『モンスター上司2』:2014、アメリカ

ニック・ヘンドリックス、デール・アーバス、カート・バックマンは独立して起業し、モーニングショーのロサンゼルスの発明家や企業家を紹介するコーナーに出演した。彼らは発明したシャワーヘッドを実演するが、失敗したと感じて落胆する。しかし番組出演後、3人の元には大手カタログ通販会社「ボールダー物流」から電話が入った。すぐに3人は会社へ行き、社長のレックス・ハンソンと会う。レックスは彼らに、「ウチと取引すれば美味しい思いが出来るぞ」と告げた。
レックスは製造を中国に委託する考えを話すが、ニックたちは「発明の特許を手放す気は無い」と言う。レックスは莫大な開発費を一括で支払うと持ち掛けるが、ニックは取引を断った。そこへレックスの父であるバートが現れ、アメリカンドリームを目指すニックたちを称賛した。彼は「パシフィックショア銀行を紹介する。融資してくれるはずだ。私が大量発注するからだ」と語り、初回の10万個を注文した。「ただしウチが独占で売る」と彼は言うが、ニックたちは快諾した。
ニックたちは50万ドルを借りて広い倉庫を借り、従業員を面接して雇い入れた。指定された期限より3日も早く10万個を完成させた彼らは、バートの元へ赴いた。するとバートは軽い調子で、「注文を取り消す」と口にした。理由を問われた彼は、「我々が取り消せば、君らは返済金を払えない。つまり君らの会社は差し押さえ。私は10万個を競売でタダ同然の値段で落札し、特許を手に入れて中国人に製造してもらう」と語る。そこにレックスが現れ、親子は勝ち誇った態度を見せ付けた。
ニックたちは報復の方法を練り、デールとカートは「レックスを誘拐してバートから金を取ろう」と言い出す。ニックが呆れて「ノウハウはあるのか」と問い掛けると、彼らは「ジョーンズなら持ってる」と口にする。ニックは「あいつは詐欺師だ。足元を見られるのがオチだ。俺らはヘマばかり。会社を救うには本物のやり手が必要だ」と語り、ジョーンズに頼ることを嫌がる。ニックたちは刑務所へ出向いてデイヴに協力を求めるが、「裁判で争っても無駄だ。他に策はあるが、お前らはタマ無しだから実行できない」と嘲笑された。
ニックたちは仕方なくジョーンズに会い、デールとカートは誘拐計画について相談する。まだニックは誘拐に反対していたが、ジョーンズは「誘拐と気付かせずに誘拐する方法」の存在を匂わせた。それを教える代わりに、彼はニックの腕時計を渡すよう要求した。ニックが従うと、ジョーンズは「ターゲットの家に忍び込んで酒にドラッグを盛れば、親父が金を払うまで眠ってくれる」と語った。その案を採用したニックたちは、デールがジュリアに襲われた時の笑気ガスを使うことにした。
ニックは車で見張り役を担当し、デールとカートが診療時間の終わったヘニング歯科に侵入した。ジュリアを含む数名が現れたのでニックは無線で知らせるが、デールとカートは無駄話に夢中で全く聞いていなかった。ジュリアたちが診察室に入って来たので、2人は慌てて身を隠した。するとジュリアたちは、セックス依存症の集団セラピーを始めた。デールとカートを助けるため、ニックは歯科に忍び込んだ。警備員に気付かれたニックは、慌てて「困ってる」と告げた。警備員はニックがセラピーの参加者だと思い込み、診察室へ案内した。彼も仕事で来たわけではなく、セラピーの参加者だった。
ニックはアルコール依存症のセラピーだと誤解したまま、自身の体験を語り始めた。途中でセックス依存症だと気付くが後戻りできず、男との体験もあると嘘をついた。ジュリアは興奮して詳しく話すよう求め、ニックがゲイだと思い込んだ。彼女は他の面々を帰らせ、ニックを残してセックスに誘う。ニックはトイレに行くと嘘をつき、デールとカートを逃がした。デールとカートが車で待っていると、ニックはジュリアとコトを済ませてスッキリした様子で戻って来た。
ニックたちはレックスの邸宅へ行き、彼が不在なのを確認する。家政婦のキムが来たので3人は身を隠し、彼女に気付かれないよう侵入する。レックスが帰宅したので、3人はクローゼットに隠れる。しかし誤って笑気ガスを吸ってしまい、そのまま朝まで眠り込む。翌朝に目覚めるとレックスがいなかったので、彼らは車で去った。駐車場に車を停めてトランクを開けると、中にレックスがいた。驚く3人を見て、レックスはバカ笑いした。
レックスはニックたちの計画を見抜いており、「俺も加えろ。親父とは金のことで揉めてる」と言う。ニックは誘拐計画を中止するつもりだったが、レックスは「いや、続行だ。親父に脅迫状を送った。身代金は50万ドルを500万ドルに増やしておいた。400万ドルは俺が貰う。解放されたら、警察には偽の犯人情報を話す」と告げる。ニックは「信用できない」と断ろうとするが、レックスは「誘拐されたと通報するぞ」と脅して承諾させた。
ジュリアは助手の2人から、監視カメラに病院へ侵入するニックたちの姿が写っていることを知らされる。「通報しますか」と問われた彼女は、「いいえ、私に任せて」と述べた。ニックたちはレックスに指示され、バートに脅迫電話を掛けた。倉庫に戻るとハッチャー刑事と警官が来ていたので、ニックたちはレックスを車に隠れさせた。ハッチャーから「バートと取り引きがあるか」と問われただけなのに、デールは「息子が誘拐されるなんて」と余計なことを口にしてしまい、慌てて誤魔化した。
ニックたちは倉庫の従業員に休暇を与え、全員を帰らせた。レックスは「親父は俺より金が大切なんだ」と嘆き、同情したデールとカートが元気付けるのをニックは注意した。ニックは「警察が動き出した以上、計画は中止だ」と言うが、レックスは「引き下がらないぞ」と口にする。彼はニックに、「俺はやめても平気だが、お前や従業員の生活は?」と問い掛ける。彼は「復讐を手伝わせてくれ。気に入る策が無かったら諦める」と言い、ニックは承諾した。
レックスはニックたちと相談し、誘拐計画を立てた。まずニックたちが空き倉庫でレックスを椅子に縛り、追跡不能の携帯電話でバートを橋のベンチに呼び出す。仕掛けておいた携帯でホテルの地下駐車場に移動させ、そこで電波が途絶える。覆面姿のニックたちが銃を持って待ち受け、バッグから金を抜き取る。カートがバートに化けて受け渡し場所へ行き、金を抜いたバッグをゴミ箱に捨てて立ち去る。警察を欺く完璧な計画だと感じたニックたちは承諾し、ジョーンズから追跡不能のプリペイド携帯を入手する。翌日、ニックたちはレックスを倉庫で縛り、バートを呼び出して監視する…。

監督はショーン・アンダース、キャラクター創作はマイケル・マーコウィッツ、原案はジョナサン・ゴールドスタイン&ジョン・フランシス・デイリー&ショーン・アンダース&ジョン・モリス、脚本はショーン・アンダース&ジョン・モリス、製作はブレット・ラトナー&ジェイ・スターン&クリス・ベンダー&ジョン・リッカード&ジョン・モリス、製作総指揮はトビー・エメリッヒ&リチャード・ブレナー&マイケル・ディスコ&サミュエル・J・ブラウン&スティーヴ・ムニューシン&ジョン・チェン&ダイアナ・ポコーニー、撮影はジュリオ・マカット、美術はクレイトン・ハートリー、編集は エリック・キサック、衣装はキャロル・ラムジー、音楽はクリストファー・レナーツ、音楽監修はデイヴ・ジョーダン&ジョジョ・ヴィリャヌエヴァ。
出演はジェイソン・ベイトマン、チャーリー・デイ、ジェイソン・サダイキス、ジェニファー・アニストン、ジェイミー・フォックス、クリス・パイン、ケヴィン・スペイシー、クリストフ・ヴァルツ、ジョナサン・バンクス、キーガン=マイケル・キー、リンゼイ・スローン、ケリー・ステイブルズ、ジェリー・ランバート、サム・リチャードソン、ブリアンヌ・ハウイー、リディア・ポート、ジェイ・レイザー、レノン・パーハム、ジル・ベイシー、アリッサ・プレストン、ジェニファー・ボック、ブルーノ・アマト、スージー・ナカムラ他。


2011年の映画『モンスター上司』の続編。
監督は『俺のムスコ』のショーン・アンダース。
脚本はショーン・アンダース監督と『空飛ぶペンギン』『なんちゃって家族』のジョン・モリスによる共同。
ニック役のジェイソン・ベイトマン、デール役のチャーリー・デイ、カート役のジェイソン・サダイキス、ジュリア役のジェニファー・アニストン、ディーン役のジェイミー・フォックス、デイヴ役のケヴィン・スペイシー、ステイシー役のリンゼイ・スローンは、前作からの続投。
他に、レックスをクリス・パイン、バートをクリストフ・ヴァルツ、ハッチャーをジョナサン・バンクス、マイクをキーガン=マイケル・キーが演じている。

前作がヒットしたので、続編を作るのは当然の流れと言ってもいいだろう。
ただし、そこには大きな問題がある。
前作でニックたちは、憎い上司への復讐を成し遂げた。そのため今回は、攻撃対象となる上司が存在しない。
そこで今回は、「起業したニックたちが詐欺師親子に騙され、報復に出る」という内容にしてある。
ただ、ハンソン親子は彼らの上司じゃないので、「Horrible Bosses」というタイトルからは外れてしまう。それと、「長きに渡って苦しめられてきた相手」じゃないので、そこにも弱みがある。また、「自分たちの愚かな判断で騙された」という落ち度もあるので、これまた前作よりも弱くなってしまう。

モーニングショーの実演シーンでは、擦りガラス越しにデールが主導でポンプを動かす様子が、カートを手コキしているように見える。
だが、それを誰も見ていないので、慌てて誤魔化そうとすることもないし、驚いて止めようとすることもない。
テレビで見ている視聴者の様子を挿入することもない。何のリアクションも用意されていないので、コメディーとしてはフワフワした状態になっている。
ホントにそれでいいのかと思ってしまうが、そういうノリってことで受け入れるべきなんだろう。

従業員の面接は適当で、カートは美女だったら即OKで、ニックとデールは相手が英語を話せなくても採用し、重罪の前科者なら怖いので採用する。
基準が1つじゃない時点でどうかと思うが、そのようにスキルを無視して採用したことで何か問題が起きるのかというと、何も起きない。
それどころか、3日も早く完成する。
起業して間もないし、従業員も全くスキルの無い面々ばかりなのに、いきなり10万個という大量の商品を、あっという間に仕上げてしまうのだ。

ニックたちがハンソン親子に騙されたと判明してから物語が本格的に転がり始めるので、そこまでに多くの時間や手間を掛けずに済ませるってのは理解できるのよ。
ただ、それなら面接のシーンは、別に無くてもいいんじゃないかと思うんだよな。
そこを膨らませて、その場限りの笑いを欲しがる気持ちは分からんでもないが、それによるマイナスも生じている。
得られる笑いはそんなに大きくないので、収支を考えると完全に赤が出ているぞ。

デールとカートが誘拐作戦でジョーンズに頼ろうと言い出した時、ニックは強硬に反対する。
これが「嫌がっていても結局は会うことに」という流れに向けた、分かりやすい前フリであることは明白だ。
ただし、ニックに「あいつは詐欺師だ。足元を見られるのがオチだ。会社を救うには本物のやり手が必要だ」とまで言わせてジョーンズを否定すると、そのままカットを切り替えて「ジョーンズと会っている」という様子を見せるわけにはいかなくなる。ジョーンズと会う展開へ移行する前に、他の選択肢を排除するための手順が必要になる。
そこで、「本物のやり手」としてデイヴと会う手順が挟まれるわけだ。

デイヴは協力を求められてもバカにするだけで、さっさと面会を終わらせてしまう。その後、「やはり協力することに」という流れは用意されておらず、ニックたちの計画には全く関与しない。
つまり彼の仕事は、そのシーンだけでほぼ終了するのだ(ラストにも仕事が用意されているが)。
ハッキリ言って、わざわざ登場させた意味なんてゼロに等しい。しかし前作の主要キャラなので、「一応は顔だけでも」ってことで出しているんだろう。
そのシーンは、ゲスト扱いのケヴィン・スペイシーを登場させるためのシーンだ。そして彼を登場させるための導入として、前述したニックたちの会話が用意されているわけだ。

笑気ガスを入手するためヘニング歯科へ忍び込むシーンも、それと似たようなことが言える。
誘拐計画に関わるドタバタを描くだけなら、そんなトコで長く時間を使う必要など無い。さっさと誘拐を実行するパートに入ってしまった方がいい。
しかしジュリアを登場させる目的があるので、そのシーンに時間を割いているのだ。
ジェニファー・アニストンはその後も出番があるが、本筋を進める上での必要性は皆無に等しい。こちらも、やはりゲストのような扱いと言っていいだろう。
前作で上司役だった面々はジェイミー・フォックスも含め、観客を呼び込むには続編でも必要だってことだろうね。

メインの3人組はバカだが、特にオツムが悪いのはデールとカートだ。深く考えずに軽率な行動でヘマを繰り返すくせに、やたらと楽観的で、ピンチでもヘラヘラしている。
じゃあピンチを脱する方法を思い付いているのかというと、何も考えていない。
そんな彼らのせいで、心配性で慎重に事を運ぼうとするニックが迷惑を被ったり、尻拭いをする羽目になったりする。
そういうのが、この映画における笑いの作り方のパターンとなっている。

例えば、レックスの家へ侵入するシーン。デールとカートが何か策を持っている様子なので、ニックは心配しつつも同行する。
玄関から入ろうとするのでニックが驚くと、デールたちは「ちゃんと考えてる」と自信満々で言う。
「ドアに鍵が掛かってる」とデールたちが口にするので、ニックは「想定内だろ」と告げる。
するとデールたちは、「確率は半々だ。ドアは閉まってるか開いてるかだろ」と、何食わぬ様子で語る。

デールとカートはニックにクレジットカードを借り、それを差し込んでドアの鍵を開けようとする。ニックが「レックスがいたらどうする。チャイムで確かめるか」と問い掛けると、何も考えずにデールがチャイムを押す。
たまたまレックスは不在だったが、チャイムの音が知っている曲だったのでデールとカートは大声で陽気に歌い始める。
カードが家の中に落ちると、彼らは逃げようとする。
ニックが「俺のカードが」と言うと、2人は「カード会社に電話すれば停止できる」と告げる。ニックが「俺たちが来たことがバレる」と言うと、彼らは「お前が、だろ」と冷たく告げる。

とにかく「デール&カートがバカなことを能天気に繰り返す」というパターンが続くので、そこにハマれなかったら最後まで厳しいことになってしまうわけだ。そういう類の喜劇の作り方としては、決して質が低いわけではないので、そこは完全に「個人の趣味嗜好」という範疇に入ってしまうかな。
ただ、笑えるかどうかは人それぞれとしても、別の問題もあるのよね。
それは「あまりにもデールとカートがボンクラすぎるせいで、こいつらの復讐劇に乗れない」ってことなのだ。
デールとカートが自分たちのボンクラっぷりで間違った選択を繰り返すので、応援したい気持ちが全く湧かない。「そりゃあ騙されても仕方が無いだろ」という印象になってしまう。

レックスが誘拐計画を説明するシーンでは全てが順調に進むが、それは「ほぼレックスのアイデアだから」ってことだし、あくまでも計画のシミュレーションだからってことだ。
実際、いざ計画を実行すると、やっぱり3人組のボンクラっぷりが露呈し、次々にヘマをやらかす。それでも何とか最後までやり遂げようとするが、全てはレックスの罠だったことが判明する。
でも、それが明らかになっても、やっぱり同情心は全く湧かない。
そもそもレックスを信じたのがボンクラであり、「そりゃあ甘い言葉にホイホイと乗せられたんだから、しょうがないよね」ということになっちゃうのだ。

「ボンクラが酷すぎて応援できない」という問題を解消する意味でも、ニックがデール&カートに反対したり、迷ったりしている手順を用意している部分はあるんじゃないかと思われる。
ただ、それによって引っ張ってこれる同情心なんて、デールとカートのボンクラ2人組が簡単に打ち消してしまう。
ギリギリでレックスの犯行が露呈して逮捕されるが、それも壮快な大逆転劇とは言い難い。
しかも、最後は「競売に掛けられたニックたちの会社をデイヴが買い取り、ジョーンズは身代金を横取りして逃げた」というオチなので、「前作の上司のモンスターぶりは健在でした」という形になっている。ちっとも気持ち良くない終わり方だわ。

レックスがニックたちを騙したことを明かして逃げた後、都合良くジョーンズが倉庫まで車で送ってくれたり、カートのミスが最後の最後でレックスの犯行を裏付けることに繋がったりする。
そういうのはコメディーってことも考えれば充分に「有り」だし、携帯に関しては「その場限りのネタ」に終わらせず伏線として活用することにも結び付いている。
ただ、逆転劇やドンデン返しとしての心地良さは無い。
あと、「近距離から胸に銃弾を浴びたデールが助かる」とか、「結果的には刑事を助けたことになるので全ての罪は許されて無罪放免」というのは、さすがに都合が良すぎないか。コメディーであっても、そこはテキトーすぎるんじゃないかと。

(観賞日:2018年3月27日)

 

*ポンコツ映画愛護協会