『メジャーリーグ2』:1994、アメリカ

クリーブランド・インディアンスはオーナーを務めるレイチェル・フェルプスの度重なる妨害にも負けず、ア・リーグ東地区で42年ぶりに優勝した。オフシーズンに入り、引退したロジャー・ドーンはレイチェルからチームを買収して新オーナーに就任した。ウィリー・ヘイズはアクション映画に主演し、自らスタントも担当した。インディアンスは大物捕手のジャック・パークマンを獲得し、実況アナウンサーのハリー・ドイルやファンはワールド・シリーズでの優勝を期待した。
開幕前の最初の練習日、リッキー・ボーンは運転手付きの高級リムジンに乗り、スーツを着て練習場に現れた。膝の怪我を抱えるジェイク・テイラーは監督のルー・ブラウンから、新人捕手であるルーブ・ベイカーの面倒を見るよう頼まれた。ウィリーは特注のリンカーンで、大勢の取り巻きを従えて現れた。ジャックはジェイクから挨拶され、高慢な態度を取った。ペドロ・セラノは老師の元で修業を積んで帰国し、怒りと敵意が完全に消えていた。
バッティング練習が始まると、ウィリーはホームランばかりを狙った。ハリーは呆れて「お前の仕事は塁に出ることだ。ゴロを打て」と注意するが、ウィリーは従おうとしなかった。リッキーは自分の考えた変化球ばかり投げ込み、ジェイクが「剛速球はどうした?」と訊くと「俺は先のことを考えてるんだ」と告げた。ルーはジェイクに、ルーブはピッチャーへの返球が必ず暴投になることを教えた。ルーブはジェイクに、投手に投げる時だけはマイナー行きを恐れて緊張してしまうのだと説明した。
練習を終えたリッキーは、恋人でエージェントのレベッカと車で去った。ウィリーは映画の撮影で膝を負傷したことをジェイクに話すが、「俺はホームランバッターだから」と気に留めていなかった。リッキーは練習で全く威力の無い変化球を自信満々で投げ、ジャックに軽々とホームランを打たれた。ペドロは練習で凡フライを打ち上げても、満足そうな表情を浮かべた。ジェイクはルーブが雑誌『PLAYBOY』の愛読者でプレイメイトのデータを暗記していると知り、その情報を思い出しながら返球するよう指示した。
インディアンスはメッツと練習試合を行い、ウィリーは引退間近のロートル投手からホームランを放って得意げな様子を見せた。ルーブはジェイクの助言を実践し、暴投の悪癖は見事に改善された。リッキーは自作の変化球を投げ、ホームランを打たれた。ジェイクは膝の故障が影響し、ミスを犯した。ペドロはダブルプレーになっても、まるで闘争心を見せなかった。ルーはチームがバラバラになっていると感じ、頭を抱えた。
ジェイクは引退を決意し、ルーとロジャーに「キャッチャーをやるには年を取り過ぎた」と告げる。彼は2人からコーチ就任を要請されるが、「俺はコーチに向いていない」と断った。しかし帰宅した彼は恋人のリンに相談し、やはりコーチの仕事を引き受けることに決めた。遠征先に着いたインディアンスの面々は大勢のファンに歓迎され、リッキーはレベッカから少年のフランキーや担任教師と写真を撮るよう促される。その教師が幼馴染のニッキーだったので、リッキーは戸惑った。彼が写真撮影を終えて早々に去ろうとすると、ニッキーは彼が部屋に置いていった革ジャンを渡した。
シーズンが開幕し、インディアンスは初戦でホワイトソックスをホームに迎えた。オープン戦は3勝24敗だったが、大ファンのジョニーは「本番になれば大丈夫」と友人たちに告げる。ウィリーはホームランを予告するが、高く打ち上げたボールはスタンドまで届かなかった。リッキーは威力の無い変化球ばかり投げて連打を浴びるが、ジャックから速球を投げろと言われても耳を貸さなかった。彼はホームランを打たれ、チームは0対4でリードを許す。他の選手が精彩を欠く中、ジャックがホームランを放って3点を返す。ペドロは逆転に繋がるヒットを打つが、ボールが命中したハトの介抱に向かってアウトになり、チームは敗れた。
ロジャーはチームの買収に多額の資金を投入したため、あと2ヶ月で予算が底を突く状況に陥った。シーズン終了まで残り4ヶ月もあり、収入を増やす必要性に迫られた彼は外野フェンスに幾つもの広告を出した。しかしチームの成績は一向に上昇せず、リッキーはストレートを投げても昨シーズンを遥かに下回るスピードしか出せずに打ち込まれる。レベッカは少し調子を落としているだけだと慰め、リッキーはシーズン中にも関わらずコマーシャルを撮影した。
リッキーは調子が戻らず、ついにローテーションを外された。フランキーたちに同伴してスタジアムに来ているニッキーを見つけた彼は、「去年は一度も電話せずに悪かった」と告げる。するとニッキーは、「いいのよ、お互いに良かった」と言う。「ボーイフレンドは?」とリッキーが尋ねると、彼女は「シカゴからこっちに来てる。ホワイトソックスのファンなの」と答えた。彼女が去った後、リッキーは強い苛立ちを吐露した。その日の試合に彼は抑えとして登板するが、逆転ホームランを喫した。
リッキーは精神科医のカウンセリングを受けるが、状況は改善されなかった。記者からチームの低迷について問われたジャックは、「根性の無い負け犬ばかりだ」と扱き下ろした。ロジャーは選手の給料が払えなくなり、ジャックをホワイトソックスへトレードで放出した。何も聞いていなかったルーが激怒して抗議すると、ロジャーは「代わりにジャイアンツから外野手を獲得した」と釈明する。しかし彼の言う「ジャイアンツ」とは、東京ジャイアンツのことだった。獲得した日本人のタナカはハッスルプレーを見せるが、フライを捕ろうとして外野フェンスに激突し、失神して落球するというエラーを繰り返した。
タナカはロッカールームでペドロに話し掛け、佛陀の教えを信奉していると知った。彼は「野球選手は坊主じゃない、侍だ」と熱く語るが、ペドロは穏やかに受け流した。レイチェルはチームを買い戻し、ロジャーはGMとして残った。レイチェルはロッカールームに現れ、ルーと選手たちに嫌味を浴びせた。ルーは選手たちに奮起を促すが、心臓発作で倒れた。彼は入院し、ジェイクに監督の仕事を要請した。ロジャーは現役復帰するか、誰も歓迎しなかった。
タナカはペドロを「タマが付いてんのか」と挑発するが、彼の態度を変化させることは出来なかった。大敗している試合でウォームアップをルーから命じられたリッキーは、露骨に不満を見せた。酔っ払ったランディーの野次を浴びた彼は、ウォームアップを拒否してベンチに戻った。ルーブが死球で右脚を負傷したため、ルーはウィリーに代走を命じた。しかしウィリーは面倒そうに拒み、リッキーと互いに罵り合った。2人は喧嘩になり、他の選手も乱闘を始めた。
インディアンスは主審から全員の退場を命じられ、ロッカールームに戻った。ルーブに嫌味を浴びせられたウィリーは、野球が出来る喜びを熱く語った。彼はルーに、ダブルヘッダーの2試合目も出場することを告げた。内野ゴロを打った彼は必死で1塁へ滑り込み、セーフになった。その姿を見たウィリーは代走を志願し、3連続で盗塁を決めて同点のホームを踏んだ。タカに挑発されたペドロは代打を志願し、逆転ホームランを放った。
他の選手の頑張りでインディアンスは少しずつ勝率を上げていくが、リッキーは一向に調子が戻らないままだった。レベッカの家を訪れたリッキーは、彼女が電話で自分への幻滅を話して「本気じゃないわ。落ち目だもの」と言っているのを聞いた。リッキーがベンチで暗い様子を見せていると、ルーブは自分の体験を語って励ました。リッキーはニッキーと会い、去年の球威が戻らないことを話した。彼は友人のバイクを借り、ニッキーを後ろに乗せて夜の街を疾走した。2人は思い出の場所を訪れ、キスを交わした。
インディアンスは快進撃に突入し、リッキーがピンチを招いても味方がファインプレーで救った。チームは勝利を重ね、ついには東地区の首位に躍り出た。レベッカはリッキーを呼び出すが、「ヨリを戻すつもりで呼んだわけじゃないの」と前置きし、電話での発言を謝罪した。彼女はリッキーに、ナショナル・フーズがパーティーに来てほしいと言っていることを伝えた。リッキーが「悪いけど無理だ」と断るとレベッカは「そうだと思った」と受け入れ、キスをして立ち去った。
地区優勝が懸かった大事な一戦でリリーフを任されたリッキーだが、最終回の2アウトから死球でランナーを出した。ルーがマウンドへ行くと、彼は自ら降板を申し出た。後を引き継いだドールトンはホームラン性の当たりを打たれるが、タナカの超ファインプレーでチームは優勝を決めた。リッキーはフランキーたちにボールを届けるが、ニッキーを連れて早々にスポンサーのパーティーへ行こうとする。その態度に腹を立てたニッキーは、「1人で行って」と彼を突き放した…。

監督はデヴィッド・S・ウォード、キャラクター創作はデヴィッド・S・ウォード、原案はR・J・スチュワート&トム・S・パーカー&ジム・ジェニウェイン、脚本はR・J・スチュワート、製作はジェームズ・G・ロビンソン&デヴィッド・S・ウォード、製作総指揮はゲイリー・バーバー、撮影はヴィクター・ハマー、美術はスティーヴン・ヘンドリクソン、編集はポール・セイダー&ドン・キャンバーン&キンバリー・レイ&フレッド・ウォーデル、衣装はボビー・リード、音楽はミシェル・コロンビエ、音楽監修はピーター・アフターマン。
出演はチャーリー・シーン、トム・ベレンジャー、コービン・バーンセン、デニス・ヘイスバート、ジェームズ・ギャモン、ボブ・ユッカー、マーガレット・ウィットン、デヴィッド・キース、オマー・エップス、エリック・ブラスコッター、石橋貴明、アリソン・ドゥーディー、ミシェル・バーク、スティーヴ・イェーガー、ケヴィン・ヒッキー、スキップ・グリパリス、ケヴィン・クロウリー、ビル・レフ、マイケル・マンドラ、コートニー・ピー、ファラジー・ラシュララー、エドワード・ウッドソン、テッド・ダンカン、マリー=ルイーズ・ホワイト、セイジ・スピニー、マイケル・ウィリス、ジェイソン・クラヴィッツ他。


1989年の映画『メジャーリーグ』の続編。
監督は前作に引き続いてデヴィッド・S・ウォードが担当。脚本は『可愛い悪女』のR・J・スチュワート。
リッキー役のチャーリー・シーン、ジェイク役のトム・ベレンジャー、ロジャー役のコービン・バーンセン、ペドロ役のデニス・ヘイスバート、ルー役のジェームズ・ギャモン、ハリー役のボブ・ユッカー、レイチェル役のマーガレット・ウィットンらが、前作から続投している。アンクレジットだが、リン役のレネ・ルッソも続投。
他に、ジャックをデヴィッド・キース、ウィリーをオマー・エップス、ルーブをエリック・ブラスコッター、タナカを石橋貴明、レベッカをアリソン・ドゥーディー、ニッキーをミシェル・バークが演じている。
アンクレジットだが、観客のジョニー役でランディー・クエイドが出演している。

まず最初に、「ウィリー役の俳優が交代している」ということを指摘しておく必要があるだろう。前作ではウェズリー・スナイプスが担当していたが、今回はオマー・エップスに交代している。
続編映画だから、1作目の主要メンバーは出来る限り揃っていることが望ましい。しかし全くの別人が「同じキャラクター」として登場するぐらいなら、いなくても別にいいよ。
他は全て前作の俳優が続投しているわけで、そんな中で別人が「前作からいましたけど?」みたいな顔で混ざっていると「お前は違うだろ」と言いたくなる。
昔の東映時代劇では、「2作目では別人が同じ役を演じ、3作目で1作目の俳優が戻って来る」みたいなことも珍しくなかったけど、それが決して望ましい形じゃないことは言うまでもない。

前作は主役がジェイクで、彼に恋人との恋愛劇を用意していた。今回はリッキーがメインで、彼に三角関係の恋愛劇を用意している。
最初はレベッカと交際しているリッキーだが、ここの関係が長続きしないのも、ニッキーと仲良くなるってのも、すぐに分かるだろう。
その簡単すぎる予定調和は、一向に構わない。
ただし気になるのは、再会シーンでニッキーが「昔の貴方が好きだった」と言っていることだ。これは違うんじゃないかと。

もちろん、ニッキーの言う「昔の貴方」が「ワイルド・シングだった頃のリッキー」を意味していることは分かる。
でも実際のところ、昔のリッキーはチンピラで、犯罪にも手を染めていた男なのだ。単に「見た目がワイルドだった」というだけではないのだ。
なのでホントは、アップデートされた上でワイルドさを残しているリッキーに戻ることが求められるべきであって。
そこは「幼馴染との恋愛劇」と「リッキーの復活劇」を連携させる中で、上手く処理できていないように感じるぞ。

前回のインディアンスは優勝から長く遠ざかっており、しかもチーム移転を目論んだレイチェルが「史上最弱のチームを作る」という狙いで無名選手やロートルばかりを揃えた。
だからチームはバラバラで、能力的にも決して高いとは言えない連中ばかりの寄せ集めだった。
しかもレイチェルの妨害行為が続くわけで、そんな中で「落ちこぼれだらけの寄せ集めが奮起する」というストーリーは、シンプルではあるが、分かりやすく燃えられるドラマと言ってもいいだろう。

しかし今回のインディアンスは、既に強豪チームになってしまっている。なので、そのままだと同じパターンが使えない。でも基本的には同じパターンを使いたいので、「また弱小に戻りまして」という形にしてある。
ただ、今回のインディアンスが弱体化したのは、選手たちの慢心、気の緩みが主な原因だ。外からの妨害も無く、全面的に自業自得でしかない。
そのため、前作に比べると、気持ちを燃えさせる力、引き付ける力が、ものすごく弱まっている。
ジャックが憎まれ役になっているけど、むしろ彼が孤軍奮闘してくれているわけで。そりゃあ態度は悪いけど、他の連中の不甲斐なさを見ていると、「それも仕方がないかな」と思っちゃうし。

怪我を負ったルーブが全力でプレーする姿を見たウィリーは、代走を買って出る。
ここが「低調だったインディアンスが変化する」というシーンになっている。
「新加入の選手の頑張りに感化され、やる気を失っていた面々も全力プレーを取り戻す」という展開自体は別にいいと思うのだが、その見せ方が安易で雑。今までだって、ルーブは頑張ってプレーしていたわけで。
あと、「タカの挑発に腹を立てたペドロが奮起する」というのも変で、それまでもタカは何度も挑発を繰り返していたわけで。そのシーンだけ、なぜ急に熱くなるのか。今までの挑発とは、何も変わっていないでしょうに。

もっと問題なのは、そこで他の選手が奮起しても「少しずつ勝てるようになりました」という程度に過ぎず、V字回復とは行かないことだ。リッキーが調子を取り戻せないままってことで、熱くさせるための盛り上がりに欠けているのだ。
それを考えると、リッキーが以前の球威と熱い思いを取り戻し、彼が牽引する形で「一気にチームが復活する」という流れにした方がいいんじゃないかと。
しかも、ニッキーに相談するシーンがあるので、そこでリッキーが復活するのかと思いきや、まだダメなんだよね。そして彼の調子が戻らないまま、チームは優勝してしまう。
そうなると、「チームの快進撃や優勝にリッキーは必要ない」ってことになっちゃうでしょうに。

チームが東地区の首位になった試合で新聞の見出しを飾るのは、クルッと回転してから素手で最後のフライを捕球するタナカ。そして優勝を決める試合でも、彼の超ファインプレーで試合が決まる。
日本人からすると、彼が美味しいトコを持って行くのは嬉しいかもしれない。だけど映画としてのバランスを考えると、それは明らかに間違っている。
なんで大事なトコを2つとも途中加入の選手に担当させんのよ。
タナカにも見せ場を与えるのはいいけど、肝心なトコは御馴染みのメンバーで締めるべきじゃないかと。

当然の流れとして、リーグの優勝決定戦がクライマックスになる。
インディアンスはセラノの逆転ホームランで1点をリードして9回裏を迎えるが、2アウトから2人のランナーが出る。ここで監督代行のジェイクは、リリーフとしてワイルド・シングに戻ったリッキーを呼ぶ。
ここまではいいとして、ここでリッキーが次の打者を敬遠してジャックと勝負すると言い出し、ジェイクが「お前に任せる」と言ってしまうのはダメでしょ。
そこはチームのために戦うべきなのに、なんで個人的な感情を優先しているのかと。

まだ1アウトで2塁にランナーがいて、1塁を埋めてダブルプレーを狙う考えで敬遠するなら分かるよ。だけど、そうじゃなくて、満塁にして余計に状況を悪くするだけだからね。そこは絶対に、次の打者と勝負すべきでしょ。
っていうか、「次のバッターがジャック」という状況でリッキーを呼べばいいでしょ。
そもそも、9回裏に入った時点でリッキーをリリーフに送るべきだよ。そうじゃないと、ジェイクは「ランナーが2人出るまではリッキーを使う気が無かった」ってことになるでしょ。
でも、そこは「優勝には必ずリッキーが必要」と考え、信頼してリリーフとして送るという展開にしておくべきでしょうに。

(観賞日:2021年6月8日)


第17回スティンカーズ最悪映画賞(1994年)

受賞:【最悪の続編】部門[キューバ・グッディングJr.]

ノミネート:【誰も要求していなかった続編】部門

 

*ポンコツ映画愛護協会