『マジェスティック』:1974、アメリカ

コロラド州ユマ郡のエドナで広大なスイカ畑を所有するヴィンス・マジェスティックは、収穫する人夫を雇うために町へ出向いた。人夫頭のラリー・メンドーサと人夫請負業者のフリオ・トマスは人夫を選び、車で農園へ向かわせた。マジェスティックがガソリンスタンドで給油していると、メキシコ移民の一団が立ち寄った。移民のナンシー・チャヴェスがトイレを借りようとすると、店主は冷たく拒絶した。マジェスティックが「使わせてやれよ」と言うと、店主は「ボスの命令なんだ」と告げた。
マジェスティックは「お前の店じゃない」と店主に凄み、移民のトイレ使用を認めさせた。移民団が仕事を探していると知り、彼は農園へ連れて行くことにした。ナンシーはマジェスティックに、あちこちを巡って働きながら組合の活動をしていることを語った。彼らが農園に着くと、雇っていない人夫たちがスイカを収穫していた。ボビー・コーパスという男が勝手に人夫を連れて来たのだ。マジェスティックは「俺と組もう」とコーパスに誘われ、即座に拒否した。コーパスがショットガンを構えて脅しを掛けると、マジェスティックは全く怯まず奪い取った。彼はコーパスを殴り付け、農園から追い払った。
マジェスティックが雇った人夫や移民団にスイカを収穫させていると、保安官がやって来た。保安官は「訴えた者がいる」と告げ、手錠を掛けてマジェスティックを事務所へ連行した。マクアレン警部と対面したマジェスティックには、コーパスが「仕事を申し出たのに、銃で脅された」と証言したことを知る。マジェスティックには事実を説明するが、マクアレンは前科のある彼の証言を信じなかった。「スイカを取ったら戻って来る」とマジェスティックが言うと、彼は「自分が蒔いた種だ。弁護士を雇え」と却下した。
マジェスティックは殺し屋のフランク・レンダたちと共に、郡庁へ護送されることになった。その途中、レンダの手下たちが護送車を襲撃し、警護の保安官を次々に撃った。レンダはマジェスティックに、倒れた保安官から鍵を奪うよう命じた。マジェスティックは要求を無視し、他の囚人たちに保安官を連れ出すよう命じた。護送車にレンダだけが残ると、マジェスティックは運転して逃走した。レンダから一緒にメキシコへ逃げようと誘われた彼は、「お前が俺と行くんだ」と述べた。
マジェスティックは狩猟小屋へレンダを連れて行き、手錠を外した。ランダが襲い掛かると彼は反撃して殴り倒し、ベッドに手錠を掛けて拘束した。レンダは「これを外せば2万5千ドルを払う」と持ち掛け、受け渡しの方法を訊かれると「デンヴァーのワイリーって奴に電話しろ」と述べた。マジェスティックは土産物店を訪れて電話を借り、ワイリーに電話を掛けた。続いて彼はマクアレンに連絡し、「起訴を取り下げればレンダを引き渡す」と告げる。「分かった。場所は?」とマクアレンが訊くと、マジェスティックは「俺が連れて行く。手柄を自分の物にされたら困る」と電話を切った。
レンダの情婦のワイリーが車で到着したので、マジェスティックは運転するよう指示した。行き先を問われた彼は、「刑務所へ行け」と口にする。レンダが「幾ら欲しいんだ?」と改めて交渉を持ち掛けると、マジェスティックは「金は要らん」と拒否した。レンダはワイリーから拳銃を受け取り、マジェスティックを始末しようとする。マジェスティックは揉み合いになり、車から飛び出して逃走した。警察署に赴いた彼は「レンダに逃げられた」とマクアレンに告げ、再び留置された。
レンダはマジェスティックへの怒りを募らせ、仲間のランディーに「訴えた奴に訴訟を取り下げさせろ。自由にさせて始末する」と告げる。マクアレンは部下のリッチーから、マジェスティックがレンジャー部隊の教官を務めていたこと、ベトナム戦争で銀星章を貰っていることを聞かされた。マクアレンはマジェスティックにコーパスが起訴を取り下げたことを教え、「外に出ればレンダが殺しに来る」と話す。「スイカが心配なら行くがいい」と彼が言うと、マジェスティックは警察署を去った。
農園に戻ったマジェスティックは、ラリーから「誰も働きたがらない。フリオも働く奴はいないと言ってる」と聞かされる。農園で作業をしているのは、移民団とラリーの息子だけだった。町へ赴いたマジェスティックはフリオと会い、人夫が脅しを掛けられていると悟った。コーパスから挑発を受けた彼は殴り掛かろうとするが、保安官が監視していることを指摘された。コーパスは空港へ移動してレンダを迎え、マジェスティックの農園へ案内するよう命じられた。
農園を視察したレンダは移民が働いていること、警官が変装して張り込んでいることを知る。彼はコーパスに激怒し、「お前は役立たずだ。二度とツラを見せるな」と追い払った。レンダは仲間が手配した別荘へ移動し、「10?日後の予審まで5千ドルで保釈中だ」と言われる。「もう終わったはずだ」とレンダが苛立つと、仲間は「裁定を受けるだけだ。それまで無茶はいかんぞ」と釘を刺される。しかしレンダは「スイカを取る」とマジェスティックを始末する考えを語り、忠告には耳を貸さなかった。
夜、仕事を終えたマジェスティックはナンシーを誘い、町の酒場へ飲みに出掛けた。レンダは見張りの刑事を始末して農園へ乗り込むが、マジェスティックは不在だった。彼はラリーや移民を集め、マジェスティックの居場所を教えるよう要求した。しかし誰も居場所を知らず、レンダは脅しを掛けて農園から追い払った。彼は収穫したスイカを発見し、手下たちと共に銃を乱射した。レンダはマジェスティックの元へ行き、「お前を殺す」と宣告する。マジェスティックはレンダを殴り付け、店を去った。
農園に戻ったマジェスティックは、多くのスイカが台無しにされているのを目にした。翌朝、彼はラリーに、ナンシーと無事だったスイカを町まで運ぶよう頼んだ。マジェスティックはナンシーに、バスで町を離れるよう促した。ラリーはバス停でナンシーと別れた後、倉庫へ行く。するとコーパスとレンダの手下たちが取り囲み、重傷を負わせた。病院へ赴いたマジェスティックは、ラリーから「奴は必ずお前を殺す。逃げろ」と告げられる。マジェスティックはマクアレンの前で怒りを吐露し、農園へ戻る…。

監督はリチャード・フライシャー、脚本はエルモア・レナード、製作はウォルター・ミリシュ、撮影はリチャード・H・クライン、編集はラルフ・E・ウィンタース、音楽はチャールズ・バーンスタイン。
主演はチャールズ・ブロンソン、共演はアル・レッティエリ、リンダ・クリスタル、リー・パーセル、ポール・コスロ、テイラー・ラチャー、フランク・マクスウェル、アレハンドロ・レイ、ジョーダン・ローデス、バート・サントス他。


『センチュリアン』『ソイレント・グリーン』のリチャード・フライシャーが監督を務めた作品。
脚本は『暗黒街の特使』『シノーラ』のエルモア・レナード。
マジェスティックをチャールズ・ブロンソン、レンダをアル・レッティエリ、ナンシーをリンダ・クリスタル、ワイリーをリー・パーセル、コーパスをポール・コスロ、ランディーをテイラー・ラチャー、マクアレンをフランク・マクスウェル、ラリーをアレハンドロ・レイ、リッチーをジョーダン・ローデス、フリオをバート・サントスが演じている。

マジェスティックの行動が、いちいちアホすぎて呆れてしまう。
もちろんスイカの収穫は大切だろうけど、そのために多くの人夫を雇っているわけで。
マジェスティックが戻らなくても、そんなに大きな労働力の欠如にはならないでしょ。
そりゃあ現場にいないと心配ではあるだろうけど、だからって「護送車で逃亡し、レンダの身柄と引き換えに起訴を取り上げるようマクアレンに要求する」ってのは、方法としてデタラメすぎるわ。

で、そんなメチャクチャな方法を取ったのだから首尾良く計画を遂行するのかと思ったら、あっさりと失敗する。
まず簡単にレンダの手錠を外し、襲われるという失態をやらかす。ここでは反撃して拘束しているが、再び反撃される可能性を消すために昏倒させるようなことは無い。
ワイリーが来ると刑務所に行くよう命じ、取引に応じないことを明言する。そのせいでワイリーがレンダに拳銃を渡し、襲われている。
そんで慌てて逃げ出して再び留置される羽目になるんだから、「何がしたいのか」と言いたくなるわ。

レンダは別荘を用意した仲間から、「10?日後の予審まで5千ドルで保釈中だ」と言われる。
だけど、彼は手下が護送車を襲撃し、脱走していたはずだよね。マジェスティックから逃亡し、そのまま仲間と合流したはずだよね。
それなのに、なんで「予審まで保釈中」ってことになってるんだよ。脱走した行動は、まるで無かったことになってんのかよ。
護送車を襲撃させて脱走しているのに、今さら「予審まで無茶はいかんぞ」も何も無いだろうに。護送車の襲撃と脱走が、充分すぎるほどの無茶だろうに。

レンダはマジェスティックへの恨みを募らせ、絶対に始末すると宣言する。そのためなら刑事を始末するというリスクの高い行動まで取る。
で、そこまでして農園に乗り込んだのに、マジェスティックがいないことを知ると、移民を追い出して収穫したスイカに乱射するという行動を取る。
それって、ただの嫌がらせでしょ。
いや、もちろん嫌がらせとしては相当に陰湿で過激であるんだけど、「マジェスティックに要求を飲ませる」ってのが目的じゃないわけで。殺すのが目的なのに、なんで今さら嫌がらせなのかと。

レンダは酒場で飲んでいるマジェスティックの元へ行き、「お前を殺す」と予告する。
だけど、他の客もいる前で堂々と殺人予告をしても無罪放免になる自信があるのなら、いっそのこと酒場で殺せばいいんじゃないか。今までのことも考えれば、証人を脅したり殺したりして無罪を勝ち取れるんじゃないの。
っていうかさ、なんで農園で待っていなかったんだよ。
しばらく待てばマジェスティックは確実に戻ってくるわけで、それを待ち伏せて始末すれば良かったんじゃないのか。

マジェスティックは重傷のラリーを見舞った後、マクアレンの前で怒りを吐露して農園へ戻る。
なので、怒りに燃えたマジェスティックの逆襲が開始されるのかと思いきや、そこへ一気に畳み掛けてくれないんだよね。
そうなると、ラリーが重傷を負わされた出来事の意味が弱くなっちゃうでしょ。
これって任侠映画に例えれば、「耐え続けていた主人公が仲間を殺され、ついに我慢できずに殴り込みを掛ける」というタイミングみたいなモンなのよ。

マジェスティックは農園に戻ると「こっちから仕掛けてやる」と言うけど、実際に行動を起こすのは翌日になってから。しかも、トラックの荷台に姿を隠し、農園に戻って来ていたナンシーに「カフェまで走って飛び降りろ」と指示して、そのトラックを一味が追い掛けてくるという流れ。
これだと、「こっちから仕掛けている」という印象は弱い。
あと、せっかくマジェスティックが逃がしたのにナンシーは農園に戻り、「カフェまで走らせろ」という指示さえ無視するので、ただの足手まといにしか思えない。
マジェスティックが1人じゃキツいとしても、そこの相棒は盟友的なポジションの奴の方が良くないか。ナンシーだと、マジェスティックとの絆は薄いし、命懸けで協力するモチベーションにもピンと来ないし。
しかも全く頼りにならず、ほぼ一緒にいるだけだし。

(観賞日:2021年11月14日)

 

*ポンコツ映画愛護協会