『メイフィールドの怪人たち』:1989、アメリカ

メイフィールドに住むレイ・ピーターソンは、1週間の休暇を取った。妻キャロルは息子デイヴを連れて別荘に行きたがるが、レイは家で何もせず過ごすつもりだ。そんな彼には今、気になっていることがある。それは、隣の家の住人のことだ。
隣の家には1ヶ月前にクロペックという名の住人が引っ越して来たのだが、まだ姿を見たことが無い。だから、何人家族なのかも分からない。そして、それはレイだけではない。近所に住む人々は、誰もクロペック家の住人を見たことが無いのだ。
レイの近所には、退役軍人マーク・ラムズフィールドと妻ボニー、友人アート・ウェインガートナー、ロック好きの少年リッキー・バトラー、犬を飼っている老人ウォルター・セズニックといった人々が住んでいた。誰もがクロペック家のことを気にしていた。
ある時、レイ達の前に初めてクロペック家の住人ハンスが姿を見せた。レイはアートから挨拶に行けと言われるが、怖がっている彼は腰が引けて動けなかった。レイとアートは、クロペック家の地下室で何かが行われているのではないかと疑う。
レイとアートはラムズフィールドにも声を掛けて、夜中にクロペック家を見張った。すると、ハンスが大きなゴミ袋を持って現れ、ゴミ箱に強引に押し込んだ。しばらくしてから、レイはハンスを含めた3人の男が裏庭を掘っている様子も目撃した。
翌日、ウォルターが犬を残したまま姿を消した。アートは、クロペック家の人々が悪魔崇拝者であり、ウォルターは生け贄にされたのだと言い出した。昨日のゴミ袋にはウォルターの死体が入っており、それを裏庭に埋めたに違いないというのだ。
キャロルの提案で、彼女とレイ、ラムズフィールドとボニーの4人は、クロペック家を訪れることにした。クロペック家の住人はハンスと叔父のルーベン、彼の兄ドクター・ウェルナーの3人だった。しばらく普通に会話を楽しんだ後、レイ達はクロペック家を去った。
だが、クロペックの家でウォルターのカツラを発見したレイは、死体が埋められていると確信した。翌日、クロペック家の3人が出掛けた隙に、レイとアートは敷地に侵入して裏庭を掘り返した。ラムズフィールドは屋根に登り、見張り役を担当した。地下室に入ったレイとアートは、そこにあった大きな焼却炉で死体を燃やしたのだと確信する…。

監督はジョー・ダンテ、脚本&共同製作はダナ・オルセン、製作はマイケル・フィネル&ラリー・ブレズナー、製作協力はパット・キーホー、製作総指揮はロン・ハワード、撮影はロバート・スティーヴンス、編集はマーシャル・ハーヴェイ、美術はジェームズ・H・スペンサー、衣装はロザンナ・ノートン、音楽はジェリー・ゴールドスミス。
主演はトム・ハンクス、共演はブルース・ダーン、キャリー・フィッシャー、リック・デュコモン、コリー・フェルドマン、ウェンディ・スカール、コートニー・ゲインズ、ヘンリー・ギブソン、ゲイル・ゴードン、ディック・ミラー、ロバート・ピカード、ブラザー・セオドア、フランクリン・アジャイェ、コリー・ダンジガー、ランス・ハワード、ヘザー・ハース、ニック・カット、ビル・スティーヴンソン他。


まだコメディー系俳優だった頃のトム・ハンクスが主演したホラー・コメディー。レイをトム・ハンクス、ラムズフィールドをブルース・ダーン、キャロルをキャリー・フィッシャー、アートをリック・デュコモン、リッキーをコリー・フェルドマン、ボニーをウェンディ・スカール、ハンスをコートニー・ゲインズ、ドクターをヘンリー・ギブソンが演じている。

登場する男性キャラクターは、みんなマトモじゃない。クロペック家の住人が怪しいのはともかく、他の住人もヘンテコだ。わざわざ1週間の休暇を取ってボーッとしたがるレイ、未だに戦争気分のラムズフィールド、銃を振り回して鳥を撃とうとするアート、他人の芝生に飼い犬のウンコをさせるのが日課になっているウォルター。
そもそも、「1ヶ月間も隣人の姿を見ない」というだけで異常者に違いないという疑いを抱き、そこから「彼らは悪魔崇拝者でウォルターを殺して裏庭に」という所にまでマジに到達してしまうのがヘンテコだ。姿を見られないのは、向こうが出て来ないというのもあるが、自分達がクロペック家を訪問していないというコトもあるのだが。

前半は、ハンスがチラッと出てくるだけで、クロペック家の住人はほとんど姿を見せない。そして、彼らの家の中も映らない。だから前半は、レイ達のエキセントリックな行動や、イマジネーション豊かな妄想などで引っ張るしか無いだろう。
しかし実際には、そういう所に引っ張るパワーは無い。まず、彼らの妄想は、笑いに繋がるほど突拍子の無いモノではない。また、キャラクターにしても、登場した時点のヘンテコ加減がピークになっており、それ以降、そのヘンテコさが膨らむことが無い。

後半に入ると、クロペック家の住人が絡んでくるし、家の中も映し出される。しかし、クロペック家の面々は、レイ達を怖がらせるような分かりやすい怖さを示すわけではない。レイ達が彼らを異常に怖がって、そこから笑いが生まれるということも無い。
クロペック家の内部も、それほど変わったモノは無い。何か1つ道具を見つける度にレイ達が強引なまでに殺人と結び付ける連想をしたり、「でも普通のモノでした」というオチを用意して笑いに結び付けたり、そういうことも無い。

見た目の分かりやすい怖さや、言葉を使った表現ではなく、心理に訴えるジワっと漂う薄気味悪さを出そうとしているのかもしれないが、ただ単調で低調に流れていくだけという印象しか受けない。恐怖劇の土台から笑いを生み出そうという意識も弱い。とにかく、キャラクターも恐怖描写も笑いも、全てにおいて「そこそこ」で止まっているのだ。
滑って転ぶとか、高い所から落ちるとか、たまにベタなギャグが入る。しかし、そういうギャグと「クロペック家の住人を恐れている」という設定は、全くの無関係なのだ。そもそも、ドタバタをやるコメディーとして作られているわけでもないようだし。

ラストシーンは、余計な所まで描きすぎ。
完全なネタバレになるが、最後は爆発事故で病院に運ばれるレイの救急車に、本当に殺人鬼だったドクターが乗りこんで来る。ここは、「助けを求めて叫ぶレイを乗せた救急車が走り去る」という所でエンドにすればいい。
しかし、実際には、「殺されそうになったレイが反撃し、車から大量の骸骨が発見されてドクターは警察に捕まる」という所まで描いてしまうのだ。そんなヤワな終わり方にしてどうするの。この映画に、ユルユルのハッピーエンドなんて要らないでしょうに。

 

*ポンコツ映画愛護協会