『ハムナプトラ3 呪われた皇帝の秘宝』:2008、アメリカ&中国&ドイツ

太古の昔、剣の力で中国全土を支配しようとする男がいた。それを阻止しようとする敵国は、暗殺者集団を差し向けた。男は暗殺者を始末 し、行く手ににある国を次々に滅ぼした。中国全土を治めた男は皇帝となり、敵国の人間を奴隷として働かせ、万里の長城を築かせた。 皇帝は魔術師たちから、火・水・土・木・金という5つの元素を操る魔術を教えられた。もはや皇帝には敵無しにも思えた。だが、そんな 皇帝に「老いと死」という敵が立ちはだかった。
皇帝は永遠の命の秘密を知る妖術師がいるという噂を聞き、ミン・グオ将軍に見つけるよう命じた。ミン将軍が発見した妖術師は、ツイ・ ユアンという女性だった。ユアンは皇帝に謁見し、「永遠の命を得る方法は知りませんが、秘密が隠された場所は分かります」と告げた。 皇帝はミンに、「あの女は私の物にする」と耳打ちした。ユアンはミンと共に、国の西の果てにあるトルファンの僧院を訪れた。そこに 秘密の書かれた書物があるとユアンは確信していた。
ミンが鍵を発見し、それを台に差し込んだ。すると、そこから古代の魔術書が出現した。ユアンとミンは惹かれ合い、関係を持った。 魔術書を持ち帰ったユアンに、皇帝は「望みを叶えてやる」と告げた。ユアンはミンとの結婚を望んだ。彼女は皇帝に分からない古代の 言葉で呪いを掛けた。皇帝はユアンにミンが処刑される様子を見せ付け、「お前が妃になれば奴を助けてやる」と言い放った。ユアンが 激しく抵抗すると、皇帝は腹を突き刺した。その直後、皇帝と兵隊は呪いによって陶器に姿を変えていった。
1946年、イギリスのオックスフォードシャー。戦争中に諜報員として活躍したリック・オコーネルは、現在は魚釣りをしながら退屈な日々 を過ごしていた。妻のエヴリンはリックとの2度の冒険を基にして小説を書き、作家として成功していた。彼女は3作目の契約を結んで いたが、全くアイデアが沸かなかった。息子のアレックスは大学へ行っているが、エヴリンが出した手紙の返信は無い。実は、アレックス は大学を密かに中退して中国へ渡り、上海の博物館の館長・ウィルソン教授が指揮する発掘調査に参加していた。
アレックスは皇帝の墓を発見し、ウィルソンたちと共に中へと入った。足を進めると、70年前に墓を発見したベンブリッジ教授の死体が あった。その奥には兵馬俑があった。しかし彼らは罠を作動させてしまい、アレックスとウィルソン以外の調査員が死亡した。アレックス は仕掛けを動かして地下室に入り、皇帝の棺を発見した。その直後、彼は覆面をした忍者に襲撃された。格闘しながら覆面を剥ぐと、相手 は中国人の女だった。ウィルソンが銃撃すると、女は逃げ去った。
リックとエヴリンの元を外務省の人間が訪れ、「シャングリラの眼」と呼ばれるブルーダイヤを上海美術館に届けて欲しいと依頼してきた 。シャングリラの眼は、永遠の命の泉を指し示すと言われている宝石だ。1940年代に密輸業者が盗み出したもので、政府は中国との友好の ために返却しようと決めたのだ。スパイ活動を引退している夫妻は、一度は依頼を断るが、実は2人とも行きたい意欲に満ちていた。中国 ではエヴリンの兄ジョナサンがナイトクラブを経営しており、そこへ行く名目も含めて、2人は依頼を受けることにした。
ジョナサンが営む上海のナイトクラブ「イムホテップ」に、アレックスが現れた。ジョナサンは「今回の発見が公表されたら、お前が大学 を中退したのもバレる」と心配するが、アレックスは「ここは中国だ、平気だよ」と軽く言い、モーションを掛けてきた女の元へ向かう。 店にリックとエヴリンがやって来たため、ジョナサンは焦った。直後、アレックスが一人の男と揉め事になり、リックたちに見つかった。 女の恋人の怒りを買い、詰め寄られたのだ。
騒ぎを止めに入ったリックは、相手が戦時中の旧友マグワイアだと気付いた。アレックスは「家族だったのは、ずっと昔だ」と激しく反発 し、リックとエヴリンの元を去った。エヴリンはリックの無関心が原因だと非難し、リックはエヴリンが構いすぎるからだと責めた。 エヴリンから親子関係の修復を促され、リックは承知した。一方、中国西部の準軍事部隊駐屯地では、ヤン将軍が側近のチョイから報告を 受けていた。リックたちがシャングリラの眼を持って上海に来たと知ったヤンは、訓練させていた兵隊に出動を指示した。
リックとエヴリンは、アレックスと共に上海博物館を訪れた。アレックスはウィルソンを呼びに行くが、墓で襲撃してきた女を発見し、後 を追った。リックはウィルソンが現れたので、挨拶してダイヤを渡した。そこへヤンとチョイが現れ、ウィルソンはリックたちに拳銃を 向けた。ウィルソンはヤンと結託していたのだ。ヤンは皇帝と兵隊を蘇らせようと企んでおり、そのためにダイヤが必要だった。
ヤンはリックに棺を開けるよう指示し、エヴリンにはダイヤに書かれた中国の古代文字を読むよう命じた。ダイヤには、「それを開ける ためには、清らかな心の持ち主の血が一滴、必要だ」と記されていた。ヤンはエヴリンの血を垂らし、ダイヤを開けた。一方、アレックス は女を見つけて声を掛けた。彼女はリンと名乗り、リックとエヴリンの危機をアレックスに知らせた。
ヤンはリックを射殺するようウィルソンに命じるが、そこアレックスとリンが助けに現れた。リンは棺の死体を始末しようとするが、それ は皇帝ではなく宦官だった。本物の皇帝の死体は、馬車を操る御者の中に隠されていた。皇帝は動き出し、永遠の命を得るための手助けを 申し出たヤンと共に馬車で逃走する。アレックスとリンは馬車の底にしがみ付いた。リックとエヴリンは花火を積んだトラックを拝借し、 途中でジョナサンを拾って追跡する。だが、リックたちも、アレックスとリンも、皇帝に逃げられてしまった。
リンはリックたちに、自分の家族が皇帝の墓を守ってきたこと、皇帝の息の根を止めるには自分が持っている剣で心臓を突き刺す以外に 方法が無いことを語った。そして彼女は「永遠の命の水を皇帝が飲んだら、皇帝の軍隊が蘇って世界は滅びる」と危機を訴えた。彼女に よれば、永遠の命の水があるシャングリラへ向かう入り口は、ヒマラヤ山脈の奥地にある。黄金の塔の先端にシャングリラの眼を嵌めると 、シャングリラへの道が示されるのだという。
リックたちはマグワイアにプロペラ機を操縦してもらい、ヒマラヤ山脈へ向かった。一方、皇帝もヤンや彼の軍隊と共にヒマラヤへ向かう 。リックたちは黄金の塔に到着し、ヤン一味を迎撃するために武器を準備した。エヴリンは塔を破壊するためにダイマナイトを用意した。 リックたちがヤン一味と激しい戦闘を繰り広げる中、リンは3匹の雪男を呼び寄せて助っ人になってもらった。
皇帝は塔に上がり、シャングリラの眼を嵌めた。シャングリラへの道が示された直後、アレックスは雪崩を起こして塔を埋めようと考え、 ダイナマイトを投げた。皇帝が剣を投げ付けると、アレックスを庇ったリックの背中に突き刺さった。エヴリンたちはリックの命を救う ため、彼をシャングリラへ運んだ。すると、そこにはユアンが待ち受けていた。リンはユアンの娘だった。リックはユアンの助けを得て 一命を取り留めるが、そこに現れた皇帝が永遠の命の水を使って怪物に変身してしまう…。

監督はロブ・コーエン、脚本はアルフレッド・ガフ&マイルズ・ミラー、製作はショーン・ダニエル&ボブ・ダクセイ&ジェームズ・ ジャックス&スティーヴン・ソマーズ、共同製作はキン・レイ&ジョゼット・ペロッタ&ドリス・ツェー、製作総指揮はクリス・ブリガム &ホアン・チェンシン&レン・チュンルン、撮影はサイモン・ダガン、編集はケリー・マツモト&ジョエル・ネグロン、美術はナイジェル ・フェルプス、衣装はサーニャ・ミルコヴィッチ・ヘイズ、音楽はランディー・エデルマン。
出演はブレンダン・フレイザー、ジェット・リー、マリア・ベロ、ジョン・ハナー、ミシェル・ヨー、ルーク・フォード、イザベラ・ リョン、チャウ・サン・アンソニー・ウォン、ラッセル・ウォン、リーアム・カニンガム、デヴィッド・カルダー、ジェシー・メン、 ティアン・リャン、アルバート・クワン、ウー・ジン、ビンファ・ウェイ、グオ・ジン、アリソン・ルーダー他。


1932年の『ミイラ再生』をリメイクした1999年の映画『ハムナプトラ 失われた砂漠の都』から始まったシリーズ第3作。
今回は舞台が中国になったので、もはや『ハムナプトラ』という邦題は完全に中身と合致しないものになっている(まあ前作もそうだった けど)。
これまで監督を務めてきたスティーヴン・ソマーズが監督を降板し(製作としては関わっている)、『トリプルX』『ステルス』のロブ・ コーエンにバトンタッチしている。
前2作で妻エヴリンを演じてきたレイチェル・ワイズが降板し、マリア・ベロか代役になった。3作全てに登場する役者は、リック役の ブレンダン・フレイザーとジョナサン役のジョン・ハナーだけだ。
皇帝をジェット・リー、ユアンをミシェル・ヨー、アレックスをルーク・フォード(キャラとしては前作にも登場したが役者が異なる)、 リンをイザベラ・リョン、ヤンをアンソニー・ウォン、ミンをラッセル・ウォン、マグワイアをリーアム・カニンガム、ウィルソンを デヴィッド・カルダーが演じている。また、皇帝を狙う暗殺者の一人として、ウー・ジンが出演している。

万里の長城を築かせたという説明が最初にあるので、どうやら本作品の皇帝は、秦の始皇帝をモデルにしているようだ。
その歴史考証はデタラメだが、そこに正確性を求めるようなタイプの作品ではないので、それはOK。
ただし引っ掛かる点もあって、皇帝は陶器の御者の中から現われるが、呪いが発動した時、御者に化けるような時間の余裕は無かった はずだ。
いつ、誰が、どうやって、そんな仕掛けを施したのか。
っていうか、あの時、皇帝も兵隊も全て陶器になったはずだが、誰が墓を作ったのか。

ジョナサンが上海でナイトクラブを経営しているというのは御都合主義だが、そういうのはOKだ。
そもそも、アレックスが中国で墓を発掘している設定からして御都合主義なんだし。
でも面白い映画だったかと言われると、「前作の劣化版」という答えになる。
大まかな筋書きは、前作と同じようなラインをなぞっている。
その舞台を中国に変えて、劣化させたという感じだ。

ユアンは皇帝の「願いを叶えてやる」という言葉にミンとの結婚を望んだ後、呪いを掛けているが、これは手順としてはおかしい。
その後、皇帝がミンの処刑を見せ付け、「妃になれば奴を許してやろう」と言い放っているが、そのタイミングか、もしくは刃物で 刺された後に呪いを掛けるべきだろう。
もし結婚の願いを叶えてもらえるのなら、皇帝に呪いを掛ける必要性が無い。
あと、皇帝はキスを拒んだユアンを刃物で刺しているが、だったら妃にする気なんかねえだろ。

朗読会に出席しているエヴリンが顔を上げ、マリア・ベロの姿が映し出された瞬間、「こんなのエヴリンじゃねえよ」という言葉が口を ついて出た。
リックを演じるブレンダン・フレイザーの若々しさ(童顔と言った方がいいのかもしれないが)とも、全く釣り合いが取れていない。
ただしブレンダン・フレイザーが若々しすぎて、大学生の息子がいるという設定にも違和感が生じる状態になっているけどね。
ルーク・フォードと並んでも、親子と言うより、兄弟の方がふさわしいんじゃないかと思うぐらいだ。

シャングリラの眼を上海博物館へ返却する仕事に関して、外務省の人間は「専門家である、あなた方以外に考えられない」とリックたちに 言っているが、そりゃ変だろ。
リックもエヴリンも諜報活動はしていたけど、別に宝石の専門家じゃないぜ。リックは元傭兵だし、エヴリンはエジプト学者という設定 だったはずだ。そのダイヤとは何の関わりも無いし。
「実は政府が2人に頼んだ裏には陰謀が隠されていた」という展開でもあればともかく、そうじゃないし。
っていうか、そんな設定だったとしても、無理があるけど。

リックと会ったアレックスは激しい反抗心を剥き出しにするが、そんなに親子関係が険悪になっている原因がサッパリ分からない。
一応、その後でリックの無関心が原因だというセリフがあるけど、そもそも、親子関係が険悪になっている設定にした必要性を感じない。
そこは、「アレックスは考古学に強い関心があったから発掘調査に参加した。大学で学ぶよりも発掘作業の方が面白いと思った」という 設定にしておいて、親子関係は特に問題が無いままでもいいと思うんだけどなあ。

ヤンは皇帝を復活させることを「長年の夢だ」と兵士たちに語っているが、そのために必要なダイヤがイギリスに存在していることは、 かなり前から分かっていたはずだ。
だったら、なぜ上海博物館に返却するまで待ったのか。
皇帝を蘇らせたい気持ちが強いのであれば、イギリスに手下を派遣して奪おうとしても良かったはずだぞ。
最近までダイヤのありかが分からなかったという設定なのか。

ウィルソンはダイヤを受け取ってから拳銃を構えているが、そんなことをする必要性は全く無い。
そこにヤンたちが現れ、ウィルソンと結託していることを明かす必要性も無い。リックたちが帰った後で、ウィルソンがヤンにダイヤを 渡せば済むことだ。
彼らはリックに棺を開けさせているが、そんなのはヤンの兵隊にやらせてもいい。エヴリンに中国の古代文字を読ませているが、それも 中国の方が専門家がいるだろう。
大体、前述したように、エヴリンはエジプト学者であり、中国は門外漢のはずだぞ。
あと、駐屯地でヤンが兵隊を訓練していたのは何だったんだよ。アジっていたくせに、出動させていないし。

「ダイヤを開けるためには、清らかな心の持ち主の血が必要」と記されているが、そもそもダイヤが開けるものだってのも、そこで初めて 分かったよ。
あと、そこから「清らかな心の持ち主」を探す作業に移っていくのかと思ったら、「夫を思う気持ちは清らかだ」という理屈で、エヴリン の血が使われる。
なんだ、そのテキトーっぷりは。
エヴリンの血が清らかだとは、とても思えないが。

皇帝の馬車を追い掛けるシークエンスで、リックはせっかく馬車に乗り移ったのに、自分の乗った馬を切り離して馬車の後を追う。
何がしたかったのかワケが分からない。
馬車に乗り移ったのなら、そのまま皇帝に近付こうとする方がいいんじゃないのか。馬を切り離して後を追うぐらいなら、馬車に乗り 移らずトラックに乗ったままの方がいいでしょ。
その後、彼は馬車に捕まっているアレックスに向かって「この馬に乗れ」と言うが、それも何がしたいのかワケが分からない。

ヒマラヤ山脈でヤンは軍隊を率いてリックたちと戦うが、そもそも博物館でリックたちの前に現れなければ、無駄に軍隊を動かす必要も 無かった。
で、その戦闘シーンで、リンが雪男を呼び寄せるが、何の前フリも無く現れるUMAには呆れるばかりだ。
しかも、彼らを呼んだ後もリックたちが戦う様子は描かれているわけで、わざわざ雪男を出した必要性は薄い。
そこで戦った後は、リックをシャングリラへ運ぶ手伝いをする程度で仕事は終わりだし。

冒頭で「魔術師たちから、火・水・土・木・金という5つの元素を操る魔術を教えられた」というナレーションが入っているが、そこで 皇帝が披露するのは火を操る魔術のみ。
ヒマラヤの戦闘では火の玉を投げ付けたり、塔や地面を凍らせたりしているが、木、土、金については、全く使われていない。
まあ五行として考えると、それは「木や土や金を操る」っていう意味じゃないけどさ。

それはともかく、5つの元素を操る魔術を会得して無敵になったはずの皇帝だが、永遠の命の水に浸かると、何の脈絡も無くキングギドラ (ホントにそっくりなのだ)に変身してしまう。
怪物に変身しなくても、魔術で強くなったんだから、それだけでいいんじゃないのか。
しかも、クライマックスのバトルに入ると、それとは別の怪物に変身する始末。
おまけに、怪物から人間の姿に戻ると、普通にリックと格闘しているだけ。
魔術はどうしたんだよ、魔術は。
怪物に変身した時に、自分の特殊能力を忘れてしまったのか。

(観賞日:2010年10月18日)

 

*ポンコツ映画愛護協会