『ミニオンズ』:2015、アメリカ

人類より前から地球に存在しているミニオンズの目的は、世界で最も凶悪なボスに仕えることだ。ボスを幸せにすることが、ミニオンズの存在する理由なのだ。ボスは簡単に見つかるが、問題はキープすることだった。恐竜をボスにしたミニオンズだが、自分たちのミスで火山へ転落させてしまった。石器時代に入ると、彼らは人間のボスを見つけた。しかしミニオンズの愚かな助言によって、その人間は熊に食われてしまった。
古代エジプトでミニオンズはピラミッドを倒してしまい、ボスに決めた王様が下敷きになった。中世の暗黒時代はドラキュラをボスにしたミニオンズだが、誕生日祝いに太陽の光を当てて石化させてしまった。雪原で部隊を率いる将軍をボスにした時は、誤って大砲を放って吹き飛ばしてしまった。吹雪の中を歩き続けたミニオンズは氷の洞窟を発見し、そこで暮らし始めたる年月が経つと文明が生まれたが、ボスがいないことで虚しさを感じるようになった。
ミニオンのケヴィンは何ヶ月も準備し、洞窟を出てボスを探しに行く考えを仲間に発表したるボブが同行者として挙手するが、ケヴィンは彼が危険な旅に耐えられるとは思えなかった。居眠りしていたスチュワートは、隣の仲間に挙手させられた。彼は何も知らないまま、勝手に旅へ出ることが決まっていた。他に志願者がいなかったため、ケヴィンは仕方なくボブも連れて行くことにした。洞窟を出発した彼らは長い道のりを歩き続け。海に辿り着いた。彼らは小舟を漕ぎ、1968年のニューヨークへ上陸した。
ケヴィンたちは洗濯ものの吊りズボンを拝借し、都会の街に出た。ボブが勝手に移動したため、ケヴィンたちは後を追ってデパートに入る。閉店になったので、彼らはベッドやテレビを用意して寛いだ。見ていたテレビが途中で写らなくなり、彼らは急いでアンテナを動かした。すると先程の番組ではなく、大悪党大会の開催を知らせるニュースが写し出された。スカーレット・オーバーキルという大悪党が初めて参加する大会の存在を知ったミニオンズは、開催場所であるフロリダ州オーランドのオレンジ・アベニューへ行くことにした。
ハイウェイに出たミニオンズは、ヒッチハイクで車に乗り込む若者を目撃した。スチュワートは真似をしてみるが、失敗して不貞腐れる。続いてケヴィンが挑戦すると、一台の車が停まってくれた。その車にはウォルター・ネルソンと妻のマージ、息子のジュニア、娘のティナ、赤ん坊のピンキーが乗っていた。一家は強盗団であり、途中で覆面を被って銀行から金を強奪した。パトカーに追跡されたため、一家はペイント弾を発射する。ケヴィンとスチュワートは後部座席のバズーカ砲を奪い合い、誤って発射してしまう。しかし結果的にはパトカーをクラッシュに追い込み、一家に感謝された。
ネルソン家はミニオンズと同様に、大悪党大会へ向かう途中だった。ティナはケヴィンに大会のパンフレットを見せ、力士のドゥーモや魚人のフランキーといった悪党を解説した。彼女はケヴィンに、自分だったらスカーレットをボスにすると言う。車が小さな釣具店に到着すると、ウォルターが合言葉を唱えた。すると秘密の入り口が開き、車は大会が開催されている地下の駐車場へ移動した。会場には多くのブースが展示されており、フラックス教授は発明したタイムマシンを動かしていた。
ホールにはスカーレットが登場し、大勢の観客が集まった。スカーレットは右腕を募集中だと話し、持っているルビーを盗めば採用すると発表した。大勢の悪人が次々にステージへ押し寄せ、ルビーを奪おうとする。ミニオンズは押し出されてステージに上がり、放り出されたヌイグルミを取り戻そうとする。ミニオンズがステージの中を走り回っていると、偶然にもボブの口にルビーが飛び込んだ。スカーレットはミニオンズの採用を決定し、彼らを専用機に乗せてイギリスへ飛び立った。
洞窟に留まっていたミニオンズは、雪男の群れが来たので新しいボスになってもらえると感じて歓迎する。しかしミスを犯して氷柱を頭に落下させたために雪男たちは激昂し、ミニオンズは慌てて洞窟から逃亡した。スカーレットは住まいである城へ戻り、夫で発明家のハーブにケヴィンたちを紹介した。彼女はケヴィンたちにイギリスを乗っ取ろうと目論んでいることを話し、エリザベス女王の王冠を盗み出すよう指示した。ハーブはケヴィンたちに、発明した武器を渡した。
翌日、ケヴィンたちはロンドン塔へ侵入し、王冠を発見する。しかし王冠の守り主と称する老人が現れ、ケヴィンたちを攻撃する。その間に王冠は外へ運び出され、女王は馬車でロンドン塔を出発する。ケヴィンたちは後を追い、馬車を乗っ取った。すぐに警官隊が駆け付け、ケヴィンとスチュワートを捕まえる。追い詰められたボブは、近くにあったアーサー王の剣を石から引き抜いた。すると警官隊は驚愕し、ボブは伝説に従って国王に就任することが決まった。
ボブの国王就任をテレビのニュースで知ったスカーレットは裏切りと感じて憤慨し、バッキンガム宮殿へ向かった。ケヴィンたちは宮殿へ案内され、ボブは国王として民衆の前でスピーチする。ケヴィンたちが宮殿で楽しんでいると、スカーレットが乗り込んだ。スカーレットは激怒するが、ケヴィンたちは彼女を裏切るつもりなど全く無かった。そこで法律を変更し、スカーレットが女王になることを決定した。スカーレットは喜ぶがケヴィンたちを許そうとはせず、地下牢に閉じ込めた…。

監督はカイル・バルダ&ピエール・コフィン、脚本はブライアン・リンチ、製作はジャネット・ヒーリー&クリス・メレダンドリ、製作総指揮はクリス・ルノー&ロバート・テイラー&ブレット・ホフマン、プロダクション・デザイン&キャラクター・デザインはエリック・ギヨン、編集はクレア・ドジソン、CGスーパーバイザーはフランク・バラダット&アントニン・セドゥー、プロダクション・スーパーバイザーはナタリー・ヴァンコーウェンベルジェ、アート・ディレクターはオリヴィエ・アダム、アニメーション監督はブルーノ・デクイアーエ&ピエール・ルデュック、音楽はヘイター・ペレイラ。
声の出演はサンドラ・ブロック、ジョン・ハム、マイケル・キートン、アリソン・ジャネイ、スティーヴ・クーガン、ジェニファー・ソーンダース、ピエール・コフィン、ジェフリー・ラッシュ、スティーヴ・カレル、ケイティー・ミクソン、マイケル・ビーティー、デイヴ・ローゼンバウム、アレックス・ダウディング、ポール・ソーンリー他。


「怪盗グルー」シリーズの人気キャラクターであるミニオンを主人公にしたスピン・オフ映画。
監督は『ロラックスおじさんの秘密の種』のカイル・バルダと「怪盗グルー」シリーズのピエール・コフィン。
脚本は『イースターラビットのキャンディ工場』のブライアン・リンチ。
スカーレットの声をサンドラ・ブロック、ハーブをジョン・ハム、ウォルターをマイケル・キートン、マージをアリソン・ジャネイ、フラックスをスティーヴ・クーガン、女王をジェニファー・ソーンダースが担当し、ジェフリー・ラッシュがナレーションを務めている。
日本語吹替版ではスカーレットを天海祐希、ウォルターを設楽統、ジュニアを日村勇紀が担当し、オリジナル版でドゥーモの声を担当した真田広之がナレーターを務めている。

一言で表現するならば、「ミニオンズの可愛さを存分に満喫してね」という映画である。それ以上でも、それ以下でもない。
そもそも本家の「怪盗グルー」シリーズでも、ミニオンズの可愛さというのは大きなセールスポイントになっていた。
その可愛さに特化して作られたような作品が、この『ミニオンズ』なのだ。
ストーリーとかドラマとか、そんなのは二の次、三の次だ。っていうか、映画としての体裁を整えるためのオマケみたいなモンだ。

だから何か起こりそうな状況でも、何も起こさないまま平気でスルーしたりする。
使えそうなネタを使わず捨てているのは、最初から使う気が全く無いからだ。そんなのはどうでもいいので、まるで気にならないのだ。
それが顕著なのが、ニューヨークのシーンだ。
干してある服に着替えるとか、ゴミ収集車の後ろに乗るとか、デモ隊に参加してプラカードを持つとか、そういう「ミニオンズの可愛い行動」をアピールすることだけに神経を注いでいる。

ボブがバナナ柄の服を着た女性を追い掛けてタクシーに近付き、運転手が気付かずトランクに押し込むという展開がある。しかし、そんなボブをケヴィンたちが捜索する展開には繋がらない。
ボブは女性と運転手に見つかるが、それで騒ぎになることも無い。放り出されて、それで終わりだ。
デパートのエスカレーターで客にぶつかっても、特に何も起こらないる人間がミニオンを見ても、まるで驚いたりしない。そもそも、人間がミニオンに気付いている様子さえ無い。
鏡で囲まれた大きな試着室に入っても、やはり何も起きない。閉店になっても、ただミニオンズが寛ぐ様子を描くだけだ。

大悪党大会へ向かうケヴィンたちは、ネルソン一家の車をヒッチハイクする。
ネルソン一家は幼いティナだけでなく赤ん坊のピンキーまで強盗としての魂を持っており、かなり使い勝手の良さそうな面々だ。
しかし一家はケヴィンたちを会場まで連れて行くと、それで役目を終えてしまう。個性の強そうな連中なのに、特にこれといった印象も残さないまま消えてしまう。
特にティナなんかは大きな可能性を感じさせるキャラクターなのだが、その場限りで雑に片付けられてしまう。

大悪党大会には力士のドゥーモや魚人のフランキーといったクセの強そうな悪人が参加しているが、こいつらも積極的に活用しようという気が全く無い。
その大会は、「ケヴィンたちがスカーレットと出会って手下になる」という段取りを処理するために用意されているだけだ。
そもそも「世界中の悪党が集まる大会」というイベント自体が色々と使えそうな要素なのだが、その仕掛け自体は全く膨らませようとしていない。

ボブがアーサー王の剣を引き抜くと国王に任命されるとか、人間の言葉を喋らないのにスピーチで民衆が喝采を浴びせるとか、その辺りは何から何までデタラメだ。
ミニオンズが法律を変えてスカーレットが女王に就任するとか、就任式のスカーレットを国民が祝福するとか、その辺りもテキトー極まりない。
っていうか、それ以外の部分のストーリー展開にしても、行き当たりバッタリのような状態になっている。
もちろん作品のテイストや話の内容を考えれば、やたらとリアリティーや理屈を求めるべきではないだろう。ただ、それにしたって、あまりにもデタラメすぎやしないかと。

「ミニオンが可愛い」というだけで1本の映画が製作され、それが大ヒットするんだから、これは凄いことだ。
ぶっちゃけ、ミニオンというキャラクターさえあれば、それだけでイルミネーション・エンターテインメントは永遠に稼ぎを生み出すことが出来るんじゃないかと思う。
ミニオンというキャラクターを生み出したのは、ものすごく大きい。
この映画は、キャラの持つ力ってのを強く感じさせらせれる作品である。

(観賞日:2017年12月20日)

 

*ポンコツ映画愛護協会