『ミート・ザ・ペアレンツ』:2000、アメリカ

シカゴの病院で働く看護師グレッグ・フォッカーは、小学校の教師パムと交際している。グレッグはパムにプロポーズしようと考え、彼女 の教え子たちにアルファベットを書いた紙を持ってもらい、「結婚しよう、パム」というメッセージを見せようとする。だが、パムが妹 デビーからの電話に出て話し込んでしまい、完全にタイミングを失ったグレッグは子供たちを解散させた。
デビーの電話は、交際している医師ボブと婚約し、2週間後に結婚するという内容だった。パムはグレッグに、「ボブは先にパパの了解を 取り付けた。そういうのをパパが好きだと分かってる。ボブが贈り物をしたのも効いたみたい」と告げた。2週間後、グレッグはパムと共 に、彼女の実家へ行くことにした。グレッグはパムの父ジャックへの贈り物として、植木鉢を用意した。ジャックは体を壊して引退したが、 かつては花の専門家として働いていたとパムから聞いていたからだ。
グレッグはパムに渡すために婚約指輪を用意していたが、それを入れたスーツケースが大きすぎて、空港のゲートを通過しなかった。彼は 手荷物として機内に持ち込むつもりだったが、それは出来なくなった。アトランティック・アメリカン航空の係員は「向こうの空港で必ず 戻ってくるんですから」と言うが、戻ってこなかった。遺失物カウンターへ赴いたグレッグは、隣にいた母親の抱いている赤ん坊が吐いた ミルクで服を汚されてしまった。
グレッグはパムと一緒にロング・アイランドの高級住宅地へ向かい、彼女の父ジャックと母ディナが暮らす家に到着した。家に入る直前に なって、パムはグレッグに煙草を捨てるよう指示した。「父に不健康だと思われる」と彼女は言う。パムは「車も調べられる」と言い、 煙草を屋根の上に投げた。ジャックはジンクスという猫を飼い始めていたが、グレッグは猫嫌いだった。「嫌いじゃないですよ」などと 誤魔化そうとするグレッグだが、隠し切れなかった。グレッグは植木鉢を渡すが、ジャックは関心を示さなかった。
ジャックは電話を受け、酒が切れたと嘘をついて外出しようとする。するとパムはジャックに、「荷物が無いんだから、買い物に連れて 行ってもらったら」と持ち掛けた。グレッグはジャックの車に同乗し、ドラッグ・ストアで別々に買い物をすることになった。買い物を 終えたグレッグが外に出ると、ジャックは男と話し込んでいた。グレッグは、何も見なかったフリをした。
夕食の時、ジャックはパムの元婚約者ケヴィンのことを口にした。驚いたグレッグはシャンパンのコルクを飛ばし、ジャックの母の遺灰が 入った壷を割ってしまった。夜、書斎をあてがわれたグレッグは、隣室でジャックがディナに「あの男は何かおかしい」と言っているのを 盗み聞きした。隠し部屋を発見したグレッグが中に入ると、そこにはジャックのメモや嘘発見器があった。そこに現れたジャックは「試し にやってみるか」と持ち掛け、グレッグは嘘発見器に掛けられるハメになった。
パムはグレッグから話を聞かされ、ジャックが花の専門家というのは嘘で、実は34年間もCIAで働いていたことを打ち明けた。翌朝、 グレッグはジャックから「秘密を知ったのなら我々の一員だ。もう隠し事は無しだ」と告げられた。食卓に行くと、デビーとボブ、ボブの 父ラリーと母リンダが集まっていた。グレッグが医師ではなく看護師だという話題になり、パムは擁護するように「医師試験は受けている し、成績はトップだった」と告げた。
結婚式の先導役が来られなくなったため、ジャックの提案でグレッグが代役を務めることになった。全員は外出することになったが、 グレッグには着ていく服が無い。パムは、弟デニーの部屋へ行って服を借りるよう告げた。グレッグが部屋に行くと、デニーは朝帰りで窓 から入ってきた。グレッグはデニーの服を借り、皆と一緒に貸衣装屋へ赴いた。
デニーはマリファナの吸引器をジャンパーに入れたままだと思い出し、グレッグが脱いだ隙にポケットから取り出そうとする。だが、そこ へジャックが現れたため、「僕のじゃない」と嘘をついた。そのため、ジャックはグレッグがマリファナを吸っているのだと勘違いした。 グレッグはジャックから「言うべきことがあるだろう、真実を明かせ」と詰め寄られるが、何のことか分からない。ジャックは「もしも娘 を悲しませるようなことをしたら、容赦なく叩き潰すぞ」と告げた。
グレッグたちは、介添人主催のパーベキュー・パーティーに出席することになった。その家に到着したところで、パムは介添人がケヴィン だとグレッグに話した。ケヴィンは株で大成功しており、仕事を問われたグレッグは「営業関係で、破竹の勢いで成功している」と嘘を ついた。だが、その場にはジャックもいたため、すぐに職業が看護師だと語るハメになった。
パーティーは室内のプールサイドで催されるため、水着を着用することになっている。だが、グレッグは持っていないので、ケヴィンが 自分の物を貸すと言い出した。ケヴィンが用意してくれたのは、ビキニパンツだった。皆はプールで水上バレーボールを始めるが、 グレッグはミスをやらかす。挽回しようと強烈なスパイクを打つと、デビーの顔面に命中して鼻血を吹いた。
グレッグはディナから「書斎のトイレは問題があるから流さないで」と言われていたが、忘れて使ってしまった。トイレは一度流すと 止まらない状態なっており、結婚式のセットが組まれた庭まで汚水が溢れ出た。航空会社からグレッグの元にスーツケースが届くが、それ は別人の物だった。グレッグが問い合わせの電話をしている間に、ジャックは鍵を開けた。すると中にはディルドが入っていた。ジャック は諜報部にグレッグのことを調べさせ、医師試験を受けていないという情報を得た。
グレッグはジンクスを見つけて捕まえようとするが、屋根に上ったので後を追う。煙草を見つけたグレッグは、それを吸い始めた。すると ジャックが外に出て電話を掛け、タイ語を使って誰かと話し始めた。グレッグはジンクスを発見し、煙草を捨てて捕まえようとする。 雨どいに溜まった落ち葉が煙草で発火したため、グレッグは慌てて消そうとした。だが、雨どいが壊れてコードに引火し、庭に用意して いた結婚式のセットが全て燃えてしまった。グレッグはその場を逃げ出し、何も知らないフリを装った。
いなくなったジンクスをジャックが探しに行こうとするが、パムが「グレッグが行くわ」と口にした。動物保護センターへ赴いたグレッグ は、尻尾の先が白い以外はジンクスそっくりの猫を見つけた。グレッグは尻尾をペンキで黒く塗り、ジンクスに見せ掛けてジャックたちの元 に連れて行く。ジャックたちはグレッグを英雄扱いし、外食に出掛けた。家に残された偽ジンクスは、室内を荒らし回った。一方、ジャック は隣家の住人から、ジンクスが迷い込んだことを知らされる…。

監督はジェイ・ローチ、原案はグレッグ・グリエンナ&メアリー・ルース・クラーク、脚本はジム・ハーツフェルド&ョン・ハンバーグ、 製作はナンシー・テネンボーム&ジェイ・ローチ&ジェーン・ローゼンタール&ロバート・デ・ニーロ、共同製作はエイミー・セイレス& ショウナ・ワインバーグ、製作協力はグレッグ・グリエンナ&エモ・フィリップス&ジム・ヴィンセント、撮影はピーター・ジェームズ、 編集はジョン・ポール&グレッグ・ヘイデン、美術はラスティー・スミス、衣装はダニエル・オーランディー、音楽はランディー・ニューマン "A Fool In Love"作曲&歌唱はランディー・ニューマン、音楽監修はランドール・ポスター。
出演はロバート・デ・ニーロ、ベン・スティラー、オーウェン・ウィルソン、ブライス・ダナー、テリー・ポロ、ジェームズ・レブホーン、 ジョン・エイブラハムズ、フィリス・ジョージ、カリ・ローチャ、トーマス・マッカーシー、ニコール・デハッフ、 バーニー・シェレディー、ジュダー・フリードランダー、ピーター・バートレット、ジョン・エルセン、マーク・ハマー、エイミー・ ホーン、ウィリアム・セヴァーズ、ジョン・フィオーレ、マリリン・ドブリン、マーシー・リード他。


『オースティン・パワーズ』のジェイ・ローチが監督を務めた作品。
ジャックをロバート・デ・ニーロ、グレッグをベン・スティラー、 ケヴィンをオーウェン・ウィルソン、ディナをブライス・ダナー、パムをテリー・ポロ、ラリーをジェームズ・レブホーン、デニーを ジョン・エイブラハムズ、リンダをフィリス・ジョージ、ボブをトーマス・マッカーシー、デビーをニコール・デハッフが演じて いる。
また、パムの教え子の一人として、スペンサー・ブレスリンが出演している。

『アナライズ・ミー』と似たような感じで、ロバート・デ・ニーロが今まで演じてきた強面キャラのイメージを利用した コメディーだ。
だが、ジャックが異常な父親だというのも、グレッグを怪しんで探りを入れるというのも、どっちもヌルい。
もっとキャラを誇張すべきだし、もっと徹底的にグレッグを怪しむべきじゃないのか。そこが本作品の肝だろうに。
マリファナのことを知っても、そこからグレッグを執拗に調べたり、あるいは冷たく接したり、娘から遠ざけようとしたりすることも 無い。

ジャックがグレッグに対して勘違いする疑惑も、「マリファナを吸っている」という程度で、ものすごくヌルい。もっと大きな疑惑を 抱いた方がいい。
例えば、何かの凶悪事件に加担しているとか、どこかの犯罪組織に関わっているとか、それぐらいのスケールの疑惑に すれば良かったのに。
あと、どうせなら、ジャックが凄みを利かせた態度を示したり嫌悪感を露骨に示したりして、それにビビってグレッグがアタフタすると いう形にでもしておけば良かったんじゃないの。
本来なら、「ジャックが普通じゃないからグレッグがビビる」とか「グレッグは普通に行動しているのにジャックの猜疑心が異常だから 勝手に誤解する」とか、そういう形になるべきではないのか。
しかし実際には、ジャックがどういう人物かなんて無関係で、グレッグが勝手にやらかしている。
ジャックのキャラ設定が、「グレッグが嘘を重ねる」という部分と上手く絡んでいない。

ジャックがCIAだという設定は、ほとんど意味の無いモノになっている。
グレッグの態度に不審を抱くとか、マリファナを見つけて怪しむとか、そんなのは普通の父親だってあることだろう。
諜報部を使って医師試験のことを調べる場面はあるが、それも別にCIAじゃなくたって出来そうな気がするぞ。
むしろCIAじゃなくて、「やたらと猜疑心が強くて、娘の恋人に対して神経質になる父親」という設定の方が、異常性は際立ったんじゃ ないか。

パムは母と一緒に「パパはグレッグを気に入ったみたいね」と言うが、どこをどう取ったら、気に入ったと思えるのか。
そう思い込む設定にするのなら、ジャックが家族の前ではいかにもグレッグを気に入っている態度を取り、でも見えないところで嫌って いることを表現するというギャグを見せるべきじゃなかったか。
ジャックはパムとディナの前でも、グレッグを気に入っているような素振りなんて見せていなかったぞ(露骨に嫌っている態度も 見せなかったけど)。

タイトルロールの時点でグレッグは既に、小学校の前に煙草をポイ捨てするというマナー違反を平気でやらかしている。
だが、そんなのは可愛いものだ。シカゴを出発すると、彼がいかに問題のある人間かということが顕著になっていく。
主人公の好感度が低くて、全く共感できないのがツラい。
「誠実に振舞おうとするが、要領が悪くてヘマをしてしまったり、裏目に出たりする」ということなら、共感しやすい。
だが、グレッグはその場その場で薄っぺらい嘘をつき、それが裏目に出るだけだ。
完全に自業自得なのだ。

グレッグは、何か大きなヘマをやらかして、「このままではマズいから、何とかジャックに認めてもらおう」ということで嘘をつくわけ ではない。
まだ何も無い内から、ジャックに気に入られようとして嘘をつき、それを誤魔化すために、また嘘を重ねる。
全く空気が読めていないのも、こちらの神経を逆撫でするだけ。
「そりゃあジャックじゃなくても不快になるだろ」と思ってしまう。

グレッグは、ジャックが大事にしていた壷を割っても、それほど反省することも無く、どこか逆ギレっぽい態度をパムの前で見せて いる。
また、グレッグはケヴィンから仕事を尋ねられた時には、そこにジャックやパムがいるにも関わらず、平気で「営業関係、破竹の勢いで 儲かっている」と言う。
嘘をつくことに対して、ためらいや罪悪感が全く無いのだ。
例えば高田純次のように、いつも適当でデタラメなことばかり言っている陽気なお調子者というキャラクター設定だったとしたら、嘘 ばかりついていても、好感が持てたかもしれない。
それは、その嘘が自分を良く見せるため、誤魔化すための嘘ではないからだ。
しかしグレッグの場合、自分を良く見せるために、すました顔で淡々と嘘をついているだけだ。

グレッグは自分が間違ったことをしているのに、まるで自覚症状が無く、反省する素振りも見られない。
偽ジンクスがバレそうになって、慌てて家に帰るためにカーチェイスになる場面では、ジャックに対して強い敵対心を見せている。
でも、ジャックは何も悪いことをしていない。嘘を重ねていたことがバレても、平謝りすることは無く、ジャックに対して逆ギレし、 「そっちが悪いんだ、それにアンタだって嘘をついているじゃないか」と怒り出す。
最低な男だ。

それまでのグレッグの所業からすると、かなり頑張らないと挽回できないはずだが、「医師試験は本当に受けていて97点だった」と判明 しただけで、パムは「パパはヒドい」と言い出し、ディナも同調する。
おいおい、ジャックの何がどうヒドかったんだよ。
何もヒドいことなんかしてないぞ。
自分を良く見せるための嘘、不誠実な嘘ばかり重ねる野郎を嫌うのは、当たり前のことだろ。
なぜか「ジャックがグレッグを受け入れようとしなかったのが悪い」みたいなことになっちゃってるんだが、いや違うだろ。

で、最後はジャックまでもが、「グレッグが本気で娘を愛している」という一点だけで、許してしまう。
それどころか、自分からグレッグに歩み寄り、家族の一員になってほしいと頭を下げている。
それに対して、グレッグは「貴方がかなり変わらなきゃダメだ」と責めるように言う。
テメエなんかに、そんなことを言う資格はねえよ。
なんでグレッグが悪いのに、「俺が嘘を重ねたのは貴方のせいだ」みたいな言い草になってんだよ。
改心するのか、挽回するのかと思ったら、こいつは最後までクソ野郎のままだ。

グレッグだけでなく、パムも全く好感の持てない人物だ。
彼女は実家に到着すると、グレッグに「煙草はダメ、車も調べられる」と屋根の上に捨てるが、父親が煙草を嫌うことは事前に分かって いるはずで、なぜ家に到着してから言い出すのか。
父が猫を飼っていることも事前に分かっているはずで、それも猫嫌いのグレッグには事前に言っておくべきだ。

パムは、グレッグがポリグラフに掛けられたと聞いて、ようやくジャックが花の専門家じゃなくてCIAだったことを明かす。
そりゃあCIAだったことを、そう簡単に打ち明けることは出来ないだろう。
ただ、グレッグがプレゼントとして植木鉢を用意した時に、それを父が喜ばないのは分かるはず。
だったら、贈り物を変更するよう上手く誘導すべきじゃなかったのか。
それと、父に対する心構えをキッチリ持っておくよう警告しておくべきではなかったのか。

介添人主催のパーティーに行く時も、パムは家に到着して初めて、「実は介添え人がケヴィンで、そこはケヴィンの家」とグレッグに 告げる。
この女、恋人に対して、あまりに無神経で誠意が無い。
パムがグレッグに対して無神経だということが、笑いに繋がっているわけでもない。
っていうか、製作サイドが「パムは無神経」ということを分かっていないかのようにさえ感じられる。

(観賞日:2009年9月21日)

 

*ポンコツ映画愛護協会