『ミッシング・リンク 英国紳士と秘密の相棒』:2019、アメリカ

ライオネル・フロスト卿は助手のリントを伴い、ネス湖に来ていた。その目的はネッシーが実在する証拠を掴み、貴族クラブの連中の鼻を明かすことにあった。作戦通りにネッシーが出現し、フロストは写真を撮った。しかしネッシーにボートを弾き飛ばされ、カメラが故障してしまった。ネッシーに食べられそうになったリントは酷い扱いに我慢できず、フロストの元を去った。届いた手紙を確認したフロストは、「ビッグフットと出会える情報を教える」という文面に目を留めた。その手紙には、ワシントン州のオールドケンプ川沿いに進めばビッグフットに会えると書かれていた。
フロストは会員制の貴族クラブ「探検家と紳士の会」へ行き、出入り禁止になっているのに堂々と乗り込んだ。彼は主催者であるピゴット=ダンスビー卿に対し、ビッグフットを探し当てると宣言した。見つけたら会員にしてくれとフロストが要求すると、ダンスビーは鼻で笑った。フロストは「貴方は間違ってる」と言い、賭けを持ち掛けた。「証拠を持ち帰れば間違いを認め、会員にする」と彼が要求すると、他の会員がいたこともあってダンスビーは承諾した。
ダンスビーは邪魔者であるフロストを排除するため、賞金稼ぎのウィラード・ステンクに殺害を命じた。フロストはオールドケンプ川沿いを進み、ビッグフットに出会った。ビッグフットは人間の言葉を話し、自分が手紙を送ったのだと明かす。彼は力を貸してほしくて、新聞で存在を知ったフロストを呼んだのだ。ビッグフットは誰もいない場所での生活に寂しさを覚える中、新聞でヒマラヤに住むイエティーの存在を知った。彼はイエティーが仲間だと確信し、一緒に暮らしたいのでヒマラヤへ連れて行ってほしいとフロストに頼んだ。
フロストはビッグフットの頼みを断り、「私が来たのは君の存在の証拠を得るためだ」と述べた。証拠として体毛や歯、爪、糞が欲しいと彼が言うと、ビッグフットは全て提供すると約束した。そこでフロストは頼みを聞き入れ、取引することにした。ビッグフットには名前が無かったので、フロストは元助手のリントをもじってリンクと呼ぶことにした。
フロストはリンクの目的を果たすため、イエティーの追跡に人生を捧げたアルダス・フォートライトの遺品である地図を手に入れに行くと話す。未亡人のアデリーナは、フロストの元恋人だった。酒場に立ち寄ったフロストの前に、ステンクと手下たちが現れた。フロストがビッグフットの存在を見せ付けると、ステンクは2人とも殺そうとする。フロストとビッグフットはステンク一味を撃退し、店を去った。ステンクからの電報でビッグフットが実在することを知らされたダンスビーは激高し、助手のコリックに「フロストを追い続けろと返事を出せ」と指示した。
フロストはフォートライト邸に押し掛け、アデリーナの隙を見て地図を見つけ出そうとする。アデリーナが友人だったアルダスの葬儀にも顔を見せなかったことを咎めると、フロストは適当に誤魔化した。彼は金庫に地図があると確信し、アデリーナを口説いて手に入れようと目論んだ。しかし狙いはアデリーナに露呈しており、怒りを買って追い出された。フロストとリンクは深夜に邸宅に忍び込み、地図を盗む。彼らはアデリーナに見つかり、屋敷から逃亡した。
フロストとリンクが汽車に乗ろうとすると、アデリーナが駅に現れた。彼女は拳銃を突き付け、地図を奪い返した。そこへステンクが来て発砲すると、アデリーナは怒って反撃した。彼女はフロストに、自分もヒマラヤへ行くと告げた。フロストは汽車に乗ったように偽装してステンクを撒き、別のルートを使うことにした。彼はリンクとアデリーナに、「ニューヨークからロンドンに渡り、鉄道で欧州を横断してインドからヒマラヤまで歩く」という計画を説明した。
フロストはリンクに、目的地が伝説の地と言われるシャングリラだと伝えた。アルダスはシャングリラがイエティーの住む場所だと確信し、そこへの道を知るガムーというシェルパの存在を突き止めていた。ニューヨークから船に乗った時、フロストはアデリーナからリンクの扱いが邪険だと非難された。悩みがある様子のリンクに話し掛けるよう促され、フロストは面倒に思いながらも従った。リンクが自分だけの名前に対する憧れを口にすると、フロストは好きな名前を付けるよう勧めた。そこでフロストは、自分を見ても逃げずに微笑んだ採掘者と同じ「スーザン」と名乗ることにした。
船に隠れていたステンクはアデリーナに銃を突き付け、フロストを脅そうとする。アデリーナは抵抗し、フロストがステンクに襲い掛かる。スーザンはフロストに加勢しようとするが、誤ってアデリーナを突き飛ばしてしまった。アデリーナが海に落ちそうになったので、彼は慌てて助けた。フロストたちは救命ボートを使い、船から脱出した。港で待っていたダンスピーはステンクから報告を受け、どんな手を使ってもいいからフロストを止めろと命じた。
ヒマラヤの村に入ったフロストたちは、ガムーの孫娘であるアマと出会った。ガムーの家に案内されたフロストは、シャングリラへの案内を要請した。ガムーは「人間が足を踏み入れてはいけない場所だ」と断るが、スーザンがビッグフットだと知るとアマに道案内を指示した。フロストたちが出発した後、ダンスビーの一味がガムーの家に乗り込んだ。ダンスビーはアマの赤ん坊を人質に取り、シャングリラの場所をガムーに白状させた。
フロストたちはアマと別れ、険しい雪山を進んだ。彼らはイエティーの一団と遭遇するが、槍を突き付けられた。フロストたちは宮殿に連行され、イエティーの長老であるドーラと対面した。ここに来た理由をドーラが質問すると、スーザンが「ここに僕の居場所があるかと思って」と明るく答えた。ドーラは「お前の場所は無い」と冷淡に言い放ち、ここが聖なる谷であることを説明した。ドーラは谷の秘密を人間から守るため、フロストたちを失意の谷に落とした…。

監督はクリス・バトラー、脚本はクリス・バトラー、製作はトラヴィス・ナイト&アリアンヌ・サトナー、製作総指揮はステイシー・スチュアート、製作協力はジョセリン・パスカル、撮影はクリス・ピーターソン、プロダクション・デザイナーはネルソン・ロウリー、編集はスティーヴン・パーキンス、衣装はデボラ・クック、視覚効果監修はスティーヴ・エマーソン、キャラクター・デザイナーはクリス・バトラー、アニメーション・パーバイザーはブラッド・シフ、音楽はカーター・バーウェル、主題歌はウォルター・マーティン。
声の出演はヒュー・ジャックマン、ゾーイ・サルダナ、ザック・ガリフィアナキス、デヴィッド・ウォリアムス、スティーヴン・フライ、マット・ルーカス、ティモシー・オリファント、アムリタ・アチャリア、チン・ヴァルデス=アラン、エマ・トンプソン、ハンフリー・カー、アダム・ゴドリー、ニール・ディクソン、イアン・ラスキン、マシュー・ウルフ、ダレン・リチャードソン、アラン・シェアーマン、ジャック・ブレシング、リチャード・ミロ、ジャスウォント・デヴ・シュレスタ他。


『パラノーマン ブライス・ホローの謎』のクリス・バトラーが監督&脚本を務めたストップモーション・アニメーション映画。
フロストの声をヒュー・ジャックマン、アデリーナをゾーイ・サルダナ、スーザンをザック・ガリフィアナキス、リントをデヴィッド・ウォリアムス、ダンスビーをスティーヴン・フライ、コリックをマット・ルーカス、ステンクをティモシー・オリファント、アマをアムリタ・アチャリア、ガムーをチン・ヴァルデス=アラン、ドーラをエマ・トンプソンが担当している。

フロストは高慢で傲慢、ふてぶてしくて無神経な男だ。紳士としての気品に欠けており、ただ偉そうなだけの人間だ。
彼はリントを同等に扱わず、都合良く利用する。リントがネッシーに食われても、まるで気にする様子は無い。結果的には助けているが、心配する様子は皆無。
フロストはスーザンを見下しており、邪険に扱う。
スーザンが孤独を寂しがる心の内を漏らしても同情心は皆無で、ただ自分の目的を果たすための取引として依頼を引き受ける。

フロストはアデリーナの隙を見て、地図を見つけ出そうとする。金庫にあることを確信すると、今度は口説いて手に目論む。その作戦がバレても悪びれず、今度は金を払って手に入れようとする。
フロストは手柄と名声を得ることしか、眼中に無い。彼は英国中の人々に尊敬される偉大な探検家として、後世に名を残したいのだ。
とは言え、主人公が自己中心的だったり傲慢だったりってのは、子供向け映画でも無いわけじゃない。問題は、そこから反省や改心があるのか、その経緯がどのように描かれるかってことだ。
そこに本作品の大きな問題があるのだが、それについては後述する。

フロストは貴族クラブから出入り禁止にされて、鼻を明かしたいと思っている。
しかし、証拠を見つけたら会員にしてほしいとも要求している。貴族クラブに腹を立てて反発しているのなら、そいつらの仲間になりたいってのは、ちょっと引っ掛かる。
ただ、そこは「愚かしい権威主義に毒されている」と解釈すべきなのかもしれない。
それなら筋は通るけど、ちょっと分かりにくいかな。ファミリー映画であることを考えても、そこはいかがなものかと。

ただ、それよりも遥かに気になることがあって、それはスーザンからの手紙を読んだフロストが、すぐさま貴族クラブへ乗り込むシーン。
彼は堂々たる態度で「ビッグフットの証拠を見つけ出す」と宣言するが、手紙の内容が真実だと確信できなきゃ、そんな大胆な行動は取れないはずで。
だけど真実だと確信できる根拠なんて、どこにも見当たらないでしょ。
見知らぬ相手から「ここに行けばビッグフットに会える」と書かれた手紙が届いただけであり、むしろ眉唾だと怪しんでもおかしくないわけで。

っていうか、先にビッグフットの証拠を見つけてから、貴族クラブに乗り込めばいいだけでしょ。何の証拠も見つかっておらず、見つけ出せる確証も無い状態で「必ず見つけ出すから会員にしてくれ」と賭けを持ち掛けるのは、行動として引っ掛かるよ。
一方、ダンスビーがフロストを殺そうとするのも、これまた不可解だ。
彼はビッグフットの存在なんて全く信じていないわけで、だったら放っておけばいいでしょ。今までだって、フロストは自信満々に宣言しながら、ずっと証拠は持ち帰っていないわけで。
殺害指令を出すのは、フロストが証拠を発見したという情報が入ってからでもいいはずで。
このタイミングでフロストを殺害しようと目論むのなら、今まで無視して放置していたのは何だったのかと。

フロストは酒場に入る時、スーザンの正体がバレないように頭からスッポリと毛布を被らせる。
ところがステンクが現れると、スーザンの姿を見せて得意げな態度を示す。すぐに「しまった」と我に返り、後悔することも無い。
その行動には引っ掛かるが、それよりもステンクが大して驚かず、客も無反応ってのは大いに引っ掛かる。
ビッグフットが目の前に現れたのに、誰も騒いだり逃げ出したりしないんだよね。

それはアデリーナも同じで、スーザンの正体を知っても平然としている。それは船員も同様だ。
そういうトコでリアクションを取らせずに済ませるのは、どういうつもりなのかと。
あと、酒場の客や船員がビッグフットを目撃しているのに、その情報が大きなニュースとして報道されないのも、なぜなのか分からない。
もはやダンスピーがスーザンを殺しても無駄なぐらい、世界的な大ニュースになっても不思議じゃないのに。

前述したように、フロストは分かりやすく嫌な奴である。「そんな男がスーザンと触れ合う中、少しずつ心境が変化していく」という展開があるのかと思いきや、そんなことは全く無い。
そういう「嫌な奴が善意に目覚めて云々」ってのは良くあるパターンだけど、そこは定番でも別に構わないと思うのよね。
だけどフロストは、ずっと「手柄と名声のために」という行動理念が全くブレない。スーザンと一緒に過ごす中で、気持ちか揺れ動いたり葛藤したりすることは無い。
なので、アデリーナのフロストに対する反発が消えて焼け木杭に火が付く展開には、「なんでだよ」と言いたくなる。

失意の谷に落とされたフロストは、「これじゃあ、またクラブの笑い者だ」と漏らす。アデリーナは腹を立て、夢を打ち砕かれたスーザンのことを全く気にしないことを批判する。
この時点でも、まだフロストは自分のことしか考えていないのだ。
そこまでにフロストの揺らぎや変化があって、その上で「だけど手柄や名声を求める気持ちも捨て切れずにいたので、思わずそんな言葉が口を突いて出た」ということなら、その嘆きも分からんではない。だけど、ずっと「手柄と名声のため」ってのを貫いた末での発言だからね。
っていうか、そこは落ち込むスーザンに同情している場合でもないんだけどね。
そのままだと、失意の谷から永遠に抜け出せないわけだから。まずは脱出の方法を考えるのが先だよね。

ずっと自己中心的な行動をブレずに続けていたフロストだが、アデリーナから「男の価値を証明すると言ったライオネル・フロストはどこに行ったの?偉大なライオネル・フロストは幻だったの?」と言われた途端、ガラリと変化する。そして彼は、スーザンに「約束を果たす時が来た。さあ、出発だ」と声を掛ける。
その展開は、あまりにも安易で雑すぎるよ。
フロストの変化って、この物語で最も重要なトコじゃないのか。
本編の残り10分ぐらいになって初めて主人公の気が変わるってのは、タイミングが遅すぎるし。

(観賞日:2025年5月6日)

 

*ポンコツ映画愛護協会