『メイズ・ランナー』:2014、アメリカ&イギリス

青年のトーマスが目を覚ますと、WKCDの文字が刻印されたドラム缶と共に荷物用リフトに乗せられていた。リフトは高速で上昇を続け、しばらくすると停止した。するとトーマスが乗っているボックスの蓋が開かれ、大勢の若者が彼を見下ろした。ギャリーがトーマスを引っ張り出し、その仲間たちは「使えなさそうだ」「飯炊きを頼むか」と馬鹿にする。逃亡を図って走り出したトーマスは、周囲が高い壁で封鎖されていることを知った。
トーマスは檻に監禁され、そこへグループのリーダーであるアルビーがやって来た。「もう逃げるなよ。自分が誰で、どこから来たのか教えてくれ」と彼が言うと、トーマスは「何も覚えてない」と怯えた様子で告げる。アルビーは落ち着くよう促し、「普通のことだ。皆、そうだった。名前だけは数日で思い出す」と話す。彼はトーマスを連れ出し、壁で包囲された場所を案内する。彼はトーマスに、「ここで食べ、眠る。食べ物も住処も自分たちで作る。必要物資はボックスが届けてくれる。毎月1度、ボックスが物資と新入りを運んでくる。今月は君だった」と説明した。「誰が運んでくるんだ?」と問われた彼は、「分からない」と答えた。
トーマスはアルビーからサブリーダーのニュートをに紹介された後、壁の一部に隙間があること、その奥に通路が続いていることに気付く。「あれは何?」というトーマスの質問に、アルビーは「ルールは3つ。1つ目は役割を果たすこと、2つ目は仲間を傷付けないこと。最も重要なのは、壁を越えないことだ」と告げた。アルビーはチャックに、トーマスの世話係を任せた。チャックはトーマスに、「皆が君と同じ体験をした」と告げた。
トーマスが通路を見に行こうとすると、チャックは「見るのはいいが、絶対に入るな」と釘を刺した。「なぜだ?」とトーマスが訊くと、彼は「知らないけど、そう言われてる」と答えた。通路から2人の若者が出て来ると、チャックは「僕らは駄目だ。ランナーはいい。迷路に詳しいから」と述べた。トーマスが通路に近付くと、ギャリーが突き飛ばした。反感を抱いたトーマスは、駆け付けたアルビーに「この中には何がある?ここから出せ」と怒鳴った。アルビーが「無理だ」と告げた直後、壁が動いて通路は封鎖された。
その夜、ニュートはトーマスに、「ギャリーは君の命を救った。迷路は危険な場所だ」と告げる。さらに彼は、「ミンホをリーダーとするランナーたちが毎朝、扉が開くと迷路へ行き、構造を調べて出口を探してる」と語る。それは3年前から始まっているが、まだ出口は発見できていなかった。トーマスはニュートから、「迷路は毎晩動く。ランナーは俊足だから、一夜を迷路で明かすことは無く戻って来る。戻れなきゃ殺される」と聞かされた。「誰に?」という問い掛けに、彼は「グリーバーだ。みんな殺されるから見た人はいないが、確かにいる」と述べた。
ニュートはトーマスに、大工のグループ、肉をさばく係のウィンストン、怪我人の手当てを担当するクリントとジェフたちを紹介する。トーマスが「ランナーになるには?」と訊くと、彼は「なりたい奴などいない」と告げた。トーマスはギャリーと仲間たちに挑発されて、円から押し出す勝負に挑んだ。最初はギャリーに軽く押し出されたトーマスだが、すぐに反撃した。足を引っ掛けられて転倒したトーマスが自分の名前を思い出すと、住人たちは「よくやった」と祝福した。
壁の向こうで不気味な音がいると、ギャリーはトーマスに「あれがグリーバーだ。心配するな、ここは安全だ。壁は通れない」と述べた。夜、就寝したトーマスは、どこかの施設で拘束されている夢を見た。夢の中では「WKCDは正しい」という女性の声が響き、別の若い女性が「貴方は変わる」と話し掛けた。目を覚ましたトーマスはアルビーに連れ出され、「今は平和だが、前は暗黒時代だった。恐怖とパニックで大勢が死んだ。その後、秩序を確立して平和を築いた」と聞かされた。
トーマスはニュートに、その場所から脱出する方法を尋ねた。彼は複数の作戦を提案するが、ニュートは「蔦が途中までで壁は登れない。ボックスは人が乗っていると下りない。君が考え付く方法は全て試した」と告げた。トーマスは彼に指示され、肥料を取りに森へ向かった。そこにランナーのベンが現れ、いきなりトーマスに襲い掛かって「お前がやった。俺は見た」と怒りを示す。トーマスは抵抗し、仲間の元へ逃走した。アルビーたちがベンを取り押さえ、ベンの腹に刺された痕を発見した。
アルビーはジェフたちに、トーマスを檻へ運ぶよう命じた。彼はトーマスに、「刺されたら、ああなる。ベンはもうマトモに話せない。どんどん毒は広がる」と語った。彼はベンを壁へ連れて行き、仲間と共に棒を使って押し込んだ。ベンは助けてくれと懇願するが、扉は閉じられた。その夜もトーマスは、昨日と同じ内容の夢を見た。早朝に目を覚ました彼は、アルビーがミンホと共に迷路へ向かうのを目撃した。彼はニュートに、ランナーではないアルビーが迷路へ入った理由を質問した。するとニュートは、「ベンの辿った後を追跡する。状況が変わった」と説明した。
トーマスたちが扉の前で待っていると、閉じる寸前になってミンホが戻って来た。彼は刺されて昏睡状態のアルビーを抱えていたが、脱出は間に合いそうになかった。トーマスが咄嗟に飛び込んだ直後、迷路は封鎖された。ミンホが「行くぞ」と言うと、トーマスは「アルビーを置いていけない」と告げる。彼はミンホに手伝ってもらい、蔦の上にアルビーを吊るして固定しようとする。しかしグリーバーが迫ってきたので、ミンホは逃げ出した。トーマスはアルビーを固定し、グリーバーから身を隠した。
トーマスはグリーバーに見つかって逃げ出すが、追い詰められてしまう。そこへミンホが駆け付け、「迷路が変わってる、来い」と先導した。トーマスは迷路の中にある扉が閉じるタイミングを利用し、グリーバーを殺した。トーマスとミンホは、アルビーを運んで迷路から脱出した。ギャリーはニュートに「この3年間、グリーバーと共存していたのに、こいつが殺しちまった」と言い、トーマスの処罰を要求した。ミンホはトーマスの勇敢な行動を称賛してランナーにするよう推薦し、ギャリーは激しく反発した。
リフトの方で物音がしたので、住人たちは急いで向かった。すると前回から1ヶ月が経っていないにも関わらず、ボックスが届いた。そのボックスには若い女性が昏睡状態で乗せられており、「彼女で終わり」と書かれたメモを握り締めていた。一瞬だけ目を覚ました女性は、「トーマス」と口にして再び意識を失った。
ニュートは仲間たちに、「彼女が何か知っているはずだ。目覚めるのを待とう」と告げた。トーマスが勝手に迷路へ向かおうとしたので、ミンホが呼び止めた。トーマスが「もう少し迷路を調べよう。敵の正体を探りたい」と言うと、ミンホはメンバー3人を集めて同行した。一行は扉に挟まれているグリーバーの足を見つけ、引っ張り出した。すると足の中にはWKCDの文字が刻印された機械が埋め込まれており、デジタル画面に7という数字が表示されていた。
トーマスは機械をニュートたちの元へ持ち帰り、「僕らを送り込んだ奴らが作った。迷路へ行こう。何か分かるかも」と言う。ギャリーは「こいつはルールを無くそうとしている。罰するべきだ」と訴えるが、ニュートはトーマスをランナーに任命した。ミンホはトーマスを自分の小屋へ案内し、迷路の立体模型を見せた。彼はトーマスに、「全てのサイクルやパターンを調べ尽くしたが、出口は見つからない。アルビーの方針で、脱出の希望を持たせるため、内緒にしていた」と告白した。
ミンホはトーマスに、「1年前、外側の壁を調べて、1からまでの8番号が書かれているのを発見した。毎晩、迷路が変わる度に新しい壁が開く。今日は6が開いた。明日は4、8、3の順番で開く。パターンは同じだ」と語る。トーマスが「7は特別な数字か?」と尋ねると、彼は「グリーバーが死んだ時、7が開いていた。そこから来たんだろう。明日、詳しく調べてみる」と答えた。目を覚ましたテレサは見張り台に閉じ篭もってナイフを構え、住人が近付こうとすると石を投げて妨害した。
トーマスは落ち着くようテレサを諭し、彼女に歩み寄った。テレサは他の面々と同じように何があったのか覚えていなかったが、最初から自分の名前だけは記憶していた。さらに彼女は、どこかの施設でトーマスに見られながら女性に「WKCDは正しい」と言われたことも覚えていた、トーマスは彼女に、自分の夢に彼女が出て来たことを話した。テレサはトーマスに、ポケットに入っていた謎の注射器2本を差し出した。注射器にはWKCDの文字が刻まれており、トーマスはアルビーに打てば助かると確信した。
トーマスから話を聞いたニュートは、危険だと反対する。しかしトーマスは「もう死に掛けてる。これ以上は酷くならない」と説き伏せ、アルビーに注射した。ニュートは仲間たちに、交代でアルビーを見張るよう指示した。翌朝、トーマスとミンホが迷路に入ると、もう7が開いていた。「刃」と呼ばれる場所に辿り着いた2人は、血まみれになっているベンのシャツを発見した。ミンホはトーマスに、「たぶんグリーバーがベンを運んだんだろう」と述べた。
グリーバーの足にあった機械が音を立てたので、トーマスはミンホのリュックから取り出した。彼は機械が自分たちを導いていると確信し、迷路の奥へ進む。そこはミンホも来たことが無い場所で、行き止まりになっていた。機械のランプが赤から緑に変化すると、壁が開いて奥に道が見えた。奥へ進んだトーマスとミンホは、謎の光線を目撃した。壁が閉じ始めたので、2人は慌てて脱出した。すると迷路内部の全ての扉が次々に閉じ始めたので、彼らは必死で外へ出た。
トーマスとミンホは仲間たちに、「新しい道だ。出口があるかも」と伝える。トーマスはギャリーから激しい口調で批判され、「3年も何をしてた?行動しろ」と反論した。そこへテレサが来て、アルビーが目覚めたことを知らせる。アルビーはトーマスに「出口があるかも」と言われると、「無理だ。出ることは許されない。君を思い出した。君は奴らのお気に入りだった。なぜ来た?」と告げる。外が騒がしくなったのでトーマスたちが行くと、迷路の扉が閉まらなくなっていた。トーマスたちが警戒心を抱いて準備を整えようとしていると、迷路からグリーバーが飛び出してきた…。

監督はウェス・ボール、原作はジェイムズ・ダシュナー、脚本はノア・オッペンハイム&グラント・ピアース・マイヤーズ&T・S・ノーリン、製作はエレン・ゴールドスミス=ヴァイン&リー・ストールマン&ウィク・ゴッドフリー&マーティー・ボーウェン、製作総指揮はジョー・ハートウィックJr.&エドワード・ガマラ&リンゼイ・ウィリアムズ、撮影はエンリケ・シャディアック、美術はマーク・フィッシェラ、編集はダン・ジマーマン、衣装はシモネッタ・マリアーノ、音楽はジョン・パエザーノ。
出演はディラン・オブライエン、パトリシア・クラークソン、カヤ・スコデラーリオ、アムル・アミーン、トーマス・ブローディー・サングスター、キー・ホン・リー、ウィル・ポールター、ブレイク・クーパー、デクスター・ダーデン、ジェイコ


ジェイムズ・ダシュナーによるヤングアダルト小説3部作の第1部を基にした作品。
監督はグラフィック・アーティスト出身のウェス・ボールで、これが長編映画デビュー作。
ノア・オッペンハイム&グラント・ピアース・マイヤーズ&T・S・ノーリンは、いずれも初脚本。
トーマスをディラン・オブライエン、WCKDの責任者のエヴァをパトリシア・クラークソン、テレサをカヤ・スコデラーリオ、アルビーをアムル・アミーン、ニュートをトーマス・ブローディー・サングスター、ミンホをキー・ホン・リー、ギャリーをウィル・ポールター、チャックをブレイク・クーパーが演じている。

ザックリ言うと、『CUBE』のスケール拡大版&劣化版である。
『CUBE』に比べれば規模も予算も桁違いだが、仕掛けの面白さは全く無い。
「迷路を通らないと脱出できない」という状況設定が序盤に示されているんだから、「主人公が迷路のパターンや仕掛けを解読し、様々な罠をかいくぐる」という面白さを期待するのは、ごく普通のことだろう。
ところが「3年前から調査が実施され、大半の構造は分かっている」ということが明らかにされ、トーマスが迷路の仕掛けに苦労しながら解き明かすような展開は全く無い。おまけに、途中で「全て調べ尽くしたが出口は無い」とまで言ってしまう。
「路に迷う」と書いて「迷路」なのに、その趣向は「ほぼ死に体」となっている。
迷路の意味を殺したまま話を進めるなら、そんな舞台を用意したのは何のつもりなのか。

チャックはトーマスに、「みんな殺されるから見た人はいないけど、グリーバーは絶対にする」と断言する。
だけど誰も見たことが無いのなら、「絶対にいる」とは言い切れないだろ。
っていうか、その後でグリーバーに刺されたベンが戻って来るので、「いや殺されてないじゃん」と言いたくなる。
「刺されたら毒が回って助からない」ってこともアルビーが説明するんだから、そこまで分かってるんでしょ。ってことは、殺されずに戻った奴が過去にもいたんだろうに。

トーマスが転倒して名前を思い出すと、全員が「よくやった」と祝福する。それまで馬鹿にして挑発的な態度を取っていたいたギャリーでさえ、「よくやった」と握手を求める。
ってことは、それまで彼らがトーマスを馬鹿にしていたのは、彼に名前を思い出させるための策略だったのか。
ギャリーが仲間の連帯に反するような言動を取っても、アルビーが黙認しているのは不自然だしね。
ただ、そう思っていたら、後で再びギャリーがトーマスを攻撃する態度を取るようになるので、どうなってんのかと言いたくなるぞ。

トーマスはベンに森で襲われるのだが、その直前に何かを見て気にしているような素振りを見せている。
直後のシーンで言及するのかと思ったが、アルビーたちがベンを処置する手順に移り、そのまま先へ進んでしまう。
後から「トーマスが森で見た何かについて触れる」という展開があるのかと思ったが、それも無い。
なので、あの時にトーマスが見た物は何だったのか、そこで彼が何か思い出したのか、全く分からないまま終わっている。

ベンは森でトーマスを襲うけど、彼はランナーだから迷路に入っていたはずでしょ。それなのに、他の住人に気付かれず森まで来るのは不自然でしょ。
あと、ベンは出て来てトーマスを襲撃しているけど、アルビーは意識不明に陥っているのよね。同じように刺されたのに、全く症状が違うのは都合が良すぎるだろ。
で、そんなベンをアルビーたちが棒で迷路に押し込むと壁が封鎖されるのだが、どういう理屈なのかサッパリ分からないぞ。
「誰かが入ったら扉が封鎖される」ってわけでもないでしょ。ちょうど閉じる時間を見計らって、ベンを押し込んだのか。でも時計が無いから、正確な時間なんて分からないはずだし。

トーマスはグリーバーを殺した後、ミンホと共にアルビーを運んで脱出する。つまり扉が開くタイミングで都合良く外へ出て来るんだけど、それが分かった理由も不明。
あと、迷路は夜が近付いたら封鎖されるわけじゃなくて、1日に何度も開閉するのかよ。そういうの、先に説明しておけよ。
後からどんどん新たな設定が登場し、おまけに丁寧な説明も欠如しているので、「その場その場で適当に設定を付け加えたり変更したりしている」という風に思えるぞ。
原作小説があるので、実際は行き当たりばったりじゃないはずでしょ。だったら、ちゃんと説明しようぜ。

ニュートはトーマスに、「アルビーは最初にここへ来た人物で、1ヶ月を1人で過ごした」と説明する。
だけど、それは不可解だ。最初に送られて来たのなら、脱出するため迷路へ入るはずだ。そこが迷路になっていることも、グリーバーがいることも知らないはずだしね。
そして何も知らずに迷路へ入ったら、まず間違いなく命を落とすはず。アルビーは俊足ってわけでもないしね。
っていうか「1ヶ月に1人ずつ送られる」というルールだと、「そいつらが何も知らず、順番に迷路へ入って死ぬ」ってことが繰り返されるだけになるんじゃないか。大勢が迷路に関する情報を知った上で共同生活を送るという状況が生まれるのは、かなり無理がある。
それを成立させようとしたら、1度に複数の人間を送り込まないとダメなんじゃないか。

トーマスはアルビーを抱えたミンホが脱出できないと感じた時、咄嗟に迷路へ飛び込む。
だけど、飛び込んだら救出できるわけではないし、何の意味も無い行動だ。
「アルビーを置いていけない」ってことで運ぼうとするのも、バカな考えにしか思えない。
あと、ミンホは扉が閉まるのを知りながらも何とかアルビーを運び出そうとしていたのに、蔦に吊るそうとした時にグリーバーが来ると見捨てて逃げ出すのは、キャラの描写に一貫性が無いように感じるぞ。

トーマスの行動が過剰にヒロイックなのは、違和感が強い。
その不可解な正義感や使命感は、どこから湧いて来るのかと。
最初からそんなキャラのアピールがありゃともかく、単に好奇心が強そうな奴という印象しか無かったし。
そんなトーマスはテレサが目覚めて何か喋るまで待っていればいいものを、勝手に迷路の調査へ向かう。ただ無謀で愚かなだけだ。
タイムリミットが迫っているわけでもないんだから、何を焦っているのかと。

1ヶ月が経過しない中でテレサという新入りが運ばれてくるのに、若者たちは大して動揺することもなく、冷静に対応している。
だけど、テレサが来るまでは、どうやら男だけの集団生活だったんでしょ。そんな中へ若い女が放り込まれたんだから、もっとザワついてもいいはずでしょ。
なんで性欲を剥き出しにする奴とか、まるで登場しないのか。
若くて性欲が有り余っている時期だろうに、そこを無視して話を進めるのは、まあ不自然なこと。

ミンホはトーマスに、「迷路を調べ尽くしたが出口は無かった」と告白する。
ってことは、それが判明して以降の彼を含むランナーは、何の意味も無いと分かっているのに、グリーバーに襲われるリスクを冒して迷路に入るという行動を繰り返していたのか。なんて不毛な日々なのか。よく精神を正常に保てたな。
ただ、「状況が変わった」ってことでアルビーが迷路に入ったんでしょ。同行したミンホは、その理由を聞いているはず。
わざわざアルビーが迷路に入るんだから、状況の変化ってのは「出口が見つかるかも」ってことじゃないのか。それについて、なぜミンホは触れないのか。そして、なぜトーマスも彼に質問しないのか。

トーマスが注射器をテレサから見せられた時、「アルビーに打てば助かる」と確信できる根拠はサッパリ分からない。
機械が音を立てた時、「僕らを導いている」と確信できる根拠もサッパリ分からない。
そう確信したトーマスが、まるで最初から分かっていたかのように全く迷わず迷路を進む理由もサッパリ分からない。
後から「実は」という種明かしがあるわけではないし、そこに誰も疑問を抱かないので、ただの下手な御都合主義にしか見えない。

終盤、迷路からグリーバーが飛び出し、トーマスたちに襲い掛かる。
だけど、これまでも迷路の扉が開いている時間帯はあったはずでしょ。その時はグリーバーが飛び出して攻撃してくることもなかったんだよね。だったら、なぜ今回だけ外の面々まで襲うのか。
で、そいつを退治した後、ギャリーに「お前のせいだ、破壊のために送られてきた」と責められたトーマスは「記憶を取り戻す」と言って残りの注射器を自分に打つのだが、どういうことなのかと。1つ目をアルビーに解毒剤として打たのに、なぜ別の用途で使うのか。
そりゃあアルビーは注射の後で過去を思い出していたけど、そこは無理があるわ。

注射を打ったトーマスは、「WKCDが幼少期から試練を与えて人体実験していたこと、自分とテレサはWKCDの手先だったことを思い出す。
で、彼と同調する面々が脱出するとラボのような場所があって所員が全滅しているのだが、モニターにエヴァが現れて「太陽が世界を焼き尽くした。数十億が炎に焼かれて餓死した」と説明する。
「太陽が焼き尽くす」ってのと「餓死」の関係がピンと来ないけど、食糧が手に入る環境じゃなくなったから餓死する者が続出したってことかな。
でも、「太陽が世界が焼き尽くした」という設定なら、その段階で大勢の人々が死ぬような気がするけどね。

それはともかく、エヴァは「フレアというウイルスが脳を侵食したが、侵されない若者たちが現れた。困難な状況下での脳の機能を調べるため、人体実験が行われた」と説明する。
フレアの治療法を見つけるために、侵されない若者たちを調べるのは分かるよ。だけど、そのためにグリーバーのいる迷路へ放り込む意味はサッパリ分からんぞ。
そもそも、「太陽に焼き尽くされた世界」で充分なのに、そこを「人口が急減して荒廃した」という世界観のためだけに利用し、「フレアが云々」という別の要素で話を作ろうとしているのが不細工。
あと、エヴァが自殺したように偽装する意味は全く無いぞ。
色んな疑問が残されたまま2作目に続くのだが、スッキリしなかった部分が全て次回以降で解明される予感は全くしない。

(観賞日:2018年6月18日)

 

*ポンコツ映画愛護協会