『ブルー・ダイヤモンド』:2018、アメリカ&カナダ
宝石商のルーカス・ヒルはビジネスパートナーのピョートルからブルー・ダイヤモンドを受け取るため、ロシアのサンクトペテルブルクへ赴いた。いつも利用しているホテルにルーカスが着くと、フロント係のライサはピョートルが1時間前に発ったことを知らせる。ライサはルーカスに、男たちが嗅ぎ回っていたこと、ピョートルが慌てた様子で「ミールヌイへ行く。ゴルイニチという宿で待ってる」と伝言を残したことを語った。
ルーカスはピョートルが使っていた部屋を調べるが、ブルー・ダイヤは隠されていなかった。彼はピョートルに電話を掛け、留守電なのでメッセージを残した。マフィアのボリス・ヴォルコフはダイヤを買い取るため、5千ドルを用意して側近のパヴェルたちと共にホテルにやって来た。ルーカスと会ったボリスはダイヤが用意できていないと聞き、「南アフリカのヴィンセント・デ・ブルインたちが町に来てる。遅れた要因に奴らが絡んでいるとは考えたくない」と述べた。
ルーカスはボリスに、サンプルだけでなく全てのブルー・ダイヤを2日で用意すると約束した。補償金も渡すことを彼が告げると、ボリスは受け入れた。ミールヌイへ移動したルーカスがゴルイニチに着くと、ヴィンセントから電話が入った。彼はボリスの金額に5%を上乗せすると約束し、ブルーダイヤを自分に売るよう持ち掛けた。ルーカスがボリスに消されると確信して断るが、ヴィンセントは「安全は保障する。返事は急がなくていい」と告げた。
ルーカスは酒を飲むため、カティアという女が営むカフェへ赴いた。店にはカティアの長兄のイヴァン、常連客のイフレムとヴァシーリーの3人がいた。イヴァンが去った後、イフレムがカティアに下卑た絡み方をして陰部を晒そうとした。カティアが嫌がるのを見たルーカスがロシア語で注意すると、イフレムとヴァシーリーは店を去った。ルーカスがカティアに代金を支払って店を出ると、待ち伏せしていたイフレムたちが殴り掛かった。ルーカスは昏倒し、イフレムたちは罵って立ち去った。
店を閉めたカティアはルーカスを発見し、車で自宅へ運んだ。翌朝に目覚めたルーカスは、礼としてフレンチトーストを作った。カティアの家を訪ねたイヴァンはルーカスと寝たと思い込み、「すぐ捨てられるぞ。アントンとなら幸せになれる」と苦言を呈した。カティアは兄が去った後、ルーカスに「ベッド誘ったら、どうする?」と問い掛けた。「断るのは惜しいが、人を捜さなきゃならない。本気なのか」とルーカスが言うと、彼女は「兄貴は、もう寝たと思ってる。噂になるなら、事実にしてしまおうかと」と述べた。
ルーカスはピョートルの居場所を教えてもらうため、兄のアンドレイが勤める鉱山へ行くつもりだった。それを知ったカティアは、「車で送るわ。お互いに、嫌いにならかったら一緒に戻って来る」と提案した。ルーカスは鉱山へ行き、アンドレイと会った。アンドレイは彼に、「昨日、ピョートルが来たが、サムソノフたちが来たので、すぐに去った」と話す。サムソノフは密輸・麻薬・売春で稼いでいる悪党で、一味の全員はスペツナズの元隊員だとアンドレイは説明した。
なぜ追われるのかとルーカスが訊くと、アンドレイは「売ったブルー・ダイヤが偽物だった」と話す。「そんなはずはない」とルーカスが言うと、彼は「人工的に色を塗った処理石だった」と告げた。ルーカスは空港に電話を入れ、すぐに飛べるのかと尋ねた。天候の問題で今日は無理だと言われた彼は、威圧する言葉を浴びせて今日中に飛行機を飛ばすよう迫った。しかし職員は落ち着き払った態度で飛行場は閉鎖中だと伝え、運が良ければ2日後には飛べると述べた。
その夜、ルーカスがカフェへ行くと、イヴァンと弟のマックスが酒に誘った。彼らはルーカスに、カティアとアントンの結婚を望んでいることを語った。兄弟はカティアに手を出さないよう静かに圧力を掛け、翌朝に熊狩りに誘った。宿に戻ったルーカスは、テレビ電話で妻のギャビーに室内を見せた。ルーカスは客がいなくなったカフェに戻り、部屋にあった青いロウソクをプレゼントしてカティアを口説いた。翌朝の熊狩りにはイフレムとヴァシーリーも参加し、ルーカスを脅かすような悪ふざけの言葉を口にした。
イヴァンたちは犬を放って熊を追い詰めさせ、一斉に発砲した。銃弾の一発が誤って犬に命中したため、助からないと考えたイヴァンは安楽死させようとする。彼がポケットから銃弾を出すのに手間取っていると、後ろにいたルーカスが犬を狙撃した。ルーカスは空港に電話を入れ、明日なら飛行機が飛べると聞いた。彼は出発の支度を整えてからカティアの家を訪れてセックスし、別れを告げた。その様子を、イヴァンが見ていた。
ルーカスはホテルに戻り、ライサにピョートルのことを尋ねた。ライサはピョートルが戻っていないこと、ボリスから何度も電話があったことを伝えた。部屋に入ったルーカスは、青いロウソクがあるのに気付いた。彼がロウソクを踏みつけて砕くと、中にはダイヤのサンプルが入っていた。ルーカスはカティアに電話を入れ、夜明け前に着くように飛行機を手配するから来てほしいと頼む。ロウソクを持って来てほしいと頼まれたカティアは「運び役ってこと?」と不満を漏らすが、「君に来てほしいんだ」という言葉で承諾した。
ルーカスはサンプルを分析し、本物だと知った。ボリスからの電話で「もう時間が無いぞ」と言われた彼は、「少し待ってくれ。サンプルはある」と弁明する。ボリスはサンプルを持って来るよう要求し、ルーカスは明日の夜8時に彼のクラブへ行くことになった。ルーカスはヴィンセントから電話を受け、「明朝9時にライオン橋まで来い。話がある」と言われる。翌朝にルーカスが橋へ行くと、ヴィンセントは「FSBがダイヤを狙ってる。追ってるのは君だけだ。国へ帰れ」と警告した。
ルーカスはアンドレイに電話を掛け、「ピョートルから連絡があったら、FSBが動いてると伝えろ」と告げた。彼はカティアが来たのでホテルの部屋に連れて行き、ロウソクのダイヤを取り出した。分析すると、そちらのダイヤは贋作だった。ルーカスはカティアに誘われてセックスし、ボリスに会うためにクラブへ赴いた。彼がサンプルを渡すと、部屋にあったメモを見たカティアが現れた。ボリスはルーカスとの取引に満足し、「兄弟分になろう」と持ち掛けた。彼は自分の用意した女を紹介し、「私の女に君のナニをしゃぶらせるから、君の女に私のナニをしゃぶらせてくれ。向かい合って、お互いに射精するんだ。そうすれば何も我々を引き裂けない」と語る…。監督はマシュー・ロス、原案はスティーヴン・ハメル&スコット・B・スミス、脚本はスコット・B・スミス、製作はブレイデン・アフターグッド&デイヴ・ハンセン&ガブリエラ・バハー&スティーヴン・ハメル&キアヌ・リーブス、製作総指揮はウィリアム・V・ブロミリー&ネス・サバン&シャノン・ベッカー&クリスティアン・アンガーマイヤー&クレメンス・ホールマン&マーク・ハンゼル&クリストファー・ルモール&ティム・ザジャロス&カシアン・エルウィズ&ウェイン・マーク・ゴッドフリー&ロバート・ジョーンズ&フィリス・レイング&デヴァン・タワーズ&ジェリー・R・ハウスファター&ジェフ・ビーズリー、製作協力はスコット・B・スミス&オルガ・タイムシャン&アラステア・バーリンガム&ゾーイ・モーガン・チスウィック&チャーリー・ドムベク&キャサリン・フリーマン&アルノー・ラニック&ジャスミン・モリソン&スチュワート・ピーター、撮影はエリック・コレツ、美術はジャン=アンドレ・キャリエール、編集はルイーズ・フォード、衣装はパトリシア・J・ヘンダーソン、音楽はダニー・ベンジー&ソーンダー・ジュリアーンズ、音楽監修はジム・ブラック。
出演はキアヌ・リーヴス、アナ・ウラル、モリー・リングウォルド、ヴェロニカ・フェレ、パシャ・D・リチニコフ、ドミトリー・チェポヴェツキー、ジェームズ・グレイシー、ユージン・リピンスキー、ラファエル・ペタルディー、ヴラド・ストカニッチ、アレックス・クドリツキー、アレックス・パウノヴィッチ、ユリジ・キス、ヴィタリー・デメンス、コリー・チェティルボク、ナザリー・デムコウィッツ、ヴィタリー・マカロフ、ブラッドリー・サワツキー、ルスラン・ルシン、ボリス・グルヤリン他。
『フランク&ローラ 魔性のレシピ』のマシュー・ロスが監督を務めた作品。
脚本は『シンプル・プラン』『パラサイト・バイティング 食人草』のスコット・B・スミス。
ルーカスをキアヌ・リーヴス、カティアをアナ・ウラル、ギャビーをモリー・リングウォルド、ライサをヴェロニカ・フェレ、ボリスをパシャ・D・リチニコフ、イヴァンをドミトリー・チェポヴェツキー、ヴィンセントをジェームズ・グレイシー、FSBのポロジンをユージン・リピンスキー、パヴェルをラファエル・ペタルディーが演じている。「英語しか分からないと思っているイフレムをルーカスがロシア語で注意する」というカフェのシーンは、そこまでならカッコイイ行動になるだろう。
しかしルーカスは待ち伏せしていたイフレムたちに襲われ、無抵抗で失神する。
決して「不意打ちだったからカッコ悪い姿を晒した」ってことじゃなくて、シンプルに戦闘能力が低いのだ。
そこに限らず、全体を通してルーカスはカッコ悪い。ただの宝石商だから、戦闘能力が低いのは当然っちゃあ当然だ。それにルーカスはトラブルに巻き込まれているだけの男であり、決して「誰かを救おうとしている」というヒーローでもない。
ただ、それにしてもカッコ悪すぎないかね。
ルーカスが狩猟犬を狙撃して安楽死させるシーンは、「その気になれば凄いトコもあるんだぜ」ってのをアピールするための描写だろう。
だけど、そんなトコでアピールされてもさ。
熊を撃つんじゃなくて犬を安楽死させるってのも、何だかなあと。序盤でルーカスは、「ピョートルが消えてブルー・ダイヤも見つからず、2日以内に全てのダイヤを用意すると約束しなきゃいけない」という大ピンチの状況に追い込まれている。
つまり、必死になって行動し、一刻も早く問題を解決しなきゃいけないはずだ。
しかし彼がやることは基本的に、「ピョートルに電話を入れ、留守電なのでメッセージを入れる」ってことの繰り返しだ。それ以外では、カフェで酒を飲んだり、熊狩りに出掛けたり、女を口説いて深い仲になったりする。
そんなことを悠長にやってる場合なのかと。浮気心で女にうつつを抜かしている場合なのかと。「ピョートルと連絡が付かなきゃ何も出来ない」ってことなのかもしれないけど、ピョートルを捜し出すために東奔西走しているわけでもない。アンドレイから話を聞く以外は、特にこれといった行動を取っていない。
そもそも、ピョートルと連絡が付いたとしても、全てのブルー・ダイヤが手に入るとは限らない。
それなのに、別のルートで全てのブルー・ダイヤを確保するための行動を取ろうともしていない。
命の危険もあるような状況のはずなのに、あまりにも呑気すぎやしないか。ただ、そんな風にルーカスがダラダラと過ごせてしまうのは、プレッシャーを感じるような出来事に見舞われないからだ。
ボリスはホテルでルーカスの提案を受諾した後、周囲をうろついたり威圧したりするような行動を取らない。ヴィンセントはルーカスに電話を掛けた後、何の行動も取らない。アンドレイはサムソノフ一味の存在を語るが、そいつらが接触してくるようなことも無い。
ルーカスが危機や不安を覚えるような敵が話に絡んで来ないし、緊迫感が高まるような展開が何も無いのだ。
映画開始から50分ほどが経過してルーカスがホテルに戻るとボリスから電話があり、ヴィンセントからは警告を受ける。
この辺りに来て、ようやくルーカスが焦りや不安を抱かなきゃいけない状況が見えるようになる。ヴィンセントはルーカスにとって厄介な存在になるのかと思いきや、「助けてもらった恩があるから」ってことで情報を提供して警告してくれる親切な友人だった。
その後も彼はルーカスのために行動し、何の見返りも無く手助けを快諾してくれる。
「いかにもルーカスの状況を悪化させそうな存在」みたいな雰囲気で登場しておいて、ただの親切な味方で終わるとか、どういう計算なんだよ。
しかも、そのおかげでルーカスが助かるならともかく、結局は状況が好転していないんだから、だったら要らんよ、そんなキャラ。ルーカスが宿の部屋にあった青いロウソクをカティアにプレゼントするのは、もちろん後の展開に繋げるための行動だが、分かりやすく不自然な手順になっている。
ホテルに戻ったルーカスが青いロウソクを見つけた途端に「怪しい」と感じて壊すのも、なかなか都合のいい展開ではある。
ただ、それよりも引っ掛かるのは、「なぜピョートルが宿のロウソクに贋作を隠しておいたのか」ってことだ。
本物を隠す行動は理解できるけど、同じ種類のロウソクに贋作を隠す意味はサッパリ分からないんだよね。カティアがホテルの部屋にあったメモを見てボリスのクラブに顔を出すのは、あまりにもアホすぎる行動だ。
それまでのルーカスの言動を見ていれば、危険な匂いがプンプンと漂っているのは分かるはずで。
それなのに自分からリスクの高そうな場所へノコノコと出向くのは、どういうつもりなのか。「ルーカスに付いて行きたい」という単細胞すぎる考えだったのか。
その結果としてボリスのアソコをしゃぶる羽目になっても、「そりゃアンタがバカだったからだよ」としか思えんよ。
とは言え、ボリスが「兄弟分になろう」ってことで、「お互いの女にアソコをしゃぶらせて一緒に射精する」という方法を要求するのは、 あまりにもトンチキすぎるぞ。序盤でルーカスのダイヤを欲しがる相手としてボリスとヴィンセントが登場するので、その関係を使って物語を構築するのかと思いきや、さにあらず。
前述したようにヴィンセントは親切な友人に留まっており、終盤に入ってからFSBが登場して「ボリスを騙してダイヤを売り付けるための協力をルーカスに強要する」という展開に入る。
FSBは「無事に国外へ脱出させる」とルーカスに約束するが、実際はボリスが地の果てまで追って来て殺すことを確信しており、つまりルーカスを使い捨てにする気だ。
それを知ったルーカスは出国せず、ボリスの手下たちと戦うことを決める。ルーカスは戦いのプロじゃないし、おまけに相手は武装した大勢の敵だ。一緒に戦ってくれる仲間がいるわけじゃないし、明らかな劣勢を逆転させるための策を講じるわけでもない。
なのででネタバレを書くと、ルーカスは一味との戦いで命を落とす。
せめて「一味を皆殺しにするが自分も死ぬ」という形なら、まだ少しはマシだったかもしれない。しかし実際には、「パヴェルがルーカスを始末して立ち去る」という結末なのだ。
なんだよ、その哀切も無常も感じさせない、単につまらないだけのバッドエンドは。あと、わざわざ「昔の名前で出ています」的なモリー・リングウォルドを起用してギャビーを登場させた意味は何だったのかと。
最後まで、彼女がストーリー展開と密接に絡んで来ることなんて何も無いからね。
「ルーカスが妻帯者でありながらカティアを口説く」「カティアは相手が結婚していると知りながらルーカスと深い関係になる」ってだけなら、別にルーカスの妻を登場させなくても構わないわけで。
テレビ電話をするシーンが無かったとして、何か影響が出るかと考えると、何も無いしね。(観賞日:2024年11月14日)