『メテオ』:1979、アメリカ

月曜日。科学者のポール・ブラッドレー博士は、仲間と共にヨットレースに出場していた。そこへ沿岸警備艇の船が近付き、将校が「NASA の指令で迎えに来ました」と告げた。ハリー・シャーウッド長官が、すぐにヒューストンヘ来て欲しがっているという。ヒューストンへ 赴くと、シャーウッドはブラッドレーに内緒で、別居中の妻ヘレンに連絡して着替えを取り寄せていた。
シャーウッドの他に、イーストン将軍と指令主任のサム・メイソン、フライト・ディレクターのジャン・ワトソンも同席していた。5年前 にNASAを辞めたブラッドレーをシャーウドが呼び寄せたのは、それなりの理由があった。7日前、天文台から新しい彗星を発見したとの 連絡が届いた。その彗星は小惑星群に迫っており、ちょうど近くに火星探査船チャレンジャー2号がいたので、シャーウッドは観測を 命じた。船長はイーストン将軍の息子だ。
そして昨日、つまり日曜に観測が開始された。やがて彗星が姿を現し、小惑星群の一つオルフェウスに激突した。チャレンジャー2号は、 彗星が激突したデータを送った直後、通信が途絶えた。シャーウッドはブレッドレーに、「オルフェウスの破片が地球へ向かっており、 その中には巨大な物もある。計算すると、大雑把に言って6日後に地球に激突する」と説明した。
シャーウッドはブラッドレーに「明日の朝、ワシントンのNASA本部で会議を開く。昔の君の仲間も出席する。君も出席してほしい」と依頼 した。ホテルにチェックインしたブラッドレーはヘレンに電話を掛け、居場所を伝えた。火曜日、ブラッドレーが本部の会議室へ行くと、 誰もいなかった。そこにシャーウッドが現れ、「他には誰も来ない、2人で充分だ」と告げた。
シャーウッドはブラッドレーに、人工衛星ハーキュリーズを利用するアイデアを告げた。「ハーキュリーズを開発したのは君だ。君にも 色々と言いたいことはあるだろう。あれの転用を決めたのは私だ」と言うシャーウッドに、ブラッドレーは「転用じゃない、悪用だ」と 反発する。そもそもブラッドレーはハーキュリーズを宇宙ロケットとして開発したが、現在は核兵器を搭載し、ソ連を標的に定めた 軍事衛星として使われていた。シャーウッドはハーキュリーズで隕石を攻撃し、軌道を変えようと考えたのだ。
シャーウッドは「直径8キロもある隕石が地球に体当たりしてくる。それを防ぐにはハーキュリーズを使うしかない」と告げる。すると ブラッドレーは「だがアドロン将軍がハーキュリーズを手放すとは思えん」と懸念を示した。シャーウッドは「彼をどうやって外すかが 第一の難問だ。第二の難問は、ハーキュリーズを国際政治の切り札として取っておきたがる政治家たちをどうするかだ。説得を手伝って くれ」と言う。ブラッドレーは「分かった、その代わり、今度は妥協するなよ」と言葉を返した。
ブラッドレーとシャーウッドは政府の会議に出席するが、アドロン将軍は「ハーキュリーズは秘密兵器なので隠し通すべきだ」と大反対 した。ブラッドレーは「ソ連の思惑を気にして身動きが取れないのなら、勝手にするといい」と呆れ、会議の場を出た。彼がバーに入ると 、テレビではイギリスのBBCが隕石の接近を報じていた。それによって、初めてアメリカ国民は隕石のことを知った。
情報を分析したブラッドレーは、ハーキュリーズだけでは彗星の軌道を変えるパワーが不足していることに気付き、国防長官に伝えた。彼 はシャーウッドと共に大統領と面会した。国防長官は、他に宇宙用ロケットが無いことを大統領に告げる。ブラッドレーとシャーウッドは 「ソ連にもハーキュリーズに似た攻撃衛星があるはずです。両国の破壊力を合わせては」と提案した。
大統領はアドロンに、「今回の問題が解決するまで、ハーキュリーズ計画の責任者をブラッドレー博士に任命する。君は全面的に協力した まえ」と命じた。大統領は記者会見を開き、ハーキュリーズ計画について発表した。ただし、それは今回のような事態に備えての計画で あり、衛星は宇宙に向けられていると虚偽の説明をした。それから彼は、ソ連に向けてミサイルでの協力を呼び掛けた。ソ連の書記長は 宇宙物理学者デュボフの派遣を決めるが、ピョートル大帝と呼ばれる攻撃衛星を使って協力する気は全く無かった。
水曜日。ブラッドレーとシャーウッドは電信電話会社のビルへ行き、地下へ向かう。そこはハーキュリーズのコントロール・センターに なっていた。既にアドロンがおり、ブラッドレーは技術主任ロルフ・マンハイム、弾道分析の専門家ジャン・ワトキンス、その助手アラン ・マーシャル、追跡担当のビル・ハンターたちと会った。イギリスの天文台の責任者サー・マイケル・ヒューズから連絡が入り、24時間後 に最初の隕石群がやって来ることが報告された。
ワシントンにデュボフがやって来た。彼は通訳も担当する助手タチアナを伴っていた。木曜日、デュボフとタチアナはコントロール・ センターを訪れるが、アドロンはハーキュリーズの具体的なデータを提供することに難色を示した。そこへ現れたブラッドレーは、 アドロンが独自に通訳を用意しているのを見ると、「お互いの信頼が必要だ」と告げた。
アドロンは不快感を示し、その場を立ち去った。彼はシャーウッドを呼び付け、「国防長官からの命令だ。ソ連側が衛星ロケットの向きを 変えない限り、こちらも向きを変えることは無い」と告げる。一方、デュボフもピョートル大帝の存在を隠そうとする。ブラッドレーは既 にピョートル大帝の存在を知っており、協力するよう説得を試みるが、デュボフはのらりくらりと誤魔化した。
金曜日、シベリアのエスキモー夫妻は、上空から降って来る隕石を目撃した。直後、隕石は地球に激突し、大爆発が起きた。ブラッドレー はデュボフが時差ボケに苦しんで眠っている間に、タチアナを口説いた。ヒューズから連絡が入り、イタリアのピサの上空に隕石群が 現れたことが報告された。しかし隕石は大気中で燃え尽き、地上には一つも落ちなかった。
アドロンは勝ち誇ったような態度で、ブラッドレーたちに「幾ら待っても隕石など落ちてこない。いずれ私の見識が正しかったことが 分かる。ここは私のセンターだ」と怒鳴った。それを聞いたデュボフは激昂し、ワシントンのソ連大使館に連絡を入れた。デュボフの行動 を受けて、ソ連政府はアメリカの要請を受け入れ、ピョートル大帝を隕石の攻撃に使うことを承諾した。
土曜日、スイス・アルプスの雪山に隕石が激突し、大規模な雪崩が発生して多数の人間が犠牲となった。シャーウッドは大統領に面会し、 ミサイル発射の手順を説明した。別々の軌道上にあるミサイルが同時に隕石に到達するためには、発射時間をずらす必要があった。まず ピョートル大帝、40分後にハーキュリーズが発射することで、同時に到達する。「ミサイルの自動操縦装置が故障する確立は」と大統領に 訪ねられたシャーウッドは、「初めてのことなので、確率は分からない」と返答した。
日曜日、ブラッドレーはタチアナと共に食事を取った。その時、香港の天文台から隕石襲来の報告が入った。太平洋上に隕石が飛来し、 大津波が発生して香港へ向かっているという。その津波は香港に到達し、人々を飲み込んだ。いよいよミサイル発射準備に入り、まずは ピョートル大帝が発射された。ブラッドレーたちがハーキュリーズの発射を待っていると、ヒューズから通信が入った。彼は、新たに巨大 な隕石が発見され、それがニューヨークを目指していることを告げた…。

監督はロナルド・ニーム、原案はエドマンド・H・ノース、脚本はスタンリー・マン&エドマンド・H・ノース、製作はアーノルド・ オルゴリーニ&セオドア・パーヴィン、製作総指揮はサンディー・ハワード&ガブリエル・カツカ、撮影はポール・ローマン、編集は カール・クレス、美術はエドワード・カーファグノ、衣装はアルバート・ウォルスキー、視覚効果はウィリアム・クルーズ、視覚効果監修 はマーゴ・アンダーソン、音楽はローレンス・ローゼンタール。
出演はショーン・コネリー、ナタリー・ウッド、カール・マルデン、ブライアン・キース、ヘンリー・フォンダ、マーティン・ランドー、 トレヴァー・ハワード、リチャード・ダイサート、ジョセフ・カンパネラ、 シビル・ダニング、ボー・ブルンディン、キャサリン・デ・エトル、ジェームズ・G・リチャードソン、ビビ・ベッシュ、フィリップ・ スターリング、マイケル・ザスロウ、クライド・クサツ、ロジャー・ロビンソン、 セルマ・アーチャード、グレゴリー・ゲイ、バーク・バーンズ、スチュ・ネイハン、フレッド・カーニー、ヘンリー・オレク、ジョン・ ファインドレイター、ポール・タリー他。


『ポセイドン・アドベンチャー』『オデッサ・ファイル』のロナルド・ニームが監督を務めたSFパニック映画。
ブラッドレーをショーン ・コネリー、タチアナをナタリー・ウッド、シャーウッドをカール・マルデン、デュボフをブライアン・キース、アメリカ大統領を ヘンリー・フォンダ、アドロンをマーティン・ランドー、ヒューズをトレヴァー・ハワード、国防長官をリチャード・ダイサート、 イーストンをジョセフ・カンパネラが演じている。
他に、スイスのスキー場にいる女性をシビル・ダニング、マンハイムをボー・ブルンディン、ヘレンをビビ・ベッシュが演じている。

ブラッドレーを呼び寄せたシャーウッドは、「おお、良く来てくれた」と笑顔で歓迎する。
そこに緊張感は全く無い。
さらに「どうだね、ウイスキーでも。とにかく座ろう」と、まだノンビリしている。
だが、彼が伝える内容は、「そんなにノンビリと歓迎している場合じゃないだろ」という事態だ。
チャレンジャー2号ではイーストン将軍の息子も死んでいるんだし、もっと深刻な態度を示せよ。

っていうか、構成としては、回想として1週間前と日曜の出来事を描くよりも、彗星の激突を冒頭で見せた方がいいんじゃないのか。
まあ、そうすると最初にチープな特撮シーンから入ることになってしまうが、どうせ遅かれ早かれチープな特撮は見せなきゃいけないん だし。
俳優のギャラで予算の大半を使い果たしたのか、とにかく特撮シーンは安っぽいのよね。
ただ、大金を注ぎ込んだところで、仕上がりがそれほど良くなったとも思えないけどね。
「どんなに頑張っても、宇宙を舞台にしたパニック映画はポンコツになりがち」という持論が私にはあるのだが、この映画も、そこ から外れることは無い。

チャレンジャー2号が観測を始めると、やがて彗星が姿を現し、小惑星群の一つオルフェウスに激突する。それを見て、宇宙飛行士やNASA の連中が「早く逃げないと」とか「破片が飛んでくる」とか焦ってるけど、彗星が激突すればそういう事態が起きるのは、観測を始めた 時点で分かり切っていることだ。
なぜ今さら焦っているのかと。
そういうことが起きた時の備えを何もやっていなかったのかよ。
まさか、彗星は激突しないだろうと高を括っていたのか。

ブラッドレーがNASA本部へ行くと、シャーウッドが来て「他には誰も来ない、2人で充分だ」と告げる。
いやいや、幾らハーキュリーズを開発したのがブラッドレーであっても、地球に向かってくる彗星への対策について、たった2人で決める なんて有り得ない。どう考えても複数の専門家が集まってアイデアを持ち寄るべきだろうに。
っていうか、シャーウッドは誰にも相談せずに、自分一人だけで対策案を決めちゃってるんだよな。
で、それを押し通してしまう。

しかも、ブラッドレーやシャーウッドの恐ろしいところは、「人工衛星で彗星の軌道を変えよう」という計画を決めたら、それが失敗した 時のことを全く想定しないことだ。第2案を何も用意していないのだ。
幾ら第1案に絶対の自信があったとしても、それはあまりにも無責任だ。
それに、第1案にしても、そんなに自信満々でいられるような計画じゃないぞ。
何しろ、ハーキュリーズで何かを攻撃することは初めてのケースであり、一度もテストをしていない。
彗星に向けて発射した後、どうなるかは全く計算できない。

アドロン将軍は「ハーキュリーズは秘密兵器なので隠し通すべきだ」と大反対するが、何か代案があるのかというと、何も無い。
そして「もし激突しなかったらどうするんだ」と、呑気なことを言っている。
で、アドロンが反対したり、デュボフが来たりして、ダラダラとした話し合いがチンタラと続いて行く。
なんせ彗星が地球に落ちてくるまでは、その影響による災害を描くことも出来ないんだよね。だから、話し合いで時間を稼いでいる。
「人間ドラマを充実させようとしている」という風に擁護することも出来なくはないが、じゃあ実際に、そこで描かれる人間ドラマが充実 しているのか、魅力的なのかと問われたら、答えは「ノー、間違いなくノー」なので、もうフォローのしようがない。

ブラッドレーが呆れて会議の場を出た後、国防長官が「ここはやはり大統領の手を煩わせないことには」と言っているが、そんな大事な ことを、まだ報告してなかったのかよ。完全に政府のシステムが腐ってるな。
それを政治風刺として描いているのかというと、もちろん、そんな意図は全く無い。
で、イギリスのBBCが隕石の接近を報じるが、それをアメリカ大統領は知らなかったってことなんだよな。
どんだけバカな政府なんだよ。平和ボケした日本政府じゃあるまいし。
で、そのニュースを聞いた酒場の人々も、ちっとも慌てたりせず、ノンビリとアメフトの試合を見ている。
みんな、呑気だねえ。

隕石が宇宙を浮遊している様子が何度も挿入されるが、それによって緊迫感が煽られることは全く無い。
地球へ迫って来ているという印象は受けないし、ただ単に「ああ、ハリボテの隕石がフワフワしてるなあ」と思うだけだ。
「放っておいたら、みんな死んでしまうよ」という緊急事態にも関わらず、アメリカとソ連は政治的な駆け引きに固執してゴタゴタして いる。
それを政治批判の人間ドラマとして面白く受け止められれば良かったのだろうが、申し訳ないけど、「アホらしい」としか思えない。

追跡担当のビル・ハンターはブラッドレーに、「イギリスの他、他には直通回線が香港、プエルトリコ、オーストラリアだ」と説明 する。
なぜ、その4ヶ国なのか。
それに、もっと多くの国と直通回線を繋げよ。
その中に香港があって、終盤には香港が大津波に飲まれるシーンがあるが、なぜ色んな国がある中で香港なのかというと、ショウ・ ブラザーズが製作に関わっているからだ。

シベリアに隕石が落下した後、ジャンとアランがジョークを言ったりキスしたりというイチャイチャぶりを見せている。あと2日で地球が 大変なことになってテメエたちも死ぬかもしれないのに、やたら能天気。
デュボフは時差ボケで寝ているが、そんな場合じゃないだろ。時差ボケであろうと、その苦しさは我慢して必死に動けよ。
とにかく、みんな「ホントに事態を理解しているのか?」と疑いたくなるぐらい、危機感に欠けている。まるで「大変なことは起きるけど 、自分は何のダメージも受けない災害」に対して行動しているかのような感じだ。
せめてブラッドレーぐらいは脇目も振らず必死に頑張るべきだろうに、そのブラッドレーからして女にうつつを抜かしている始末。
みんな余裕だな、おい。
あと、デカい隕石の軌道を変えるための対策は考えているが、それ以外の隕石落下に対しては何の手も打とうとしておらず、だから大勢の 犠牲者が出ている。
それに関しては、各国政府が何の対策も取らないことに市民が怒ることも、マスコミが糾弾することも皆無。
みんな寛容なのね。

終盤、ヒューズは「新たに巨大な隕石が発見され、それがニューヨークを目指している」と告げる。
その情報を、なぜイギリスの天文台がキャッチして、NASAは全く知らないのか。
重要な情報は、必ずイギリスから届けられるんだよな。NASAの情報探知能力ってのは、そんなに低いのか。
で、そのニューヨークを目指す隕石に対してどのような対策を取るのかというと、「何もしない」というのがブラッドレーの 答えだ。思案する時間は全く無い。あっさりと決めている。
ブラッドレーが意見を述べた後、抗議する人間はいない。
「最初に見つけたデカい隕石のことで精一杯だから、ニューヨーク市民は犠牲になってね」ということなんだろう。
なんとも冷徹なモンだ。
だけど、テメエらがいる場所もニューヨークなんだよね。

で、ハーキュリーズ打ち上げの直後、ニューヨークに彗星が落下し、大規模な被害が出ている。
そりゃあ、そうなるわな。
その段階で、ブラッドレーたちは彗星による甚大な被害を防ぐことに失敗したと言っていいよな。
2つ目の巨大な衛星があることを全く想定しておらず、しかも激突直前まで探知できていないんだから。
チェスをしたり、ジョークを飛ばしたりする余裕を見せている暇があったら、そういう対策も考えておけ。そして別の大きな衛星が来る 可能性も、時間を惜しんで調査しろ。

その激突によって電信電話センタービルも崩壊し、コントロールセンターでも大勢の死傷者が出ている。
ダメじゃん。
で、話の流れからすると、「攻撃衛星が彗星の起動を上手く変えてくれるかどうか」というのがクライマックスのはずなのに、その時に ブラッドレーたちは何をやっているかというと、泥だらけになりながら、地下鉄の通路を通って避難している。
そこで急に脱出パニック映画になっちゃうのね。
ああ、そうそう、ミサイルによる作戦は、大きなトラブルも無く、あっさりと成功している。
「予期せぬ事態が起きたので、わずかな時間で対策を考える」という風な展開は無い。
念のために書いておくと、意図したアンチ・クライマックスってわけじゃないよ。

(観賞日:2010年7月11日)

 

*ポンコツ映画愛護協会