『Black & White/ブラック&ホワイト』:2012、アメリカ

香港。CIA局員のFDRとタックは国際指名手配であるカールとヨナスのハインリッヒ兄弟を捕まえるため、パーティー会場に潜入した。美女と出会ったFDRが仕事を忘れて口説き始めたので、タックが「今は仕事があるんだ」と言う。兄弟と手下たちは大量破壊兵器を受け取るため、奥の部屋へ入った。しかし取引相手が馬鹿にしたような態度を取ったので、兄弟は金を渡さず全員を射殺した。
FDRとタックは武器を奪って去る一味を捕まえようとするが、撃ち合いになった。タックはカールと素手で戦うが、蹴り飛ばされてビルの屋上から落ちそうになる。カールはヨナスに「奴を撃て」と指示し、自分はパラシュートを付けて飛び降りた。ヨナスはタックと揉み合い、ビルから転落死した。支局長のコリンズは2人を呼びつけ、極秘任務にも関わらず派手に暴れて6名の死者を出した行動を叱責した。彼女はFDRとタックに対し、現場を離れてデスクワークに異動するよう命じた。
ロサンゼルスの商品検査会社で幹部をしているローレン・スコットは町を歩いている最中、元カレのスティーヴと出会った。彼は婚約者のケリーと一緒で、ローレンの前で熱々ぶりを見せ付けた。ローレンは「これから彼氏のケンとデートなの」と言うが、真っ赤な嘘だった。彼女の行き先は馴染みの寿司屋で、ケンというのは店員の名前だった。そこへスティーヴとケリーが来たのでローレンは取り繕おうとするが、ケンが「いつも彼女は一人」と笑顔で説明した。ローレは親友のトリッシュから、出会い系を利用して積極的に男とデートするよう勧められる。しかしローレンは、「出会い系は異常者だらけ」と否定的な考えを口にした。
タックはケイティーという妻がいたが離婚し、一人息子のジョーは彼女が面倒を見ている。タックは2人に対し、旅行業者だと嘘をついている。タックは格闘技の練習をするジョーに会いに行くが、冷たい態度を取られる。ケイティーがジョーを迎えに来たので、タックは家族で食事に行かないかと誘うが、「デートなの」と断られた。
タックはテレビで出会い系サイトのCMを見て、登録することにした。出社したローレンは、トリッシュが勝手に出会い系サイトに登録したことを知る。しかもローレンのプロフィールは、かなり刺激的な内容になっていた。腹を立ててキャンセルしようとしたローレンだが、タックの顔写真に目を留めた。タックはローレンとデートすることになり、FDRに報告する。FDRは「相手が前科者だったらどうする?少し離れて監視する」と言うが、タックは「やめてくれ」と断る。FDRは「助けたいんだ。ビデオショップで待機してるから、携帯を鳴らせ」と告げた。
タックはカフェでローレンと会い、バツイチで7歳の息子がいることを話す。2人の会話は弾み、いい雰囲気で最初の出会いを終えた。ローレンはビデオショップに立ち寄り、FDRに声を掛けられる。FDRは映画選びをアドバイスするが、ローレンはナンパ目的であることを見抜く。ローレンはFDRの魂胆を指摘し、「見たい映画は自分で選ぶわ」と告げて立ち去った。彼女のことが気になったFDRは、目的を隠してビデオショップのデータベースに侵入した。
FDRはローレンの会社に押し掛け、仕事を邪魔してデートを承知するよう迫った。デートを承諾させたFDRは、調べている女がいることをタックに明かす。2人は互いに自分が狙っている女性の写真を見せ合うが、どちらもローレンなので驚いた。タックが「彼女はお前とのデートを承知したのか」と訊くと、FDRは「関係ない。親友だから、俺が身を引くよ。俺が相手じゃ、お前が気の毒だ」と言う。するとタックは、「身を引く必要は無い。彼女はお前に惚れない。どっちを選ぶか彼女に任せよう」と告げた。
FDRとタックはローレンを競い合うに当たって、「2人の関係は秘密にする」「互いに邪魔しない」「セックスはしない」「友情に影響が出たら中止する」というルールを決めた。タックはローレンとデートに出掛け、閉演後のサーカス小屋でキスを交わした。FDRがローレンとデートに行く際、タックは監視カメラの映像で彼の車を確認した。ローレンはFDRに連れられてクラブに入るが、すぐに店を出た。FDRが追い掛けて「楽しまなきゃ」と言うが、ローレンの考えは変わらなかった。
FDRはローレンと言い争いになり、デートを終わらせて帰ろうとする。ローレンは立ち去ろうとするが、向こうからスティーヴとケリーが歩いて来るのに気付いた。ローレンは慌ててFDRを呼び止め、強引にキスさせた。スティーヴに声を掛けられた彼女は、FDRを彼氏として紹介した。FDRは話を合わせ、スティーヴに挨拶した。スティーヴとケリーが去った後、ローレンはFDRから「ピザでも食べに行こう。今の説明をしろよ」と誘われて承諾した。
ローレンはFDRに、スティーヴを追ってLAに来たこと、半年後に彼が浮気したことを語る。彼女が「失敗したわ」と漏らすと、FDRは「失敗が人を育てる。君はロスに来た。今の仕事が好きだろ?失敗のおかげさ」と語る。翌日、FDRは部下の言葉でタックが監視していたことを知る。タックはFDRに責められ、「不安だった」と弁明した。2人はコリンズから、ハインリッヒを入国させようとしている手下のイワン・ソコロフを見つけ出すよう命じられた。
FDRとタックは互いに部下たちを集め、ローレンの監視や情報入手を命じた。ハインリッヒとの関係について部下から訊かれた2人は、極秘事項だと答えた。FDRとタックは、それぞれローレンの家に侵入して情報を集めた。コリンズからイワンを捕まえるよう命令を受け、2人はストリップクラブへ出向いた。2人は銃撃戦の末にイワンを捕まえ、支局へ連行した。FDRとタックはそれぞれ、入手したローレンの情報について部下から報告を受けた。
FDRとタックは、ローレンの家に仕掛けた監視カメラの映像と盗聴器の音声を一緒にチェックする。トリッシュがローレンの家を訪れ、商品と同様にFDRとタックを比較するよう持ち掛けた。ローレンは「どっちも素敵」と言い、1週間後に期限を設定してセックスの相手を決めると宣言した。FDRとタックはローレンの趣味嗜好について調査し、彼女に気に入られようとする。タックはスポーツカーで、FDRはクリムトの絵画で、それぞれローレンの気持ちを掴んだ。
ローレンがトリッシュに「彼は口が上手すぎるし自己中心的な部分がある」と言っているのを盗聴したFDRは、彼女を犬の保護施設へ連れて行って動物好きをアピールする。一方、タックは「真面目で安全すぎる」と言われていることを知り、ローレンをサバイバルゲームに誘ってワイルドな一面をアピールした。ローレンはトリッシュに、2人とセックスすると宣言した。その会話を盗聴したFDRとタックは、「紳士協定があるからセックスしない」と約束するが、まるで信じていなかった。
タックがローレンを家に招いてキスすると、監視していたFDRは部下に命じて天井の消火装置から散水させた。FDRがローレンを家に招いてキスすると、監視していたタックはライフルで麻酔弾を撃ち込んだ。FDRとタックは、苛立ちをぶつけ合った後、イワンの尋問に向かう。イワンは余裕の笑みを浮かべ、「ハインリッヒはお前たちを殺しに来る」と予告した。実際、ハインリッヒは港からロサンゼルスに入っていた。そんなことを全く知らないまま、FDRは実家へローレンを連れて行く。祖母はローレンに、FDRが9歳の頃に両親を交通事故で亡くしていることを話す。祖母はローレンに、「それ以来、あの子は人を信じなくなった。でも貴方を信じてる。だって、ここに連れて来た初めての女性ですもの」と述べた。ローレンから誘われたFDRは紳士協定を破り、肉体関係を持った。それを知ったタックはローレンにジョーを紹介して子煩悩ぶりをアピールし、彼女とセックスに及ぶ…。

監督はマックG、原案はティモシー・ダウリング&マーカス・ガウテセン、脚本はティモシー・ダウリング&サイモン・キンバーグ、製作はロバート・シモンズ&ジェームズ・ラシター&ウィル・スミス&サイモン・キンバーグ、製作総指揮はマイケル・グリーン&ジェフリー・エヴァン・クワティネッツ&ブレント・オコナー&リサ・スチュワート、共同製作はロス・ファンガー、撮影はラッセル・カーペンター、編集はニコラス・デ・トス、美術はマーティン・ラング、衣装はソフィー・デ・ラコフ、音楽はクリストフ・ベック。
出演はリース・ウィザースプーン、クリス・パイン、トム・ハーディー、ティル・シュヴァイガー、アンジェラ・バセット、ローズマリー・ハリス、チェルシー・ハンドラー、アビゲイル・リー・スペンサー、ジョン・ポール・ルタン、ジョージ・トーリアトス、クリント・カールトン、ウォーレン・クリスティー、リーラ・サヴァスタ、ナターシャ・マルテ、ローラ・ヴァンダーヴォート、ドミニク・ブーラッサ・ブラウンズ、ポール・ウー、ダレンA・ハーバート、ケヴィン・オグレイディー、ジェシー・リード、ヴィヴ・リーコック他。


『チャーリーズ・エンジェル』『ターミネーター4』のマックGが監督を務めた作品。
脚本は『ぼくたちの奉仕活動』『ウソツキは結婚のはじまり』のティモシー・ダウリングと『ジャンパー』『シャーロック・ホームズ』のサイモン・キンバーグ。
ローレンをリース・ウィザースプーン、FDRをクリス・パイン、タックをトム・ハーディー、ハインリッヒをティル・シュヴァイガー、コリンズをアンジェラ・バセット、ナナをローズマリー・ハリス、トリッシュをチェルシー・ハンドラー、ケイティーをアビゲイル・リー・スペンサー、ジョーをジョン・ポール・ルタン、ナナの祖父をジョージ・トーリアトスが演じている。

冒頭、アクションシーンがあるが、やたらと絵がゴチャゴチャしている。
アクションの直前、FDRが美女をナンパし、タックは仕事に戻ろうとするという行動によって2人の性格設定をアピールしているが、「それで充分でしょ」とでも思ったのか、そのエピソードが終了した後のアピールが弱い。
内勤に異動した後、タックの「女に対して同じ気持ちになれるかな」という問い掛けにFDRが「ノー」と返答する描写はあるが、じゃあFDRが女と遊びまくるとか、ナンパするとか、そういう描写があるのかというと、ただ自宅のプールで女が泳いでいるのをチラッと見せるだけ。一方、タックの方はジョーと会いに行ったり、ケイティーに食事を断られたりする様子が描かれる。
それは明らかにバランスが悪い。
バディー・ムービーのベタなやり方ではあるが、「対照的な2人」というキャラ設定にしてあるはずなんだから、もっとキッチリとした形で「FDRは遊び人のプレイボーイ」ってのを見せ付けるべきだろう。

序盤の構成は、もっとスッキリさせた方がいい。
この映画だと、香港での出来事の後、ローレンが仕事をしている様子、部下がデートを理由に早く帰るのを見て寂しそうな表情を浮かべる様子が描かれる。FDRとタックがコリンズから内勤への異動を命じられた後、町でローレンがスティーヴと遭遇するシーン、トリッシュから出会い系の利用を勧められるシーンがある。タックがFDRの自宅のパーティーに参加し、「女に対して同じ気持ちを抱けるだろうか」と問い掛けるシーンが次に来る。
そういう流れだ。
でも、ローレンの出番は、もう少し後でもいい。香港での出来事の後にローレンのシーンを挟むのなんて、無駄にゴチャゴチャさせるだけだと感じる。

タックが出会い系サイトに登録するのは、ちょっと動機が弱い。ケイティーから食事を断られた後、コマーシャルを見た彼は即座に登録を決めているんだけど、それって違和感があるんだよな。
というのも、まだタックは、ケイティーに対して未練があるような様子だった。
「デートだから」と断られているので、「ヨリを戻すのを諦める」とか、「未練を振り切るために他の女とデートしようと考える」とか、もちろん彼なりの心情はあるんだろう。
しかし、そういう心情が全く表現されておらず、「ケイティーに食事を断られる」→「テレビでCMを見る」というシーンがあるだけなのだ。
そうじゃなくて、ちゃんと「タックが出会い系に登録するきっかけ」としてのシーンを用意しておくべきだろう。

タックはローレンとのデートが決まると、ものすごく楽しそうな表情を見せる。「ケイティーへの思いを吹っ切るために」という感じはゼロだ。
そうなると、「ケイティーへの気持ちは何だったのか」と思ってしまう。
しかも完全ネタバレになるけど、最終的にタックはケイティーとヨリを戻すんだぜ。それなのに、終盤まではケイティーのことなんて全く眼中に無くて、ローレンをモノにするために必死で頑張るんだぜ。
それは、どっちの女性に対しても不誠実だと感じるわ。
一応は「タックは真面目で不器用」というキャラ設定のはずなのに、そんな風には全く見えないじゃねえか。

前述したように、一応はFDRとタックのキャラクターって、バディー・ムービーの王道としての「対照的な2人」という関係性にしてあるはずなんだよね。それは「遊び人で軽いノリのFDRと、真面目で不器用なタック」という設定のはずなのだ。
しかし、そのアピールが、どっちも薄弱なのよ。
むしろ、タックが軽快なジョークを飛ばしたりしてスマートにローレンを口説いているし、こいつも女遊びに慣れているように見える。
そのせいで、「それほど違いが大きくない」という印象になってしまう。

FDRはローレンとビデオショップで出会った後、すぐにデータベースを使って彼女の資料を入手する。「ローレンに本気で惚れた」という真剣度はゼロだし、「色んな方法で調べようとしたけど無理だった」という手順を踏んでいるわけでもない。
つまり彼は、軽いノリで女をモノにする目的で、いきなりデータベースを利用しているってことだ。
そんなに簡単にデータベースを捜査と無関係の目的で使うってことは、今までも任務外で頻繁に利用していたんじゃないかと考えられる。
そうなると、幾らコメディー映画であっても、FDRの行為を笑って甘受するのが難しくなってしまう。

この映画は「FDRとタックがローレンをモノにするため、互いにCIA局員の立場を徹底的に利用する」というトコロが肝になっているわけだから、「FDRがデータベースを使う」という手順が用意されていること自体は、決して間違っているわけではない。
しかし、その利用が、あまりにも安易すぎるのだ。
その後、会社に押し掛けて仕事を妨害し、デートを承諾するよう迫るんだけど、これも単純に不愉快なだけなんだよなあ。
FDRが遊び人キャラなのは構わないけど、魅力が全く見えない不快な奴になってるのはダメだわ。
その自信満々なトコも、強引なトコも、全てが不愉快でしかない。自信満々で強引だから不愉快なのではなくて、それは見せ方の問題だ。

FDRはタックから「ローレンはお前とのデートを望んだのか」と訊かれると、「関係ない。親友だから、俺が身を引くよ。俺が相手じゃ、お前が気の毒だ。お前は俺ほど経験が無い」と言う。かなり不愉快な態度&発言だが、タックは「身を引く必要は無い。彼女はお前に惚れない。どっちを選ぶか彼女に任せよう」と言う。
「FDRの態度に腹を立てて、対抗意識を燃やした」ということかもしれないけど、その心境は良く分からない。
あと、そこで「腹を立てた」とか「対抗心を燃やした」ってのが見えないまま「彼女はお前に惚れない」と言い出すと、タックも自信家ってことになるんだよね。そうなると、ますます2人の差異が弱くなってしまう。
それ以外でも、この2人の「対照的」という見せ方が著しく弱い。「部下を使って恋愛に勝とうとする」という展開が始まっても、そこにFDRとタックの違いは見えない。どちらも監視や情報入手を命じ、どちらもローレンの家に侵入して監視カメラや盗聴器を仕込む。
まるで一緒じゃねえか。

FDRとタックが取り合いをするローレンには、そんなモテモテになるような人間的魅力が全く感じられないんだよね。
そこは「だってリース・ウィザースプーンだもの」というトコロに全面的に頼っているのだ。
しかし、『キューティ・ブロンド』や『メラニーは行く!』の頃に比べると、リース・ウィザースプーンの「ロマコメの女王」としてのランクは明らかに落ちている。
もはや、「そこにいるだけでロマコメのヒロインとしての説得力がある」という存在ではないのだ。

例えば「スティーヴとケリーが来たからFDRとキスをする」ってのも、ローレンの好感度を下げるし、そもそも展開として強引すぎるでしょ。
恋人のフリさえすれば済むわけで、キスまでする必要は全く無い。
っていうか、そもそもローレンはタックとデートしてキスしているわけで、つまり「恋人がいる」と解釈してもいいはずで。
それなのに、スティーヴが来たからって、他の男とキスして恋人のフリをするというのは、タックに対して不誠実だと感じるぞ。

そもそも、ローレンはFDRとタックの両方と同じ時期にデートを繰り返しているわけで、つまり二股を掛けていることになるわけで。
その時点で、ヒロインとしての好感度は著しく下がっている。一応は悩む素振りも申し訳程度に見せるけど、そこに情状酌量の余地は無い。
しかも、それだけではなくFDRとタックの両方とセックスしようとしている。
タックとのセックスは、ラストでFDRを騙すための嘘だったことが明らかにされるので未遂に終わってるけど、セックスしようとしたことは確かなわけで、ただの尻軽じゃねえか。
FDRとタックが友人だと知った時に「信じてたのに」と腹を立てているけど、そんな資格はねえよ。

一方、そんな女に2人が執着するってのも引っ掛かる。タックは「デートした時に彼女とキスした」と言うと、FDRは「俺もキスした」と告げる。
その時点で、ローレンが2人とデートして、どっちともキスしてたことが判明しているよね。
プレイボーイのFDRはともかく、それを知った後もタックがローレンに執着するのは、どうにも解せないんだよな。だって、相手が二股を掛けていることが明らかになっているんだぜ。ショックを受けたり、嫌になったりしないのかと。
FDRとセックスしたと知った後も、「今度は自分がセックスしてやる」という対抗意識になっちゃってるし。

冒頭でハインリッヒ兄弟とのバトルが描かれるが、その後は恋愛劇にシフトするため、CIAとしての本分はカヤの外に置かれる。
まるで忘却の彼方というわけではなくて、たまにハインリッヒを追うための行動が申し訳程度に挿入されるが、恋愛劇とは全く融合できていない。
ハッキリ言って、そんなの無くてもいいんじゃないかと思うぐらいだ。
だが、「身分を利用してローレンをモノにしようとする」というトコの面白さを出すためにCIAという設定を使う以上、単に2人の職業としての意味合いだけで終わらせるわけにもいかない。

やはりFDRとタックがCIAである以上、ちゃんと任務関連のエピソードも入れる必要はある。
だからホントは、ちゃんと融合させるべきなのだ。
それを考えると、最初に「ハインリッヒとの戦いで弟を殺して恨みを買う」というエピソードを描くよりも、ローレンをモノにするための行動の中で、彼女が何らかの形で任務と関係のある人物だと判明する、もしくは任務に関係のある存在になってしまう」という形にしておいた方が、何かと都合が良かったんじゃないかと思ったりもするんだよな。
この映画だと、終盤になって「ハインリッヒがローレンを人質にする」という展開になるけど、強引に融合させようとして失敗しているとしか思えんのよ。

ローレンは最初のデートでタックに好感を抱いているわけで、それは「本当のタック」に対する好意だ。
しかし、FDRとタックが競い合うようになってからの2人は、入手した情報に従って、ローレンの気に入るような行動を取っているわけだから、それは全て嘘で飾り付けた彼らってことになる。
だから、そんな彼らに惚れても、それは本当の彼らに惚れたわけではない。
最終的にローレンはFDRを選ぶけど、彼女が掘れたのは嘘で固めたFDRなんだぜ。

そりゃあ、「誰だって惚れた相手をモノにする時は気に入ってもらうために嘘をつくものだ」と言われりゃ、そうかもしれない。
しかし、「ローレンの趣味嗜好に合わせて嘘の自分を作り上げた」という状態のFDRにローレンが惚れて、そのままカップルになっているのは、どうにもスッキリしないんだよな。
ホントのFDRは、ローレンが嫌悪していた頃の彼なんだぜ。
しかも、ローレンがタックじゃなくFDRを選んだ決め手がサッパリ分からないし。

FDRとローレンがカップルになるとタックが取り残されるわけだが、そこは「CIAだと知ったケイティーがやり直す気になる」という展開を用意して救いを持たせている。
だけど、取って付けた印象しか無いぞ。
そもそも、「旅行業者だと思っていたから離婚したけど、CIAだと分かったらヨリを戻す」って、どういうことだよ。離婚の原因に言及していないからサッパリ分からんぞ。
あと、映画の最後には「FDRがケイティーとセックスしていたことをタックにバラす」という展開があって、それをオチのように使っているけど、全く笑えないっての。ただ不愉快なだけだぞ。

(観賞日:2015年3月25日)

 

*ポンコツ映画愛護協会