『ミッドウェイ』:1976、アメリカ

1942年4月18日、アメリカ軍は空母「ホーネット」からB-25のドーリットル隊を発進させ、東京を空襲した。側近の渡辺中佐から報告を 受けた海軍連合艦隊司令長官の山本五十六大将は、アメリカ軍基地ミッドウェー諸島でのアメリカ海軍空母部隊壊滅作戦に乗り出す。一方 、太平洋艦隊司令長官チェスター・W・ニミッツ大将の指令を受けたマット・ガース大佐は、ホノルルの真珠湾基地で海軍情報局の ジョセフ・ロシュフォート少佐と接触した。
ガース大佐は、ホノルルへ赴任してきた息子トム・ガース少尉から相談を持ち掛けられる。トムは日系人の恋人・佐倉春子との結婚を 考えていた。しかし春子の両親は、FBIによって危険分子とみなされた。ホノルルに戻っていた春子は、両親と共にハワイの日系人 収容所に収容されていた。そこでトムはガース大佐に尽力を求めてきたのだ。
広島湾柱島に停泊する戦艦大和では、作戦会議が行われる。山本大将、第一機動部隊司令長官・南雲忠一中将、第二艦隊司令長官・ 近藤信竹中将、第五艦隊司令長官・細萱戌子郎中将、第二航空戦隊司令官・山口多聞少将らが参加し、ミッドウェイへ米軍太平洋艦隊を 誘い込んで叩く作戦が検討された。近藤中将は反対するが、山本大将は「この戦争に勝つにはミッドウェイで大打撃を与える以外に無い」 と言う。珊瑚海海戦が終了してから作戦を再検討するということで、会議は終了した。
ニミッツ大将が副官のアーネスト・ブレイク少佐を伴い、真珠湾基地に到着した。ガース大佐はニミッツ大将に、珊瑚海海戦に関する報告 をする。結果は五分五分だが、空母ヨークタウンは酷い損傷を受け、残る空母はエンタープライズとホーネットだけとなった。ガース大佐 とロシュフォート中佐は、日本軍が最近になって多用している暗号「A−F」がミッドウェイを示すものだという推理をニミッツ大将に 進言した。
ロシュフォート中佐は確証を掴むため、「浄水装置が壊れた」とミッドウェイから打電させるようニミッツ大将に求める。これを何度も 繰り返せば、日本軍が反応するだろうというのだ。ロシュフォート中佐の狙い通り、日本軍は「A−F」の暗号を用いた電文を送った。 暗号を傍受していたガース大佐らは、「A−F」がミッドウェイだと確信するに至った。
山本大将らは、ミッドウェイでの作戦を話し合う。細萱中将率いる第五艦隊が、注意を反らすための陽動作戦として北方のアリューシャン を叩く。24時間後に南雲中将率いる第一機動部隊がミッドウェイを攻撃し、敵機と海岸砲台を壊滅させる。続いて近藤中将率いる第二艦隊 が侵入すれば、ニミッツ大将が空母を差し向けてくると日本軍は読んでいた。
敵の指揮官はハルゼー海軍中将が確実視されていたが、その戦法を研究している日本軍は、南雲部隊が待ち構えて撃滅できると考えていた。 敵艦隊の位置を確認するため、日本軍は5月29日にニシキダイ偵察機をフレンチフリゲート礁に出して潜水艦から燃料を補給し、翌日に 真珠湾を偵察させて敵艦隊がいるかどうかを報告させることが決定された。一方、海軍省から派遣されたヴィントン・マドックス大佐が、 ニミッツ大将の元にやって来た。マドックス大佐は、日本軍の暗号が敵の謀略だとする海軍省の考えを告げる。
広島湾から、南雲中将らが乗り込んだ空母「赤城」が出航した。第一航空艦隊航空参謀の源田実少佐が寝込んでいると報告を受けた 南雲中将は、「幸先が良くないな」と参謀長の草鹿龍之介少将に漏らす。ニミッツ大将は、皮膚病で真珠湾病院に入院しているハルゼー 海軍中将の元を訪れた。ハルゼー海軍中将は自分の代わりを務める第16任務部隊司令官として、まだ若く空母の経験が無いレイモンド・A ・スプルーアンス海軍少将を推薦した。
ニミッツ大将は太平洋艦隊第17任務部隊司令官・フランク・J・フレッチャー少将に会い、修理を終えた空母「ヨークタウン」で総指揮官 として出撃するよう指示した。まずスプルーアンス海軍少将が空母「エンタープライズ」と「ホーネット」を率いて出撃し、その48時間後 にフレッチャー少将の艦隊が出撃する手はずだ。ガース大佐は航空参謀として空母「ヨークタウン」に乗り込むこととなった。艦隊の数 では日本軍が米軍の4倍と圧倒している。スプルーアンス海軍少将は、再びハワイが攻撃される可能性も考え、空母をミッドウェイ島の 北東に待機させて南雲部隊を待つ作戦を取る考えをニミッツ大将に告げる。
5月28日、真珠湾からスプルーアンス海軍少将率いる艦隊が発進した。出撃準備を整える空母「ヨークタウン」にトムが姿を現し、ガース 大佐は驚いた。トムは転属が春子から引き離すための父親の差し金だと思い込んでいたが、ガース大佐は全く知らなかった。ガース大佐は 海軍調査部員の友人ハリー・ピアソン少将に会い、春子と両親の再調査を求めた。そして規則違反を承知で、不審な点が無ければ カリフォルニアへの送還を取り消して欲しいと依頼した。
5月30日、ガース大佐らを乗せた空母「ヨークタウン」が真珠湾を出た。一方、山本大将の元には、真珠湾の飛行偵察を中止するとの報告 が入った。フレンチフリゲート礁に敵艦がいて燃料補給が出来ないからだ。敵に戦艦大和の位置を知られる可能性があるため、南雲部隊 へ電文を送ることは取りやめになった。そのため、南雲部隊は敵空母がハワイにいると考えて航行を続ける。
細萱部隊がアリョーシャンを攻撃した。米軍偵察機は日本軍の第二艦隊を発見し、ミッドウェイに打電する。巡洋艦「愛宕」の近藤中将は 、山本大将に攻略部隊が発見されたことを打電する。フレッチャー部隊とスプルーアンス部隊は合流した。敵空母の位置が分からぬまま嵐 の中を進む南雲部隊では、回復した源田少佐が航空作戦の担当になった。
6月4日、天候が回復し、南雲部隊からは友永丈市大尉を総司令官とする第1次攻撃隊と索敵機が発艦する。空母「赤城」と「加賀」 では、敵空母攻撃用に魚雷を搭載した第2次攻撃隊が待機した。空母「蒼龍」と「飛龍」ではミッドウェイ攻撃のため、急降下爆撃機を 用意している。米軍偵察機ストロベリー5は南雲部隊を発見し、ミッドウェイに打電する。偵察機ストロベリー12は敵の大編隊を発見し、 ミッドウェイに打電する。
ミッドウェイ基地のシリル・シマード隊長は、フロイド・B・“レッド”・パークス編隊長(maj)率いる戦闘機隊を出撃させが、交戦の 末に壊滅した。ミッドウェイ基地に大打撃を与えたものの地上撃破の成果が不充分だったため、友永大尉は「第二次攻撃の要あり」と 南雲部隊に打電する。草鹿少将や源田少佐の進言を受けた南雲は、索敵機から敵艦隊発見の報告が無いこともあり、第2次攻撃隊から魚雷 を降ろして陸用爆弾に積み替えるよう命じた。
ストロベリー5から空母2隻の発見を打電されていたスプルーアンス海軍少将は、空母「エンタープライズ」と「ホーネット」から全機を 発進させて攻撃するよう命じた。巡洋艦「利根」から遅れて出発していた索敵機「利根4号機」から南雲部隊に、敵艦隊発見の打電が 入った。戻ってきた第1次攻撃隊が着艦を要請するが、ほぼ同時に空母「飛龍」艦長の山口多聞少将からは攻撃隊発進を求める打電が 入った。南雲は着艦を優先し、その後で攻撃機に魚雷を積んで発進させることを決定した。
空母「ヨークタウン」に全ての偵察機が戻り、攻撃部隊が出撃した。その中には、トムもいる。空母「ホーネット」から出撃したジョン・ C・ウォルドロン少佐率いる雷撃機隊は、戦闘機の護衛無しに南雲部隊を攻撃するが、全滅した。続いて空母「ヨークタウン」を出撃した マックスウェル・レスリー少佐率いる第三爆撃機隊、ジョン・タック少佐率いる第三戦闘機隊、ランス・マッセイ少佐率いる第三雷撃機隊 が攻撃を開始する…。

監督はジャック・スマイト、脚本はドナルド・S・サンフォード、製作はウォルター・ミリッシュ、撮影はハリー・ストラドリングJr.、 編集はロバート・スウィンク&フランク・J・ユリオステ、美術はウォルター・タイラー、音楽はジョン・ウィリアムズ。
主演はチャールトン・ヘストン、共演はヘンリー・フォンダ、ジェームズ・コバーン、グレン・フォード、ハル・ホルブルック、 三船敏郎、ロバート・ミッチャム、クリフ・ロバートソン、ロバート・ワグナー、エドワード・アルバート、ロバート・ウェッバー、エド ・ネルソン、ジェームズ繁田、クリスティーナ・コクボ、モンテ・マーカム、ビフ・マクガイア、クリストファー・ジョージ、ケヴィン・ ドブソン、グレン・コーベット、グレゴリー・ウォルコット他。


第二次世界大戦中にミッドウェイ諸島沖で起こった海戦を描いた作品。日本では「ミッドウェイ海戦」ではなく「ミッドウェー海戦」と 表記されることが多い。
真珠湾攻撃以降は圧倒的な戦力の差もあって優位に立っていた日本海軍は、この戦いで初めて日本海軍は空母4隻を失う敗北を喫した。
これによって戦況が大きく変わり、日本の敗戦に繋がっていったと言われる戦いである。
監督は『エアポート'75』のジャック・スマイト。元々はジャック・ギラーミンが撮る予定だった。
アメリカ建国200年記念として製作されて、1400万ドル(約42億円)という予算が注ぎ込まれた。
1974年の『大地震』に続き、MCAとユニバーサル映画が共同開発した音響効果システム「センサラウンド」方式で上映された。この センサラウンドは、『ジェット・ローラー・コースター』『宇宙空母ギャラクティカ』でも使われたが、わずか4作で終焉を迎えた。

ガース大佐をチャールトン・ヘストン、トムをエドワード・アルバートが演じている。
ゲスト出演者は、ニミッツ海軍大将のヘンリー・フォンダ、マドックス大佐のジェームズ・コバーン、スプルーアンス海軍少将のグレン・フォード、ロシュフォート少佐のハル・ ホルブルック、山本大将の三船敏郎、ハルゼー海軍中将のロバート・ミッチャム、トムの転属前の隊長ジェソップ少佐のクリフ・ ロバートソン、ブレイク少佐のロバート・ワグナー。
他に、ロバート・ウェッバー(フレッチャー少将)、エド・ネルソン(ピアソン少将)、ジェームズ繁田(南雲中将)、パット・モリタ (草鹿少将)らが出演。また、まだ『刑事ジョン&パンチ』が始まる前のエリック・エストラーダ(第三戦闘機隊隊員ラモス)、まだ 『私立探偵マグナム』が始まる前のトム・セレック(シマード海軍中佐)らも出演している。

いわゆるオールスター・キャストの大作映画だが、米軍側キャストに比べると日本軍側キャストは随分と落ちる。
だが、これはアメリカ映画であり、出演者は日本軍も全員が英語を喋ることを要求されている。「日本人の顔をした役者で英語の話せる メンツ」を揃えるには、そうなるのも仕方が無いだろう。唯一、三船敏郎だけが日本映画界の大物として参加しているが、そのセリフはアメリカ人の俳優によって 吹き替えされているぐらいだし。
日本側のキャストが落ちるのは、何しろアメリカ建国200年記念作品なのだから、当然と言ってもいい。
一応は「完全に米国寄りではなく日米の両面からイーヴンに描く」という建前になっているものの、キャストの部分でイーヴンではないの だが、そんなことは別に構わない。
トムと春子のロマンスが邪魔だとか、淡々としすぎていて張り詰めた緊迫感や手に汗握る臨場感に乏しいが、そういったことも本作品に とっては小さな傷でしかない。

この映画が抱える最大の欠点は、「流用フィルムがたっぷりと使われている」ということだ。
それも、流用フィルムの中には記録フィルムの映像も含まれているが、その大半が他の映画だ。
冒頭シーンが『東京上空三十秒』からの拝借だったり、日本軍のミッドウェイ空襲シーンの多くが『トラ!トラ!トラ!』だったり、空母 「ヨークタウン」の艦橋シーンが『全艦発進せよ』だったりする。
また、クライマックスとなる戦闘シーンの大半(登場人物がアップで映らないシーンのほとんど)は、円谷英二が特撮を担当した 『ハワイ・ミッドウェイ大海空戦・太平洋の嵐』からの無断盗用だ。
アメリカ建国200年記念作品なのに、日本映画の特撮シーンを無断でたっぷりと拝借している辺り、プライドもへったくれも無かったようだ。

古い映画からの流用シーンが多いために、本作品用に撮影した部分との映像の違いがクッキリと出てしまっている。また、流用映像と 本作品用に撮った映像を無頓着に繋いだりしているため、さっき飛んでいった飛行機が、カットが変わると別の機体に変わっているという 事態も起きている。
当然、実際の戦いとは異なる機体が戦闘に参加していたりするシーンもあるわけだ。
私はミリタリー・マニアではないが、マニアから見れば噴飯モノだろう。
また、話の面白さや盛り上げ方よりも「いかに流用フィルムを多く使えるようにするか」ということを優先したのか、展開としておかしな ことになっているシーンもあったりする。
完全ネタバレだが、終盤に出撃したガース大佐は死亡するのだが、それは着陸に失敗して死亡するというマヌケなものになっている。これ は流用フィルムを使うための展開であろう(そうでないとすれば、それはそれでダメだし)。
っていうか、そんなに予算が無かったのか。
キャストへのギャラで予算が全て消えたのか。

 

*ポンコツ映画愛護協会