『マディソン郡の橋』:1995、アメリカ

キャロリンとマイケルは母親フランチェスカ・ジョンソンが死去したため、遺品の整理のために故郷のアイオワ州マディソン郡へ戻ってきた。そこで2人は母親がロバート・キンケイドというカメラマンとの愛について書いた記録を発見する。
フランチェスカは農場主の夫と2人の子供に囲まれて、平凡な主婦として暮らしていた。ある時、子牛の品評会に出場するために、夫リチャードと子供達が4日間だけ家を空けることになった。留守番をしていたフランチェスカの前に、彼が現れた。
彼とは、ナショナル・ジオグラフィック誌のカメラマンをしているロバートのことだ。ロバートは、この辺りにある橋の写真を撮影に来ていた。道に迷った彼を、フランチェスカは橋まで案内した。そして彼女はロバートをお茶に誘い、一緒に夕食を食べた。
次の日も、フランチェスカはロバートを夕食に招待した。フランチェスカとロバートは、互いに惹かれ合っていた。そして、2人はベッドを共にした。やがてマディソン郡を立ち去ることになったロバートは、「僕と一緒に行こう」とフランチェスカを誘うのだが…。

監督はクリント・イーストウッド、原作はロバート・ジェームズ・ウォーラー、脚本はリチャード・ラグラヴェニーズ、製作はクリント・イーストウッド&キャスリーン・ケネディ、製作協力はマイケル・モーラー&トム・ルーカー、撮影はジャック・N・グリーン、編集はジョエル・コックス、美術はジニーン・クローディア・オップウォール、音楽はレニー・ニーハウス。
出演はクリント・イーストウッド、メリル・ストリープ、アニー・コーリー、ヴィクター・スレザック、ジム・ヘイニー、サラ・キャスリン・シュミット、クリストファー・クルーン、フィリス・ライオンズ、デブラ・モンク、リチャード・レイジ、ミッシェル・ベネス、アリソン・ワイガート、ブランドン・ボブスト、パール・フェースラー、R・E・“スティック”・フェースラー、タニア・ミッシュラー他。


世界中でベストセラーとなった小説を映画化した作品。ロバートをクリント・イーストウッド、フランチェスカをメリル・ストリープ、キャロリンをアニー・コーリー、マイケルをヴィクター・スレザック、リチャードをジム・ヘイニーが演じている。

私は原作を読んでいないのだが、どうやら原作にかなり忠実に作ってあるらしい。身も蓋も無い言い方をしてしまうと、不倫の話である。しかし、そんなに簡単に済ませてはいけないらしい。でもなあ、ワシにはそれ以上のモノには感じられんのよね。

フランチェスカが今の生活に対して、何か物足りなさを感じていたことは何となく分かる。だが、リチャードがどうしようもないダメ亭主ならともかく、そうではない。それなのにロバートとの関係を真実の愛として正当化されたら、ダンナは報われないよなあ。

フランチェスカはロバートと会話する中で恋に落ちるのだが、その展開が良く分からない。普通にダラダラ喋ってるだけにしか思えなかったし、何も心に響くような言葉は無かったはずだが。どの辺りで彼女がロバートに惹かれたのか、全く見えない。

田舎のオバサンのメリル・ストリープが、ロバートと出会ってから妙に艶っぽくなっていくのは見事。叙情溢れる映像の美しさも見事。で、気付いた。これって、欲求不満の主婦のオバサマ達を、心地良い妄想に浸らせるために作られた映画なんだろうね。

だから、ヒロインが都合良すぎて欲求不満のズルイ女になっていても、構わないわけだ。いいダンナを裏切り、自分で責任を取ることは拒否し、愛人への想いを書き綴って死んだ後にまで問題を起こすような女でも、一向に構わないわけだ。

そう考えると、前述の問題点は解消される。端から見れば充分なダンナと暮らしていても、オバサマ達は夢のようなロマンスを求めているわけだ。で、待ち望んでいたロマンスの相手が現れたら、もう最初から浮気心でマンマンなわけだ。なるほどね。

しかし、それならそれで、ロバート役がクリント・イーストウッドってのは明らかにミスキャストでしょうに。完全にジジイになってしまったイーストウッドよりも、もっと憧れの対象となるような、カッコ良くて渋い男をキャスティングすべきでしょうに。

まあ、イーストウッドが監督と製作を務めているわけだから、やはり彼を主役から降板させるってのは、難しかったのかもしれない。
しかし、それならせめて、彼の頭に水を浴びせるのは避けるべきだった。
ロバートの頭がカッパッパになった瞬間、それまで夢心地になっていた多くのオバサマ達は、きっと現実に引き戻されてしまっただろう。

 

*ポンコツ映画愛護協会