『マーズ・アタック!』:1996、アメリカ
アメリカ合衆国で空飛ぶ円盤が発見された。火星からやってきた飛行物体だと連絡を受けたジェームズ・デイル大統領はジェリー・ロス大統領報道官や宇宙学の権威ドナルド・ケスラー教授らと相談。火星人を手厚く出迎え、友好関係を結ぼうと考える。
やがて円盤は地球に着陸。多くの報道関係者や軍隊が集まる中、円盤から火星人達が降り立った。大統領の命を受けたケイシー将軍が握手をしようと近付くが、突然、火星人達は光線銃で攻撃してくる。多くの人間を撃ち殺し、火星人は円盤に乗って去っていった。
それでもケスラー教授は「文化の違いによる誤解があった」と考え、友好的な態度を取るよう大統領に進言。その言葉を聞き入れ、大統領は火星人にメッセージを送る。すると火星人から正式な謝罪コメントが入り、国会で火星人によるスピーチが行われることになる。
国会にやって来た火星人。観衆が息を飲む中、再び火星人は光線銃で攻撃してくる。彼らは地球人と仲良くする気なんて全く無いのだ。ついに彼らは本格的に地球攻撃を開始する。圧倒的な破壊力で地球を滅ぼしていく火星人に全く歯が立たない人間だったが…。監督はティム・バートン、映画原案&脚本はジョナサン・ジェムズ、製作はティム・バートン&ラリー・フランコ、製作協力はポール・ディーソン&マーク・S・ミラー、撮影はピーター・サスチスキー、編集はクリス・レベンゾン、美術はウィン・トーマス、衣装はコリーン・アトウッド、特殊効果監修はマイケル・ランティエリ、視覚効果監修はデヴィッド・アンドリュース&マイケル・L・リンク&ジム・ミッチェル、音楽はダニー・エルフマン、挿入歌はトム・ジョーンズ。
出演はジャック・ニコルソン、グレン・クローズ、アネット・ベニング、ピアース・ブロスナン、ダニー・デヴィート、マーティン・ショート、サラ・ジェシカ・パーカー、マイケル・J・フォックス、ロッド・スタイガー、トム・ジョーンズ、ルーカス・ハース、ナタリー・ポートマン、ジム・ブラウン、リサ・マリー、シルヴィア・シドニー、クリスティーナ・アップルゲイト、ジョー・ドン・ベイカー、パム・グリアー、バーベット・シュローダー他。
1962年に発売されたトレーディング・カードをベースにして作られた作品。
まだSFX技術が稚拙だった時代の特撮映画にあえて近付けた映像にしている。火星人の動きがカクカクしているのも、円盤の造形が安いオモチャのように見えるのも、わざとそうしているのだ。権力者や軍隊やマスコミの人間が酷くバカで何の役にも立たず、火星人の攻撃に対して反撃を成功させるのは普通の人々。ティム・バートン監督らしい社会的メッセージの挿入だ。最後に動物に囲まれて「よくあることさ」を唄うトム・ジョーンズ。
おいおい、火星人来襲は“よくあること”じゃないだろ。「友好的」でもなく、「最初から攻撃的」というわけでもなく、「非常にずる賢くて、地球人を騙まし討ちにする」という、これまでのSF映画では無かったタイプの宇宙人を描いているのが面白い。これは既存の宇宙人映画に対するアンチテーゼになっているのだろうか。
出演者が豪華。しかも、その半分くらいは死ぬ役。ブロスナンなんて首チョンパにされる。さらにサラ・ジェシカ・パーカーは首チョンパにされた上、犬の胴体と合体。2人は首チョンパ同士のキスという、おそらく世界で最もマヌケなラブシーンも演じている。
「豪華な出演者がバカな映画にバカな役で出演している」というのが、何よりもこの作品のセールスポイントになっている。しかもみんな楽しんで演じている。ジャック・ニコルソンに至っては、「登場する全ての役をやりたい」と言ったそうだ。ティム・バートンはデタラメでインチキで子供っぽい監督だ。この作品でもシナリオだけを考えるとメチャクチャだし、つまらない。でも見終わった後に出る感想は、「面白い」なのだ。それは抜群のバカ・センスが感じられるからだ。
“天才バカ”なんだね、ティム・バートンという人は。