大団長が「誤解だと諭された」と言うと、アルテミスは「なぜ監禁した?何を恐れてる?」と質問した。大団長が「お前の世界だ。ここに影響を与える。お前が初めてではない。昔、ここに来た」と説明すると、アルテミスは「どうやって来た?」と尋ねる。大団長は古代文明の遺跡である天廊の存在を教え、「高度な技術を秘めており、古代人は2つの世界を行き来した」と語った。大団長はアルテミスに、「古代人は天廊の番人として、リオレウスを使った。不死身の竜だが、火を吐く直前、無防備になる」と話す。討伐に協力するなら帰還を手伝う」と言われたアルテミスは、同行を承諾した…。脚本&監督はポール・W・S・アンダーソン、製作はジェレミー・ボルト&ポール・W・S・アンダーソン&デニス・ベラルディー&ロバート・クルツァー&マルティン・モスコヴィッツ、製作総指揮はヒロ・マツオカ&エドワード・チェン&ハワード・チェン、製作協力は辻本良三&藤岡要撮影はグレン・マクファーソン、美術はエドワード・トーマス、編集はドゥービー・ホワイト、衣装はダニエル・ノックス、視覚効果監修はデニス・ベラルディー、音楽はポール・ハスリンジャー。
出演はミラ・ジョヴォヴィッチ、トニー・ジャー、ロン・パールマン、ティップ・“T.I.”・ハリス、ミーガン・グッド、ディエゴ・ボネータ、ジョシュ・ヘルマン、ジン・アウヨン、山崎紘菜、ナンダ・コスタ、ヤニク・シューマン、ニック・ラセンティー、クライド・バーニング、ポール・ハンプシャー、シェレイン・ベネット、バート・フーチェ、ポープ・ジェロッド、アーロン・ビールナー他。
カプコンの同名アクションゲームをモチーフにした作品。
脚本&監督は『ポンペイ』『バイオハザード:ザ・ファイナル』のポール・W・S・アンダーソン。
アルテミスをミラ・ジョヴォヴィッチ、ハンターをトニー・ジャー、大団長をロン・パールマン、リンクをティップ・“T.I.”・ハリス、ダッシュをミーガン・グッド、マーシャルをディエゴ・ボネータ、スティーラーをジョシュ・ヘルマン、アックスをジン・アウヨン、ハンドラーを山崎紘菜が演じている。『バイオハザード』シリーズでもそうだったけど、ポール・W・S・アンダーソンってビデオゲームが好きで自ら映画化を企画している くせに、ビデオゲームの映画化に対する考え方を根本的に間違えているような気がしてならない。
「国連セキュリティー・チームのレンジャーが新世界に迷い込む」という導入からして、それは『モンハン』じゃないという気がするぞ。
ポール・W・S・アンダーソン監督としては、はモンハンを知らない人を映画に引き入れる狙いだったらしい。でも大抵のファンタジー映画やSF映画の主人公は、その世界の住人であって、「我々の世界」から別世界に迷い込むわけではない。
だからって、そういう映画が観客を引き込めないかというと、そうとは限らない。結局はやり方の問題であって、工夫すればどうとでも出来るはずだ。たぶんモンハンが好きな人って、単に「モンスターを狩る」という作業だけが好きなんじゃなくて、その世界での生活も好きなケースが少なくないんじゃないかと思うんだよね。
でも、アルテミスが我々の世界から新世界へ迷い込むという形を取ったせいで、「新世界の住人の生活風景」ってのは、ほとんど描かれなくなっている。
我々の世界の住人から始めても、すぐに新世界の住人と知り合って町の人々と交流するターンに入れば、生活風景を描く時間は充分に取れる。
でも「砂漠で怪物に追われて戦って」ということが長く続き、新世界について知識を得たり、生活に順応したりするための時間は全く無い。我々の世界の住人を主人公に据えるにしても、新世界に迷い込むのって、そいつだけで充分だと思うのよ。
そうすれば早い段階で新世界の住人と出会ったり、町を見つけたり、人々と交流したり、生活に順応したりという手順に入ることも出来たはずだし。
どうせ他の面々は『13日の金曜日』シリーズの若者たちと同様で、ただの殺され要員なんだし。そいつらを使って怪物の脅威をアピールする狙いはあったんだろうけど、それは新世界の住人に任せればいいし。
あと、序盤からそこまで怪物の脅威や恐怖を描く必要が本当にあるのかという部分からして疑問があるし。トニー・ジャーを起用したからには、格闘アクションシーンを用意するのは当然だし、それは歓迎する。でもミラ・ジョヴォヴィッチとの格闘とか、死ぬほど要らないわ。
しかも、帆船の戦いはすぐに終わるのに、洞穴に戻ってから仕切り直し、またダラダラと続けるのよね。そういうの、モンハンでも何でもないし。
モンスターが相手のバトルだと、素手で戦う状況を作るのは難しいだろう。それはモンハンの世界観を考えても、ちょっと違うだろうしね。
でも、剣を使った格闘アクションは普通に描けるはずでしょ。それなのにハンターの主要な武器が弓で遠隔攻撃が中心って、どういうつもりなのかと。アルテミスとハンターがネルスキュラの毒を使ってディアブロスと戦う前、帆船で武器や仕掛けを作ったり、剣の使い方を学んだりする様子が描かれる。
でも、そのタイミングで「戦いに向けて盛り上がろう」という5分ぐらいのダイジェストを入れるのは、なんか違う気がするぞ。
そういうのって、最終決戦に向けて挟むような手順でしょ。でも実際のクライマックスは遥か先であり、中ボスとの戦いなわけで。なので、さっさとディアブロスとの戦いに入ればいいんじゃないかと。
「剣を擦ると炎が出る」ってのをアルテミスが知るけど、それはディアブロスとの戦いで使わないから「何だかなあ」と思っちゃうし。
後でモンスターの群れに自分を除けさせるために使うシーンはあるけど、「そこじゃ無いわ」と言いたくなるし。根本的な問題として、ずっとアルテミスとハンターの2人だけでモンスターと戦っているのが、ものすごく寂しいのよね。
あと1人か2人は増やして、パーティーを組んで行動してほしいのよ。予算が足りないとか、そういう言い訳は全く通用しない規模の映画だろうに。
天廊へ向かうシーンでは一気に仲間が増えるけど、大団長を除く面々はキャラ描写など皆無な「その他大勢」に過ぎないし。
台詞もゼロで、何の見せ場も与えられないまま、あっさりと全滅するし。ハンドラーとして山崎紘菜が出演しているが、これは「日本のゲームが原作だから、日本向けのサービスとして日本人を起用してみた」というだけである。
『バイオハザードIV アフターライフ』の中島美嘉や『バイオハザード ザ・ファイナル』のローラと同じで、特に意味のある役柄ではない。
それなりに出番はあるが、台詞はゼロだし、エキストラに毛が生えたような存在と言ってもいい。
ただし、それは山崎紘菜に限らず、帆船のメンバーは大団長以外の全員がそうである。終盤、天廊でリオレウスに吹き飛ばされたアルテミスは、「我々の世界」へ戻る。そこへリオレウスも出現し、戦車や輸送ヘリコプターを次々に破壊する。
もうさ、そういうのってモンハンでも何でもないでしょ。
「ファンタジー世界の怪物が我々の文明社会に襲来する」という話を描きたいなら、それは『モンスターハンター』じゃなくて別の映画でやればいい。
最後は話を完結させずに「オレたた」の形で続編に繋げようとしているけど、そんなことよりも他に考えるべきことがあっただろ。(観賞日:2023年9月19日)