『バイオハザードII アポカリプス』:2004、ドイツ&フランス&イギリス&カナダ

ラクーンシティーでは、TVキャスターのテリー・モラレスが天気を伝えている。平穏なラクーンシティーの地下では、異常事態が発生 していた。アンブレラ社の秘密研究所ハイヴがTウイルスに汚染され、調査に赴いた会社の特殊部隊UBCSの面々はアンデッドに襲撃された 。これを受けて、アンブレラ社はTウイルスの開発者アシュフォード博士ら研究者を集めた。アシュフォードの娘アンジェラは会社の人間 によって小学校から連れて来られるはずだったが、車に追突されてしまった。
それから13時間後、ラクーンシティーのあちこちで殺人が発生し、パニック状態となっていた。Tウイルスに汚染された人々がアンデッド に変貌し、人々を襲い始めたのだ。警察特殊部隊「S.T.A.R.S.」のジル・ヴァレンタインは警察署に赴き、暴れるアンデッドたちを射殺した 。彼女は署内にいたチンピラのL.J.に、「私は街を出る。アンタもそうすれば」と告げた。
ハイヴから脱出したアリスはアンブレラ社に拘束され、病院で眠りに就いていた。アンブレラ社がアリス・プロジェクトを始動させ、目を 覚ました彼女は病院から外に出た。アリスはアンブレラ社の実験台としてTウイルスを注射され、通常の人間ではなくなっていた。だが、 彼女は他の面々のようにモンスターに変貌することなく、見た目は普通の人間のままで、身体能力だけが上昇していた。
アンブレラ社はラクーンシティーを閉鎖し、中央口レイヴェンズ・ゲートで市民にメディカル・チェックを要求した。一方、ヘリに乗って いたUBCSの隊員カルロスは、アンデッドに追われてビル屋上に現われた女性を発見した。カルロスは命令に背き、救出に降り立った。だが、 既にアンデッドに噛まれていた女性は自分がどうなるかを知っており、「もう遅い」と飛び降りて命を落とした。
レイヴェンズ・ゲートへやって来たジルは、同僚のペイトンと出会った。街を出ようと市民が押し寄せる中で、1人の男がアンデッドに 変貌し、制止しようとしたペイトンに噛み付いた。すぐにアンデッドは射殺されたが、アンブレラ社のケイン少佐はレイヴェンズ・ゲート の封鎖を命じた。ケインは街へ戻るよう市民に要求し、UBCSは脅しとして銃を乱射した。
アシュフォードはケインからヘリでの避難を指示されるが、「娘が見つかるまでは残る」と拒否した。彼はコンピュータを使い、街に設置 された監視カメラの映像で生存者のチェックを開始した。病院を出たアリスが、一人で街を徘徊していた。ジル、ペイトン、テリーの3人 は、教会にやって来た。中に入ると、別の男マッケンジーが身を隠していた。
ジルは、神父がアンデッド化した妹を椅子に縛り付けて生かそうとしているのを知った。しかし神父はアンデッドに噛まれ、ジルが始末 した。テリーが教会の扉を開けると大勢のアンデッドが押し寄せたため、慌てて閉めた。逃げ出そうとしたマッケンジーは、侵入した アンデッドに襲われて死んだ。ジルやペイトンたちはアンデッドに応戦するが、弾が切れてしまう。そこへバイクに乗ったアリスが突入し、 ジルたちを助けた。一方、カルロスは仲間のニコライやユーリと共にアンデッドと戦うが、苦戦を強いられていた。
教会を出たアリスたちは、墓地で土の中から現われたアンデッドに襲撃され、撃退した。同じ頃、ケインはTウイルスの感染が極限に達した との報告を受け、ネメシス・プログラムの始動を宣言した。カルロスとニコライは、アンデッドに噛まれたユーリを連れて避難しようと していた。彼らはアンブレラ社のヘリが何か落としたのに気付き、現場へ赴く。すると、それは武器ケースだった。アンデッド化した ユーリがニコライに噛み付いたため、カルロスは彼を射殺した。
街を歩いていたL.J.は、店舗に集まっている「S.T.A.R.S.」の面々と合流した。そこへ、ロケットランチャーで武装した新種の怪物が 現われた。ケインが送り込んだバイオ兵器ネメシスである。ネメシスの攻撃を受け、「S.T.A.R.S.」は一瞬にして全滅した。残された L.J.が武器を落とすと、ネメシスは攻撃性が無いと判断し、その場から立ち去った。
アリスたちが街を移動していると、公衆電話が鳴った。アンデッドが音に反応するため、アリスはジルたちに無視するよう命じた。しかし移動 する先々で鳴るため、ついにアリスは電話を取った。電話を掛けてきた相手はアシュフォードだった。彼は、街から脱出する方法を教える 代わりに、小学校に避難しているアンジェラを救出して欲しいと持ち掛けた。アンブレラ社は証拠隠滅のため、日の出と共に核ミサイルを 使ってラクーンシティーを焼き尽くし、原発事故に見せ掛けるつもりだ。アリスはアシュフォードの取引を飲んだ。
小学校へ向かう途中、ネメシスが現われ、ペイトンが殺された。アリスはネメシスに戦いを挑み、ジルたちと別れた。ネメシスは、かつて アリスが共にハイヴから脱出した仲間マットが改造された姿だった。ジルとテリーたちはL.J.と出会い、共に小学校に向かった。 アシュフォードから電話を受けたカルロスとニコライも、小学校にやって来た。
それぞれが別々にアンジェラを探す中、テリーはアンデッドに襲われて死んだ。ジルはアンジェラを発見するが、犬型アンデッドの襲撃を 受けた。絶体絶命のピンチが訪れた時、アリスが駆け付けて2人を助けた。アンジェラを見たアリスは、Tウイルスに感染していると察知 した。だが、アンジェラはアシュフォードが作った抗ウイルス剤を所持していた…。

監督はアレクサンダー・ウィット、脚本はポール・W・S・アンダーソン、製作はジェレミー・ボルト&ポール・W・S・アンダーソン& ドン・カーモディー、製作協力はダン・クレツキー&小林裕幸、製作総指揮はベルント・アイヒンガー&ロバート・クルツァー& サミュエル・ハディダ&ヴィクター・ハディダ、撮影はデレク・ロジャース&クリスチャン・セバルト、編集はエディー・ハミルトン、 美術はポール・デンハム・オースターベリー、衣装はメアリー・マクラウド、音楽はジェフ・ダナ。
出演はミラ・ジョヴォヴィッチ、シエンナ・ギロリー、マイク・エップス、ジャレッド・ハリス、オデッド・フェール、トーマス・ クレッチマン、ソフィー・ヴァヴァスール、ラズ・アドティー、サンドリーヌ・ホルト、マシュー・G・テイラー、ザック・ウォード、 イアン・グレン、デイヴ・ニコラス、ステファン・ヘイズ、ジェフリー・ポーンセット、ショーン・オースティン=オルセン、ジェニー・ ウォルターズ、メーガン・ファーレンボック、ロバート・モレリ他。


カプコンのビデオゲームを基にしたシリーズ第2作。
1作目で監督&脚本&製作を担当したポール・W・S・アンダーソンだが、今回は監督からは降りた。多くの映画で第二班監督を務めて きたアレクサンダー・ウィットが、監督デビューを飾っている。
前作の出演者の内、続投したのはアリス役のミラ・ジョヴォヴィッチのみ(フッテージではエリック・メビウスが登場)。ジルをシエンナ ・ギロリー、L.J.をマイク・エップス、アシュフォードをジャレッド・ハリス、カルロスをオデッド・フェール、ケインをトーマス・ クレッチマン、アンジェラをソフィー・ヴァヴァスール、ペイトンをラズ・アドティーが演じている。
前作にアンクレジットで出演していたバーキン博士役のジェイソン・アイザックスは続投の予定があったが、最終的には外された。終盤に イアン・グレン演じるアイザックス博士というキャラが登場するが、その名前はジェイソン・アイザックスから取ったものだ。

ジルの登場は、演じるシエンナ・ギロリーがゲーム版のキャラクターに似ているということで、ゲームのファンからも高く評価されている ようだ。
ただ、見た目の再現レベルはともかく、キャラクターとしては大して活躍していない。
これはミラ・ジョヴォヴィッチだけが目立つように作られているシリーズであり、他のヒロインにそう簡単に活躍されると困るってことか。

前作にホラー映画としての怖さは全く無かったが、もう割り切って開き直ったのか、今回は完全にアクション映画に舵を切っている。
ただ、それなら次々にゾンビをぶっ殺していく爽快感を観客に味あわせるのかと思いきや、それは無いのね。
「いつ殺されるのか」というスリルも全く無い。
何しろ、アリスが改造手術で仮面ライダーに変身し、ゾンビより遥かに強くなっているのだ。
ほとんどスティーヴン・セガール主演作品みたいになっている。
アリスは常に冷静で余裕のある佇まいだ。全く焦ることなく、自信に満ちた戦いぶりを見せる。
安心感のあるゾンビ映画という、珍しいものになっている。

アレクサンダー・ウィットは第二班監督としての経験は長いのに、何も学習しなかったのか、単にセンスが無いだけなのか、アクション・ シーンの撮り方がまるでダメ。
カット割りが細かすぎて、何がどうなっているのかサッパリ分からない。
動けない俳優のアクションを撮る時にカットを割るのは常套手段だが、そこは塩梅ってモノがあるのよ。
っていうか、ミラ・ジョヴォヴィッチって、かなり動けているように思うが。

一応は「封鎖された街からの脱出」というミッションで与えられているのだが、そこに閉塞感や、閉鎖された環境から来る 緊迫感は無い。
物語がアリスだけを追うのではなく、違う場所で行動する複数の面々を追い掛けることも、さらに閉鎖による緊迫感を薄めている。
しかし前作に比べて登場キャラクターの幅が広がったことは、物語の広がりに繋がっているわけではない。
それより問題なのは、「日の出と共に核ミサイルで街が焼き尽くされる」という設定なのに、時間が全く示されず、あとどれぐらいで タイムリミットなのかがサッパリ分からないこと。
だから、時間制限によるハラハラ感が全く無い。
せっかく緊迫感を出せる設定を用意しても活用しないという、間の抜けっぷりである。

終盤、ケインがアリスとネメシスにタイマン勝負を要求する辺りのイカレっぷりは、映画のバカバカしさに繋がる。 アンデッドだらけの街で、何をやってんだか。
たぶんポール・W・S・アンダーソンとしては、どうしてもアリスの1対1での格闘アクションを用意したかったんだろうな。そのため なら、ムチャな筋書きも平気で通す辺りが、さすがはダメな方のポール・アンダーソンだ。
で、その対決はどうなるかというと、途中でネメシスが寝返ってアリスの味方になるのだ。しかし、だからといってケインを倒すわけでも ない。クライマックスとしては、見事に腑抜けである。
そんなこんなでワアワアと騒ぎがあった後、脱出したアリスはヘリで墜落し、それをアイザックス博士が助けてラボに連れて行くという 展開になる。もう最初から第3作を作る気マンマンってことだわな。
しかし、アリスが「離れた監視室にいる男を攻撃する」という超能力まで使えるようになっちゃうのは、どうなのよ。

(観賞日:2007年11月3日)

 

*ポンコツ映画愛護協会