『南の島のリゾート式恋愛セラピー』:2009、アメリカ

ゲーム小売店を経営するデイヴは妻のロニー、長男のロバート、二男のケヴィンの4人で暮らしている。その日、一家は家のタイルを選ぶため、4人でショールームに向かう。デイヴが車を運転していると親友のシェーンから電話が掛かり、バイクを買うローンが組めないので保証人が必要だと言われる。シェーンは妻のジェニファーと離婚したばかりだが、もうトルーディーという若い恋人と付き合っていた。デイヴは「金も払えないのにバイクなんて買うな」と呆れ、保証人になることを拒否する。しかし「カミさんに戻って来てほしいが、それは有り得ない。誰かに必要とされたいんだ」とシェーンが悲しんでいる芝居を打つと、簡単に騙された。
デイヴはショールームに入るが、「新しいゲームの発売日だし、忙しいんだ」と妻に面倒そうな態度を見せる。ロニーが気に入ったタイルを勧めると、「これでいい」と即答した。デイヴが親友のジョーイから電話を受けると、ロニーは「日曜日の誕生日パーティーに来るかどうか訊いて」と頼む。ジョーイは参加すると返事し、「ジェイソンから電話が来るぞ、まだ大げさなプレゼンをしたいって話だ」と語る。彼の予想通り、デイヴは親友のジェイソンから「君とロニーに、事務所に来てほしい。妻のシンシアとの見事なプレゼンを見てほしい」と電話で言われた。デイヴもジョーイも、彼のプレゼンを断った。
ジョーイが帰宅すると、娘のレイシーが露出度の高い格好で外出しようとしていた。彼がレイシーを呼び止めて「その服は男を誘ってる」と言うと、妻のルーシーも同意した。ジョーイはスタンフォード大学行きを決めているレイシーに「お前には自分の価値を知ってほしい」と説き、着替えを承知させた。レイシーが部屋へ行くと、夫婦は途端に口論を始めた。ジェイソンとシンシアは完璧主義者で、プレゼンについて何度も確認を繰り返した。
日曜日、ケヴィンの誕生日パーティーに、4組の男女が揃った。ジェイソンとシンシアが寝室でプレゼンをすると言い出したので、デイヴたちは仕方なく付き合った。するとジェイソンとシンシアは真剣に離婚を考えていると明かし、1年前から不妊治療を続けていたこと、それが重荷になって確信が持てなくなったことを説明する。これ以上は時間を無駄にしたくないのだと夫婦は話し、今後の2週間で決断を下すために「エデン」と呼ばれる南の島へ行くと発表した。
エデンは夫婦にとって究極のスポットだが、通常料金は高額だ。しかしグループ割引で半額になるので、デイヴたちに協力してほしいというのが2人のプレゼンだった。様々な楽しみがあること、夫婦の会話教室というセラピーもあるが希望しなければ受けなくても構わないことを、ジェイソンたちは説明した。デイヴは「仕事が忙しいし、子供を置いて行くなんて無理だ」と断るが、ジェイソンとシンシアは熱く訴えて「返事は夜の12時まで待つ」と告げた。
デイヴも行きたい気持ちはあり、半年後は休暇を取って旅行に行こうとロニーに約束した。深夜、夫婦が就寝していると、外で大きな物音がした。デイヴが拳銃を持って様子を見に行くと、ジェイソンが侵入してきた。デイヴが腹を立てると、彼は「おかしくなりそうなんだ。不妊治療でシンシアとの関係は冷え切ってる」と吐露する。それでもデイヴは断ったが、目を覚ました息子たちが「旅行に行ってほしい。パパたちに幸せになってほしい。だから、おじいちゃんに来てもらう」と話した。
4組の男女がリゾートアイランド「エデン」に着くと、案内人のスタンリーが出迎えた。ジョーイは若い女性3人組を見ると、鼻の下を伸ばした。デイヴたちはシャトルバスでエデン・ウエストへ行き、宿泊施設に入った。ジョーイは女性たちが向かったエデン・イーストに行きたがり、客室係が「貴方は結婚しているから無理です」と説明しても受け入れなかった。夜になるとデイヴたちはレストランへ行き、食事を楽しもうとする。デイヴは翌日の昼まで寝るつもりだったが、スタンリーが「それは無理です」と日程表を渡した。すると朝6時から夫婦セラピーが入っており、自由に楽しめるのは独身者のいるエデン・イーストだけだった。
デイヴは「問題があるのはジェイソンとシンシアだけだ」と語るが、スタンリーは考案者であるマルセルの夫婦セラピーは全員が受けねばならないのだと説明した。デイヴたちは問題を先送りし、まずは夕食を楽しむことにした。夕食が大満足した彼らは、セラピーを受けることにした。翌朝、デイヴたちの前にマルセルが現れ、「皆さんは愛を持続させるため、ここに来たのです」と言う。彼は全員に、ビーチに向かい合って並んで服を脱ぐよう指示した。デイヴたちが下着姿になると、マルセルはパートナーを観察して心からの真実を話すよう促した。
次のプログラムでは、それぞれの夫婦が別々にセラピストと面談した。夫婦関係を問われたデイヴは「普通だ」と答え、ロニーは「2人で乗り越えて来た」と言う。セラピストが「普通のことではなく、特別なことを話して」と勧めると、ロニーは「彼は新作ゲームの発売で忙しいし、私は改装で忙しい」と語る。デイヴが「家に帰ったら疲れている。改装の話なんてしたくない」と言うと、セラピストは「それは問題から逃げているだけだし、奥さんからも逃げているように聞こえる」と指摘した。セラピストは「ずっと個別の話ばかりで、夫婦の話が聞こえて来ない。赤の他人みたいだ」と言い、もっと物事を楽しむべきだと説いた。
翌日の夫婦セラピーで、マルセルはデイヴ&ロニーとジェイソン&シンシアの2組を海に入らせた。マルセルは魚と遊ぶよう促すが、4人の近くにに2匹のサメが出現した。デイヴたちは慌てるが、マルセルは「これもプログラムの一環です。こちらが攻撃しなければ、何もしません」と告げる。しかし女性2名はマルセルのボートに避難し、ジェイソンは逃げ出してデイヴの近くに餌を撒き散らした。デイヴが焦っていると、マルセルは「ゆっくり泳いで」と指示した。デイヴが必死で泳ぐと、サメは餌の方へ向かった。
ジョーイとルーシーは夫婦マッサージのプログラムを受けるが、別々に施術を受けること、セラピストは異性にすることを希望した。2人はそれぞれ美女とイケメンのセラピストにマッサージしてもらい、いい気持ちになる。しかしルーシーは男性セラピストからゲイの夫がいると聞かされ、勃起したジョーイは女性セラピストから「後処理は自分でどうぞ」と言われる。シェーンはトルーディーとサイクリングやウインドサーフィンをするが、若い彼女に付いていけず疲れ果てた。
その夜、デイヴは会食の席でサメに襲われたことへの苛立ちを吐露するが、誰も彼に同調しなかった。デイヴはロニーと滝を見に行く約束をしていたが、それをキャンセルして部屋に戻った。次の日、ロニーは面談へ行き、昨夜のデイヴの態度に対する不満を語った。するとデイヴは、「俺が正しい」と主張した。遊び足りないトルーディーはシェーンへの不服を語り、ジョーイとルーシーは激しい口論となった。4組はヨガのグループレッスンに参加し、インストラクターのサルヴァドールが指導した。すぐにシェーンは疲れてダウンしてしまい、トルーディーは放置された。
トルーディーが荷物をまとめて姿を消し、シェーンはデイヴたちに「俺が年寄り臭いって怒ってた」と明かした。ジョーイはシェーンに、「彼女の行き先はエデン・イーストしかない」と告げる。シェーンが「捜しに行く」と言うと彼は「一緒に行く」と告げるが、本当は自分が遊びたいだけだった。デイヴやジェイソンは反対するが、結局は全員でエデン・イーストへ行くことになった。夜になって浜辺に集合すると、ジョーイは「カヌーで行けばバレない」と告げた。
デイヴたちがカヌーを漕ぎ出すと、大雨が降り出した。シンシアはジェイソンの注意に腹を立て、「もう限界よ」と声を荒らげた。一行が岸に着くと、シンシアは「どうしようもないこともある。私は妊娠できない。付いて来ないで」とジェイソンに怒鳴る。彼女がジャングルへ向かったので、女性陣が後を追った。ジェイソンはルーシーとロニーに、「離婚するわ」と告げた。一方、男性陣はトルーディーの捜索に向かうが、それぞれが仲間への批判を口にした…。

監督はピーター・ビリングスリー、脚本はジョン・ファヴロー&ヴィンス・ヴォーン&デイナ・フォックス、製作はヴィンス・ヴォーン&スコット・スチューバー、製作総指揮はヴィクトリア・ヴォーン&ガイ・リーデル、共同製作はジョン・イスベル、製作協力はサンドラ・J・スミス&マイカー・メイソン&デイナ・フォックス、製作協力はウディ・ネディヴィ、撮影はエリック・エドワーズ、美術はシェパード・フランケル、編集はダン・レベンタル、衣装はスーザン・マシソン、音楽はA・R・ラフマーン、音楽監修はジョン・オブライエン。
出演はヴィンス・ヴォーン、ジェイソン・ベイトマン、ジョン・ファヴロー、ジャン・レノ、フェイゾン・ラヴ、クリスティン・デイヴィス、マリン・アッカーマン、クリスティン・ベル、テムエラ・モリソン、ピーター・セラフィノウィッツ、カルロス・ポンセ、タシャ・スミス、カリ・ホーク、ジョン・マイケル・ヒギンズ、ジョナ・ウォルシュ、ガトリン・グリフィス、コリン・バイオッチ、ヴァーノン・ヴォーン、ジャージー・ジム、ポール・ボーズ、ダニエル・セオドア、フィリップ・ジョーダン、ケン・チョン、シャーロット・コーンウェル、エイミー・ヒル他。


『アイアンマン』や『フォー・クリスマス』にエグゼクティブ・プロデューサーとして携わっていたピーター・ビリングスリーの長編監督デビュー作。
脚本は『スウィンガーズ』のジョン・ファヴロー、『ハニーVS.ダーリン 2年目の駆け引き』のヴィンス・ヴォーン、『ベガスの恋に勝つルール』のデイナ・フォックスによる共同。
デイブをヴィンス・ヴォーン、ジェイソンをジェイソン・ベイトマン、ジョーイをジョン・ファヴロー、マルセルをジャン・レノ、シェーンをフェイゾン・ラヴ、ルーシーをクリスティン・デイヴィス、ロニーをマリン・アッカーマン、シンシアをクリスティン・ベル、ブリッグスをテムエラ・モリソンが演じている。
ジムジムを演じているのは、実際にヴィンス・ヴォーンの父であるヴァーノン・ヴォーン。

まず序盤で感じるのが、「ジェイソンとシンシアのプレゼンがクソほどウザい」ってことだ。
2人はデイヴたちにエデンへ行くべきだと訴え、「僕たちの問題は、楽しむことをやめたら、楽しみ方さえ分からなくなったことだ。
だから昔みたいに一緒に楽しめるかのどうか、確かめたいんだよ」と語る。そこはBGMとデイヴたちの表情によって、「他の面々も同じようなことを感じている」ってのを示している。
でも、それで言いくるめようとしても無駄だぞ。
ジェイソンとシンシアがエデンへ行きたいのなら、勝手にすればいい。でも他の面々を巻き込むのは違うでしょ。それは単に、テメエらの身勝手に付き合わせているだけであって。

それなのに、ジェイソンとシンシアは仲間を誘うことを「みんなもエデンへ行った方がいい」ってな感じで正当化しており、悪びれた様子が無いんだから、すんげえ不愉快なのよ。
だから「こいつらは身勝手で不愉快な奴」として描いてくれれば何の問題も無いけど、なぜか「それは正しい行動」として描いているのよね。それは違うだろ。
その後には夜中に侵入したジェイソンが「おかしくなりそうなんだ」とか「離婚しても一人でいたくない。友達にいてほしい」とか色々と弱音を吐くけど、それで許せるわけでもない。
それも含めて、こいつに対する不快感を抱くだけだ。

デイヴはエデンへの旅行を断る理由として、「仕事が忙しい」と言う。ショールームへ行く時も、仕事の忙しさを口にしている。
しかし彼が仕事をしているシーンは、劇中で1度も登場しないのだ。ゲームの販売業ってのは、台詞で軽く触れる程度だ。
なので彼がホントに仕事で多忙なのか、それは全く伝わって来ない。
「口ではそう言っていたけど実際は違う」という可能性も考えられる状態になっているが、そういう設定があるわけではない。つまり実際に忙しい設定なのだが、裏が無いなら「デイヴが仕事で忙しくしている」ってことを序盤で見せておくのは必須事項じゃないかと。

エデンのホテルに着いた時、デイヴはテレビが無いことに不満を漏らす。しかし全てが無料だと聞いた後、夕食のシーンでは島の生活を満喫する気満々になっている。
そりゃあデイヴはエデンに何が何でも行きたくなかったわけではなく、「行きたい気持ちはある」と言っていたよ。
だから、島を満喫しようとするのも、当然と言えば当然だろう。
ただ、1人ぐらいは「最初からずっと変わらずエデンに不満を抱くキャラ」ってのを配置してもいいんじゃないかと。

スタンリーから夫婦セラピーは必須条件だと言われた時、ジョーイやシェーンたちは不満を漏らす。するとデイヴは彼らをなだめ、食べてから考えようと提案する。
そして「夕食が美味しかったので全員がセラピーを承諾する」ってことになるが、あまりにも強引すぎる展開だ。
それまでと真逆の意見に転換するぐらいの食事って、どんだけ美味しいんだよ。
少なくとも映像を見ている限り、そんな説得力は全く感じなかったぞ。食事を終えた面々の満足そうな顔と、デザートに火を付ける趣向しか描いてないんだから。

この映画は、公開前にポスターのデザインを巡って激しい批判を浴びた。
4組のカップルがエデンへ行くのに、ポスターではシェーンとトルーディーを除外したのだ。
これが差別だと糾弾されたため、配給会社は慌ててポスターを作り直す羽目になった。
なぜ1組だけ除外してしまったのか、その意味が全く分からんよ。
だったら最初から、登場するメンバーを白人3組だけにしておけば良かったでしょうに。そうすれば、そんな問題は起きなかったわけで。

ハッキリ言って、最初に仲良し4人組の1人としてシェーンが登場した時点で、「なんか無理して黒人キャラを配置してるなあ」ってことが感じられるんだよね。
そりゃあハリウッドではホワイト・ウォッシングへの批判が厳しくなっているけど、「主要キャストが白人だけでは絶対に許されない」ってことでもないでしょ。
あと、そもそもシェーンだけ夫婦じゃないので、こいつを参加させている時点で違和感があるんだよね。トルーディーと夫婦を偽って参加するならともかく、そうじゃないからね。
それなのに夫婦セラピーに参加しているのは、規約違反じゃないのかと言いたくなるし。

終盤、エデン・イーストに行ったデイヴが、スタンリーとテレビゲーム「ギターヒーロー」で対決する展開がある。それに勝てばエデン・イーストへの道を教え、負ければ千ドルを払うという条件でデイヴは対戦を持ち掛ける。
このゲームはデイヴが販売しているゲームで全て知り尽くしており、だから余裕で勝利するってのが結末だ。
でも、デイヴがゲームを売っているってことは序盤で軽く触れていたものの、ブレイヤーとしての能力も高いことは、そこで初めて分かるわけで。
そこに向けた伏線を充分に張っているとは、到底言い難いぞ。
あと、「ギターヒーローで勝利する」というシーンも、映像で少し工夫は凝らしているものの、まるで盛り上がりに欠けるし。

もちろん最終的には、それぞれの夫婦が関係を修復してヨリを戻す。
そんなのは最初から分かり切っているが、それは予定調和で一向に構わない。そこで変に「離婚を決めました」みたいな結末を用意したって、誰も得をしないからね。
ただ、その結末は全面的に歓迎できるけど、そこに至る道筋には微塵も納得できない。ハッキリ言って、結末に至る手順が雑すぎる。
だから、「なんでそうなるの?」と疑問を抱いてしまう。

デイヴとロニーに関しては、そんなに夫婦の距離が開いていなかったので、簡単に修復されるのは分かる。そもそも、壊れそうな雰囲気も無かったからね。
まあ、それは「主人公のはずなのにドラマが弱い」という問題でもあるので、手放しで歓迎できるわけではないけどね。
ジェイソンとシンシアは、夫が妻に「全ては君のためだ。失敗もしたけど、君も愛してる」などと語って関係を修復する形で落ち着く。
でも、そんな簡単な説得で修復できるような関係なら、わざわざエデンまで来る必要も無いでしょ。
ついさっきまでシンシアが別れを決意していたのに、それで全て解決できたようには到底思えないぞ。

シェーンはトルーディーとヨリを戻さないけど、そもそも夫婦ではない。そこで、「元妻のジェニファーがシェーンを追ってエデンに来ており、ヨリを戻すことを求める」という展開が用意されている。
でも、そこがジェニファーの初登場なのに、そいつとシェーンと復縁する結末を描かれてもピンと来ない。
ジョーイとルーシーに関しては、明らかに相手への感情が冷え切っていた。他の異性に対する欲情が強く出ていた。それなのに、終盤に来て急に「やっぱり君が好き」とばかりに一気に修復へ至るのは、あまりにも強引だ。
「エデンでの体験は何だったのか」と言いたくなるぐらい、マルセルやセラピーは何の役にも立っていないし。

(観賞日:2020年5月6日)

 

*ポンコツ映画愛護協会