『メモリーズ・オブ・ミー』:1988、アメリカ
ニューヨークに住むアビー・ポーリンは有能だが冷徹な心臓外科医。ある日、彼は手術中に心臓発作で倒れる。病院のベッドで少年時代のことを思い出すアビー。彼は恋人のリサに勧められたこともあり、疎遠になっていた父親エイブに会いに出掛ける。
エイブは5年ぶりに、ハリウッドでエキストラとして働いている父親に会った。エイブは役者の仕事に熱中するあまり、妻には離婚されている。発作で倒れたことを真剣に話そうとするアビーだが、エイブは茶化すばかりで真面目に聞こうとしない。
ギクシャクするアビーとエイブの元に、リサがやって来た。2人が似ていると話すリサに、アビーは強く反発する。だが、次第にアビーはエイブと打ち解けていく。そんなある日、エイブが体に変調をきたす。アビーはエイブに精密検査を受けさせるが…。監督はヘンリー・ウィンクラー、脚本はエリック・ロス&ビリー・クリスタル、製作はアラン・キング&ビリー・クリスタル&マイケル・ハーツバーグ、製作総指揮はゲイブ・サムナー&J・デヴィッド・マークス、撮影はアンドリュー・ディンテンファス、編集はピーター・E・バーガー、美術はウィリアム・J・キャシディ、衣装はラッセル・J・スミス、音楽はジョルジュ・ドルリュー。
主演はビリー・クリスタル、共演はアラン・キング、ジョベス・ウィリアムズ、ジャネット・キャロル、デヴィッド・アクロイド、フィル・フォンダカーロ、ロバート・パストレッリ、ラリー・セダー、マーク・L・テイラー、シェリル・バーンスタイン、ピーター・エルブリング、ジョー・シェア、ジョー・“フラッシュ”・ライリー、ビリー・ベック、マルガリート・メンドーサ、ノニー・ホワイト他。
ビリー・クリスタルとアラン・キングが製作も担当し、青春スターとして『ラブINニューヨーク』などに出演したヘンリー・ウィンクラーが初めて映画監督を務めた作品。
アビーをビリー・クリスタル、エイブをアラン・キング、リサをジョベス・ウィリアムズが演じている。また、ショーン・コネリーが本人役で数秒だけ顔を見せている。基本的には、息子アビーと父親エイブの確執と和解を描くヒューマンドラマとして作られていると思われる。そうなれば、まず2人の確執が提示されて、そこからどうやって互いに理解し、心の距離を近付けて行くようになるのかを描くという算段になる。
しかし、その最初の部分、つまりアビーとエイブの確執が、あんまり強く見えてこない。アビーはエイブに対して意固地になっているが、彼がそこまでの態度を取るだけの心情が、どうも伝わってこない。だから、彼の態度が今一つ理解できないのだ。
観客を感動させようとする演出は、これでもかと連発されている。しかし、素直に感動することが出来ず、ただ鼻に付くだけだ。全てにおいてワザとらしいために、どうにも感動できない。私の根性が捻じ曲がっているだけだと言われれば、そうかもしれないが。
劇中では、まるでエイブが何かに取り憑かれたように演説するシーンが、何度も登場する。だが、その演説シーンの意味も分からないし、どういった効果を期待しているのかも分からない。少なくとも、何の効果も感じなかったことは確かである。
ちなみに、アビーが走ったり踊ったりするシーンがあるのだが、心臓発作で倒れた人間が、平気でそんなことをしても大丈夫なのかしらね。周囲は止めなくていいのかかしらね。ま、何とも無いようだし、映画だからノープロブレムってことなのかもね。