『ミラクルアドベンチャー カザーン』:1996、アメリカ

12歳の少年マックス・コナーは、母アリスと2人で暮らしている。父ニックはマックスが2歳の頃に家を出た。アリスは恋人トラヴィスとの結婚を考えており、そのためには離婚届にニックのサインが必要だ。マックスは母とトラヴィスの関係を快く思っていない。
いじめられっ子のマックスは、学校の不良グループから金を巻き上げられている。不良グループを騙したマックスは彼らに追い掛けられ、廃ビルへと逃げ込んだ。マックスは身を隠すが、その時に足で古いラジカセのスイッチを入れてしまう。
すると、ラジカセから煙が発生し、中からターバンを巻いた巨漢の男が姿を現した。男はカザーンと名乗り、自分を魔人だと告げる。自分を呼び出した御主人様の3つの願いを叶えると言うカザーンだが、マックスはまるで本気にしなかった。
マックスは自分に付きまとうカザーンの存在を疎ましく思うが、彼に本当に魔力があることを知って態度を変える。マックスと共にライブハウスに出掛けたカザーンは魔力を使ったパフォーマンスを見せ、店の経営者マリクに目を付けられる。
マックスの強がりがきっかけとなり、彼は不良グループと共にニックが作った海賊版の音楽テープを盗み出してしまう。不良グループはマックスに、テープを返して欲しければ金を出せとニックに告げるようマックスを脅す。
ニックに会いに行ったマックスは、父がマリクから「テープを取り戻さないと殺す」と脅されているのを耳にする。カザーンはライブハウスでデビューを果たすが、マリクは彼が魔人だと気付いており、その魔力を利用しようと企んでいた…。

監督&原案はポール・M・グレイザー、脚本はクリスチャン・フォード&ロジャー・ソファー、製作はスコット・クルーフ&ポール・M・グレイザー&ボブ・エンゲルマン、製作総指揮はテッド・フィールド&ロバート・W・コート&レナード・アルマート&シャキール・オニール、共同製作総指揮はマイケル・A・ヘルファント&ベス・マロニー・ジェリン&ブルース・ビンコウ、撮影はチャールズ・ミンスキー、編集はマイケル・E・ポラコウ、美術はドナルド・バート、衣装はホープ・ハナフィン、視覚効果監修はチャールズ・ギブソン、音楽はクリストファー・ティン、音楽監修はボニー・グリーンバーグ。
主演はシャキール・オニール、共演はフランシス・キャプラ、アリー・ウォーカー、ジェームズ・エイクソン、ジョン・コステロ、マーシャル・マネッシュ、ファウン・リード、ボブ・クレンディニン、ジョアン・ハート、ブランドン・ダランド、ウェイド・J・ロブソン、ジェイク・グレイザー、エフレン・ラミレス、ジョナサン・カラスコ、ジェシー・ペレス、トッド・シーブル他。


NBAのスター選手シャキール・オニールが主演を務め、製作にも携わった作品。
基本的には、調子に乗り過ぎている魔人と性格の歪んだガキがウダウダとやってる作品。
金を掛けて特殊効果をチョボチョボと使った、お遊戯会である。

とにかく、あらゆるポイントをことごとくミスっている。
何かを見せたり説明したりするタイミングを、全て外している。
とにかくキレ味が悪くて、例えば一発でポンと笑いを提示するべきシーンでも、ズルズルと行ってしまったりする。

最初にマックスから望みを言われたカザーンは、なぜか姿を消してしまうのだが、それはブランクで腕が鈍っていたからだ。
しかし、それならば「魔法に失敗した」ということを、もっと分かりやすくてオーバーな表現で見せるべきだろう。

魔力が復活したカザーンは「天まで届くほどのジャンクフードが食べたい」というマックスの願いを叶えるのだが、それは「空からハンバーガーやホットドッグがポツポツと落ちてきて、やがて雨のようにジャンクフードが降り注ぐ」という形になっている。
しかし、ジャンクフードが最初に1つ2つと落ちてきた時点で、次の絵が予想できてしまうのだ。そこは例えば、天まで届くほどの高さがある巨大なハンバーガーがドカッと姿を現した方が、インパクトはあるし、キレ味も良いはずだ。

例えばマックスに臭いと言われたカザーンが、魔力で出したシャワーを部屋の中で浴びるというシーンがある。
ここでマックスの表情を挿入しているのだが、それよりカザーンを映したままカットを割らない方が、一瞬でシャワーを出したというキレの良さが生まれる。

最初にマックスがニックに会いに行った時、ニックは知らない少年が紛れ込んだと考える。しかし、それ以前に観客はニックが息子の顔を知らないという情報を与えられていないので、てっきり父子が知っているものだと思ってしまう。
で、2回目にマックスがニックに会いに行った時に、自分が息子だと明かす。
しかし、1回目に明かさなかったことによる効果は全く無い。
先にニックがマックスの顔を知らないことを観客に示しておいて、最初の面会でマックスが自分が息子だとニックに明かすという形の方が良かったと思う。

カザーンが登場するまでに、マックスの周辺の主要なポイントは全て説明しておくべきだろう。
そのことを怠っているから、後から説明しなければならなくなり、それで様々なタイミングが外れてしまうということになっている。

ライブハウスに出掛けたカザーンは、なぜか歌っていた歌手に指名され、その場でラップを披露する。その後は、マックスとカザーンの行動目的が不鮮明なまま、カザーンがラップ歌手として歌うというストーリーが展開していく。
家族ドラマの部分も、マックスがいじめられているという部分も、マックスとカザーンの交流も、全てが中途半端になったまま、シャキール・オニールがラップを披露するという部分を売りにして、グダグダのままで観客を引っ張ろうとする。

マリクが登場するのが遅いし、メインとなるストーリーが動き始めるのも遅すぎる。
特撮がたっぷりと使われているわけでもないから、その場の面白さで引っ張ることも出来ていない。
シャキール・オニールの人気と知名度だけに頼っているんだろう。

カザーンは途中からは、魔人というよりも単なるラッパーになっている。
クライマックスでも、カザーンは別の場所で歌っているだけ。
ようやく登場しても、なぜか魔力を使わずに腕力で敵を倒していく。
それじゃあ、ただの力が強いオッサンじゃないか。


第19回スティンカーズ最悪映画賞

ノミネート:【最悪の助演男優】部門[フランシス・キャプラ]
ノミネート:【最悪のヘアスタイル】部門[フランシス・キャプラ]

 

*ポンコツ映画愛護協会