『プリティ・ブライド』:1999、アメリカ

USAトゥデイ紙でコラムニストをしているアイク・グラハムは、バーで“ランナウェイ・ブライド”と呼ばれる女性の話を聞いた。それは、メリーランド州のヘイルという田舎町に住むマギーのことだ。彼女は何度も婚約を繰り返し、結婚式の当日に花婿を置き去りにして逃げてしまうというのだ。アイクは、彼女のことを批判的な記事にした。
ところが、そのマギー本人から、記事の内容に間違いがあるという抗議の手紙がUSAトゥデイ社に送られて来た。新聞社の編集者でアイクの元妻でもあるエリーは、コラムの連載契約を打ち切った。クビにされたアイクは友人フィッシャーに勧められ、ヘイルに乗り込むことにした。マギーを密着取材し、その実態を記事にするのだ。
マギーは、父ウォルターの営む工具店で働いていた。彼女は、高校でアメフト部監督をしているボブ・ケリーと、4度目の結婚式を目前に控えていた。しかし町の人々は、マギーの親友ペギーを始めとして、あまりマギーのことを悪く思っていない様子だ。
アイクは、これまでにマギーに逃げられた3人の花婿を取材した。牧師になったブライアン、ロックが好きなジル、そして昆虫を研究しているジョージだ。彼らから話を聞いたアイクは、マギーが相手に合わせすぎてしまう女性だということに気付いた。
アイクはマギーに、自分の気持ちに正直になるべきだと告げた。最初は反発していたマギーだが、アイクの態度に心を開くようになっていく。そして、アイクも彼女に惹かれるようになっていた。結婚式の予行演習で、アイクとマギーは本気のキスを交わした。マギーはボブとの婚約を破棄し、アイクと結婚式を挙げることになったのだが…。

監督はゲイリー・マーシャル、脚本はサラ・パリオツト&ジョサン・マクギボン、製作はテッド・フィールド&トム・ローゼンバーグ&スコット・クロープ&ロバート・コート、共同製作はエレン・H・シュワルツ&マリオ・イスコヴィッチ&カレン・スティーグウォルト&リチャード・ライト、製作総指揮はテッド・タネンバウム&デヴィッド・マッデン&ゲイリー・ルチェッシ、撮影はスチュアート・ドライバーグ、編集はブルース・グリーン、美術はマーク・フリードバーグ、衣装はアルバート・ウォルスキー、音楽はジェームズ・ニュートン・ハワード、音楽監修はキャシー・ネルソン。
出演はジュリア・ロバーツ、リチャード・ギア、ジョーン・キューザック、ヘクター・エリゾンド、リタ・ウィルソン、ポール・ドゥーリー、クリストファー・メローニ、ドナル・ローグ、レッグ・ロジャース、ユル・ヴァスケス、ジェーン・モリス、リサ・ロバーツ・ジラン、キャスリーン・マーシャル、ジーン・シャートラー、トム・ハインズ、トム・メイソン、ギャレット・ライト、セラ・ウォード他。


『プリティ・ウーマン』の監督と主演コンビの3人が再び集まった作品。だから邦題が『プリティ・ブライド』なのだが、続編でも何でもない。
マギーをジュリア・ロバーツ、アイクをリチャード・ギア、ペギーをジョーン・キューザック、フィッシャーをヘクター・エリゾンド、エリーをリタ・ウィルソン、ウォルターをポール・ドゥーリーが演じている。
この映画、監督のファミリーが勢揃いしている。従妹シンディー役はゲイリーの娘キャスリーン、アンクレジットだが、ブライダル・ショップのポリーはゲイリーの奥さんで、モーテルのクラークは息子。監督本人も、ソフトボールのシーンでファーストを守っている。

この作品、滑り出しからつまづいている。コラムでマギーについての話に入るまでの部分を色々な人が読むというシーンを描くが、そんなのは要らない。前置きはいいから、さっさとマギーについての記事に入るべき。余計なぜい肉は削ぎ落とすべきだろう。アイクがクビになる場面をシンミリ見せるのも疑問で、そこはコメディ・タッチにすべき。
コラムを読んだマギーが腹を立てて、抗議の手紙を書く様子を描く必要も無い。コラムが出た後、抗議の手紙が会社に来てアイクがクビになり、ヘイルに行くという展開にすべき。そうすれば、アイクの「バーで聞いた話と実像のマギーとの違いに触れる」という体験を、観客も同じように味わうことが出来るはずで、そっちの方が効果的だ。

この話、相当に無理を感じてしまう。3度も結婚式のドタキャンをかましている女が、同じ町で4人目の花婿を捕まえることが出来るだろうか。普通、みんな敬遠すると思う。それでも結婚したいほど魅力的というほどの描写は、劇中では見当たらないし。
また、町の人々が、ジョージを除けばマギーに悪い印象を持っていないというのも、妙だと思う。擁護する人もいるだろうが、悪口を言う人も少なくないはず。誰もが愛したくなるほど魅力的という設定でもないようだし、ヘイルの連中がバカに見えてくる。

この映画の致命的な欠陥は、マギーに全く同情できないということだ。人間というのは、学習能力がある生き物だ。3度もドタキャンを繰り返したら、さすがに何が問題なのか気付くべきだろう。しかし、これまでの失敗から彼女は何も学んでおらず、全く成長していない。「結婚式の前日までに別れろよ」と思ってしまうのだ。
1度か2度なら、マギーを愛すべき鈍感女として好意的受け取れたかもしれない。しかし、3度も繰り返して未だに何も学習していないのだから、腹立たしいバカ女にしか見えないアイクの記事に誇張はあっただろが、結果的には「男を食い物にするひどい女」にしか見えない。
本人がどう思っていようとも、結果的にはマン・イーターなのだ。

「自分が無くて周囲に合わせてしまう」という性格設定と、抗議の手紙を送ったりアイクを強く非難したりする様子とは、同じ人物として上手く一致してくれない。手紙を送ったりアイクを非難するのはペギーに任せて、もう少し抑えた方がいいんじゃないだろうか。そうした方が、マギーへの同情も寄せやすくなるはずだし。
マギーには、同情させないような態度が多すぎる。ピースサインで全く悪びれずに結婚式をドタキャンしたり、アイクの部屋に侵入して物を盗んだり、取材費を要求したり。ボブとの交際に迷っている様子が見えないのも、彼女のイメージにはマイナスだろう。

マギーとアイクが、どんな所に、どういう風に惹かれるようになっていったのか、どうも良く分からない。大体、マギーがアイクに惚れたのなら、ボブとニコニコしながら何の迷いも見せずに付き合っている様子を見せるのはイカンだろ。ボブと仲良くしている一方でアイクと熱烈キスを交わすんだから、やっぱり男を食い物にしてるってことになる。
さて、4度目となると、ひどすぎる女のマギーもようやく落ち着くかと思ったら、アイクとの結婚式もドタキャンをかます。まだ成長していないのかと、投げ出したくなる。そこはスンナリと一発で結婚させなきゃダメでしょうが。何をダラダラやってんのかと。

 

*ポンコツ映画愛護協会