『裸の銃<ガン>を持つ逃亡者』:1998、アメリカ&ドイツ

天才バイオリニストのライアン・ハリソンは、富豪のグッヒューからパーティーに招かれた。グッヒューの妻ローレンに誘惑されたライアンは、その日の夜に夫妻の豪邸に向かった。するとグッヒューが殺されており、ライアンも襲われて気を失ってしまう。
グッヒュー殺害の容疑で逮捕されたライアンは刑務所へ送られることになったが、護送車の事故に便乗して逃亡する。ファーガス警部補に追われることになったライアンは、ローレンの妹キャスに助けられ、彼女に惹かれるようになる。
やがてライアンは、パーティーでバーテンをしていた義足・義腕・義眼の男が自分を襲った犯人だと気付く。しかし、ライアンは犯人と繋がりのあったキャスの裏切りに遭ってしまう。真犯人のショーンは、ローレンとキャスの兄だったのだ…。

監督&脚本はパット・プロフト、製作はジェームズ・G・ロビンソン&ベルント・アイヒンガー&パット・プロフト、製作総指揮はマーティン・モスコウィッツ&ロバート・L・ローゼン、撮影はグレン・マクファーソン、編集はジェームズ・R・サイモンズ、美術はマイケル・ボルトン、衣装はジョリー・ウッドマン、音楽はビル・コンティ。
主演はレスリー・ニールセン、共演はリチャード・クレンナ、ケリー・ルブロック、メリンダ・マクグロウ、マイケル・ヨーク、サンドラ・バーンハード、アーロン・パール、レスリー・ジョーンズ、ベン・ラトナー、ジェラード・プランケット、ダンカン・フレイザー、ジョン・ウォルシュ、モーリー・ハニガン、チック・ハーン、ブライアン・アーノルド他。


レスリー・ニールセン主演のパロディー映画。
邦題には“裸の銃”と付いているが、『裸の銃<ガン>を持つ男』のシリーズとは無関係。ただし、監督のパット・プロフトは、『裸の銃<ガン>を持つ男』や『ホット・ショット』の脚本を書いた人物である。

とにかくパロディーと小ネタが、これでもかというぐらい詰まっている。
基本となっているストーリーは『逃亡者』で、他に『ジャッカル』、『ユージュアル・サスペクツ』、『ミッション・インポッシブル』、『北北西に進路をとれ』、『今そこにある危機』などのパロディがある。
パロディー化しているのは映画だけではない。
舞台劇の『ロード・オブ・ザ・ダンス』やTVドラマの『ER』『ベイウォッチ』のパロディーも見られる。ライアンのコンサートのシーンでは、ライアンがジミヘンのようにバイオリンを歯で弾いたり壊したりしている。

最初のクレジットから、「Leslie Nielsen is Leslie Nielsen in」と出る。
レスリー・ニールセンが演じるのは、レスリー・ニールセンなのだ。
劇中でも、ライアンが隠れるドラム缶に「隠れ場所用」と書いてあったり、SWATのスペルが間違っていたりと、細かい文字ネタが多くある。
テロリストとの格闘がツイスターゲームになってしまうとか、バスケの実況がセックスの内容とオーバーラップするとか、いきなりスポンサーのコマーシャルを始めるとか、パロディー以外にも小ネタがたくさん入っている。

テロリストに襲われたライアンは、『タイタニック』の脚本初稿で立ち向かう。
失神したライアンは、『スターウォーズ/帝国の逆襲』のハン・ソロのように炭素冷凍されてしまう。
逮捕されたライアンは、『12人の怒れる男』に裁かれるかもしれない。

護送車から脱走したライアンは、『暴走特急』にひかれそうになる。
逃亡するライアンは、『コップランド』のように警官の多い町に入り込む。
ファーガスの部下は、『アナコンダ』に襲われる。
ライアンとキャスは、『カサブランカ』のように恋に落ちる。

ライアンが潜入した病院では、『ボルケーノ』や『キラー・ビー』や『タイタニック』の沈没による患者が運び込まれて来る。
その病院では、『逃亡者』のキンブル医師が呼び出され、『ER』の出演者への「たくさんギャラを貰ってください」というアナウンスが入る。

コーン畑に来たライアンは、『フィールド・オブ・ドリームス』のように野球選手が畑に消えていくのを目撃する。
スコットランドの民族衣装を着たライアンは、『七年目の浮気』のモンローのように通風孔の風でスカートをめくり上げられる。
国連総長を守ろうとしたライアンは、顔に青い塗料が付いて『ブレイブ・ハート』のようになる。
ショーンに対峙したライアンは、『ダーティハリー』のようなセリフを吐く。

とにかくパロディーと小ネタで、サービス満点。
それで笑えるかどうかは、また別の機会にでも。


第21回スティンカーズ最悪映画賞

ノミネート:【最も痛々しくて笑えないコメディー】部門

 

*ポンコツ映画愛護協会