『ピーター・パン2/ネバーランドの秘密』:2002、アメリカ&カナダ&オーストラリア

ロンドン。子供の頃にピーターパンと出会ったウェンディーは、大人になってもネバーランドで冒険した出来事を忘れなかった。結婚した 彼女は、長女ジェーンと長男ダニーにもピーターパンの話を語った。やがて第二次世界大戦が勃発し、夫エドワードは兵士として戦地へと 赴くことになった。彼は泣き出すジェーンに「ママとダニーの面倒を見るんだよ」と告げて去った。
戦争は長引き、ロンドンにも爆弾が投下された。空襲警報が鳴り響き、ウェンディーはダニーを連れて防空壕へ非難した。ジェーンは犬の ナナトゥーを連れて町にいた。爆撃が始まる中、彼女は自宅へと急いだ。防空壕に駆け込んだジェーンは、ダニーのために持ち帰った 誕生日プレゼントの靴下を渡す。ダニーはガッカリした。実用的ではあるが、夢の無い物だったからだ。
ダニーにせがまれたウェンディーは、ピーター・パンがフック船長と戦った時のことを話した。しかしジェーンは全くネバーランドの存在 を信じなくなっており、「くだらない」と呆れる。警報が解除されて家に戻った直後、ドアが激しくノックされた。ウェンディーがドアを 開けると老兵士が立っており、「明日の朝、子供たちを田舎へ避難させるように」と通告してきた。
ウェンディーはジェーンに避難通告を伝え、「ダニーにピーター・パンの話をしてあげて」と頼む。だが、ジェーンは「ピーター・パン なんて、お母さんの作り話よ」と反発する。ダニーが来て「ぜんぶ本当だよ」と言うと、ジェーンは「そんなのは子供の御伽噺なの」と声 を荒げた。ウェンディーは弟に怒鳴ったジェーンをたしなめ、ダニーを連れて部屋を出て行った。
いつの間にか、ジェーンは窓際で眠り込んでいた。その時、空飛ぶ海賊船が現れ、フック船長と手下たちがジェーンの部屋に侵入した。 一味はジェーンをウェンディーと間違え、袋に詰めて連れ去ってしまった。ネバーランドに到着したフック船長は、手下のスミーに 「ウェンディーをエサにして、ピーター・パンをやっつけてやるぞ。ビーストを呼び出せ」と嬉しそうに告げた。
スミーがエサを海に撒いて巨大タコを呼び出そうとしていると、ピーター・パンが妖精ティンカー・ベルと共に現れた。フック船長は 「お前の友達を連れてきてやった。ウェンディーだ」と言い、ジェーンの入った袋を海に落とした。海に飛び込んだピーター・パンは、袋 を抱いて空に浮かび上がった。ティンカー・ベルの撒いた妖精の粉を浴びたタコは、フック船長に狙いを定めた。
袋から顔を出したのがウェンディーではなかったため、ピーター・パンは困惑した。ジェーンはピーター・パンとティンカー・ベルを見て 、「ああ、夢なんだわ」と口にする。フック船長の海賊船が大砲を放って来たため、ピーター・パンはジェーンを連れて逃げた。ピーター ・パンはジェーンがウェンディーの娘だと知り、「だったら、ここが気に入るよ」と告げた。
ピーター・パンはジェーンを隠れ家に案内し、ロストボーイズのスライトリー、ニブス、ツインズ、カビー、トゥートルズに紹介した。 「ジェーンが新しいお母さんになって、お話をしてくれる」とピーター・パンが言うので、ロストボーイズは大喜びした。ジェーンは困惑 し、「あまりお話は上手じゃないのよね」と言う。「だったらゲームをしよう」とロストボーイズが言い出し、ピーター・パンは「宝探し をしよう」と提案する。ロストボーイズは「早く行こう」と誘うが、ジェーンは「嫌、絶対に嫌」と頑なに拒んだ。
トゥートルズを見てダニーを思い出したジェーンは、「あたし、帰らなくちゃ」と寂しそうに言って隠れ家を出て行く。ピーター・パンは 「あの子、大人みたいだな」と漏らした。一方、フック船長はスミーに「手下を集めろ。陸に上がってピーター・パンを捜し出すぞ」と 命じた。ジェーンはイカダに乗って家族の元へ戻ろうと考えるが、すぐに沈んでしまった。
ピーター・パンから「帰るなら飛ぶしかない。方法を教えてあげるよ」と言われたジェーンは、「馬鹿げてる、飛べるわけないわ」と反発 する。ロストボーイズは「必要なのは信じる心と妖精の粉」と彼女に告げた。ピーター・パンは、ジェーンに嫉妬するティンカー・ベルに 「あの子が飛べなかったら一緒に暮らすしかないな」と吹き込んだ。ティンカー・ベルは、ジェーンに妖精の粉を浴びせた。ピーター・ パンは、ジェーンを崖から突き落とす。しかしジェーンは飛ぶことが出来ずに墜落した。
物陰からピーター・パンたちの様子を覗き見ていたフック船長は、ジェーンが帰りたくても帰れないのだと気付いた。彼はジェーンを利用 してピーター・パンに仕返ししようと企んだ。ジェーンの手帳を見つけたピーター・パンは、「こんな物があるから飛べないんだよ」と 言い、それを奪い取った。彼はロストボーイズに手帳を投げ、カビーが飲み込むと大笑いした。
ジェーンはピーター・パンとロストボーイズの態度に腹を立て、「もっと大人になりなさい。本当に信じられないわ。それに私が一番 信じていないのは妖精よ」と言い放って立ち去った。その直後、ティンカー・ベルは飛べなくなり、元気が無くなってしまう。ピーター・ パンは、ジェーンが妖精を信じないと、ティンカー・ベルの光が消えてしまうことを知った。ピーター・パンは「ジェーンを僕らの仲間に 入れればいいんだ」と思い付いた。
フック船長はジェーンに近付き、「こんな恐ろしい場所は逃げ出して、ママの元へ帰りたい。だけどピーター・パンが俺の宝を奪ったから 、取り返さないと手下どもが反乱を起こすかもしれない」と泣く芝居を打った。そして彼は「お嬢ちゃんも家に帰りたいらしいね。宝を 取り戻すのを手伝ってくれたら、俺の船で家まで送ってあげよう」と持ち掛けた。
ジェーンはピーター・パンに怪我をさせないと約束させ、協力を承諾した。フック船長から合図の笛を受け取ったジェーンは、ピーター・ パン&ロストボーイズと再会し、宝探しのゲームをやって遊ぼうと提案した。ジェーンはピーター・パンたちと森を歩き、遊びに夢中に なった。やがて辿り着いた洞窟には、財宝があった。ジェーンは笛を吹かず、海に投げ捨てた。しかしトゥートルズが笛を見つけ、それを 吹いてしまう。その途端、フック船長と海賊たちが洞窟に現れ、ピーター・パンたちを捕まえてしまった…。

監督はロビン・バッド、共同監督はドノヴァン・クック、脚本はテンプル・マシューズ、製作はクリストファー・チェイス&ミシェル・ パッパラード=ロビンソン&ダン・ラウンズ、製作協力はクリス・ヘンダーソン&リズベス・ヴェラスコ、ユニット監督はイアン・ ハロウェル、編集はアンソニー・F・ロッコ、アート・ディレクターはウェンデル・ルーブ、音楽はジョエル・マクニーリー。
声の出演はハリエット・オーウェン、ブレイン・ウィーヴァー、コーリー・バートン、ジェフ・ベネット、ケイス・スーシー、 アンドリュー・マクドノー、ロジャー・リース、スペンサー・ブレスリン、ブラッドリー・ピアース、クイン・ベスウィック、アーロン・ スパン他。


1953年にディズニーが製作した長編アニメーション映画『ピーター・パン』の続編。
ピ一ター・パン生誕100周年(原作者J・M・バリーが初めてピーター・パンを登場させた小説『小さな白い鳥』の発表が1902年だった) を記念して製作された。
当初はビデオリリースの予定だったため、『リロ・アンド・スティッチ』や『トレジャー・プラネット』を手掛けたウォルト・ディズニー ・アニメーション・スタジオズではなく、ディズニートゥーン・スタジオズ(かつてのTVアニメーション部門)が製作している。
ジェーンの声をハリエット・オーウェン、ピーター・パンをブレイン・ウィーヴァー、フック船長をコーリー・バートン、スミーをジェフ ・ベネット、ウェンディーをケイス・スーシー、ダニーをアンドリュー・マクドノー、カビーをスペンサー・ブレスリンが担当 している。
日本語吹き替え版では、ジェーンを上戸彩、ウェンディーを安田成美が担当している。
邦題では「ネバーランドの秘密」というサブタイが付いているが、劇中ではネバーランドの秘密など描かれていない。

ディズニーは1990年代に入ってから、今までに手掛けた映画の続編を乱発するようになった。
1994年に『アラジン ジャファーの逆襲』、は、1996年に『アラジン完結編 盗賊王の伝説』、1998年に『ライオン・キング2 シンバズ・ プライド』、1999年に『ファンタジア2000』、2000年に『リトル・マーメイドII Return to The Sea』、2001年に『わんわん物語II』 『ノートルダムの鐘II』、そして2002年に『シンデレラII』『ターザン&ジェーン』といった具合だ。
それらの続編は、多くのディズニー・ファンからの評判は芳しいものとは言えないし、個人的にも「過去の作品の名前を利用して安易に 金儲けをしようとしている」としか感じない。

『ファンタジア2000』を除く続編は全てビデオリリースだったが、これは劇場公開されている。
この作品も当初はビデオリリースが予定されていたが、試写会での評判が高かったため、劇場公開することに決めたらしい。
しかし、実際に作品を鑑賞してみると、「試写会で称賛した人々は、どういうセンスだったのだろう」と首をかしげたくなる。
どう考えてもビデオリリースで充分だ。

話としては相当に無理があって、フック船長がピーター・パンに仕返しをしたいのなら、なぜ何十年も経ってからウェンディーを連れ去り に来るのかと。
ウェンディーが元の世界に戻ってから、せめて1年ぐらいのスパンで来るべきでしょ。今まで何をやっていたのかと。
ずっと別の方法での仕返しを狙っていて、何十年も経過してからようやく「そうだ、ウェンディーを拉致しよう」と思い付いたのか。
あと、タイガー・リリーが登場しないのは許容するにしても、フック船長の天敵が大タコというのは、何を考えているのかと呆れて しまう。
そこは時計ワニが必須でしょうに。それをタコに変更する意図がサッパリだ。何のメリットも感じられない。

まず戦争中という設定にしているところに違和感を覚えるのだが、同時多発テロの影響なのかなあ。「テロのせいで沈みがちな子供たちに 、夢を持つことの大切さを伝えよう」ということなのかな。
そんな戦争の中、歌詞によれば、ジェーンは「こんな状況だから子供じゃいられない。強くなきゃダメだ。だからネバーランドの夢物語 なんかで楽しい気分になれない。だけどホントは信じたい気持ちもある」という設定のようだ。
「ピーター・パン、妖精の粉、子供の御伽噺よ」と言いながら泣いているし。
夢を信じたいけれど、あまりに過酷な現実の中で、少女の心は激しいダメージを負っていたということだろう。
で、だったら、ネバーランドがあることを知った後も、ジェーンが激しくピーター・パンに反発するのは腑に落ちない。

時間的には72分と短いが、この作品の場合、壮大なアドベンチャー映画じゃないし、「短いからダメなのだ」というわけじゃなくて、その 枠の中で出来る範囲の物語にまとめることは可能だったはずなんだよね。
で、尺と照らし合わせて、どこが余分な要素になっているかと考えると、ジェーンの存在なんだよな。
っていうか、彼女の物語がメインで、ピーター・パンとウェンディーの再会は付け足しになっているんだけど、後者をメインに描いて 欲しかったよ。

トゥートルズを見てダニーを思い出したジェーンが「あたし、帰らなくちゃ」と寂しそうに言うと、ピーター・パンは「あの子、大人 みたいだな」と漏らす。
でも、それは同意できない。
ジェーンが帰らなくちゃと思ったのは、弟のダニーを心配したからだ。
それは別に「子供っぽくないからダメ」と否定されるようなことじゃない。
ダニーというキャラがいなかったら、そこは大きく違ってきたんだろうけどね。
っていうか、ダニーも一緒に来る設定にすりゃ良かったのよ。
そうなると、ますます時間が足りなくなるという別の問題は発生するので、「それを度外視して考えた場合」ということだけど。

製作サイドは、「子供は家や家族の心配なんてせず、新しい友達との遊びに夢中になるものだ」とでも言いたいのだろうか。
それが子供としてあるべき姿だと主張するのなら、その主張には賛同しかねる。
その場面において、ジェーンは子供として否定されるような行動は取っていない。
子供であろうと大人であろうと、弟を心配する気持ちを優先して遊びを断るのは、間違ったことじゃない。

やるべき事柄が書かれたジェーンの手帳を「つまんないの」と奪ったピーター・パンは、それを遊びの道具にして、カビーが飲み込むと ロストボーイズと共に大笑いする。
そりゃジェーンも「何でもゲームなのね」と怒るよ。
ピーター・パンって子供の象徴なんだけど、それは「子供の嫌な部分」も含めての象徴だから、実はあまり好感の持てるキャラでは ないんだよな。
良くも悪くも無邪気すぎて、それが思いやりの無さや傲慢さに繋がることもあるのだ。

それに比べると、ジェーンはとても素晴らしい女の子だよ。
パパから「ママとダニーの面倒を見なきゃ」と言われ、その約束をちゃんと守ろうという責任感の強さがある。
その責任感の強いジェーンのことを茶化すピーター・パンとロストボーイズは、お気楽で能天気な連中なんだよな。
ピーター・パンがジェーンの苦しみや哀しみも理解した上で「だけど夢は忘れないで」とアピールするのなら共感も出来ようが、彼は ジェーンの気持ちなんて全く考えず、自分勝手に振舞っているだけなのだ。
他人の迷惑など考えず、昼も夜も自由気ままに遊ぶことが、本当に「子供らしい」として称賛されるべきことなのか。

終盤、ピーター・パンたちと一緒に宝探しゲームを始めたジェーンは、とても楽しそうにしている。
この変貌振りは、あまりにも唐突で受け入れ難い。
最初にロストボーイズから「遊ぼう、宝探しをしよう」と誘われた時には激しく拒絶していたのに、そこで宝探しを始めた時には、あっと いう間に楽しそうな態度になって、フックに持ち掛けられた計略のことなど完全に忘れて遊びに夢中になる。
空を飛ぶ練習の時は激しくピーター・パンに反発していたのに、「ロストガールズとして宣言する」と言われて、大喜びしている。
短い時間の中で、ジェーンの態度がコロコロと変わっている。
なんだかなあ。

(観賞日:2010年7月7日)

 

*ポンコツ映画愛護協会