『マッド・ドッグス』:1996、アメリカ

大物ギャングのボスであるヴィックが精神病院から退院してくることになった。ヴィックの愛人グレース・エヴァリーに手を出した部下のミッキー・ホリデイは身の危険を察知。しかし、彼は自分しかグレースの居場所を知らないことから、それを切り札にして危機を回避できると確信していた。
退院してきたヴィックは、ミッキーにグレースを探すよう指示した。さらに、勢力拡大を狙っているジェイク・パーカーや仲間を殺害するよう命令する。ミッキーはジェイクの雇った早撃ち名人ニコラス・ファルコを銃殺し、さらにジェイクも殺す。
グレースのクラブ「DNA」でヴィックのパーティーが開かれた。そこで部下のベン・ロンドンはヴィックに反旗を翻すが、ヴィックの用意していた男に殺される。男の正体はニコラス・ファルコ。ミッキーが殺したのはニセモノだったのだ。ヴィックはさらに、ミッキーも殺させようとするのだが…。

監督&脚本&共同製作はラリー・ビショップ、製作はジュディス・ラザフォード・ジェームス、製作総指揮はステファン・マンパール&レナード・シャピロ、撮影はフランク・バイヤーズ、編集はノーマン・ホリン、美術はディナ・リプトン、衣装はイレーヌ・メルツァー、音楽はアール・ローズ。
出演はリチャード・ドレイファス、ジェフ・ゴールドブラム、ガブリエル・バーン、エレン・バーキン、ダイアン・レイン、ラリー・ビショップ、グレゴリー・ハインズ、カイル・マクラクラン、バート・レイノルズ、クリストファー・ジョーンズ、ヘンリー・シルヴァ、ボブ・ライナー、ジュアンJUAN・フェルナンデス、ジョン・イングラシア、ビリー・ドラゴ、マイケル・J・ポラード、アンジー・エヴァハート、ビリー・アイドル、ポール・アンカ、ジョーイ・ビショップ、リチャード・プライヤー他。


なかなか豪華な顔触れが揃ったギャング映画。ヴィックをリチャード・ドレイファス、ミッキーをジェフ・ゴールドブラム、ベンをガブリエル・バーン、グレースをダイアン・レイン、ジェイクをカイル・マクラクラン、ファルコをクリストファー・ジョーンズが演じている。

オープニングで流れるのは、フランク・シナトラの「I've Got The World on a String」。さらに劇中では、ディーン・マーティンやサミー・デイヴィスJr.の歌も使用される。そこからも分かるだろうが、これはシナトラ映画の影響を強く受けている映画である。
極め付けは、ラウンジ歌手ダニー・マークスとしてポール・アンカが登場し、自らが作曲しシナトラがヒットさせた「マイ・ウェイ」を歌う場面。とはいえ、ベン役のガブリエル・バーンとのデュエットによって「ベンズ・ウェイ」になってしまうのだが。

監督のラリー・ビショップは父親ジョーイ・ビショップ(本作品にも出演)がシナトラと親しかったこともあり、ラット・パック(シナトラ一家)を意識して本作品を作り上げたようだ。
仲間によって製作された映画の持つ「粋」な味わいを出したかったのかもしれない。

リアリティーから遠く離れたギャング映画の味わいは、まあ感じられる。ただし、人間関係や人物配置、状況説明が分かりにくいので、作品がスムーズに流れていかない。古いものを新しく甦らせるという意図は見えてくるが、話がボンヤリしすぎている。

出演者の顔見せ合戦になってしまい、ストーリーの面白さがあまり感じられないのはキツイ。しかもキャラクター造形が不充分なので、キャラに話を引っ張る力が無い。起承転結をハッキリさせたシナリオにした方が良かったのではないだろうか。

派手な銃撃戦の迫力も無く、ジリジリした心理戦の持つ緊迫感も無い。おまけにリズムの変化も無い。見せ場となるはずのミッキーとニコラスの対決も、前置きが浅いから盛り上がりに欠ける。
「で、何が言いたいの?」という疑問を残して映画は終了する。

ちなみに、クラブ「DNA」でジャズを演奏するのはアーニー・ワッツ、マイケル・ラング、ジョン・パティトゥッチ、ハーヴェイ・メイソンの4名。
やっぱ豪華なんだよなあ。

 

*ポンコツ映画愛護協会