『暴走特急』:1995、アメリカ
ケイシー・ライバックは元アメリカ海兵隊の隊長で対テロの専門家だったが、今は料理人として働いている。彼は休暇を利用して死んだ兄の娘サラと共に旅行をするため、ロッキー山脈を走り抜ける豪華列車グランドコンチネンタルに乗り込んだ。
だが、走行中の列車は突然、コンピュータを持ち込んだテロリスト集団に乗っ取られてしまった。首謀者のトラヴィス・デインは元CIAの人間で、新型兵器グレイザー1の開発者だった。グレイザー1とは、衛星を使って人工的に局地的地震を引き起こすことができる粒子ビーム兵器だ。
開発者でありながら、精神の異常さを嫌ったCIAはデインを解雇し、その後は自殺したものと思われていた。しかし彼は生きており、ペンが率いるテロ集団と密かに手を組んでいたのだ。デインは列車に乗っていたCIA職員からパスワードを聞き出し、グレイザー1を自分の支配下に置く。
デインはグレイザー1を使って中国の化学工場を破壊し、その威力を見せつける。彼は中東の国々との取り引きを始めようとしていた。さらにデインは、ペンタゴンの地下にある原子炉を破壊しようとする。ケイシーはポーターのボビーの協力を得て、テロリスト集団を次々と倒していくのだが…。監督はジェフ・マーフィー、脚本はリチャード・ヘイテム&マット・リーヴス、製作はスティーヴン・セガール&スティーヴ・ペリー&アーノン・ミルチャン、共同製作はジュリアス・R・ナッソー、製作協力はエドワード・マクドネル、製作総指揮はゲーリー・ゴールドスタイン&ジェフリー・ニューマン&マーティン・ワイリー、撮影はロビー・グリーンバーグ、編集はマイケル・トロニック、美術はアルバート・ブレナー、衣装はリチャード・ブルーノ、視覚効果監修リチャード・ユリチッチ、音楽はベイジル・ポールドゥリス。
主演はスティーヴン・セガール、共演はエリック・ボゴシアン、キャサリン・ヘイグル、モーリス・チェスナット、カートウッド・スミス、エヴェレット・マッギル、ブレンダ・ベイク、ピーター・グリーン、アンディ・ロマノ、ニック・マンクーゾ、ジョナサン・バンクス、ロイス・D・アップルゲイト、デイル・ダイ、デヴィッド・ジャノプーロス、パトリック・キルパトリック、サンドラ・テイラー他。
合気道の使い手、スティーヴン・セガール主演作。
日本では“沈黙シリーズ第3弾”と銘打たれているのだが、『UNDER SIEGE 2』という元の題名で分かるように、実際には『沈黙の戦艦』に続く第2弾である。無関係の作品に『沈黙の要塞』などという邦題を付けたから、ややこしくなってしまったわけだ。で、“沈黙シリーズ第3弾”なのに、この作品ではタイトルに「沈黙」という言葉を使っていない。これでは何の続編だか分からない。邦題担当者のセンスに疑問を持ってしまう。
まあ、そもそも第1弾の『沈黙の戦艦』自体が「沈黙の艦隊」にあやかったネーミングで、実際には全く沈黙していないわけだが。テロ集団が襲撃する中で、1人だけ人質にならなかったケイシー・ライバックが、軍の偉い人に連絡を付け、単身で敵に立ち向かっていくという展開である。
基本的に、『沈黙の戦艦』のパターンを踏襲している。今回の敵は、デイン役のエリック・ボゴシアンやペン役のエヴェレット・マッギルなどだ。冒頭、衛星システムで裸の女性をクローズアップして、「こいつは使える」とマジにつぶやくCIAのオッサン。なかなか愉快なオッサンである。
CIAは、政府が中止したはずのグレイザー1開発計画を勝手に進めていたわけだが、この辺りはセガール映画のパターンである「CIAは汚い組織」という考え方がよく表れている。ボビーに客の荷物から武器に使えそうな物を探させる場面があるが、結局は何も無くて、銃で戦い始める。あそこは小道具を使ったアクションへと持っていっても面白かったのでは。セガールのアクションに大きな派手さが期待できないだけに、そういう一捻りが加わっても良かったかも。
ケイシーが列車から落ちて崖から転落しそうになる場面があるが、見事なくらい合成がバレバレ。大体、そんなシーンを作る必要があったのだろうか。アクションが列車から離れた場所で行われてしまうのは、何か違うような気がする。ケイシーは列車から離れるべきではなかったのでは。
ところで、サラの存在価値ってほとんど無いような気がする。別にテロ集団がサラを人質にしてケイシーをおびき寄せたり武器を捨てさせたりする行動も見られないし。
何か役目があるのかと思わせる登場をした食堂のお姉さんも、あっさり撃ち殺されちゃうし。キャラクターの配置がイマイチ上手くないんだな。終盤の戦いをガンアクションではなく格闘アクションにしたのは、セガールの持ち味を生かす意味では成功なのだが、残念ながらカメラワークがあまり良くない。常に寄りすぎなのだ。もう少し引いた映像が無いと、格闘の醍醐味が感じられない。
密室の閉塞感と走行する列車のスピード感、さらに空撮によるスケール感が上手く融合すれば、かなりの迫力があるアクション映画になったはず。そういう意味では、せっかくの素材を生かし切れていないという惜しい作品ではある。それにしてもアメリカって凄いと思うのは、平気で人質ごと列車を爆破しようとすること。多くの国民を守るために、少数の犠牲はやむを得ないという考え方なんだろうけどさ。
第18回スティンカーズ最悪映画賞
ノミネート:【誰も要求していなかった続編】部門