『マンマ・ミーア!ヒア・ウィー・ゴー』:2018、イギリス&アメリカ

「ホテル・ベラ・ドナ」のリ・オープニングを控え、ソフィー・シェリダンは改装記念パーティーの招待状を用意した。3人の父であるハリー・ブライト、ビル・アンダーソン、同居中のサム・カーマイケルに加え、彼女は祖母のルビーにも招待状を出そうと考えた。彼女は支配人のフェルナンド・シエンフエゴスからホテルの改装について「貴方の夢です」と言われ、1年前に死去したドナの写真を見て「ママの夢よ。私は仕上げただけ」と告げる。どうせ来ないだろうと感じたソフィーは、ルビーへの招待状を破り捨てた。
1979年、オックスフォード大学の卒業式。ドナは遅刻して会場に入るが、卒業生総代として壇上に立つ。彼女は短いスピーチの後で音楽を流してもらい、親友のターニャやロージーたちと一緒に歌い踊った。ルビーが卒業式に来なかったので、ドナは腹を立てた。「しばらく家には戻らない」と彼女は宣言し、思い出作りの旅に出た。翌日のパーティーの準備を進めていたソフィーは、ニューヨークにいるスカイからの電話を受けた。スカイはホテル経営を学んでおり、パーティーには欠席することが決まっていた。それは納得していたソフィーだが、スカイは「仕事のオファーがある。君も来いよ」と誘う。ソフィーは「私の家はここよ」と言い、スカイと口論になった。
翌日、ターニャとロージーが島に来たので、ソフィーは船着き場まで迎えに出向いた。ソフィーは2人に、ハリーは仕事で東京にいること、ビルは授賞式があるので欠席することを語った。シエンフエゴスと会ったターニャとロージーは、彼に惹かれた。フランスの宿に着いたドナは、若き日のハリーと出会った。ハリーが「父の銀行を継ぐ運命だ」と話すと、ドナは「私は運命探しよ。明日のギリシャで出会えるかも」と言う。ハリーがセックスに誘うと、ドナは「ママが中東で手痛い失恋を経験したから、異国での恋には厳しいの」と話す。しかしハリーが童貞だと明かすと、ドナは彼とベッドを共にした。
ギリシャへ向かうフェリーに乗ろうとしたドナだが、荷物を取りに戻っている間に出航してしまった。彼女はレースへの出場を控えた若い頃のビルと遭遇し、彼の船で島まで送ってもらう。同じ頃、ドナに恋をしたハリーは船着き場に来ていた。ドナとビルは島に向かう途中、アレクシオという男に出会った。彼はボートのエンジンが故障して立ち往生しており、助けを求めて来た。恋人が待っていること、彼女の両親が交際に反対して別の男と結婚させようとしていることをアレクシオがは話すと、ドナとビルは彼を助けることにした。
アレクシオは島に近付くと、海に飛び込んだ。恋人のアポロニアも飛び込み、2人は抱き合った。ビルはドナに「レース後に戻ってくる。8時間後だ」と言い、嵐が来ることを警告して去った。しかし空は晴れ渡っていたため、ドナは嵐など来ないと軽視した。一方、ソフィーはシエンフエゴスから、嵐が迫っていると忠告される。しかし晴れ渡る空を見たソフィーは、その言葉を信じなかった。しかし実際に嵐が到来したため、せっかくの準備は台無しになった。
ドナは嵐に見舞われ、廃屋で怯える馬を目撃した。外へ出た彼女は若い頃のサムと遭遇し、一緒に廃屋へ戻って馬をなだめた。ドナは嵐が去ってからサムと話し、「実家に帰れば仕事も何もかもレールが敷かれている。今は小休止してる」と聞かされる。ドナは彼のバイクに乗せてもらい、町へ出掛けて酒場に入った。「この島が気に入った。ここに住むわ」と彼女が言うと、サムは「僕も残れたらな」と告げる「いつ帰るの?」と問われた彼は、1週間後だ」と答えた。ドナは店主に頼み、ステージで歌わせてもらった。ドナとサムは夜道を散歩してキスし、関係を持った。
翌朝、ドナはサムとボートで海に出ると、「貴方もこの島に住んで。一緒に暮らしましょう」と持ち掛ける。「そう単純には行かない」とサムが言うと、彼女は「何事も噛み砕けば単純よ」と告げた。ソフィーはサムの前で、「パーティーは無理よ。昨夜の嵐で空もフェリーも全て欠航。バンドも来ない。ママを失望させたわ」と落胆する。サムが「彼女は失望しない。僕には分かる」と励ますと、彼女は「なぜ分かるの?」と尋ねた。するとサムは、「僕が失望させたからだ」と答えた。
ドナは若い頃のサムと同棲生活を開始し、1週間が経過した。しかしサムに婚約者がいると知った彼女は激怒し、彼を島から追い出した。東京で契約交渉の会議に出席していたハリーは娘の大切さを感じ、途中で抜け出した。ビルがストックホルムで授賞式に出席していると、母のアルマがハリーからの電話を受けた。ハリーはアルマに、「家族が第一だと忘れてたよ」と語った。ドナの元をターニャとロージーが訪ね、失恋したことを聞かされた。3人は酒場へ行き、ステージで歌った。するとビルが現れ、ドナをヨットで海へ連れ出した。ドナは彼に誘われ、肉体関係を持った。
ハリーはパーティーに出席するため島へ渡ろうとするが、嵐でフェリーが全て欠航になっていることを知る。ハリーは同じくソフィーの元へ向かおうとしていたビルと合流し、2人は漁師になったアレクシオと遭遇した。アレクシオが不景気で船を遊ばせていることを話すと、ビルは「一緒にパーティーへ行かないか」と持ち掛けた。アレクシオは仲間も誘って参加することを決め、ハリーとビルは彼の船に乗せてもらう。塞ぎ込んでいたソフィーの元にはハリーやビル、さらにスカイも駆け付けた…。

脚本&監督はオル・パーカー、原案はリチャード・カーティス&オル・パーカー&キャサリン・ジョンソン、製作はジュディー・クレイマー&ゲイリー・ゴーツマン、製作総指揮はベニー・アンダーソン&ビョルン・ウルヴァース&リタ・ウィルソン&トム・ハンクス&リチャード・カーティス&フィリダ・ロイド&ニッキー・ケンティッシュ・バーンズ、共同製作総指揮はスティーヴン・シェアシアン、共同製作はリチャード・ウェーラン&ルドウィグ・アンダースン、撮影はロバート・イェーマン、美術はアラン・マクドナルド&ジョン・フランキッシュ、編集はピーター・ランバート、衣装はミシェル・クラプトン、振付はアンソニー・ヴァン・ラースト、作詞&作曲はベニー・アンダーソン&ビョルン・ウルヴァース、伴奏音楽はアン・ダドリー、音楽監督はマーティン・コッチ、音楽監修はベッキー・ベンサム。
出演はメリル・ストリープ、ピアース・ブロスナン、シェール、コリン・ファース、ステラン・スカルスガルド、ジュリー・ウォルターズ、ドミニク・クーパー、アマンダ・サイフリッド、クリスティン・バランスキー、アンディー・ガルシア、リリー・ジェームズ、アレクサ・デイヴィーズ、ジェシカ・キーナン・ウィン、ジョシュ・ディラン、ジェレミー・アーヴァイン、ヒュー・スキナー、マリア・ヴァクラティス、セリア・イムリー、オミッド・ジャリリ他。


同名のミュージカルを基にした2008年の映画『マンマ・ミーア!』の続編。
監督は『17歳のエンディングノート』のオル・パーカー。
ドナ役のメリル・ストリープ、サム役のピアース・ブロスナン、ハリー役のコリン・ファース、ビル役のステラン・スカルスガルド、ロージー役のジュリー・ウォルターズ、スカイ役のドミニク・クーパー、ソフィー役のアマンダ・サイフリッド、ターニャ役のクリスティン・バランスキーは、前作からの続投。
他に、ルビーをシェール、フェルナンドをアンディー・ガルシア、若い頃のドナをリリー・ジェームズが演じている。

序盤、ソフィーがルビーへの招待状を破り捨てて「ママも遅刻魔だった」と言うと、1979年のシーンに切り替わる。
でも、ソフィーはドナが卒業式に参加した時は産まれていないので、「ソフィーの回想」のような形で入るのは決してスムーズとは言えない。ソフィーが当時の母の写真を見たとか、日記を読んだとか、そういうことではないんだし。
それでも、ここはマシな部類だ。フランスの回想パートなんて、ターニャとロージーがシエンフエゴスと会ったトコからの切り替えだ。何のきっかけもタイミングも無く、まるで繋がっていない。
でも、ここだけじゃなくて、現在と回想のシーンが繋がっていないトコばかりなのだ。

ドナの卒業式では彼女がカセットデッキで音楽を流してもらうと、ミュージカルシーンが始まる。なので、「その場でドナたちが歌ったり踊ったりしている」という設定になっている。
しかし、これが上手くハマっていない。
大勢のバックダンサーによる群舞もあるし、前作に比べれば「掴みのミュージカルシーン」としては力があるのよ。そこだけを切り取ればね。
だけど、その前の部分から見た場合、話の流れにはハマっていないから、のっけから外していると感じる。

今回の作品の回想パートは、「なぜソフィーには3人のパパ候補がいるのか」という謎を解明する内容となっている。ドナが3人の相手と肉体関係を持った時のことが描かれるわけだ。
しかし、そこの「解答編」を描くことに何の意味があるのか、サッパリ分からない。
そこを詳しく描くのって、前作のファンが望むようなことなのかね。「誰が得をするのか」と言いたくなるような話でしかないぞ。
だって、前作で「誰がソフィーのパパか分からない」ってのを描いていたのだから、当然ではあるが「同じぐらいの時期にドナが3人とセックスした」ってことを描くことになるわけで。

なので、ドナが簡単に3人の男と寝る尻軽女にしか見えないのよ。
いや「見えない」っていうか、実際に尻軽でしょ。「旅行先で出会った相手にすぐ惚れて、すぐセックスする」ってのを3回連続で繰り返すんだから。
ハリーに口説かれてセックスし、サムと出会ってセックスする。サムに失恋してビルに慰められると、今度は彼とセックスする。どんだけ尻軽なのかと。
あと、サムが婚約者の存在を隠してドナと同棲を始めるのは、ただ彼が酷い男ってだけでしょ。それを「切ないロマンス」みたいに描かれても、乗れないぞ。ただサムが不誠実な奴ってだけでしょうに。

現在のシーンでも、ハリーが契約交渉の会議を途中で放棄してソフィーの元へ向かう展開には大いに引っ掛かる。
ソフィーはハリーが仕事で東京に行っていること、だからパーティーには出席できないことを知っているし、残念だとは思いつつも納得している。
ハリーが出席しないのは、決して約束を破るような行為、娘に対す不誠実な行為ではない。
むしろ、大事な契約交渉を途中で放棄するのは、ものすごく無責任だと感じるぞ。

続編のことなんて全く考えていなかっただろうから、1作目でABBAの有名なヒット曲の大半は使っている。
この続編では、また同じ曲を使うってことも出来ない。いや、別にやろうと思えば出来るけど、それだと観客を引き付ける力が弱くなるし、それ以外にも重大な問題がある。
このシリーズは「まず歌ありき」でストーリーを構築しているので、同じ歌を使うと「前回と似たような話」になってしまう恐れがあるのだ。
そのため、『Mamma Mia』や『Dancing Queen』などの一部を除き、大半は異なる曲で構成している。

もちろんABBAは大人気のグループだったので、ヒット曲も多い。なので、1作目で使われなかった歌の中にも『Waterloo』や『Fernando』といったヒット曲は残っている。ただ、1作目に比べると、楽曲の部分で引き付ける力が弱くなっていることは否めない。
あと、前作と比較すると、やや暗い歌が多いんだよね。
しかも、回想シーンでドナ&ターニャ&ロージーが酒場のステージに立つと『Mamma Mia』を歌い、ソフィーの元にハリーたちが到着すると『Dancing Queen』を歌ってしまう。
この時点で、映画開始から1時間15分ぐらい。
まだ上映時間はたっぷりと残っているわけで、大丈夫なのかと。

っていうかさ、「パーティーは無理だと感じてソフィーか落ち込んでいたら、ハリーたちが大勢を引き連れて現れ、スカイまで来る」というタイミングで『Dancing Queen』なんだから、ここがクライマックスでいいんじゃないかと。
そりゃあドラマとしては弱いんだけどさ、ミュージカル映画の構成としては、完全にクライマックスなのよ。
もちろん、まだ尺が残っているので話は続くんだけど、蛇足みたいになっちゃってんのよね。

ただし「船で大勢が島に来たのでソフィーが大喜び」ってのは、かなり引っ掛かるんだよね。
ハリーとビルが来てくれたのを喜ぶのは理解できるのよ。ただ、船に乗っている面々って、ハリーとビルを除けばソフィーの全く知らない人ばかりだよね。そんな招待していない赤の他人が大勢押し掛けて、それをソフィーは喜べるのか。
あと、いつの間にスカイは合流していたのか。彼が「やはり島へ行こう」と決意するとか、ハリーたちと合流するとか、そんな描写は無かったでしょ。
なので、「スカイも来ていることを知らされたソフィーが喜ぶ」というシーンでも、こっちは「いつの間に?」ってのが気になって素直に盛り上がれないのよ。

この映画って、実は構造的に大きな欠陥があるんだよね。
それは、ソフィーを描く現在のパートと、若い頃のドナを描く回想パートが全く関係ないってことだ。
どちらか片方だけで成立する話を、ずっと並行して描いているだけなのよ。
若い頃のドナが何をしようが、どこへ行こうが、「ソフィーがパーティーの準備を進める」という現在パートとは微塵も連動していないのよ。「どちらか片方だけにすりゃいいじゃねえか」と言いたくなっちゃうのよ。

そもそも、なぜ「ドナの死後」という話にしちゃったのか。
その段階で、「明るく楽しいミュージカル」にすることは難しくなるでしょ。
ひょっとすると、「残っている曲は陰気な曲が多い」ってことからの計算で、明るく楽しい話に出来なかったのかもしれないけどさ。
ただ、ドナって前作の主人公なのよ。そのキャラを死なせたら、いきなりハンデを背負ってるみたいなモンでしょ。それを補うような要素でもあればともかく、そんな物は何も無いんだし。

蛇足と前述した終盤では、ルビーが登場する。だけど、「今さらノコノコと出て来てんじゃねえよ」と言いたくなる。
しかも、彼女はドナとソフィーを長きに渡って放り出していたことに対して、何の罪悪感も抱いていないのよ。平気な顔で「お婆ちゃんになろうと決めたの」と語るんだけど、その前に言うべきことがあるだろうと。
こんな奴に「愛するフェルナンドと再会できた」というシーンを用意して歌唱させているけど、伏線が弱すぎるしバランスも悪すぎる。大団円の後に、余計なモノを付けているとしか思えないよ。
それと、ルビーを演じているのかシェールなので、「何歳なんだよ。魔女かよ」と言いたくなるぞ。

(観賞日:2021年1月6日)

 

*ポンコツ映画愛護協会