『メン・イン・ブラック:インターナショナル』:2019、アメリカ

2016年、パリ。MIBのエージェントであるHは、相棒で先輩のハイTと共にエッフェル塔へ赴いた。彼らは展望台にいたカップルの記憶をニューラライズで抹消し、エレベーターで立ち去らせた。2人は凶悪なエイリアンのハイヴと戦うため、武器を構えて足を進めた。20年前、ブルックリン。不法侵入したタランシアンを退治するため、動物管理局の局員を装ったMIBの2名が一軒の家を訪れた。2人は夫婦の記憶を消すが、その様子を幼い娘のモリーが2階の窓から見ていた。モリーは自室に入り込んだタランシアンに危険を感じず、逃がすことにした。タランシアンは家を去る際、「カブラ・ナクシュリン」と口にした。
ニューヨーク。成長したモリーはFBIやCIAの試験に合格するが、異星人を扱い部署が無いことを知って入局しなかった。彼女はパソコンのトラブルを扱う会社のオペレーターとして働きながら、異星人の動きを追っていた。変則飛翔物体の接近を知った彼女は軌道を割り出し、ゴシップ紙に掲載された異星人の元夫のジミーだと確信した。飛来したと思われる現場へモリーが行くと、高圧電流のフェンスに囲まれていた。しかし鳥の群れが消えたのを見た彼女は思い切って腕を突っ込み、通り抜けMIBられることを知った。
モリーはフェンスの中に入り、MIBエージェントがザンボリアンのジミーを注意して連行する様子を目撃した。彼女はMIBの車をタクシーで尾行し、ニューヨーク本部の建物を突き止めた。彼女は黒服に着替えてMIBに成り済まし、建物に侵入する。しかし簡単に気付かれ、尋問を受けることになった。彼女が「20年掛けて見つけ出した。雇ってほしい」と訴えると、エージェントOは雇うべき理由を尋ねた。モリーが「宇宙の仕組みを全て知りたい」と話すと、Oは彼女を採用することにした。トレーニングに合格したモリーは見習いエージェントのMとなり、Oは最初の任務としてロンドンへ行くよう指示した。
Hは素性を偽ってクルリアンのクラブに潜入するが、すぐにバレて襲われた。彼は反撃するが、毒蛇に噛まれてしまう。彼は解毒剤を持つクルリアンのエミリーに「何でもするから助けてくれ」と頼み、意識を失った。彼が目を覚ますと、ベッドでエミリーと一緒にいた。Mはロンドン支部に到着し、ハイTから方位磁石をプレゼントされた。マラケシュで閉店後のレストランを清掃していた男は、双子の異星人に殺された。双子は骨董品店へ行き、店主を脅して女王に会わせるよう要求した。護衛の歩兵が用件を尋ねると、彼らは「ジャバビアンを殺したい」と答えた。側近は「協定で関与できない」と言うが、双子が威嚇すると態度を変えた。
次の日、Mは支部に来たHに目を奪われ、仲間に尋ねて「ハイヴから地球を守った最高のエージェント」と聞かされた。遅れて会議に参加したHは、ハイTから「ジャバビアンの王族であるヴァンガスが、地球で羽目を外したいらしい。断れば地球が宇宙の塵になる」と説明を受ける。会議に参加していたエージェントCは、Hに嫌味っぽく「クズのお守り役?君が一緒にお茶してこい」と告げた。Hが軽口で返すと、ハイTは「ヴァンガスが付き添い役に君を指名してきた」と告げた。
Hが自分のデスクで転寝していると、Mが声を掛けた。Hが「瞑想中だった」と嘘をつくと、Mは「ジャバビアンに詳しいので手伝わせてほしい」と頼む。Hは「1人で大丈夫だ」と断り、Mが粘っても考えを変えなかった。しかしMが転寝していたことを指摘して去ろうとすると、Hは「やはり手伝いが必要かも」と述べた。HはMを伴ってクラブへ行き、ヴァンガスとの再会を喜んだ。ジャバビアンに詳しいと嘘をついていたMだが、実際は言葉も全く理解できなかった。
MはHが自分をヴァンガスのエサにするつもりだと悟り、激しい怒りを示した。Hは任務だと説得するが、Mの怒りは収まらなかった。Hの質問を受けたヴァンガスは明日には故郷へ帰ることを告げ、「大事な話がある」と言う。しかしHは軽薄な態度で、「いいから踊ろう」とフロアに連れ出した。ヴァンガスは「大事な話だ」と述べ、Hの腕を握った。Hの心を読んだヴァンガスは、「何があった?」と尋ねる。Hは相変わらず軽薄な態度で、「そっちこそ、何をマジになってる?」と口にした。
双子の異星人はクラブに現れ、ヴァンガスに向けて毒薬を飛ばした。ヴァンガスは気分が悪くなり、Hはタクシーに乗せてホテルへ戻そうとする。しかし双子の攻撃でタクシーは弾き飛ばされ、ヴァンガスは深手を負う。HとMは双子を攻撃するが、ダメージは与えられない。MはHの指示を受け、ヴァンガスに駆け寄った。MがHを呼ぼうとすると、ヴァンガスが「呼ぶな。彼は変わった。俺には分かる」と言う。彼はMの心を読んで信頼できる相手だと確信し、「これを隠せ」と赤い宝石を渡す。彼は「MIBで何かが起きてる。これは君を守ることが出来る唯一の物だ」と言い残し、息を引き取った。現場に応援のCたちが到着すると、双子は姿を消した。
HとMはハイTに呼ばれ、「ジャバビアンは君たちを解雇し、切断した首を送れと言っている」と聞かされる。彼はCから鑑識レポートを受け取り、「犯人は数年前にハイヴが乗っ取った星から来たダイアドナムだ。DNAがハイヴに変異している。ハイヴは寄生した相手を体内から操る」と解説した。CがHとMの除名処分を要求すると、ハイTは同意した。しかしMが「情報を漏らした人間が内部にいる」と言うと、ハイTは彼女にCと組んで事件を捜査するよう命じた。
ハイTはHに、「もう君を庇えない。私の後任にと思っていたが、間違いだった」と言う。Hは「俺は以前の俺です」と主張し、チャンスを与えてほしいと要請した。彼はCに「ハイTからリーダーに任命された」と嘘をつき、Mを連れ出した。彼はダイアドナムが使った毒薬について「量を間違えば即死。適量なら17時間ぶっ続けて踊れる」と説明し、製造場所へ向かうことにした。彼はMを連れてマラケシュへ飛び、異星人のナサールとバサムに遭遇した。彼らの言葉によって、MはHがリザ・スタヴロスという銀河最大の犯罪組織のボスと交際していたこと、別れてしまったことを知った。
Cは部下から監視カメラの映像を見せられ、Mがヴァンガスの未確認兵器を受け取ったことを知る。HとMは骨董品店へ行き、店主が殺害されて激しく荒らされているのを目にした。2人は店の奥で名も無き歩兵と出会い、Mはポーニーと名付けた。歩兵は女王が死んだので、Mに忠誠を誓った。店を出たMが未確認兵器について尋ねようとすると、Hが盗み取っていた。Cが差し向けたエージェントが来たので、2人は身を隠した。
CはハイTから勝手な行動を咎められ、「ヴァンガスはジャバビアの陸軍省から兵器を盗んだ。それをHとMが持っていた」と説明する。ハイTはCに隠れてHに連絡し、「逃げて私に連絡しろ」と指示した。HはMに兵器を渡して逃がし、囮になった。彼はナサールにバイクを借り、ダイアドナムに囲まれているMを救出した。2人が砂漠へ脱出すると、兵器が変形した。Mは超圧縮された青色巨星が入っているとこ気付き、ボタンを押して兵器の威力を試した。バイクに隠れていたバサムは、兵器を盗んで逃亡した。Hは「買うのはリザだけだ」と言い、武器商人と知らずに恋をしたことをMに話す。HとMはバイクを修理し、リザの住むナポリの要塞へ向かった…。

監督はF・ゲイリー・グレイ、脚本はアート・マーカム&マット・ホロウェイ、原作はローウェル・カニンガム、製作はウォルター・F・パークス&ローリー・マクドナルド、製作総指揮はスティーヴン・スピルバーグ&エドワード・チェン&ハワード・チェン&E・ベネット・ウォルシュ&リヨコ・タナカ&デヴィッド・ボーベール&バリー・ソネンフェルド、共同製作はデヴェン・R・レテンドル&マイケル・シャープ、撮影はスチュアート・ドライバーグ、美術はチャールズ・ウッド、編集はクリスチャン・ワグナー&ゼン・ベイカー&マシュー・ウィラード、衣装はペニー・ローズ、視覚効果監修はジェローム・チェン&ダニエル・クレイマー、音楽はクリス・ベーコン&ダニー・エルフマン。
出演はクリス・ヘムズワース、テッサ・トンプソン、リーアム・ニーソン、エマ・トンプソン、レベッカ・ファーガソン、レイフ・スポール、ロラン・ブルジョワ、ラリー・ブルジョワ、ケイヴァン・ノヴァク、スペンサー・ワイルディング、マーシー・ハリエル、イニー・クレモンス、アーロン・セロツキー、マンデイヤ・フロリー、マシュー・ベイツ、サルタージ・ガレウォル、スティーヴン・ワイト、ブライアン・シリマン、ジョン・スーザ、ジェフ・キム、マイケル・アダムス、マイク・カポッツォーラ、アニー・バーキン、アンドリュー・グリーナウ他。
声の出演はクメイル・ナンジアニ。


『メン・イン・ブラック』シリーズの第4作。
監督は『ストレイト・アウタ・コンプトン』『ワイルド・スピード ICE BREAK』のF・ゲイリー・グレイ。
脚本は『パニッシャー ウォー・ゾーン』『トランスフォーマー 最後の騎士王』のアート・マーカム&マット・ホロウェイ。
Hをクリス・ヘムズワース、Mをテッサ・トンプソン、ハイTをリーアム・ニーソン、リザをレベッカ・ファーガソン、Cをレイフ・スポールが演じている。O役のエマ・トンプソンが、3作目から続投している。

導入部の構成は、順番が逆の方が良くないか。まず20年前のモリーのパートを描いて、その後に2016年のシーンという順番の方がいいんじゃないか。
幼少期のモリーを最初に描くのなら、そっちを先に済ませた方がいい。「幼少のモリーから成長しかた彼女へ」という繋がりを優先したのかもしれないけど、そんなに上手い効果が出ているとは思えないし。
あと、「幼少期にMIBを見て憧れを抱き、20年後も夢を追い続けている」ってのは設定としては理解できるけど、彼女を突き動かす強い力ってのが、あまり伝わって来ないのよね。
コメディーだから軽妙に進めるのはいいんだけど、もう少しモリーの情熱を感じさせてほしいんだよなあ。

MIBはタランシアンを捜索している際、両親の記憶だけを消してモリーについては全く気にしていない。その家に娘がいることなど、全く考えちゃいないのだ。
成長したモリーがフェンスの中に入っても、タクシーで尾行しても、彼らは全く気付かない。建物に侵入されても、最初は気付いていない。
どんだけボンクラなんだよ。モリーが有能なんじゃなくて、こいつらがマヌケなだけだろ。
「ニューラライズがあるから」ってことに甘えて、気持ちが腑抜けになってないか。

『メン・イン・ブラック』シリーズってのは、ウィル・スミスとトミー・リー・ジョーンズのコンビがあってこそ成立すると思っている。ただ、もう2人とも年を取ったので、そのコンビでシリーズを続けるのは難しいと考えるのは理解できる。
「だから新しいコンビで」ってことなんだけど、そこまでして続けなくてもいいんじゃないかと。もう作品そのものの賞味期限が切れているように感じるのよね。
しかも、新コンビの魅力が乏しいのよ。個人としてもコンビとしてもね。
「インターナショナル」と言っているけど2人とも英語圏の俳優だから国際的な印象は無いし、男女コンビにしたことで得られる面白さも感じないし。

「新人がMIBについて詳細を知り、トレーニングを積んで」ってのは既に過去作で描いているので、今回は大胆に省略して終わらせている。分かるっちゃあ分かるけど、そのせいで淡白にも感じられる。そこの薄さを以降の展開で取り返せるなら何の問題も無いけど、その後も薄さと弱さが最後まで持続する。
そもそも『メン・イン・ブラック』シリーズは「浅薄上等」な作品だったけど、それでも「コンビの妙」とか「異星人のキャラやデザインの面白味」なんかで引き付けようとしていた。でも本作品は、それも無いからね。
特に「魅力的な異星人の不在」ってのは、かなり大きいと思うぞ。ぶっちゃけ、1匹でもいいから愛嬌のある異星人を登場させておけば、そこで引っ張っていける可能性は充分にあるからね。
とは言え、それでもHとMのコンビよりは、「Mとポーニー」とか「Mとルカ」のコンビで動かした方が遥かに面白くなりそうな予感はするけどね。

HはMから仕事を手伝いたいと言われた時、「1人で大丈夫だ」と断る。Mが粘っても考えを変えなかったのに、彼女が転寝をして去ろうとすると「やはり手伝いが必要かも」と言う。
なぜ急に態度を変えたのか、その理由が全く分からない。
クラブに移動してから「Mをエサにするつもりだった」ってことが分かるけど、だったら「Mの頼みを断り、粘られても断る」「Mが転寝を指摘して去る」という2つの手順は邪魔だ。
後者に関しては、その言葉が理由でHが態度を変えたような誤解を招きかねない。そこはHが態度を変えた時点で、「何か企んでいる」ってことが明確になる形にしておいた方が望ましい。

ヴァンガスを乗せたタクシーが吹き飛ぶと、HとMは急いで現場へ駆け付ける。この時、煙が充満する道路の向こうに双子がいるのだが、ほとんど姿は見えていない。
なのにカットが切り替わるとHとMが銃を構えて「手を挙げろ」とか言い出すので、そこは繋がりとして変になっている。
どう考えたって、「煙の中から双子が姿を現す」という様子を見せてから、「そいつらに対してHとMが銃を向ける」という流れにすべきでしょ。
そんなのは演出の技法が云々というレベルじゃなくて、初歩の初歩でしょ。

Hが毒薬について解説するシーンで、双子がヴァンガスに飛ばしたのは即死の効果を持つ物質だと判明する。
でも、双子はヴァンガスの気分を悪くしただけで、彼がタクシーに乗ってから吹き飛ばしているのよね。それって、まるで無意味な行動でしょ。
毒薬だけでも殺せるわけだから、それで済ませばいいでしょ。そうすれば、全く気付かれずに目的は遂行できるんだからさ。
わざわざタクシーに乗ってから吹き飛ばすという目立つ行動を取っても、何の得も無いでしょ。

ヴァンガスが指摘するまでもなく、Hの軽薄な態度には「何か変だぞ」と思っていた。そしてヴァンガスが心を読むことで、それは確信に変わる。
ただ、どんな事情があるにせよ、ヴァンガスが殺されたら、それに対してはHも真剣に受け止めるべきでしょうに。
ところが彼はヴァンガスが殺されても、「自分が真剣に話を聞き、必死になって警護しなかったからだ」と反省する様子は無い。
罪悪感を抱き、彼のために行動しようとする真剣さが乏しい。

マラケシュに飛んだHとMは、ナサールとバサムに会う。なので、こいつらが毒薬の製造者なのか、あるいは何か情報を持っているのかと思いきや、ただ世間話をしただけで別れてしまう。
ようするに、そこは「Hとリザの関係をMが知る」という手順を消化するために用意されているシーンなのだ。
でも、それは処理方法が下手すぎるだろ。
例えばナサールとバサムを情報屋にしておいて、「重要な情報を得るために接触し、それとは別にナサールとバサムはリザのことも喋る」という形にでもしておけばいいだろ。

HとMは「砂漠で誰もいないから」ってことで、軽いノリで恐ろしい破壊兵器を試す。
そういう軽薄なノリは1作目から既にあったモノなので、今さらあーだこーだ言っても始まらない。
っていうか、ちゃんとシリーズの持ち味を引き継いでいるってことでもある。なので、そこで感じる不快感は、ひとまず置いておこう。
ただ、そこも「バサムが破壊兵器の威力を知って持ち去る」という展開に繋げるための、下手な御都合主義を感じてしまうんだよね。

舞台がナポリの要塞に移ると、Hとタランシアンのルカ、Mとリザという対決が描かれる。
だけどエージェントとエイリアンの戦いなのに、普通の格闘アクションなんだよね。
そこはエージェント側が特殊な武器、エイリアン側が特殊能力を使ってのバトルを用意した方がいいでしょうに。演じているのがアクション俳優ならともかく、そうじゃないんだからさ。
そこで普通の格闘アクションを用意しても、誰も得をしないでしょうに。

前半から「Hは以前と変わってしまった」ってことに何度か言及しており、ヴァンガスはHの心を読んで信用することをやめる。なので、Hが何か隠しているのかと思ったら、特に何も無い。
しばらくするとリザとの関係が明かされるので、そこが絡んでいるのかとも思ったが、何の関係も無い。
何も無いのなら、そんなトコを伏線っぽく匂わせておくなよ。終盤になって「実は記憶が消去されていた」ってことが判明するけど、それもHの変化とは無関係だし。
っていうか、むしろ「Hの記憶が消去されている」ってことの伏線を張っておけよ。そこに繋がるヒントって、ほとんど無かったでしょうに。

(観賞日:2021年4月30日)

 

*ポンコツ映画愛護協会