『ベイビー・メイク 私たちのしあわせ計画』:2012、アメリカ

トミーとオードリーのマクリン夫妻は、結婚3年目を迎えた。2人は結婚当初からの約束通り、子作りに励み始めた。しかし9ヶ月が経過しても、オードリーは一向に妊娠しない。トミーはバーで親友のウェイド、ダレル、ジグザグと会い、不妊検査を提案される。トミーは「僕は大丈夫だ。秘密を教えよう」と言い、オードリーにプロポーズしようとした時は金が無かったこと、そこでパサデナの精子バンクに通って20回も精子を売ったことを明かした。
ウェイドはトミーたちに、恋人であるターニャのストリップ写真を自慢した。ターニャはトミーの元カノだが、ウェイドは全く気にしていなかった。オードリーは親友のカレン、グレタ、モナに相談し、トミーを不妊検査に連れて行くべきだと助言された。そこから噂が一気に広まり、トミーは学生時代のコーチであるスタッブスやデリの店員など行く先々で余計なアドバイスを受ける羽目になった。帰宅した彼はオードリーから、ヴィッカリー医師に不妊検査の予約を入れたことを聞かされた。
トミーはヴィッカリーのクリニックへ行き、射精するための専用ルームに案内される。彼はポルノビデオを見て射精しようとするが、途中でテレビが故障して失敗に終わった。翌日、オードリーはトミーに「家で採ってクリニックへ持って行って」と告げ、家を出た。トミーはベッドで妄想を膨らませるが、宗教勧誘の女性2人組が訪ねて来たので中断を余儀なくされる。2人を追い払ったトミーは再び妄想するが、イエス・キリストが出てきたので萎えてしまった。
トミーはトイレへ移動し、ウェイドから渡されたターニャの写真に頼ろうと考える。しかし「それはダメだ」と思い直し、メロンの写真でオッパイをイメージして射精した。トミーは車でクリニックへ向かうが、30分以内に届けなければいけないのに渋滞に巻き込まれる。脇道を使おうとしたトミーだが、タイヤがパンクしてしまう。そこでトミーは走ってクリニックへ向かい、何とか時間に間に合った。しかしクリニックを出た彼は、ターニャの写真をトイレへ忘れたことを思い出した。
トミーはウェイドに電話を掛けて事情を話し、「裏口が開いてるから、洗面台に置いてある写真を回収してくれ」と要請した。オードリーは元カレのトッドと遭遇し、「トミーに問題があるんだって?」と言われる。オヘドリーは赤ん坊を連れているトッドに、「名医に頼んだから大丈夫よ」と告げる。トッドは「今でも君が好きだよ」と口説く様子を見せるが、オードリーは軽く受け流した。ウェイドは裏口からトイレに入るが、写真は風で飛ばされていたため、見つけることが出来なかった。
ウェイドはメロンの写真が表紙になっている雑誌を見つけ、思わず興奮してしまう。そこへオードリーが帰宅したので、彼は慌てて窓の外へぶら下がる。何も知らないオードリーは浴室に入り、シャワーを浴びようとする。急いで家へ戻ったトミーはウェイドに気付き、写真は見つからなかったと聞かされる。すぐにトミーは浴室へ行き、写真を見つけようとする。しかしオードリーに声を掛けられたので、欲情したように装って誤魔化した。
トミーはオードリーと共にヴィッケリーのクリニックへ赴き、精子の数が少なすぎると指摘される。「原因は睾丸の打撲が考えられる」と言われたトミーには思い当たる出来事が幾つもあったが、「記憶にない」とシラを切った。ヴィッケリーは陰嚢の検査を持ち掛けるが、痛そうなのでトミーは怖じ気付いた。トミーの誕生日パーティーが開かれ、友人や近所の人々が集まった。トッドの妻であるジュリーから「夫の精子を提供するわ」と言われ、マクリン夫妻は言葉を失った。
オードリーの両親であるクラークとワンダはマクリン夫妻の家を訪れ、「トミーは精子が弱い家系ではないか」という疑惑を口にした。トミーは「僕の精子は健康そのものです」と主張し、その証拠として精子バンクに通っていた事実を打ち明けた。するとオードリーは「他に子供がいるのね」と腹を立て、トミーが釈明しても聞き入れなかった。クラークも不快感を示し、ワンダは泣き出してしまった。トミーはパサデナの精子バンクへ行き、5年前の精子が残っていないかどうか確かめる。最後の1回分が3週間前に売れたと知った彼は、3倍の金額を支払うので譲ってほしいと受付係に頼む。却下されたトミーは食い下がるが、警備員に追い払われた。
トミーは最後の1回分を買ったレズリー&ジェフリーというゲイカップルの家へ行き、金は払うから精子を売って欲しいと持ち掛ける。しかしレズリーとジェフリーは自分の精子に問題があるから精子バンクに頼っており、「トミーの精子を使いたい」と告げる。ジェフリーはトミーに、「候補者のファイルを見れば?君に似た男もいた。医者に金を掴ませれば、奥さんにはバレない」と言う。しかしレズリーはジェフリーに内緒でトミーを追い掛け、「アナル・セックスさせてくれたら精子は譲る」と提案した。
トミーから相談を受けたウェイドは、「精子バンクを襲って精子を盗み出せ」と言う。彼は「頼りになる奴がいる」と言い、ジグザクも伴ってインド人マフィアの回収屋を自称するロン・ジョンの元へ赴いた。5千ドルの報酬を要求されたトミーは難色を示すが、ウェイドの説得を受けて「住宅資金を内緒で借りる」と決めた。オードリーは親友であるアリソンの家を訪れ、彼女が養子にした中国人の赤ん坊を見せられた。アリソンは養子の手続きに1万ドルが掛かったと言い、オードリーに赤ん坊を抱かせた。
ジョンは精子バンクを下見してからトミー&ウェイド&ジグザグと会い、襲撃計画を説明した。彼の計画は隣と向かいの建物も使って複数の手順を必要とする内容だったが、どんな錠前でも開けられるピッキング・セットを持っていると知ったジグザグが「それで精子バンクに入れる」と指摘した。トミーは帰宅し、オードリーに「解決策がある」と告げる。するとオードリーは、中国人の養子を貰う考えを話した。最初は渋ったトミーだが、少し考えて承諾した。するとオードリーは喜び、手続きの1万ドルに住宅資金を使うことを告げた。
トミーはウェイドの元へ行き、襲撃計画の中止を告げた。トミーは前金の5千ドルを返してもらうため、ジョンの元へ出向いた。するとジョンが5千ドルを使い果たしていたため、トミーは「母の具合が悪くて、腎臓を移植しないと助からない」と嘘をついた。ジョンは同情し、「最大限の協力はする」と約束した。オードリーはターニャの写真を発見し、帰宅したトミーに怒りをぶつけた。トミーは釈明するが、オードリーは耳を貸さずに家を出て行った。トミーは親友3人に、「誠意を示す方法が1つだけある。精子バンクを襲うんだ」と言う。ダレルが逃げたため、トミーは改めてジョンに協力を要請した…。

監督はジェイ・チャンドラセカール、脚本はピーター・ゴール&ジェリー・スワロー、製作はジェイソン・ブラム&ブライアン・カヴァナー=ジョーンズ&ジェイ・チャンドラセカール、製作総指揮はチャールズ・レイトン&スチュアート・フォード&ケヴィン・ヘファーナン、共同製作はアーロン・ベール、製作協力はベイリー・コンウェイ&ジェシカ・ホール&ジャネット・ヴォルトゥーノ=ブリル&リック・A・オーサコ、共同製作総指揮はスティーヴ・レム&エリック・ストールハンスク&ポール・ソーター&リチャード・ペレロ&ジュリア・デイ&ビル・ガーバー、撮影はフランク・デマルコ、美術はケイティー・バイロン、編集はブラッド・カッツ、衣装はトリシア・グレイ、音楽はエドワード・シェアマー。
出演はポール・シュナイダー、オリヴィア・マン、ケヴィン・ヘファーナン、ウッド・ハリス、ジェイ・チャンドラセカール、ナット・ファクソン、アイシャ・タイラー、コレット・ウルフ、ヘイズ・マッカーサー、リンゼイ・クラフト、ヘレナ・マットソン、コンスタンス・ジマー、フィリップ・ブレニンクマイヤー、ジュード・チコレッラ、トミー・デューイ、ビル・ファッガーバッケ、M・C・ゲイニー、ジェニー・サカタ、リック・オーヴァートン、ウェズリー・フレイタス、フィリップ・ダニエル、ジェニカ・バーガー、ジェイソン・ピッチョーニ、マイルズ・フィッシャー、ノーリーン・デウルフ、マーク・エヴァン・ジャクソン、デジ・リディク、キャリー・クリフォード、ソフィア・マルゾッキ他。


『ミステリー・ツアー』『デュークス・オブ・ハザード』のジェイ・チャンドラセカールが監督を務めた作品。
『ブラック・ナイト』『アイス・エイジ2』のピーター・ゴールク&ジェリー・スワローが脚本を担当している。
トミーをポール・シュナイダー、オードリーをオリヴィア・マン、ウェイドをケヴィン・ヘファーナン、ダレルをウッド・ハリス、ジョンをジェイ・チャンドラセカール、ジグザグをナット・ファクソン、カレンをアイシャ・タイラー、アリソンをコレット・ウルフ、レズリーをヘイズ・マッカーサーが演じている。
アメリカでは酷評を浴びて興行的に惨敗し、公開してから1週間で打ち切りとなった。

冒頭、眠っているオードリーが赤ん坊の泣き声で目を覚まし、トミーに「貴方の番よ」と告げる。トミーが面倒そうに立ち上がり、開けていた窓を閉める。すると赤ん坊の声が聞こえなくなり、トミーは「クソ赤ん坊め」と吐き捨てる。
そのシーン、何のために冒頭で描いているのかサッパリ分からない。
トミーの子供嫌いをアピールしておきたいのかと思ったが、以降のシーンでは子作りに消極的な様子など見せていない。
「赤ん坊は夫婦の子供かと思いきや、外から聞こえている声でした」というネタをやりたかったのだとしたら、それは全く喜劇として機能していない。そんなのバッサリと排除して、いきなりレストランのシーンから始めた方がいい。

その冒頭シーンが終わると、マクリン夫妻が3年目の結婚記念日を祝うレストランでの様子に写る。
オードリーが「3年よ。覚えてる?」と訊くと、トミーは「もちろん」と答える。「パパになれる?」と質問されると、「アナル・セックスの話だろ。3周年はアナル婚式だ」と彼は言う。オードリーは笑顔で対処し、「貴方が望むなら、挑戦してもいいわ。帰りにディルドを買うわ。でも入るのかしら」と話す。それに対してトミーは、「無理に入れるのが楽しいんだ」と告げる。
その会話は2人ともマジで言っているわけじゃなくて、あくまでもジョークとして喋っている。ただ。ともかく映画が始まって早々から、かなりキツめの下ネタを放り込んでいる。
「そういうノリのコメディーですよ」ってのをアピールしておこうという狙いがあったのかもしれないが、「無理に盛り込んでいるなあ」という印象が否めない。
そういうことをレストランで言い合うカップルに見えないし、やたらスマートに喋っているのも違和感があるし。

で、レストランのシーンからカットが切り替わると、「夫婦が浴室や車内、パーティー会場のテーブルの下など、所構わず激しいセックスをする」という様子が描かれる。
子作りに励む様子を描きたいのは分かるけど、これもレストランのシーンと同様で、無理に下ネタへ持って行こうとしている印象が強い。
精子を巡る話だから、下ネタが入って来るのは全く不自然なことじゃないし、そっち方面へ舵を切るのは理解できる。
ただ、下ネタの入れ方に強引さや不自然さを感じるのよ。

「トミーが射精しようとするが様々な事情で失敗が続く」とか、「精子を届けようとするがタイムリミットが迫る」とか、不妊検査に関連してのドタバタ劇がしばらく続く。
それは本当に進むべき道筋から外れ、道草を食って時間を浪費しているようにしか感じない。
なぜなら、トミーは序盤で「精子を20回も売っているから大丈夫」と自信満々で言っているからだ。
だから、こっちとしては「彼の精子には何の問題も無い」という捉え方になっており、不妊検査に関連して時間を使うのは無駄じゃないかと感じるわけだ。

実際には「過去に精子を何度も提供したせいで問題が生じている」ってことが発覚するので、決して本筋から外れているわけではない。
ただ、それが明らかになっても、「時間を浪費している」という印象は変わらない。
なぜなら、「トミーの精子に問題があるので子供が出来ない」と判明したところから、本格的に物語が転がり始めるからだ。
なので、そこまでに幾つものエピソードを重ねるのは、ダラダラしていると感じるのだ。
そこはむしろサクッと片付けて、いっそのこと大胆に省略しても喜劇としては機能するぐらいだ。

ウェイドがトイレでメロンの写真を見つけてオナニーを始めようとしていると、オードリーが帰って来るので慌てて窓の外へぶら下がるというシーンがある。
このエピソードは、どうやってオチを付けるのかと思っていたら、トミーがオードリーに「僕のを君に入れていい?ビンビンなんだ」と告げ、浴室から連れ出して終わってしまう。ウェイドは放置されたままだし、写真も見つからないままだし、何もオチていない。
別にコメディーだからって、エピソードにはオチが必須というわけじゃないよ。
ただ、そこは「オチました」って感じで締めているのにオチてないのよ。
なぜウェイドか写真を使って区切りを付けようとしないのか、理解に苦しむ。

トミーの精子に問題があることが発覚すると、誕生日パーティーでトッドとジュリーが精子の提供を持ち掛ける出来事が描かれる。
トッドは明らかにオードリーとの浮気を目論んでいる様子だし、その後もマクリン夫妻の関係に割って入るトラブルメーカーとして話に絡んで来るのかと思いきや、そこで彼の仕事は終わってしまう。
なんちゅう中途半端な扱いだよ。
ジュリーに至っては、パーティーのシーンだけで出番が終わっちゃうし。

誕生日パーティーの後、トミーが精子バンクへ赴いたり、ゲイカップルから精子を譲ってもらおうとしたりする様子が描かれる。
だけど、ゲイカップルはそのシーンだけの出番なので、バッサリとカットしてしまい、すぐに「精子バンクから精子を盗み出す」という計画が持ち上がる展開へ移ってもいいんじゃないかと思ってしまう。
ただし、その手順に入ると、ジョン役のジェイ・チャンドラセカール監督がM・ナイト・シャマランの如く出しゃばってくる。
それはそれで厄介なのよね。

ジョンの問題は置いておくとして、精子バンクの襲撃計画が持ち上がったら、そこに集中して物語を進めればいい。
ところがオードリーが養子を貰いたいと言い出して、計画はひとまず中止になる。そしてターニャの写真を見つけたオードリーが激怒して家を出て行き、トミーが「誠意を示す方法は1つしか無い」ってことで襲撃計画が復活する。
それは物語に波乱を起こして盛り上げているのではなく、蛇行していると感じるのよ。
養子の件は「中国人を使ったネタをやりたいだけでしょ」と言いたくなるし、しかも大して膨らまないし。
あと「誠意を示すには精子バンクを襲うしかない」という理屈はサッパリ分からないし。

最終的にはトミーが警察に捕まるが、盗み出した精子は密かにオードリーの手へと渡っていたため、12ヶ月後には無事に子供が誕生する。
これによってハッピーエンドという形になるんだけど、「ホントにそれでいいのか」と言いたくなる。
トミーたちが精子バンクを荒らしたせいで、子供を授かれなくなった大勢のカップルがいるんじゃないのかと感じるのよね。
そこはコメディーとしては華麗にスルーしておくべきなんだろうけど、無理だったわ。
そこが引っ掛かるってことも、出来栄えが悪い証拠の1つなんじゃないかな。

(観賞日:2017年5月17日)

 

*ポンコツ映画愛護協会