『また、あなたとブッククラブで』:2018、アメリカ

1974年6月、ロサンゼルスで最初の読書会が開かれた。提唱者は雑誌で読書会を知ったヴィヴィアンで、親友であるダイアン、シャロン、キャロルの4人で集まった。それから時が過ぎたが、現在でも1ヶ月に1度の読書会は続いていた。ヴィヴィアンは誰にも媚びず、クイン・ヘンリーとというホテルのオーナーになった。会議のためにロサンゼルスへ来ていた元カレのアーサーがホテルに現れ、ヴィヴィアンに気付いて声を掛けた。アーサーは若い頃に彼女と付き合っていたが、プロポーズを断られて去っていた。連邦判事になったシャロンは、ハワイにいる息子からの電話で婚約を知らされた。さらにシャロンは、元夫のトムが若い恋人のシェリルと一緒にいることを息子から知らされた。
レストランを経営するキャロルは、理想の男性だったブルースと結婚した。結婚記念日、彼女は退職したブルースにダンス教室のレッスンカードを贈り、慈善団体の資金集めパーティーのショーに参加しようと持ち掛けた。2人の夫婦仲は良好だが、セックスは御無沙汰だった。ダイアンは夫のハリーと1年前に死別し、現在は独り暮らしをしていた。娘のジルとエイドリアンは、自分たちが暮らすアリゾナに移住してほしいと持ち掛ける。ダイアンは乗り気ではなかったが、娘たちは「一度来てほしい」と食い下がった。
4人は読書会で集まり、その月の担当だったヴィヴィアンは『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』を渡した。アリゾナへ向かう飛行機に搭乗したダイアンは、ミッチェルという男性と知り合った。4人は『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』を読み、その内容に興奮を覚えた。ヴィヴィアンはアーサーが訪ねて来たので一緒に散歩へ出掛け、彼が離婚していることを知った。シャロンはネットでトムを検索し、彼がシェリルと楽しそうにしている写真を見つけた。
アリゾナに着いたダイアンは、キャロルからの電話を受けた。キャロルは『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』について話し合いたいと告げ、緊急読書会を開くので早く戻って来るよう頼んだ。彼女はブルースとダンス教室へ行き、講師であるアイリーンの指導を受けた。シャロンは愛犬のギンズバーグを動物病院に連れて行き、「元気が無い」と相談して獣医に「年のせいだろうね」と告げられた。ダイアンは帰りの飛行機でコックピットに呼び出され、ミッチェルがパイロットだと知った。ミッチェルは半ば強引に夕食の約束を取り付け、電話すると告げた。
4人は緊急読書会のため、キャロルの家で集まった。ヴィヴィアンはアーサーとデートしたことを話し、「だけど寝てないわよ」と言う。ダイアンは飛行機で出会ったパイロットからデートに誘われたことを明かし、キャロルはブルースと6ヶ月もセックスレスだと告白した。そこへブルースが来て「今月は何の本?」と訊くと、咄嗟にダイアンが『白鯨』と嘘をついた。ブルースはキャロルに「ずっと放置されていたバイクを見つけた。手直しすれば、まだ乗れる」と話し、嬉しそうな様子を見せた。次の本として、ダイアンは3人に『フィフティ・シェイズ』シリーズ2作目の『フィフティ・シェイズ・ダーカー』を渡した。
ダイアンはミッチェルからの電話で、翌日の夕食に誘われた。ミッチェルはセドナにいたが、ダイアンが「ここはサンタモニカよ」と困惑しても「迎えに行く」と約束した。ヴィヴィアンはアーサーから、デートに誘われた。ダイアンは3人に服を見立ててもらい、ミッチェルと出掛けた。彼女は海辺のレストランに入り、ファーストキスについて詳しく語った。キャロルはヴィヴィアンに、ブルースがガレージでバイクに夢中だと話す。ヴィヴィアンは彼女に、刺激を与えるよう助言した。
キャロルはアーサーから届いた「次はゴムを?」というメモを見つけ、ヴィヴィアンがセックスしていると確信する。「私たちに話さないつもりなの?」と彼女が言うと、ヴィヴィアンは「話したでしょ」と誤魔化した。シャロンが「私だけ相手がいない」と漏らすと、トムと同じ出会い系サイトを試するようキャロルが提案する。ヴィヴィアンが「出来ても、やらないでしょ」と言うと、シャロンは「登録する」と宣言した。キャロルは若い頃のセクシーな服装でブルースの前に行くが、相手にされなかった。
翌日、シャロンはジョージという男性からメッセージが届いたので驚くが、レストランで会う約束をした。ヴィヴィアンはキャロルからブルースに相手にされなかったことを聞き、精力剤を渡した。ダイアンは2人の娘夫婦と昼食を取っている最中、ミッチェルからの電話で会いに来てほしいと頼まれる。彼女は娘たちに嘘をつき、昼食を切り上げた。キャロルはセックスへの欲求をブルースにぶつけるが冷たい対応を取られ、腹を立てて「私はセックスがしたいのよ」と怒鳴った。
シャロンはレストランで税理士のジョージと会い、楽しい時間を過ごす。ヴィヴィアンはアーサーと思い出のダイナーへ行き、キャロルはブルースと険悪な状態のままダンス教室に参加してアイリーンから「一緒に動くだけではダンスと言えない」と注意される。シャロンは車でジョージとセックスし、次は医師のデレクと会うことにした。ダイアンはミッチェルの家に招かれ、個人所有のセスナ機に乗せてもらう。ミッチェルは航空研究所で勤務していた時期があり、その頃の特許料で広大な敷地と邸宅を購入していた。
ミッチェルが娘たちに会いたがると、ダイアンは「父親の件から立ち直ってない」と断った。エイドリアンはダイアンが電話に出ないので心配になり、ジルに電話を掛けた。シャロンがバーでデレクを待っていると、トムがやって来田。焦りを覚えたシャロンに、トムは同伴しているシャロンを紹介する。そこへデレクが現れ、シャロンのデート相手としてトムに挨拶した。強烈な気恥ずかしさを覚えたシャロンは、その日で出会い系サイトのアカウントを停止した。
エイドリアンとジルから相談を受けた警官は、携帯の信号からダイアンの居場所が分かったことを伝えた。警官は大騒ぎせずに済ませた方がいいと促すが、ジルとエイドリアンは早く母の元へ連れて行くよう要求した。シャロンはバイアグラを飲ませたことをブルースに知られ、激しい口論になった。ダイアンがミッチェルの家で楽しんでいると、娘たちが現れた。慌てたダイアンは、すぐに帰る準備をする。彼女は落ち着くよう説くミッチェルに、「この関係は間違いだった」と告げる。まるで理解できないミッチェルに、ダイアンは「子供がいない貴方には分からない」と言う。「子供と言っても、いい大人だ」とミッチェルが告げると、彼女は「貴方は自分のことだけ考えていれば済む。だけど私には家族がいる。それが私の世界」と語る…。

監督はビル・ホールダーマン、脚本はビル・ホールダーマン&エリン・シムズ、製作はアンドリュー・ダンカン&アレックス・サックス&ビル・ホールダーマン&エリン・シムズ、製作総指揮はテッド・デイカー&アラン・ブロムクイスト、製作協力はサンディーノ・モヤ=スミス&ダニ・ジョンソン、撮影はアンドリュー・ダン、美術はレイチェル・オトゥール、編集はプリシラ・ネッド=フレンドリー、衣装はシャイ・カンリフ、音楽はピーター・ナシェル、音楽監修はスーザン・ジェイコブズ。
出演はダイアン・キートン、ジェーン・フォンダ、キャンディス・バーゲン、メアリー・スティーンバージェン、ドン・ジョンソン、アンディー・ガルシア、クレイグ・T・ネルソン、リチャード・ドレイファス、アリシア・シルヴァーストーン、ケイティー・アセルトン、エド・ベグリーJr.、ウォーレス・ショーン、マーセア・モンロー、トミー・デューイ、ジョン・シャーツァー、ラヴィ・カプール、リリ・バーダン、マリサ・チェン・モーラー、アマンダ・マーティン、ブラッド・リー・ウィンド、トム・G・マクマホン、コール・グリーソン、マット・ライディー、マイゲル・グムア、ケイリー・レイ・カンバッチ、クリストファー・アレン他。


『ランナウェイ 逃亡者』や『ロング・トレイル!』を手掛けた映画プロデューサーのビル・ホールダーマンが、初めて監督を務めた作品。
脚本はビル・ホールダーマン監督と、これがデビュー作であるエリン・シムズの共同。
ダイアンをダイアン・キートン、ヴィヴィアンをジェーン・フォンダ、シャロンをキャンディス・バーゲン、キャロルをメアリー・スティーンバージェン、アーサーをドン・ジョンソン、ミッチェルをアンディー・ガルシア、ブルースをクレイグ・T・ネルソン、ジョージをリチャード・ドレイファス、ジルをアリシア・シルヴァーストーン、エイドリアンをケイティー・アセルトン、トムをエド・ベグリーJr.、デレクをウォーレス・ショーンが演じている。
アンクレジットだが、『フィフティ・シェイズ』シリーズの小説家であるE・L・ジェイムズと夫のナイオール・レナードが隣人役で出演している。

ダイアン・キートンは『アニー・ホール』でアカデミー賞主演女優賞、ジェーン・フォンダは『コールガール』と『帰郷』でアカデミー賞主演女優賞を受賞している。
キャンディス・バーゲンはTVドラマ『TVキャスター マーフィー・ブラウン』でエミー賞とゴールデン・グローブ賞主演女優賞を受賞し、メアリー・スティーンバージェンは『メルビンとハワード』でアカデミー賞助演女優賞を受賞している。
その経歴を見れば、メインの4人だけでも充分に「豪華キャスト」と評することが出来る。

そんな4人の脇を固めるのは、TVドラマ『特捜刑事マイアミ・バイス』でゴールデン・グローブ賞を受賞しているドン・ジョンソン、『ゴッドファーザー PART III』でアカデミー助演男優賞候補になったアンディー・ガルシア、TVドラマ『Coach』でプライムタイム・エミー賞主演男優賞を受賞したクレイグ・T・ネルソン、『グッバイガール』でアカデミー賞主演男優賞を受賞したリチャード・ドレイファスといった面々だ。
他にも、エミー賞に6回ノミネートされたエド・ベグリーJr.など、豪華な顔触れが揃っている。
しかし、その顔触れに見合う出来栄えなのかというと、残念な結果に終わっている。

読書会のテーマとして『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』を使っている時点で、「そのセンスってどうなのよ」と言いたくなる。
ギャグ的な形で使うのならともかく、4人の生活に大きな影響を与え、人生が良い方向に変化するきっかけとして使われているのだ。
全米で大ヒットした小説なのは知っているけど、映画版が酷評されたこともあるし、これを選んでいる時点で安っぽさを感じてしまうなあ。
そうそう、ちなみに映画版『フィフティ・シェイズ』シリーズのヒロイン役であるダコタ・ジョンソンは、ドン・ジョンソンとメラニー・グリフィスの娘だね。

冒頭では最初の読書会を開いた頃の若き4人の写真が表示され、ダイアンのナレーションで物語が始まる。そこから現在の4人を紹介する手順に移るのだが、それはセオリー通りのやり方だ。
しかし、ヴィヴィアンだけは「アーサーとの再会」という手順もあるので、バランスが悪い。
他の3人にも親しい人との関係を描く手順はあるが、それは全て「既に構築された家族との関係」だ。
ヴィヴィアンだけは「過去に付き合っていた男との再会」なので、それは紹介パートじゃなくて次のターンまで待った方がいい。

ヴィヴィアンが『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』を渡す読書会のシーンでは、かなり細かくカットを割っている。
4人のお喋りが続いているのだが、ちっとも小気味よい会話に感じないのは、それが原因だ。台詞を喋る人物が交代する度に、カットを切り替えるような形になっている。
でも、そこはもう少し長めに1カットを使った方がいいよ。
その後、4人が『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』を読んで興奮するシーンでは、ダイアンだけ「ミッチェルとの出会い」という要素があるが、これもバランスが悪いと感じる。
ここは別で描いた方がいいんじゃないかな。

ヴィヴィアンが3人の親友たちに、「世間が何と言おうと、年を取ってもセックスは必要よ」と言うシーンがある。
ようするに、この映画は「年を取ってもセックスに関心が無くなるわけじゃない。きっかけがあれば欲情するし、チャンスがあればセックスしたい」ってことを描く内容になっている。
何となく、「老女版の『セックス・アンド・ザ・シティ』みたいな路線を狙ったのかな」と思わせる部分はある。
ただし『セックス・アンド・ザ・シティ』シリーズに比べると、オシャレなアイテムや都会的なファッションで飾り付けることはやっていないけどね。

いっそのこと、『セックス・アンド・ザ・シティ』をモロに模倣した演出を持ち込んだ方が良かったかもしれない。
ぶっちゃけ、「老女とセックスと」の要素だけでは、引き付ける力がものすごく弱いのだ。ベテラン女優たちの力に頼る部分が、あまりにも大きすぎる。
いっそのこと、当て書きみたいにして、女優たちの人生や経歴が重なるようなキャラ造形やエピソードにした方が面白くなったんじゃないかと思ったりするんだけどね。
そんな余計な考えばかりが浮かぶのは、ちっとも面白くないからなのよ。

当て書きとまでは言えないにしても、メインの4人は、今まで多く演じて来たキャラクターのイメージが重なるような部分も少なくない。
特にダイアンに関しては、「いかにもダイアン・キートンが演じそうなキャラクター」と言っていいだろう。
ただし、それが面白いのかと問われたら、ちっとも面白さは感じられないんだよね。
それはイメージ通りなのが悪いんじゃなくて、上っ面をなぞっているだけで中途半端だから。
やるんだったら、セルフパロディーになるぐらい振り切っても良かったんじゃないかな。

(観賞日:2022年9月25日)

 

*ポンコツ映画愛護協会