『マダガスカル2』:2008、アメリカ

アフリカの草原。ライオンのボスであるズーバは、幼い息子のアラケイに狩りを教えようとしていた。ズーバは自分と息子の掌にある同じ模様を見せて、「お揃いだろ。お前は大きくなったら、パパみたいなボスになるんだ」と言う。しかし戦う練習を促しても、アラケイは楽しそうに踊ってばかりいた。ライオンのマクンガはボスの座を狙って何度もズーバに挑戦しているが、その度に敗れていた。また挑戦したマクンガだが、呆気なくズーバに捻じ伏せられた。
ズーバが戦っている間に、アラケイがハンターの仕掛けたロープに誘われて動物保護区から出てしまった。ハンターたちはアラケイを木箱に入れると、トラックの荷台に乗せて走り出す。ズーバは慌てて追跡し、アラケイを助け出そうとする。しかしハンターの発砲を受け、ズーバは車から落ちた。車が急ブレーキで方向を変えた際、木箱は荷台から川へと落下した。しかしズーバは、そのことを知らなかった。海を漂流した木箱はニューヨークへ流れ着き、人々の前で踊ったアラケイは喝采を浴びた。アラケイはアレックと名付けられ、動物園の人気者になった。だが、アレックスはアフリカ時代のことを何も覚えていなかった。
さて、そんなアレックスとマーティー、メルマン、グロリアはマダガスカル島で暮らしていたが、オンボロ飛行機を使ってニューヨークへ戻ることにした。ジュリアンとモーリスも付いて行くことを決めるが、モートの同行は拒否した。飛行機が飛び立った後、アレックスは翼にモートが乗っているのを見て驚いた。しかしモートが落下して姿を消したので、気のせいだと思うことにした。グロリアが「戻ったら、お見合いでもしようかと思うの。そろそろ愛を育んでもいい年頃でしょ」と言うので、メルマンはショックを受けた。
エンジンが停止したため、飛行機のは不時着を余儀なくされた。飛行機は大破し、ペンギンズはアレックスたちに「修理には6ヶ月から9ヶ月が必要」と告げた。サファリツアーのジープが通り掛かったので、アレックスは乗せてもらおうと考えて近付いた。するとツアー客の中には、かつてグランド・セントラル駅でアレックスを叩きのめした老女の姿があった。アレックスは老女に戦いを挑むが、またも軽く叩きのめされてしまった。
アレックスたちは広大な自然の風景を目にして、圧倒された。そこには様々な種類の動物たちが集まっていた。そこはアフリカの大地であり、アレックスは「遠い記憶みたいに見覚えがある」と口にした。アレックスたちは動物の群れが集まっている場所へ行き、動物保護区の遥か向こうから来たことを説明した。そこにズーバが現れ、余所者は出て行くよう凄んだ。しかしズーバの妻は、アレックスの掌にある模様に気付いた。ズーバ夫婦とアレックスは親子であることに気付き、感動の再会を果たす。その様子を見ていたマクンガは、アレックスを利用してズーバを始末しようと企んだ。
マーティー、メルマン、グロリアは、それぞれ同じ種族の群れに加わった。メルマンはまじない医者になるよう促され、グロリアは屈強な体付きをしているオスのモトモトに口説かれた。マクンガはズーバの元へ行き、「成人の儀式を終えていないから、まだアレックスは正式な群れの仲間じゃない」と述べた。ライオンが技を披露するのが成人の儀式だと聞いたアレックスは、「パフォーマンスは得意だ」と自信を示す。そこでズーバは明朝、成人の儀式を執り行うことにした。
ペンギンズはサファリツアーの面々を騙し、ジープを奪い去った。老女はガイドの指示を無視して歩きだし、他のツアー客も彼女の後を追った。夜になり、森を歩いていた一行は、ジープをペンギンズに奪われた別のツアー客たちと遭遇した。「どうすりゃいいんだ」と他の面々が頭を抱える中、老女は落ち着き払った様子で火を起こした。彼女が「私たちはニューヨーカーじゃないか。あの町でやれるなら、ここでもやっていけるさ」と言うと、他のツアー客も元気になった。
翌朝、モートは海を泳ぎ、鮫に追われながらアフリカの砂浜に辿り着いた。チンパンジーのメイソンとフィルは、飛行機修理のために群れを集めてペンギンズの元へ戻った。マクンガは儀式がダンスバトルだと誤解しているアレックスに、ティーツィーを指名するよう助言した。儀式が始まり、アレックスがマクンガの助言に従うと、ティーツィーは群れで最も大柄な荒くれ者だった。ダンス対決だと誤解しているアレックスは余裕の態度で腰を振るが、ティーツィーに一撃で弾き飛ばされた。
スーバはマクンガから、掟に従ってアレックスに追放処分を言い渡すよう促された。「それがボスの務めだ」と詰め寄られたズーバは、ボスの座を降りると宣言した。新たなボスに就任したマクンガは、アレックスに「我々の水場から去れ」と命じた。アレックスはズーバに、「戦うなんて聞いてない。父親としてアドバイスしてくれれば良かった」と文句を言う。ズーバが「本物のライオンなら、こんなことにならない」と苦言を呈すると、アレックスは冷たい態度で「そうだろうね」と告げ、その場を後にした。
メルマンは医師として動物たちを治療していたが、仲間のキリンから、「茶色のシミがある。まじない医者病だ」と言われる。メルマンは本気にしなかったが、「前にまじない医者をしていたジョーにも同じシミが出来て、2日で死んだ」と告げられて動揺した。マーティーは得意の水飛ばし芸を仲間たちに披露し、胸を張る。しかし仲間は、すぐに同じ芸を真似してみせた。驚くマーティーに仲間は「君が出来るなら、僕らも出来る」と言う。マーティーが「特別だと思ってたのに」と言うと、仲間は「何もかも同じ」と述べた。
アレックス、マーティー、メルマンは修理中の飛行機に集まり、それぞれの理由で落ち込む。そこへグロリアが明るい様子で現れ、「ここは最高。これからモトモトとデートなの」と口にした。メルマンはグロリアに嫌味っぽい言葉を浴びせ、言い争いになった。アレックスはマーティーと別のシマウマの見分けが付かず、困惑した。「俺には特別な所が何も無いか」とマーティーが言うと、アレックスは「お前が友達と盛り上がってる時に、俺は人生最悪の日を送ってたの」と告げる。「いつも自分のことばかりだ」と責められたアレックスは反発し、マーティーと言い争いになった。
死を覚悟したメルマンは、穴に入って最期の時を待とうとする。そこへジュリアンとモーリスが通り掛かり、メルマンの事情を知った。するとジュリアンは、「同じ境遇なら、昔から夢見ていたことを全部やってみる」と語る。「やりたいことがあるだろ?」と問われたメルマンは、「ずっとグロリアに気持ちを伝えたいけど、出来なかった」と明かす。モーリスが「どうせ死ぬんだから告白し」と告げると、彼は「そうか、そうだね」と言って穴から出た。
グロリアはモトモトとデートし、「私のどこに興味があるの?」と質問する。体格のことしか言わないモトモトにグロリアが物足りなさを感じているところへ、メルマンがやって来た。グロリアは仲直りのために来たと考え、「分かってる、謝らなくても」と告げる。一度は去ろうとしたメルマンだが、モトモトに「このレディーを女王のように扱え。だって君は完璧な女性を見つけたんだ」と告げた。
メルマンはモトモトに、「僕がそんな幸運に預かれたら、彼女に毎日、花を贈る。好みは白い蘭。朝食はベッドでトースト60枚。泣きたい時は肩を貸し、親友になる。毎日、全力で彼女のことを笑わせようとする。だって笑った彼女は世界一、素敵だから。でも僕は出来ないから、君がやるんだ」と語った。メルマンが去った後、全てを見ていたメスのカバたちは、彼の語った愛の言葉にウットリした。
動物保護区の水場では、水が干上がるという事態が起きていた。陳情を受けたマクンガは、残り少ない水を戦って勝ち取ることを通告した。動物たちからは「アンタが勝つに決まってる」と不満の声が出るが、マクンガは「不公平なのが人生だ。喉が乾いたら保護区の外で水を探せばいい」と冷淡に告げる。アレックスは「俺が何とかするよ」と言い、水場を去った。アレックスはマーティーと仲直りし、水場が干上がった原因を調べるために保護区を出て川の上流へ向かった…。

監督はエリック・ダーネル&トム・マクグラス、脚本はイータン・コーエン&エリック・ダーネル&トム・マクグラス、製作はミレーユ・ソリア&マーク・スウィフト、編集はマーク・A・ヘスター、プロダクション・デザイナーはケンダル・クロンクハイト=シェインドリン、視覚効果監修はフィリップ・グルックマン、アード・ディレクターはシャノン・ジェフリーズ、撮影コンサルンタトはギレルモ・ナヴァロ、伴奏音楽&歌曲はハンス・ジマー&ウィル・アイ・アム、
声の出演はベン・スティラー、クリス・ロック、デヴィッド・シュワイマー、ジェイダ・ピンケット・スミス、サシャ・バロン・コーエン、セドリック・ジ・エンターテイナー、アンディー・リクター、バーニー・マック、アレック・ボールドウィン、シェリー・シェパード、ウィル・アイ・アム、エリザ・ガブリエリ、トム・マクグラス、クリス・ミラー、クリストファー・ナイツ、コンラッド・ヴァーノン他。


2005年の長編アニメーション映画『マダガスカル』の続編。
監督は前作に引き続いてエリック・ダーネル&トム・マクグラスが担当。
アレックスのベン・スティラー、マーティーのクリス・ロック、メルマンのデヴィッド・シュワイマー、グロリアのジェイダ・ピンケット・スミス、ジュリアンのサシャ・バロン・コーエン、モーリスのセドリック・ジ・エンターテイナー、モートのアンディー・リクターといった声優陣は、前作からの続投。
他に、ズーバの声をバーニー・マック、マクンガをアレック・ボールドウィン、アレックスの母をシェリー・シェパード、モトモトをウィル・アイ・アムが担当している。

主な舞台がアフリカなので、もはや『マダガスカル2』というタイトルは全く内容に合っていない。邦題だけの問題ではなく、原題にも「Madagascar」という表記がある。
もちろん前作を作った時点では続編の予定なんか無くて、ヒットを受けてパート2の製作が決まったもんだから、困った事態に陥ってしまったわけだ。
だから原題が『Madagascar: Escape 2 Africa』とう風に、「マダガスカル」なのに「アフリカ」という妙なことになっている。
タイトルと内容を合わせるために、今回も主な舞台をマダガスカルに設定するという考えは、たぶん全く無かったんだろうと思われる。

冒頭シーンで、アレックスの幼少時代の出来事や、動物園へ来た経緯が描かれる。そういう導入部にしているぐらいだから、今回は彼が父親と再会するドラマがメインになるのだろうと予想する。
そのドラマは実際にあるのだが、一方でマーティーやメルマン、グロリアのエピソードも盛り込まれる。
他の面々を完全にカヤの外に置いたり、存在感を皆無にしてしまったりするのはマズいけど、他のキャラのエピソードを描くことで肝心のアレックスのドラマが薄くなってしまうのは本末転倒だろう。
アレックスがメイン、他はサブという配分にすべきだろうに、どれも同じぐらいの割合にしてあるのは、いかがなものかと。

アレックスたちはオンボロ飛行機を使い、ニューヨークへ戻ろうとする。前作でも最終的には動物園へ戻ろうとしていたから、そのための行動を取るのは当然だ。
ところがアフリカに到着すると、そんな気持ちはあっさりと消えて無くなってしまう。
前作で「動物園の動物は、自然に戻るより動物園で暮らす方が幸せだ」というアンチ・ディズニーを感じさせるようなメッセージを発信していたが、また前作と同じように「アレックスたちを自然に放ち、動物園の方がいいと感じる」という手順を繰り返させて、同じメッセージを発信する。
それは悪く言うと、っていうか悪く言わなくても、ただの焼き直しになっている。
で、そこで同じメッセージを発信しておきながら、最後はアフリカで終わる。「動物園へ帰ろう」という意識は、アレックスたちの中から完全に消え去っているのだ。
そういう終わり方にすることで、前作のメッセージは全面的に否定される。

前作はマダガスカルが主な舞台であり、アレックスたちはキツネザルの群れに加わるだけだった。何しろマダガスカルだから、ライオンやシマウマ、キリンやカバという同じ種族の動物たちに出会うことは無かった。
しかし今回はアフリカなので、同じ種族が暮らしている。アレックスたちは仲良しグループだが、自然の世界においてライオンとシマウマとキリンとカバが一緒に行動することなど有り得ない。特にライオンは、シマウマやキリンからすれば、自分たちを襲ってエサにする敵でしかない。
だから、そういう部分を使って今回の物語を構築していく可能性も考えられるんじゃないかと思っていたのだが、まるで違っていた。
それどころか、アフリカの大地でも、ライオンやシマウマ、キリンやカバ、それにダチョウなど他の動物たちも、みんな仲良く暮らしているという設定なのだ。
いやいや、それはダメだろ。だったら、ライオンは何をエサにして暮らしているんだよ。
子供向け映画だからって、そこの大胆すぎる嘘は受け入れ難いわ。

前作では「腹を空かせたアレックスは、仲間たちの姿がステーキ肉に見えてしまう」という描写があった。
そこには「肉食動物と草食動物が仲良く暮らしていくには、どうすれば良いのか」という問題提起があったが、「仲間がいるから大丈夫」「肉が駄目なら魚を食べればいい」という安易で子供騙しな答えだけでお茶を濁していた。
だが、それでも一応は答えを用意していただけマシだ。
今回は「肉食動物と草食動物は自然の世界でも仲良く暮らしている」という描写にして、問題そのものが存在しないかのように偽装しているのだ。

「肉食動物と草食動物の共存」という問題を隠蔽してしまったことで、アレックスたちの特殊性が消滅してしまっている。
本来なら、彼らのように他の種族同士、特に肉食動物と草食動物が仲良く暮らしているというのは、とても珍しいケースなのだ。それはアフリカで自然の中に暮らしている動物たちからすれば、驚くべきことだし、異端の存在のはずなのだ。
ところが、アフリカでも肉食動物と草食動物が一緒に暮らしている設定にしちゃったもんだから、アレックスたちが「普通の面々」になってしまっている。
マーティーが群れに混じって「自分は特別じゃない」と感じるより前から、既に彼らの持っている大きな特殊性は失われているのだ。

老女は前作に引き続き、アレックスと戦って軽く叩きのめす。さらに今回は、ジープにはねられても怪我一つせずピンピンしているという超人ぶりを見せ付ける。
脇の脇にいるようなキャラクターにしては、あまりにもクセが強すぎる。
それに、彼女のようなキャラクターを登場させることによって、世界観やパワーバランスに狂いが生じてしまう。
冒頭シーンでハンターが「ロープを使ってアラケイを動物保護区から誘い出し、木箱に入れてトラックで運ぶ」という「ごく普通の人間」としての行動を取っているのに、老女が平然と超人的なパワーや戦闘能力を発揮することによって、映画がルール無用の無法地帯と化ししまう。

あと、彼女が武器も使わずに平気でアレックスを倒せてしまうぐらい圧倒的な強さを持っているってことになると、「ライオンのボス」という座を巡る争いを描いたところで、「でもライオンのボスの座に就いて百獣の王になったところで、老女の方が遥かに強いし」ってのが引っ掛かってしまう。
それは余計な引っ掛かりだ。
実際、マクンガを倒すのはズーバでもアレックスでもなくて老女なんだけど、それはダメだろ。だったらライオンのボスにふさわしいのは、ズーバじゃなくて老女ってことになるだろ。
いっそのこと、「その老女がライオンのボスになってアフリカの大地に君臨する」というところまで振り切ってくれたら、白旗を上げて全面的に受け入れたけど。

老女を完全な悪役に据えているのかというと、そういうわけでもない。
そこで笑わせようとしている意識は感じられる。
ただ、笑いを発信するキャラクターとして老女を使おうとしているのであれば、「川を塞き止めて保護区の水場が干上がる原因を作る」とか、「仲間を救うためにダムを壊そうとしたアレックスを捕獲して食べようとする」ってのは行き過ぎに感じられる。
その辺りにおける老女の行動は、微塵も笑えないんだよなあ。

ズーバがボスの座を降りる意味が全く分からない。
もちろん「アレックスの追放を命じるよう言われたから」ってことなんだけど、ボスの座を降りたところで、アレックスが追放されなくなるわけではない。新しくボスになったマクンガがアレックスを追放するのだ。
だから「自分で息子を追放することが出来ないから、他のライオンに任せる」というだけの行動になっているんだけど、それって全く意味が無いでしょ。むしろ、「息子だから悩むけど、掟だから仕方なく追放を命じる」という形にした方が流れとしてスムーズだ。
つまり、そもそもマクンガの「アレックスを利用してズーバをボスの座から引きずり下ろす」という作戦自体がおかしいのだ。
おかしいのに、なぜかズーバがその作戦に乗っちゃってるのだ。

ズーバがボスの座を降りた後、アレックスと言い争いになる展開も違和感が強い。
ズーバが「ボスを降りる」と宣言した時にアレックスは「ダメだよ、そんなことしちゃ」と言っていたのに、その言葉の意味が弱くなっちゃうでしょ。
アレックスは自分のせいで父親がボスの座を追われたことに対して、「迷惑を掛けた、申し訳ない」という感情を抱くべきなんだよ。
父子が不和になる展開を描きたいのなら、他に幾らでも方法はある。それをボスの座を巡る争いと組み合わせようとして、明らかに融合に失敗している。

前作では「片思い」ということで済ませていたメルマンとグロリアの関係だが、今回はカップルが成立している。
本来ならば、そこには「キリンとカバという種族の違い」という大きな壁が立ちはだかっているはずだ。
しかし本作品では、「メルマンが種族の違いを気にして、なかなか告白できずにいる」という部分しか壁が無い。告白してしまえば、そこで壁は崩壊する。その壁はとても薄くて低い。
「愛は全ての違いを超越する」ということで、簡単にキリンとカバがカップルになってしまう。
それは安易な子供騙しにしか思えない。

(観賞日:2014年7月31日)

 

*ポンコツ映画愛護協会