『ミラーズ』:2008、アメリカ

1人の男が、地下鉄構内を必死で逃げていた。彼は脱出できる場所を捜索してドアを破壊し、使われてないロッカールームに駆け込んだ。男は窓から脱出しようと考えるが、壁で塞がれていた。ロッカーの扉が次々に開いて、裏側に付いている鏡に男の姿が写し出された。男は部屋の奥にある大きな鏡に近付きながら、「逃げようとしたんじゃないだ」と釈明する。鏡に亀裂が入って少しずつ広がると、「やめてくれ、死にたくない」と男は怯えた。男が落ちた破片を拾い上げると、鏡に写った自分が睨み付けていた。鏡の中の男が破片で首を斬ると、本人の首が切り裂かれて大量に出血した。
1年前までニューヨーク市警の刑事だったベン・カーソンは、警備員として働くことになった。彼は勤続15年になるロレンゾ・サペッリと会い、仕事の内容を聞く。ベンが働く場所は、5年前の火事で全焼したメイフラワーデパートである。保険会社との訴訟が決着していないため、焼け跡は解体されることもなく残っている。2時間おきに店内を巡回するよう会社は指示しているが、ロレンゾは「俺は3時間おきにしてる。やってみれば分かるが、何も無いさ」と話す。
店内を案内したロレンゾは、「夜は気味が悪い。電気は無いし鏡だらけだ」と告げる。彼は「あまり鏡は見ない方がいい」と言い、ベンの前任者であるゲイリー・ルイスが取り憑かれたように磨いていたと告げる。ロレンゾはベンを詰め所へ連れて行き、そこで一日の大半を過ごすのだと説明した。ベンは妻のエイミーと離婚し、子供のマイケルとデイジーも向こうが引き取っていた。ベンは久々にエイミーの元へ行き、子供たちにプレゼントを渡した。
エイミーが連絡も無しに来たことを咎めると、彼は「電話しても出ないだろ」と告げる。ベンは「酒は辞めたし、復職するまでの繋ぎの仕事も見つけた」と言い、関係修復を求める。ベンが「俺は人を殺した。君の支えが必要だ」と口にすると、エイミーは「貴方の傍にいて庇ったわ」と反論する。ベンが腹を立てて声を荒らげると、エイミーは「そういう所が怖いのよ。いつキレるか分からない」と指摘した。ベンが「チャンスをくれ」と頼むと、エイミーはキスを受け入れるが「ダメよ」と告げた。
夜、仕事に赴いたベンは、詰め所でテレビを見ながら過ごす。見回りの時間が来ると、彼は懐中電灯を携えてデパートへ向かった。大きな鏡に近付いたベンは、手形が付いているのに気付いた。彼は服の袖でこすってみるが、手形は消えなかった。手形が1つではなく幾つも付いていることに気付いて、ベンは驚いた。物音がしたのでベンが振り向くと、奥の扉には何の異変も無かった。鏡の中では扉が開いたが、本物の扉は閉じたままだった。ベンは「どうなってるんだ?」と言い、扉を開けて向こう側へ足を踏み入れた。ベンが階段を下りると、浸水した地下室に繋がっていた。
ベンがアパートの洗面所で薬を飲もうとしていると、妹のアンジェラが「薬はやめたんじゃなかったの?」と告げる。ベンは警察を辞めた後、アンジェラのアパートに居候していた。アンジェラが「大丈夫?いつでも相談に乗るわ。仕事がキツいんじゃないの」と心配すると、彼は「俺の恩給だけじゃ、エイミーと子供たちを養っていけない」と言う。「昼間の仕事に変えてみたら?」と提案された彼は、「そんな単純じゃない」と述べた。
鏡を見たベンは、自分の顔が変貌しているので悲鳴を上げた。慌ててアンジェラが戻って来るが、彼は「何でもない」と言う。改めてベンが鏡を見ると、特に異変は無かった。夜、デパートで仕事をしていたベンは鏡が気になり、右手で触れる。すると鏡に亀裂が入り、ベンは掌に怪我を負う。ところが再び鏡に視線を向けると、亀裂は消えていた。鏡の中では女性が火だるまになって悲鳴を上げるが、デパートでは何も起きていなかった。鏡の中ではベンも炎に包まれ、彼は倒れ込んで苦悶する。しかし実際の彼は燃えていなかった。
ゲイリーの財布を拾ったベンは詰め所に戻り、手の傷を治療した。彼が財布の中身を調べると、「エシカー」と書かれたメモが見つかった。デパートへ戻ったベンは悲鳴を聞き、「誰だ?どこにいるか教えろ。助けに行く」と叫ぶ。しかし悲鳴が続くだけなので、彼は急いで現場を見つけ出そうとする。ベンは悲鳴が聞こえたと思われる部屋に辿り着き、中に入った。すると悲鳴は聞こえなくなるが、鏡には助けを求める女性の腕が写る。しかし実際の部屋には何も異変が起きておらず、ベンは鏡を外して移動させた。すると全身を焼かれた女性が試着室で苦悶し、助けを求める様子が写し出された。
マイケルは寝室で悲鳴を上げてエイミーを呼び、「鏡の中で女の人が叫んでる」と訴えた。しかし鏡には女性など写っておらず、エイミーは「きっと怖い夢を見たのよ」と告げた。次の日、ベンはアンジェラが働くバーへ行き、自分の身に起きた出来事を語って「あれは現実だ。イカれてると思うか?」と口にする。アンジェラは「きっと辛い体験をして、もがいてるだけなのよ。事件の時から悪夢にうなされてるし。兄さんは悪くない」と言うが、ベンは「どこにでも鏡はある。向こうから見られてる気がする」と不安を吐露する。アンジェラは兄を心配し、専門家に相談するよう助言した。
ベンがアパートで昼寝をしていると、荷物が届いた。送り主がゲイリーだと知った彼が驚いて中身を確認すると、デパート火災について報じた新聞記事の切り抜きだった。ベンがロレンゾを訪ねて詳しい話を聞こうとすると、ゲイリーが地下鉄の駅で死体となって発見されたことを聞かされる。彼は検視官の仕事をしているエイミーの元へ行き、ゲイリーの遺体を見せてほしいと頼む。エイミーが呆れて断ろうとすると、ベンは「ゲイリーが死ぬ直前、火災についての記事を小包で送って来た。俺に何か伝えたがってる」と訴えた。
ベンはエイミーの同僚のピーターから、ゲイリーが鏡の破片で喉を切り裂いて死んだことを聞く。保管室の扉に写ったゲイリーは目を開き、「エシカー」と呟く。ベンは狼狽するが、それは彼にしか見えていなかった。ベンはゲイリーのファイルを調べ、彼の死体が発見された現場写真の異常に気付く。鏡に写った破片は血まみれなのに、実際のゲイリーが握っている方は綺麗なのだ。「鏡が俺たちをコントロールできるとしたら?」とベンは言うが、エイミーは「いいかげんにして」と苛立った。断酒のために使っている薬の副作用だとエイミーが決め付けたので、ベンは彼女の同意を諦めて立ち去った。
その夜、アンジェラが入浴していると、鏡の中の彼女は自らの口を大きく開いた。本物のアンジェラは鏡に操られ、口を上下に引き裂いて死亡した。ベンがアパートに戻ると、元同僚のラリー・バーン刑事と警官たちが現場検証を行っていた。ベンは止めようとする警官たちを突き飛ばし、妹の無残な遺体を見た。ベンにはアリバイがあったが、ラリーはエイミーに彼を疑っていることを話す。ベンがロレンゾに「遠くへ引っ越すので辞職する」と話していたことに、彼は不審を抱いたのだ。
ベンはエイミーから「ウチへ来て子供たちと過ごしたら?」と誘われると、「駄目だ、あの子たちまで危険になる」と告げた。彼は「仕事を辞めていれば。あいつらの仕業だ。犯人は分かってる。カタを付けなければ」と言い、エイミーが「だったらラリーに話して」と頼むと「どうせ信じないさ。君もな」と口にして立ち去った。ベンは夜のデパートで鏡を壊そうとするが、銃弾を浴びせても直後に修復された。ベンが愕然としていると、鏡に亀裂が入って「エシカー」という文字が浮かび上がった。
ベンはラリーに電話を掛け、エシカーという人物を調べてほしいと要請した。彼はゲイリーから届いた荷物をチェックし、デパートに放火したテレンス・ベリーという警備員の記事を読む。テレンスは家族を殺害し、「鏡が殺した」と主張していた。ラリーからエシカーという人物の記録が無かったことを聞いたベンは、テレンスについて調べてもらった。テレンスは既に死亡しており、ベンは彼が収容されていた精神病院へ赴いた。
院長のモリスと会った彼は、テレンスの裁判で使用された映像を見せてもらう。テレンスは質問を受けて、「鏡を壊すには火を付けるしかない」「奴らは妻も子供たちも殺した」「エシカーを捜せと言われた」と証言していた。ベンはエイミーの留守中に家へ乗り込み、次々に鏡を外して外へ運び出した。彼が外せない鏡をペンキで塗り潰そうとしていると、家政婦から連絡を受けたエイミーが帰宅した。ベンは「証明してやる。見てろ」と鏡に発砲するが、何も起きなかった。彼は頭を抱え、車で走り去った。
デパートの地下室を調べたベンは、セント・マシューズ病院の案内図を発見した。壁に穴を開けて奥へ進むと、そこには鏡張りの部屋があった。拘束具の付いた椅子を見つけた彼はラリーに電話し、セント・マシューズ病院の患者と職員の名簿が欲しいと依頼した。ラリーはベンと会い、アンナ・エシカーという患者がいたことを告げた。アンナは精神科に入院していたが、1952年に12歳で死亡している。患者はメインホールに集まり、全員が殺し合って死亡していた。主治医のケインは逮捕されたが、鏡の破片で手首を切って死んだ。
アパートに戻ったベンはラリーから貰った資料を調べ、アンナが事件の2日前に退院していたことを知る。アンナの写真を隠しておいた鏡に見せると、亀裂が入った。それを見たベンは、アンナが生きていると確信した。エイミーはマイケルが部屋を出た後、鏡の中の彼が同じ場所に留まっているのを見て恐怖した。彼女はベンに連絡し、「鏡の中に何かいる」と訴えた。ベンは急いで駆け付け、エイミーと協力して全ての鏡をペンキで塗り潰した。彼は姿の写る物を全て封じ、ペンシルヴァニア州のエシカー家を訪ねた。ベンは統合失調症の研究をしていると嘘をつき、アンナの兄であるロバートから詳しい話を聞く…。

監督はアレクサンドル・アジャ、脚本はアレクサンドル・アジャ&グレゴリー・ルヴァスール、製作はアレクサンドラ・ミルチャン&マーク・スターンバーグ&グレゴリー・ルヴァスール、製作総指揮はアーノン・ミルチャン&キーファー・サザーランド&マーク・S・フィッシャー&アンドリュー・ホン、共同製作はキム・ユンヤン、撮影はマキシム・アレクサンドル、美術はジョセフ・ネメック三世、編集はバクスター、衣装はエレン・マイロニック&マイケル・デニソン、特殊効果メイクアップはグレゴリー・ニコテロ&ハワード・バーガー、音楽はハヴィエル・ナヴァレテ。
主演はキーファー・サザーランド、共演はポーラ・パットン、エイミー・スマート、メアリー・ベス・ペイル、ジェイソン・フレミング、キャメロン・ボイス、エリカ・グラック、ジョン・シュラプネル、ティム・アハーン、ジュリアン・グローヴァー、ジョシュ・コール、エズラ・バジントン、ドイナ・アイダ・スタン、イオアナ・アバー、ダーレン・ケント、ロズ・マッカチェン、アディーナ・ラピテアノ、ウィリアム・メレディス、バート・シドルス、カイ・マン、チン・ジンドン、アンカ・ダマカス、トゥードル・ストロエスク他。


2003年の韓国映画『Mirror 鏡の中』をハリウッドでリメイクした作品。
監督は『ヒルズ・ハブ・アイズ』『P2』のアレクサンドル・アジャ。脚本も同じく『ヒルズ・ハブ・アイズ』『P2』のアレクサンドル・アジャ&グレゴリー・ルヴァスール。
ベン役のキーファー・サザーランドが、製作総指揮も兼ねている。
エイミーをポーラ・パットン、アンジェラをエイミー・スマート、アンナをメアリー・ベス・ペイル、ラリーをジェイソン・フレミング、マイケルをキャメロン・ボイス、デイジーをエリカ・グラック、ロレンツォをジョン・シュラプネルが演じている。

冒頭のアヴァン・タイトルで、鏡の中の男が本人とは別の動きを見せ、そいつが首を切ると本人が死ぬ」という出来事が描かれる。
これによって、「鏡には呪いのような力が込められていて、そこに写った人間は殺される」ってことが分かる。
たぶん冒頭でインパクトを与え、観客を引き付けたかったんだろう。それは考え方として、充分に理解できる。
ただ、いきなりネタバレしている形になるわけで、メリットとデメリットを天秤に掛けた場合、後者の方が重いんじゃないかと。

ベンがヨリを戻そうとすると、エイミーは彼の言動を批判する。それを受けてベンが怒鳴り散らすと、エイミーは「そういう所が問題だ」と指摘する。
なので完全に夫婦関係は破綻し、エイミーの気持ちが冷え切っているのかと思いきや、そうじゃないのよね。
ベンが「君にも愛があるはずだ」と迫ってキスすると、それをエイミーは受け入れるのだ。すぐに「ダメ」とは言うものの、エイミーにもベンに対する愛は残っていて、関係修復の可能性は充分に残っているのだ。
だったら、ベンが来た時に厳しい態度で非難し、冷たく突き放すのは、キャラの動かし方としていかがなものかと。ベンを責める時も、どこかで優しさを匂わせた方がいいんじゃないかと。

ベンは手形だらけの鏡を見た後、扉の向こう側を調べる。彼は地下室に辿り着くのだが、そこでシーンが切り替わり、たぶん翌朝に移っている。
どういうことなのか、サッパリ分からない。
まず、「鏡の中で扉が開いたが、本物の扉は閉じている」というトコの表現が、やや分かりにくい。
その後、ベンが地下室まで行くと「何かが起きそうな雰囲気」を醸し出すが、特に何も無い。カメラが移動して扉が勝手に閉まる様子を描くが、ベンが閉じ込められるわけでもない。

そして翌朝に移るってことは、ベンは普通に仕事を終えてアパートへ戻ったってことだ。異変を体験したのに、それをロレンツォに伝えるようなこともしていないわけだ。
で、アンジェラから疲れている様子を指摘されるのだが、「ちょっと早くねえか」と言いたくなる。
まだ仕事の初日で、しかも「鏡の中で扉が開いた」ってのを見た程度でしょ。
そりゃあ、それだけでも充分に不気味ではあるんだけど、こっちからすると一発目なので、それだけで「精神的疲労」ってのをアピールされてもね。

っていうか、むしろ一発目の出来事がデカすぎるってのがマズいんじゃないかと。
その時点で明確に「絶対に怪奇現象」と断言できちゃう出来事を、ベンは体験しちゃってるからね。「もしかしから見間違いかも」とか、「ただの思い過ごしかも」と思えるような現象ではないからね。
そうじゃなくて、実際は怪奇現象が起きているけど、まだベンは気付かないという形でも良かったんじゃないかと。
ベンは少しだけ疑問を覚えるけど、異変の内容を明確には理解しないままスルーしちゃうとかね。

アンジェラのアパートで鏡を見たベンは、自分の顔が変貌しているので絶叫する。改めて確認すると異変は無く、「どうしちまったんだ。しっかりしなきゃダメだ」と自分に言い聞かせる。
でも、これも描写としては、ちょっと早すぎるなあと。
何が早すぎるのかっていうと、デパートだけじゃなくてアパートの鏡でも怪奇現象が起きるってことだ。もう1日ぐらいはデパートでの怪奇現象を描いて、それから「家でも鏡を見ると怖いことが起きる」という流れにした方が良くないか。
あと、ベンが「どうしちまったんだ。しっかりしなきゃダメだ」と自分に言い聞かせるなど、やたらと独り言を口にするのが、なんかウザいし、どことなく苦笑したくなっちゃうんだよね。
そういうキャラ設定にしてあるのは分かるんだけど、失敗じゃないかなあ。

この映画、とにかくBGMとSEが頻繁に使われる。音を利用することで不気味な雰囲気を醸し出し、観客の不安を煽ろうとしているのだ。
そんなのはホラー映画じゃ常套手段だし、それが悪いなんてことは全く思わない。
ただ、それと内容が全く伴っていないんだよね。音ばかりが先走って、それに見合うだけの怪奇現象が起きていない状況が続くのだ。
そして、「雰囲気だけは怖そうだけど、実際はそうでもない」ってのが早い段階でバレてしまう。
音に頼るのはいいけど、映画が音に負けているのよ。

序盤でベンが人を殺していることに言及するが、詳しいことは説明されない。しばらく話を進めてから、ちょっとずつ情報が出てくる。
詳しい事情は分からないが、同僚を誤射で死なせてしまったらしい。
勿体を付けて明かすぐらいだし、そんなベンの過去を悪霊が狡猾に利用するとか、ベンの行動に過去の殺人が大きく影響を与えるとか、ともかく重要な要素として使われることは誰もが予想するんじゃないだろうか。
しかし実際のところ、その要素は全く有効活用されないのだ。

まるで使う気が無いのなら、何のためにそんな設定を用意したのか、サッパリ分からない。
「殺人が原因で酒に溺れ、そのせいで妻に愛想を尽かされて子供たちとも離れて暮らすことになった」という設定があるのだが、これも含めて全く意味が無い設定になっているのだ。
だったら、「ベンは家族で幸せに暮らしている」ってことでもいいでしょ。
その上で「家族を守るために身を犠牲にする」という展開を用意しても、何の支障も無いぞ。

「事件のせいで幻覚を見ている」とか、「薬のせいで幻覚を見ている」と周囲から思われる部分で、「殺人事件を起こしている」という設定を利用している。
だけど、それによる効果なんて、微々たるモノだ。
仮にベンが事件を起こさず、酒に溺れたり強い薬を飲んだりしていなかったとしても、どっちにしろ「俺たちは鏡に操られてる」なんて話は誰も信じないでしょ。
つまり、「ベンの話を周囲の人間が全く信じようとしない」という状況は、ベンが平穏に家族と暮らしているとしても、同じように成立するのよ。

そりゃあ、過去にトラブルがあって関係にヒビが入っている状況の方が、家族愛の深さを描く上では色々と便利であることは事実だろう。でも全く使いこなせていないのなら、そんなのは無駄なだけであって。
しかも「家族愛」って書いたけど、ベンにはアンジェラという存在もいるのだ。しかも、ただの兄妹ってだけじゃなくて、「両親を亡くした後、ベンが父親代わりだった」というぐらい、強い絆で結ばれた関係なのだ。
そんな大事な妹を殺されているので、その後で「ベンが家族を守るために行動する」ってのを見せられても、「だけど、もうアンジェラは殺されちゃってるからなあ」ってのが、ものすごく引っ掛かるのよね。
もちろんベンにとってはエイミーと子供たちも大切だろうけど、同じぐらいアンジェラも大事なはずだからね。

終盤、「アンナは悪魔憑きだったが、人格障害だと決め付けたケイン医師による治療を受けさせられた。彼女が鏡の部屋で拘束されると、悪魔は鏡の中に入った」ってことが明らかにされる。
つまり、鏡の呪いや何かではなく、悪魔の仕業だったわけだ。
まあ実を言うと、序盤から何となく予想は付くけどね。
何しろハリウッド映画だから、こういう時の犯人は悪魔と相場が決まっている。そして「悪魔憑き」と「家族愛」の組み合わせってのは、ハリウッドで何度となく使われてきたホラー映画の作り方である。

修道院に入ったアンナの元へ赴いたベンは、一緒にデパートへ来るよう頼む。しかしアンナは「私が戻れば鏡の中の悪魔を現実世界へ出すことになる」と言い、それを拒む。ベンが家族を助けたいのだと涙で訴えても、アンナは承諾しない。その後、ベンはエイミーからの電話で、マイケルが消えて家に異変が起きていることを知らされる。
で、もちろん「アンナがデパートへ行く」という展開になるのは誰でも簡単に予想できるだろうけど、てっきり「アンナが苦悩の末に覚悟を決める」という展開だろうと思っていたのよね。
ところが実際には、「ベンが拳銃で脅して強引に連行する」という形なのだ。
そりゃあ家族を救いたいのは分かるけど、その行動はどうなのよ。
っていうか、もはやベン・カーソンじゃなくて、『24 TWENTY FOUR』シリーズのジャック・バウアーにしか見えんぞ。

(観賞日:2020年1月2日)

 

*ポンコツ映画愛護協会