『ミニオンズ フィーバー』:2022、アメリカ

1976年。ワイルド・ナックルズが創設した悪の組織「ヴィシャス・シックス」にはベル・ボトム、マスター・チャウ、ジャン=クロード、スヴェンジャンス、ストロングホールド、ヌン=チャックが所属し、クリミナル・レコード店の地下に本部を置いて活動していた。彼らは世界最強の悪党集団になるため、ゾディアック・ストーンを手に入れようと目論んでいた。一味はストーンのありかを記した地図を入手し、アジアの秘境にある遺跡へ赴いた。ナックルズはストーンを発見するが、ボトムに奪い取られた。ボトムは組織の新たなリーダーとなり、ナックルズを置き去りにして去った。
小学生のグルーはヴィシャス・シックスに憧れ、大人になったらスーパーな悪党になりたいと思っていた。彼はミニオンズを引き連れて、小さな悪事を繰り返していた。映画館ではガスを噴射して客を追い出し、貸し切り状態にした。ゲームセンターでは不正を重ね、好き放題に遊んだ。彼はヴィシャス・シックスのメンバーに応募していたが、ボトムから返事が届いた。空きが1つ出たので面接をするという返事に大喜びしたグルーは、地下室で作業中のミニオンズに知らせた。
ボトムは悪党チャンネルを通じ、3日後の午前0時に反悪党同盟を倒して地球最強の悪党になると宣言した。ニュースを見たナックルズは激怒し、必ずゾディアック・ストーンを取り戻すと誓った。グルーが面接に行こうとすると、ミニオンズが付いて来る素振りを見せた。グルーは彼らを家に残し、面接に向かった。ミニオンズはグルーの指示を無視し、勝手に後を追い掛けた。クリミナル・レコード店に到着したグルーは店員であるネファリオと話し、地下本部へ移動した。
ボトムたちは面接に来たグルーが少年だったので呆れ果て、馬鹿にして帰るよう告げた。グルーはボトムたちが他の応募者に気を取られている隙に、ゾディアック・ストーンを盗んで逃げ出した。店の外で張り込んでいたナックルズは、石を持つグルーを目撃した。グルーは外にいたミニオンズと合流し、追い掛けて来るホドムたちから逃走した。グルーは途中で石を落としてしまうが、すぐにオットーが拾った。グルーは基地へ行くようオットーに指示し、その場を去った。
グルーはボトムたちを撒き、基地に戻った。後からオットーが戻って来るが、ゾディアック・ストーンを持っていなかった。彼は戻る途中で誕生日パーティーを目撃し、少年がプレゼントされているペット・ロックに心を奪われた。そこで少年に頼み、石とペットロックを交換したのだ。グルーは激怒して役立たずだと罵り、ミニオンズにクビを通告した。彼は石を取り戻しに向かおうとするが、ナックルズの手下たちに車で誘拐された。
グルーはナックルズから石を渡すよう迫られ、持っていないと答える。ナックルズは身代金を手に入れようと目論み、グルーの家に電話を掛けさせた。彼は応対したのがミニオンズとは知らず、石を持って来るよう要求した。ミニオンズは少年の家に行くが、おじさんに渡したと言われる。外で待機していたオットーは、おじさんのバイカーがバイクで出掛けるのを目撃した。バイカーが石を首から下げていたので、オットーは後を追った。一方、ケヴィンたちはバスの広告を見て、サンフランスシコへ向かうことにした。
ボトムたちはグルーから石を取り戻すため、地下本部を発った。ケヴィンたちはパイロットと客室乗務員に成り済まし、飛行機に乗り込む。サンフランシスコに到着した彼らは、ナックルズのアジトに侵入した。手下に見つかった彼らはチャイナタウンに逃げ込むが、捕まって暴行された。その様子を目撃した鍼灸師のマスター・チャウは、カンフーで手下を撃退した。ミニオンズが弟子入りを志願するとチャウは断るが、結局は承諾した。
ボトムたちはグルーの家に押し掛け、残っていたミニオンズを尋問した。一味はグルーとナックルズの居場所を知り、サンフランシスコへ向かった。ケヴィンたちはチャウの下で、カンフーのトレーニングを積んだ。ナックルズは手下たちが怒って辞めたため、グルーの縄を解いて仕事を手伝わせることにした。オットーはバイカーに助けられ、バイクでサンフランシスコまで送ってもらうことになった。グルーが悪党になりたいことを話すと、ナックルズは「教えてやってもいい」と告げた。ケヴィンたちは初級の鍛錬しか積まない内に、勘違いしてチャウの元を去った。ナックルズは彼はグルーと共に悪党銀行へ行き、力を合わせて金庫の絵画を盗み出した。ナックルズはグルーを気に入り、本格的にチームとして組むことにした…。

監督はカイル・バルダ、共同監督はブラッド・エイブルソン&ジョナサン・デル・ヴァル、原案はブライアン・リンチ&マシュー・フォーゲル、脚本はマシュー・フォーゲル、製作はクリス・メレダンドリ&ジャネット・ヒーリー&クリス・ルノー、製作総指揮はブレット・ホフマン&ラティファ・ワウ、共同製作はジャン=リュック・フロリンダ、製作協力はロバート・テイラー&ケリー・レイク、編集はクレア・ドジソン、コンピューター・グラフィック監修はフランク・バラダット&ミラン・ヴォーカサノヴィッチ、ヘッド・オブ・ストーリーはガイ・バーエリー、アート・ディレクターはマチュー・ゴセリン&ティエリー・フルニエ、キャラクター・デザイナーはダニエル・フェルナンデス・カサス&フィリップ・ティリケテ、アニメーション監督はクリストフ・デリスル&グウェノール・オウルチェン&ルドヴィック・ロズ、音楽はヘイター・ペレイラ、音楽製作総指揮はジャック・アントノフ、主題歌はダイアナ・ロス&テーム・インパラ。
声の出演はスティーヴ・カレル、ピエール・コフィン、アラン・アーキン、タラジ・P・ヘンソン、ミシェル・ヨー、ジュリー・アンドリュース、ラッセル・ブランド、ジャン=クロード・ヴァン・ダム、ドルフ・ラングレン、ダニー・トレホ、ルーシー・ローレス、ジミー・O・ヤン、ケヴィン・マイケル・リチャードソン、ジョン・ディマジオ、RZA、マイケル・ビーティー、ウィル・アーネット、スティーヴ・クーガン、コレット・ウィテカー、レイモンド・S・パーシ他。


「怪盗グルー」シリーズのスピン・オフとして2015年に公開された『ミニオンズ』の続編。
監督は前作をピエール・コフィンと共同で担当したカイル・バルダで、単独でのメガホンは初めて。脚本は『ビッグママ・ハウス3』のマシュー・フォーゲル。
グルー役のスティーヴ・カレル、ミニオンズ役のピエール・コフィンは、前作から続投。ナックルズの声をアラン・アーキン、ボトムをタラジ・P・ヘンソン、チャウをミシェル・ヨー、ジャン=クロードをジャン=クロード・ヴァン・ダム、スヴェンジャンスをドルフ・ラングレン、ストロングホールドをダニー・トレホ、ヌン=チャックをルーシー・ローレスが担当している。
グルーの母役のジュリー・アンドリュースは本家シリーズ第3作、ネファリオ役のラッセル・ブランドは本家シリーズ第1&2作に続いての出演。パーキンス役のウィル・アーネットは本家シリーズ第1作、サイラス役のスティーヴ・クーガンは本家シリーズ第2作&第3作に続いての出演となる。

「怪盗グルー」シリーズではグルーよりもミニオンズの方が人気者になり、彼らを主人公とする『ミニオンズ』が作られた。そして本家の1作目&2作目よりも、『ミニオンズ』の方が興行成績も上だった。
その後に公開された本家シリーズ3作目と比べても、『ミニオンズ』の方が上だった。
『ミニオンズ』は「ミニオンズが可愛い」という要素だけで、一点突破を狙う作品だった。
だから当然のことながら、その続編である『ミニオンズ フィーバー』もミニオンズの可愛さに「おんぶにだっこ」状態である。

『ミニオンズ』と違い、今回は既にミニオンズがグルーの手下になっている状態から物語が始まる。
グルーの出番はかなり多いし、っていうか彼が主人公だ。少年時代であることを除けば、本家シリーズと大して変わらない。
なので、これを本家と区別して『ミニオンズ』シリーズとするのは、ちょっと無理があるんじゃないかと思うのよね。
「怪盗グルー」シリーズ、つまりは『Despicable Me』シリーズとして公開すべきじゃないかと。

前半でグルーはナックルズに捕まり、動きを封じられる。これにより、ミニオンズの出番は本家シリーズに比べて多くなっている。
とは言え、「ミニオンズはグルーを助けるために行動する」「ボトムたちはグルーから石を取り戻すために行動する」といった感じで、グルーが大きな存在になっていることは確かなわけで。
『ミニオンズ』シリーズとして作るのなら、グルーは全く登場しないか、オマケ程度にチラッと姿を見せるぐらいの扱いにしておくべきだ。
これを「ミニオンズの映画」として捉えた場合、ハッキリ言ってグルーが悪目立ちしている邪魔な存在なのだ。

前作のラストで、ミニオンズはグルーを見込んで追い掛けて行く様子が描かれていた。
なので今回は登場した時点でグルーの手下になっていたり、地下室を作って作業に励んでいたりしても、「あの流れから、そんな感じになったのね」と脳内補完で納得できる。
それなのに、グルーが面接に向かう直前、ミニオンズが彼の家に押し掛けた時のことを語り、回想シーンを挿入するのは、まるで要らない手順だ。
そのタイミングで「こんな経緯がありまして」ってのは出し遅れの証文であり、どうしても経緯を説明したければ最初に済ませるべき。

グルーはヴィシャス・シックスに憧れていたのに、ゾディアック・ストーンを盗み出すのは行動原理に違和感を覚える。憧れていた組織から馬鹿にされたのに、落胆のターンが無いまま、すぐに石を盗み出すんだよね。
グルーはミニオンズに「石を返しに行けば、私たちが間違っていたので入団してほしいと言うはずだ」と得意げな様子で話すが、それってヴィシャス・シックスに対する憧れの気持ちが皆無の考え方でしょ。そして憧れの気持ちが皆無なら、入団する必要は無いはずで。
「馬鹿にされて、憧れが一気に怒りや憎しみに変化した」ということなら、分からんでもないのよ。
あと、ボトムが「デカいことしてから出直しておいで」と言っているので、その言葉を素直に受け入れて石を盗んだってことでも理解できる。
だけど、どっちでもないんだよね。

ミニオンズがパイロットと客室乗務員に化けて旅客機でサンフランシスコへ向かうシーンは、果たして素直に笑っていいのやら。
何しろ、操縦なんて何も知らないミニオンズが操縦しているわけで。
もちろんコミカルには描いているけど、下手すりゃ事故を起こし、大勢の乗客が命を落とす危険もあるわけで。
このシリーズにモラルを求めても無駄なことは分かっているつもりなんだけど、ここは少し引っ掛かる。
ちょっと一線を超えている気がしちゃうんだよね。

チャイナタウンに逃げ込んだミニオンズがチャウに救われて弟子入りする展開は、「ミニオンズがカンフーで戦ったら面白いんじゃね?」という思い付きだけで用意されたシーンだろう。
ホントなら一刻も早くグルーを助け出したいんだから、鍛錬なんか積んでいる暇など無いはずだ。
だからチャウを話に絡ませるなら、「グルーを救出するため助っ人を依頼する」という流れでもいいだろう。
でも、「ミニオンズがカンフーで戦う姿は面白いに違いない」ってトコからの逆算で、他の都合は無視を決め込んでいるわけだ。

で、そこで強引に「ミニオンズがカンフーを学ぶ」という展開を用意したんだから、クライマックスは「ミニオンズがカンフーを使ってボトムたちと戦う」という内容にすべきだろう。だけど、ここで要らない捻りがあるんだよね。
まず、ボトムたちは石の力で巨大な怪物に返信してしまう。そしてミニオンズもボトムの力によって、動物に変身させられる。
その直前までトラックスーツでブルース・リーもどきになっていたミニオンズだが、この段階で「ミニオンズの姿がカンフーで戦ったら面白い」という趣向は死ぬ。
しかも、ミニオンズも急にスーパーパワーが備わって、それを使って戦うんだよね。一応はキックなどを使う格闘アクションになっているけど、ちっとも「カンフーアクション」には見えないのよ。
もうね、アホすぎるだろ。

この映画で厄介なのは、グルーを純然たるヴィランとして描くのは難しいってことだ。
本家シリーズ1作目のグルーはスーパーヴィランとして登場したのだから、その前日譚である本作品も彼はヴィランであるべきだろう。
しかし、既に本家シリーズでグルーのベビーフェイスへのターンを描いている。
なので、今さらグルーを憎まれ役に戻すわけにもいかない。
ファミリー映画であることを考えても、主人公がヴィランのままで終わるのは都合が悪い。

そこで本作品が用意したのが、ナックルズとボトムたちに対立の構図だ。
どちらも悪党だが、ザックリ言うとナックルズは「ルールを大事にする悪党」、ボトムたちは「ルール無用の悪党」という設定にしてある。変な日本語だけど、「善玉の悪vs悪玉の悪党」という形にしてあるのだ。
かつての任侠映画で使われた、昔気質のヤクザと新興ヤクザの対立にも似た図式だ。
そしてグルーをナックルズと組ませることで、「悪党だけど正しい奴」みたいな感じにしてあるのだ。

ただ、任侠映画において善玉扱いされるヤクザって、「カタギの衆には迷惑を掛けない」というルールを順守しているんだよね。そしてカタギの衆が困った時には、自らを犠牲にしてでも助けるような人物だ。そこには仁義や矜持ってモノがある。
それに対してグルーの場合、カタギの衆に迷惑を掛けるような行為を繰り返しているからね。そこは大きく違う。
あとさ、ラストでナックルズが「お前は月を盗め」とグルーに言うけど、何の脈絡も無い発言なんだよね。なので、本家シリーズ1作目に上手く繋がっているとは到底言えない。
それなら、そんな台詞を適当に言わせない方がマシだよ。

(観賞日:2025年8月2日)

 

*ポンコツ映画愛護協会