『バイオハザードIII』:2007、アメリカ&フランス&オーストラリア&ドイツ&イギリス

浴室で目を覚ましたアリスは、ベッドに用意されていた服を着た。寝室を出ると、そこは洋館だった。しかしドアを開けると、その向こう はアンブレラ社の研究施設だった。警備装置に見つかり、アリスは腹を撃たれた。防護服を着たアイザックス博士が現れ、「血液を採取 したら廃棄しておけ」と部下2名に命じた。部下たちは地下の研究施設からエレベーターで地上へ行き、アリスの死体を捨てた。そこには アリスの死体が幾つも転がっていた。それはアリスのクローンだった。土地を囲む柵の外には、ゾンビが群がっていた。
T−ウイルスは世界中に蔓延し、全ての大陸は不毛の地となっていた。わずかに生き残った人々は、ゾンビに襲われないよう大都市を 避けて移動した。ソルトレーク・シティーのラジオ局からは、一人の女が助けを求める放送を行っていた。そこにアリスが現われると、女 は仲間の男たちと共に銃を構えて包囲した。ラジオ放送は、人を呼び寄せて物品を奪うための罠だったのだ。
一味はアリスを地下に落とし、ゾンビ犬の群れに襲撃させた。しかしアリスは地下から脱出し、一味はゾンビ犬に襲われて全滅した。 かつてアリスと行動を共にしたカルロスとL.J.は、クレアが率いる集団の一員としてコンボイやバスで移動していた。他にはベティー、 マイキー、Kマート、スレイター、チェイス、オットー、それに子供たちも含む数十名が一緒に移動していた。
アンブレラ社の幹部アルバート・ウェスカーと支部長たちは地下施設で委員会を開き、今後の対応を話し合った。そこにアイザックスが 現れ、アリス計画の現状を報告した。彼らはアリスの血液から血清を作り、それをゾンビに注射して知能を与えることで飼い馴らそうと 考えていた。しかしアリスに逃げられ、現在はクローンの血液を使っているため、時間が掛かっていた。ウェスカーはアイザックスに、 1週間で結果を出すよう命じた。
マイキーは無線で生存者に呼び掛けていたが、アリスは無視した。彼女はガソリンスタンドに立ち寄り、そこで一冊のノートを発見した。 そのノートには、アラスカからの無線を傍受したことが記されていた。無線では、アラスカには感染者がいないと話していたらしい。一方 、クレアたちは砂漠のモーテルに到着した。カルロスとL.J.は中の様子を調べに入り、襲ってきたゾンビを倒した。L.J.はベティーの 手当てを受けるが、胸をゾンビに噛まれたことは内緒にした。
アイザックスは血清を注射したゾンビに携帯電話を与え、実験を行っていた。しかしゾンビが暴れ出したため、彼は研究室を封鎖して部下 を見殺しにした。オットーは缶詰を配給するが、それで食料は終わりだった。ガソリンスタンドにガソリンは無く、給油も出来なかった。 カルロスがモーテルの周囲に監視装置をセットし、一行は夜を迎えた。野宿していたアリスも、ノートを読み終わって眠りに就いた。だが 、悪夢を見た彼女は無意識に超能力を発動させてしまった、目を覚ました途端、浮かんでいたバイクが落下して壊れた。超能力を感知した 人工知能ホワイト・クイーンは、そのことをアイザックスに報告した。
翌朝、クレアたちが目を覚ますと、カラスの群れが取り囲んでいた。カラスは死体を食べたため、T−ウイルスに二次感染していた。一行 が襲われる中、アリスが現れた。彼女は超能力でカラスの群れを一掃するが、気を失って倒れてしまう。その超能力を、ホワイトクイーン が再び感知してアイザックスに報告した。目を覚ましたアリスは、監視衛星に居場所をキャッチされたのではないかと不安になった。その 予感は的中しており、コンピュータは62パーセントの一致という結果を出した。
アイザックスはウェスカーに、モーテルへ強襲チームを派遣するよう進言する。しかしウェスカーは「100パーセントでなければ派遣は 出来ない。まず本人と確認するのが先だ。次の委員会で話し合う」と告げた。アリスはクレアたちにノートを見せ、アラスカへ向かうよう 提案した。クレアは「信じられない。夢物語は要らない」と拒否反応を示すが、カルロスが「みんなには希望が必要だ」と告げる。クレア は仲間たちに事情を説明し、多数決を取った。その結果、一行はアラスカを目指すことに決定した。
アラスカへ向かうには燃料や食料の補給が必要だが、それが残されているような場所は危険地帯であるベガスだけだった。一行は危険を 覚悟でベガスへと向かった。アイザックスはウェスカーの音声を加工し、強襲チームの出動命令を出して自らも同行した。アリスたちが ベガスに到着すると、大半の建物が砂に埋もれていた。一行は燃料補給のためにコンテナを退かそうとするが、扉が開いて中にいたゾンビ の群れが襲ってきた。一行が戦う中、アイザックスは衛星を使ってアリスの動きをシャットダウンしようとする…。

監督はラッセル・マルケイ、脚本はポール・W・S・アンダーソン、製作はジェレミー・ボルト&ポール・W・S・アンダーソン& ロバート・クルツァー&ベルント・アイヒンガー&サミュエル・ハディダ、製作総指揮はケリー・ヴァン・ホーン&ヴィクター・ハディダ &マーティン・モスコウィック、撮影はデヴィッド・ジョンソン、編集はニーヴン・ハウィー、美術はエウヘニオ・カバイェーロ、衣装は ジョセフ・ポロ、視覚効果監修はデニス・ベラルディー&エヴァン・ジェイコブズ、クリーチャー・デザイン&監修はパトリック・ タトポロス、音楽はチャーリー・クロウザー。
出演はミラ・ジョヴォヴィッチ、オデッド・フェール、アリ・ラーター、イアン・グレン、アシャンティー、クリストファー・イーガン、 スペンサー・ロック、マシュー・マースデン、リンデン・アシュビー、ジェイソン・オマラ、マイク・エップス、 ジョー・ハースリー、ジョン・エリック・ベントリー、ジェームズ・タミニア、カーク・B・R・ウォーラー、リック・クレイマー、 マデリン・キャロル、ピーター・オメーアラ、ウィリアム・アバディー他。


カプコンのゲームをモチーフにしたシリーズ第3作。
1作目からの続投キャストはアリス役のミラ・ジョヴォヴィッチのみ。
2作目からの続投は、カルロス役のオデッド・フェール、アイザックス役のイアン・グレン、L.J.役のマイク・エップス。前作の主要 キャストだったシエンナ・ギロリー(ジル役)、ソフィー・ヴァヴァスール(アンジー役)は登場しない。
シエンナ・ギロリーに関しては、オファーは出したものの、『エラゴン 遺志を継ぐ者』の撮影があったために出演できなかったらしい。
他に、クレアをアリ・ラーター、ベティーをアシャンティー、マイキーをクリストファー・イーガン、Kマートをスペンサー・ロック、 スレイターをマシュー・マースデン、チェイスをリンデン・アシュビー、ウェスカーをジェイソン・オマラが演じている。

2作目と同様、今回もポール・W・S・アンダーソンは脚本と製作のみで、監督はしていない。
今回は『ハイランダー2/甦る戦士』『レザレクション』のラッセル・マルケイが監督を務めている。
『レザレクション』以降は主にテレビの世界で活動しており、2003年の『Swimming Upstream』以来の映画ということになる。
ラッセル・マルケイと言えばジャンル映画の人というイメージが強いのだが、その『Swimming Upstream』は、スポーツ伝記物だ。

序盤、ババアとチンピラどもがアリスを捕まえるが、こいつらが何をやりたいのか良く分からん。
放送に騙されてやって来た人が持っている食料や水が目当てのはずなんだが、犯そうという素振りを見せたエディーがアリスのキックで 殺されると、一味は彼女を昏倒させて地下に落とし、目が覚めるのを待って、柵に閉じ込めてあったゾンビを放して襲わせる。
そんな遊びを楽しむ余裕があるのね。
でも、昏倒させている間に、他の男たちがアリスを犯した形跡は見られない。
あと、幾ら柵に閉じ込めてあるからって、すぐ近くにゾンビ犬がいるのに、そこを根城にしている感覚も良く分からんな。

そもそもラッセル・マルケイが既に枯れちやってるという問題はあるのだが、それにしたって、この作品は彼に監督をオファーするのに 適さない内容ではないか。
不毛の地をコンボイ軍団が移動するという、完全に『マッドマックス2』な世界観で、マルケイに何をどうしろというのか。彼に監督を 任せるのなら、もっと「近未来の大都市」という意匠を散りばめた方が良かったんじゃないか。
つまりだ、高層ビルなど多くの建物が立ち並ぶ近未来の大都市で、ネオンサインがギラギラするような舞台設定にして、そこでVFXを 使いまくりという内容の方がいいんじゃないか。
それ以外でも、ガンアクションがメインってのも違うよな。マルケイって基本的にチャンバラがやりたい人だと、私は思っているので。
この映画でも彼は、ガンアクションよりも、明らかにククリ(グルカナイフ)を使ったソード・アクションの方が力が入っている。

モチーフとなったゲームはホラー・アクションだが、映画シリーズは完全にホラーとしての色合いは消して、アクション映画になっている 。
で、アリスがゾンビを殺しまくるというアクションに特化した話にしてしまうのかと思ったら、そこまでの思い切った割り切りはして いない。
その辺りは、ポール・W・S・アンダーソンらしいと言えなくもない。
彼はB級アクション野郎なのだが、自分に何が出来て、何が出来ないのかということが、未だに把握できていないようだ。

アリスが暴れまくるところだけに意識を集中せず、アイザックスの研究やアンブレラ社の思惑、クレアと仲間たちの旅といった辺りにも目 を向けている。
そっちの話が魅力的なら別に構わないんだが、特に惹き付ける様子も見当たらず、チンタラした時間が過ぎていく。
そのため、単にアリスの活躍シーンが減っているというだけになっている。
実際、序盤でゾンビ犬と戦った後(それも戦うと言うよりは逃げるといった感じだし)、カラスの群れの前に現れるまで、アリスは ほとんど何もしていない。

で、ようやくカラスの群れと戦うわけだが、そもそもカラスは普通のカラスと見た目が全く変わらない。
目が違うっつっても、せいぜい光っている程度でしょ。ゾンビらしさは皆無だ。
ポール・W・S・アンダーソンはヒッチコックの『鳥』にオマージュを捧げたつもりかもしれんけど、ただの模倣にしかなっていない。
もっとゾンビっぽいカラスにしてくれなきゃ、意味が無いでしょ。ゲームではカラスと外見が全く変わらなかったかもしれんが、そんな 要らないトコだけゲームを踏襲しなくてもいいのよ。

あと、ようやくアリスが暴れるのかと思ったら、超能力を使ってパーンと瞬殺してしまう。
なんだよ、そりゃ。
この映画におけるアリスの超能力って、プロレスの試合で凶器にライフルを乱射するようなモンだぞ。
ある程度の反則技は許容するけど、それはダメだわ。話を面白くするための味付けじゃなくて、完全にマイナス要素になっている。
それと、舞台を砂漠にしたり、カラスを登場させたりしたのは、「絵変わりさせよう」という意識なのかもしれんが、そのためのアイデア が、ことごとく失敗しているという始末。

どうやってアンブレラ社はコンテナの中にゾンビの群れを閉じ込めたのか、なぜ同じツナギを着ているのかは、良く分からない。
これは断言してもいいと思うが、ポール・W・S・アンダーソンの中には、まず「同じ作業着姿のゾンビ集団からコンテナから飛び出して くる」というイメージがあったのだ。
そして、それを映像化する際、理屈を付けるための作業には無頓着だったのだろう。

アイザックスがアリスの動きを止めるので、どうやってアリスは復活するのかと思ったら、「衛星に異常が生じたので元に戻る」という 展開が待っている。
なんだよ、その偶然に頼った安易な展開は。
勿体を付けまくり、真打ちとして登場したタイラントは、なんとアリスに倒されるのではなく、施設の警備システムによって細切れに なる。システムを作動させたのはアリスだけど、それもクローンの方だし、なんか冴えないラストバトルだなあ。
あと、クレアたちはガソリンや食料を入手するのも苦労しているのに、どうやって弾薬を補給していたんだろうね。

(観賞日:2010年9月27日)

 

*ポンコツ映画愛護協会