『ハリウッド・スキャンダル』:2016、アメリカ

1964年、ハリウッド。多くの記者が会場に集まり、億万長者のハワード・ヒューズから連絡が来るのを待っていた。最近の伝記では、彼は精神疾患を患っていると書かれていた。ヒューズの会社は、本人が電話を掛けて精神に問題が無いと証明すると約束していた。この約束が遂行されないと、会社は国との防衛契約やカジノの免許などを失ってしまう可能性がある。ヒューズの居場所は明らかにされていないが、メキシコのアカプルコに滞在していた。彼はホテルの寝室に閉じ篭もっており、運転手のフランク・フォーブスから電話の期限が迫っていることを知らされても沈黙した。
5年と4ヶ月前、ロサンゼルス。2週間前に雇われたばかりのフランクは先輩運転手のレヴァー・マティスから、美人コンテストで優勝したマーラ・メイブリーを迎えに行くよう命じられる。レヴァーはフランクに、「空港から真っ直ぐ家まで送れ。契約した女優に手を出した運転手は、全員がクビになってる」と警告した。マーラは母親のルーシーと共に空港へ降り立ち、フランクの車に乗り込んだ。ハワードの用意した邸宅に着いたマーラは、「週に400ドルも貰えて、さらにこれ?」と感動した。
フランクは車で待機し、レヴァーが来ると交代で去る。翌朝からフランクは、レヴァーやウィルバーと交代でマーラの送り迎えを担当する。なかなかヒューズと会えないマーラはバレエのレッスン場で「契約して家を貰って女優って何人ぐらいいるの?」と若手女優たちに質問して「26人」と言われる。ヒューズに全く会えないのは、フランクも同じだった。熱心なバプテスト派の信者でウブなマーラは男女の営みに関する知識が乏しく、あけすけな女優仲間たちの会話に戸惑った。仲間のサリーは元恋人のリチャード・ミスキンに付きまとわれるが、冷たく追い払った。
フランクがマーラとお互いを意識し合っていることに気付いたレヴァーは、クビになりたくなければ余計なことをしないよう忠告した。フランクは故郷のフレズノへ戻り、祖母に金を渡した。彼は婚約者であるサラ・ブランスフォードの家を訪れ、彼女の家族と夕食を取った。ルーシーは娘の扱いが屈辱的だと感じ、フランクに怒りをぶつける。ヒューズの秘書であるナディーン・ヘンリーから電話が掛かってくると、ルーシーは「これ以上は待てませんから」と鋭く告げた。マーラはルーシーから一緒に帰郷するよう促されるが、ハリウッドに留まることを選んだ。
マーラは教会に立ち寄った帰り、フランクに「ドライブしたい」と言う。彼女が以前は運転していたことを知ったフランクは、ハンドルを握るよう勧めた。彼は「見せたい場所がある」と言い、宅地開発の夢があることを語った。フランクは「ヒューズさんの後ろ盾があれば出来る」と告げ、その候補地へ案内した。彼はマーラを家まで送り、話し相手になった。マーラは一向に先が見えないことから、「女優に向いてないのかも」と弱音を吐いた。
フランクがマーラを励ましていると、ナディーンから電話が入った。電話を受けたマーラは、ビバリーヒルズホテルでヒューズが会うと聞いて喜んだ。フランクは彼女をホテルに送り届け、車で待機した。マーラはレヴァーの案内で薄暗い部屋へ移動し、大きなベッドを目にした。レヴァーが2人分の夕食を運んで部屋を去ると、入れ違いでヒューズがやって来た。ヒューズはマーラに顔が分からないほどの距離で座り、一緒に夕食を取る。マーラが積極的に話し掛けると、ヒューズは唐突にサックスを演奏した。
ヒューズは電話を掛け、厳しい口調で部下に仕事の指示を出した。マーラが「私は自分に映画で成功する可能性があると思ってます。貴方に敬意を払ってます。だから貴方にも敬意を払ってほしい」と語ると、ヒューズは「これからカメラテストで忙しくなるぞ」と告げる。彼はナディーンに電話を入れ、出来るだけ早く準備するよう命じて部屋を去った。車に戻ったマーラは、フランクに「彼は立派な紳士だった。ロマンチックだった」と興奮した様子で語った。しかしヒューズは嫉妬心が強く、フランクやレヴァーを疑っていた。
フランクはマーラに、自分もヒューズを車で送る仕事を命じられたと明かした。マーラはフランクに家まで送ってもらい、「あなたの言葉で楽になった」と礼を述べた。フランクがヒューズを迎えに行くと、彼は無言で運転席に乗り込んだ。フランクは困惑しながら助手席に入り、運転するヒューズに話し掛ける。ずっと無言だったヒューズだが、車を降りて散歩を始めると「君は既婚者のレヴァーとウィルバーが浮気しているとは思わないか」と問い掛けた。
「真面目にやっていると思います」とフランクが告げると、ヒューズは「私が許せないのは既婚者が浮気することだ。もし知ったらクビにする。それに私の部下が契約女優と関係を持ったら、絶対にクビにする」と語る。ヒューズに「君は婚約しているらしいな。メイブリーについて、どう思う?ふしだらか?」と質問されたフランクは、マーラが真面目で教会に通っていることを話した。フランクは宅地開発への協力を取り付けようとするが、ヒューズは自分の興味がある話ばかりする。彼は翌日に小型飛行機のテストがあることを明かし、フランクにも来るよう指示した。
次の日、小型飛行機を操縦したヒューズは管制塔にいる空軍大佐たちから、「このまま飛行を続けると、合衆国政府が資金を出した飛行機を危険に晒す恐れがあります」と指摘される。ヒューズは「私は着陸させようとしてる」と言うが、不時着してしまった。大怪我を負って病院へ担ぎ込まれたヒューズだが、元気一杯だった。彼はフランクに浣腸を任せ、退院後のワシントン出張にも同行させる。飛行機が苦手なフランクは、電車でワシントンへ出向いた。
ヒューズは側近のノア・ディートリックもワシントンへ同行させており、査問委員会での証言内容を練習する。ノアが精神医に診察してもらうよう助言すると、ヒューズは「責任能力が無いと言われ、それを株主に知られたら、ビジネスを後見人に譲ることになるんだぞ」と苛立った。フランクはヒューズに、「共産主義者たちに、資本主義の良さをアピールすればいい。その場で思い付くまま言えば、貴方は決して間違わない」と告げた。
委員会でファーガソン上院議員から「飛べない飛行機で利益を得ているのか」と糾弾されたヒューズは、「利益など得ていません。この飛行機の目的は、我が国の航空技術を発展することです。数日中には飛ぶでしょう。宣言します。もし飛ばなければ、私はこの国から出て行きます」と語る。ヒューズの飛行機は無事に飛行し、その映像を見た彼は興奮した。彼は電話を掛け、自分が精神疾患だと診察されずに済む方法を考えるよう指示した。
フランクはナディーンの指示を受け、マーラの元へテレビのアンテナを届ける。フランクは彼女に「君のカメラテストを見た。最高だった。ヒューズが見るのを待ってなよ」と告げる。2人がキスを交わしていると、レヴァーが迎えに来た。2人は気付かれないよう誤魔化し、外へ出た。フランクとマーラは、互いに自分が悪いのだと告げた。レヴァーはヒューズが会いたがっているとマーラに言い、車でビバリーヒルズホテルへ連れて行く。ヒューズはトランスワールド航空のことでバンガローまで来ているメリルリンチのフォレスターに電話を掛け、少し待つよう頼んだ。
マーラはホテルでヒューズを待つ間、罪悪感から酒を煽った。ヒューズが部屋に行った時、彼女はすっかり酔っ払っていた。レヴァーはヒューズに、フォレスターが「貴方に呼ばれてトランスワールド航空に4億ドルを貸しに来た」と交渉の場に来るよう求めていることを伝えた。ヒューズはフォレスターから電話を受けると、「会う必要は無いと思う」と告げて切った。彼はメリルリンチが自分を精神異常と捉えており、会って話せば会社を手放す羽目になると確信していた。
マーラにキスされたヒューズは、指輪を渡してプロポーズした。マーラは指輪を受け取り、彼を押し倒してセックスした。フランクはサラの元へ行き、考える時間が欲しいと告げる。サラが泣いて「考えたいのは貴方でしょ」と責めると、フランクは何も言えなくなった。翌朝、フランクはサラを迎えに行き、指輪に気付く。「誰に貰ったんだ?」と訊かれさたサラは、「貴方には婚約者がいる。もう終わりにする。他の人がいる。プライベートなことは答えない」と告げた。
サラはナディーンに電話をかけてヒューズと会おうとするが、彼は出張中だった。その夜、サラはラジオのニュースを聞き、ヒューズが女優のジーン・ピータースと結婚を発表したことを知った。ヒューズはフランクとレヴァーをRKOスタジオで待機させ、「私がラスベガスにいないことは誰にも知られるな」と命じた。ヒューズはスタジオにいるノアに連絡を入れ、「私は結婚したぞ。まだトランスワールド航空の奴らと会う必要があるか」と得意げに言う。「いずれは会わなきゃならないだろう」とノアが告げると、彼は「法的には私を入院させることなど出来ない。君はクビだ。後任を探す」と述べた。
スタジオを出て行くノアは、フランクに「父親ぶっていると彼に思わせるんだ」と助言した。スタジオへ赴いたマーラはヒューズと通信しているフランクを見つけ、怒りをぶつけて立ち去った。フランクはヒューズの元へ行き、宅地開発に乗り出すよう訴える。そこへノアの後任であるボブ・メヒューから電話が入り、ヒューズに「トランスワールド航空の人間に会わないと、法廷に引きずり出されるぞ」と忠告する。ヒューズは「誰も私を引きずり出せない」と言い、トランスワールド航空を売却するためラスベガスに移動すると告げる。彼はフランクに「ネバダには州税が無いんだ」と言い、ラスベガスまで来るよう指示した。
妊娠したマーラは中絶を考えるが、医師から「カリフォルニアでは違法だ。もっと考えた方がいい」と諭される。ボブはヒューズに電話を入れ、考え直すよう説得する。拒んでいたヒューズは唐突に泣き出し、「もし私と会ったら、私の望むように働いてもらえない」と漏らす。ヒューズはフランクに苛立ちをぶつけ、無茶な注文を出す。彼はマーラが面会に来たことを知らされ、フランクに「私は誰とも会わないと伝えてくれ」と頼む。しかし彼は電話でマーラと話し、妊娠したと打ち明けれる。ヒョーズが金目当ての嘘だと睨んで「幾ら欲しい?」と言うと、マーラは怒って電話を切った…。

監督はウォーレン・ベイティー、原案はウォーレン・ベイティー&ボー・ゴールドマン、脚本はウォーレン・ベイティー、製作はアーノン・ミルチャン&ブレット・ラトナー&ジェームズ・パッカー&スティーヴ・ビング&ロン・バークル&フランク・ギウストラ&スティーヴン・ムニューチン&シビル・ロブソン・オール&ジェフリー・ソロス、共同製作はサラ・プラット&アーロン・ミクノウスキー、撮影はキャレブ・デシャネル、美術はジャニーン・オッペウォール、編集はビリー・ウェバー&F・ブライアン・スコフィールド&レスリー・ジョーンズ&ロビン・ゴンザルヴェス、衣装はアルバート・ウォルスキー。
出演はウォーレン・ベイティー、オールデン・エアエンライク、リリー・コリンズ、マシュー・ブロデリック、キャンディス・バーゲン、アネット・ベニング、マーティン・シーン、タイッサ・ファーミガ、オリヴァー・プラット、アレック・ボールドウィン、エド・ハリス、エイミー・マディガン、ポール・シュナイダー、メーガン・ヒルティー、スティーヴ・クーガン、ダブニー・コールマン、ポール・ソルヴィノ、グラハム・ベッケル、ピーター・マッケンジー、ジェームズ・キーン、マディシン・リトランド、ルイーズ・リントン、ヘイリー・ベネット、クリスティン・マーザノ、ロン・パーキンス、ジュリオ・オスカー・メチョソ、ジェームズ・グリーソン他。


映画プロデューサーとして『地獄の天使』『暗黒街の顔役』など数多くの作品を製作し、ヒューズ・エアクラフト社やトランス・ワールド航空の経営者でもあった大物実業家であるハワード・ヒューズを主人公にした映画。
ウォーレン・ベイティーが監督&脚本&主演を務めている。
フランクをオールデン・エアエンライク、マーラをリリー・コリンズ、レヴァーをマシュー・ブロデリック、ナディーンをキャンディス・バーゲン、ルーシーをアネット・ベニング、ノアをマーティン・シーン、サラをタイッサ・ファーミガ、フォレスターをオリヴァー・プラット、ボブをアレック・ボールドウィン、サラの父をエド・ハリス、サラの母をエイミー・マディガン、ミスキンをポール・シュナイダー、サリーをメーガン・ヒルティーが演じている。

ウォーレン・ベイティーの監督業や俳優業は、2010年のTVコメディー『Dick Tracy Special』以来のこと。劇場映画に限れば、監督は1998年の『ブルワース』以来で、出演は2001年の『フォルテ』以来だ。
彼は1970年代からハワード・ヒューズに興味を抱き、ずっと映画化したいと思っていたらしい。
ただ、ちょっとタイミングが遅くなり過ぎて、撮影時には79歳になってしまった。
ハワード・ヒューズは70歳で死去しているので、それより9歳も年配になってしまったわけだ。

ハワード・ヒューズは実在の人物だが、マーラやフランクは架空のキャラクターだ。つまり本作品の内容は、ほぼフィクションということになる。
もちろんハワード・ヒューズはアメリカじゃあ超が付くほどの有名人なのだが、それだけで「実話」的な力を発揮できているかというと、答えはノーだ。
ハワード・ヒューズが主人公なんだから、周囲にも実在した著名人を配置すれば大きな魅力に繋がる可能性は充分に考えられるが、そういうことも無い。
そうなると、「じゃあウォーレン・ベイティーはハワード・ヒューズの何に面白さを感じて映画化しようと思ったんだろう」と思ってしまう。

「ハワード・ヒューズが実在した大富豪でプレイボーイだった」というボンヤリした部分だけしか、この映画には「実在した著名人を取り上げた意味」が見えない。
だったら、別にハワード・ヒューズじゃなくていいんじゃないかと感じてしまう。
いっそのこと、ウォーレン・ベイティーが本人役で登場してプレイボーイとしての自分をセルフ・パロディー的にでも描いた方が、よっぽど面白くなりそうだ。
まあウォーレン・ベイティーは格好を付けたがる人だから、そんなことは絶対にやらないけどね。

始まってから25分ほど経たないと、ハワード・ヒューズは画面に登場しない。
実質的な主人公はフランクで、その相手役がマーラだ。この2人が仄かに好意を寄せ合う様子が、しばらくは描かれている。
互いに好意を抱き合い、心の距離が近付いて行く様子が、そんなに丁寧に描かれているとは言えない。ただ、ともかく2人の恋愛模様を中心に据えて序盤を進めているなら、「それでいいんじゃないか」と思ってしまう。
ヒューズは脇役でいいし、いっそのこと「最後までヒューズは登場せず、名前だけ」という仕掛けにしても、それはそれで面白くなるんじゃないかと思ってしまう。

しかし何しろウォーレン・ベイティーにとって念願の企画だし、本人がハワード・ヒューズを演じているのだから、登場させずに終わるなんてことは有り得ない。
そして、脇の脇へ追いやることも考えられない。
ハワード・ヒューズは、っていうかウォーレン・ベイティーは、主役としてのポジションを取る必要がある。
初登場まで引っ張っているのも、「真打ち登場まで勿体ぶっている」ということなのかもしれないしね。

ヒューズのパートでは、「飛行機開発に情熱を注ぐ」という部分が大きく扱われている。しかし、それが充分に表現されているかというと、答えはノーだ。
一番の問題は、「映像が足りていない」ってことだ。たぶん予算の都合なんだろうが、ヒューズが飛行機を操縦している様子も無ければ、不時着する様子も描かれないのだ。
また、映像以外でも説明不足が多く、ワシントンへ行く時点では目的が分からないし、他にも色々と曖昧模糊とした状態のままで話を進めている箇所が少なくない。
ワシントンの一件は、そこへ到着したら「飛行機事故の一件で査問委員会に掛けられている」ってことが分かるけど、見せ方としては上手くない。

それでも、そこはまだマシな部類だ。フランクとキスした直後のマーラがホテルへ行った時のシーンなんて、何を描きたいのかサッパリ分からない。
フランクは影武者を作ることに躍起になっていて、それは「精神障害だと診断されることを避けるため」ってことらしいが、具体的な狙いは良く分からない。
また、フォレスターという男がバンガローに来ているが、こいつの役職が良く分からない。
彼は貸し付けに来ているようだが、ヒューズが面会を嫌がる理由も良く分からない。「彼らは私がイカれていると言い、会社を全て手放すことになる」と説明しているのだが、ちょっと何が言いたいのか分からない。

ヒューズがマーラを呼んだのは「彼女をモノにしたいから」ってことのはずだが、口説こうとする様子は見せない。
そもそも最初に会った時からモノにしようという素振りは乏しかったし、ホントに「自分の女にしたい」という熱が強ければ、もっと早くに呼んでいただろう。
そうなると「ヒューズが多くの女優と契約して自分の女にしていた」という噂を否定する狙いがあるのかと思ったりもするのだが、一方で独占欲や嫉妬心は強く見せている。
「小心者で女を強引に口説くようなことは無かったけど、独占欲は強い」というキャラとして描こうとしているのかもしれないけど、結果としては「ヒューズをどんな男として描きたいのか良く分からん」ということになっている。

ヒューズが2度目にマーラと会った時、レヴァーに「私は彼女を呼んだわけじゃない」と嘘をつくのは彼女が酔っ払っていたからだろう。
ただ、困惑するのは分かるけど、だからって帰らそうとするのは違和感が強い。
結局は留まるのだが、ここからの会話シーンがダラダラしているだけで「何が描きたいのか」と苛立ちさえ覚えてしまう。
最終的には「マーラがキスしてヒューズの求婚を受けてセックス」という流れになるのだが、そんな行動をマーラが取るのは唐突でしかない。幾ら酔っ払っていても、そこまで急にビッチ化するのは説得力が著しく欠如した展開だ。

ヒューズの置かれている状況説明が不足しているため、それが何のための行動なのか、どういう意味を持った行動なのかも分かりにくい。
それはヒューズだけに留まらず、他のキャラクターまで侵食していく。
後半、スタジオにいるフランクを見たマーラが立ち去ろうとしたり、追い掛けて来た彼に怒りを浴びせたりするのは、どういうことなのかサッパリ分からない。
その直後、フランクがヒューズに宅地開発のことを話すのも、「そのタイミングで言い出す理由は何なのか」とツッコミを入れたくなる。
「お前の頭が悪いから理解できないんだろ」と言われたら、それは否定しない。でも、それだけが原因じゃないと思うのよ。

後半に入ると「キスしたことでフランクとマーラの関係がおかしくなり、完全に亀裂が生じてしまう」という展開がある。
ただ、その流れをスムーズに表現できているかというと、答えはノーだ。2人が激しく言い争うまでに至るのは、「なんでそうなるの?」と欽ちゃんばりに言いたくなる。
頑張って頭をフル回転させれば、「やりたかったこと」は何となく見えなくもない。ただ、その完成形に向かった建設工事は、もはや図面を書く段階からデタラメなのだ。
たぶん「ヒューズの仕事」と「フランクとマーラの恋愛」を両立させようとしたんだろうが、見事なぐらい双方が妨害を重ね、どっちも無残に破綻している。最終的に「フランクとマーラがヨリを戻しました」という着地に至っても、強引な辻褄合わせにしか感じないぞ。
ヒューズの存在意義は薄くなるけど、ビジネス方面の話は大胆にカットして、もっと恋愛劇に集中した方が絶対に良かったわ。

(観賞日:2019年3月21日)

 

*ポンコツ映画愛護協会