『プラウド・メアリー』:2018、アメリカ
殺し屋のメアリーは化粧を整えて拳銃を用意すると、ウィッグを装着した。彼女はアパートの廊下を歩いて目的の部屋へ行き、ドアノブを撃って破壊した。部屋に侵入したメアリーは、電話に出ようとしているミラーという標的を射殺した。奥の部屋で声がしたので、メアリーは警戒しながら様子を見に行く。するとミラーの一人息子であるダニーが背中を向け、ビデオゲームに没頭していた。彼は父が殺されことに全く気付いておらず、メアリーは部屋を後にした。
1年後。ダニーはアンクルの使いとしてジェロームの家を訪れ、預かったドラッグを渡した。ジェロームはドラッグを確認し、金を渡した。ダニーは紙幣を数え、3千ドルの約束なのに2千5百ドルしか無いことを指摘する。ジェロームは恫喝するがダニーは全く怯まず、冷淡な表情で拳銃を突き付けた。ジェロームは動揺し、冷蔵庫に千ドルが入ってると教えた。ダニーは「罰金だ」と告げ、千ドルを回収して立ち去った。ダニーがパンを買って防波堤で食べる様子を、車を停めたメアリーが密かに眺めていた。
ダニーはアンクルの事務所へ戻り、金を渡した。アンクルはパンを買ったことを批判し、「飯は食わせてる。俺から金を盗むな」と平手打ちを浴びせた。仕事を命じられたダニーは頭がフラフラするため、外のベンチで休憩しようとする。しかしリュックを奪われたため、慌てて犯人を追跡した。彼が威嚇発砲すると、犯人はリュックを捨てて逃亡した。ダニーはリュックに歩み寄るが、意識を失って倒れ込む。メアリーは車に彼を乗せ、自宅アパートへ連れ帰った。
目を覚ましたダニーはメアリーに敵意を示し「バックベイに行く。リュックを返して」と要求する。メアリーが「送ってあげるわ」と食事を用意すると、ダニーは、警戒しながら食べ始めた。メアリーが質問すると、彼は詮索を嫌った。「貴方を助けたいだけ」とメアリーが言うと、ダニーは「助けは要らない」と拒絶する。メアリーが「助けは必要でしょ。鞄の中身はヘロインと拳銃。持たせた奴は?」と口にすると、ダニーは「言えば殺される」と答える。メアリーは「私が守ってあげる。あれを持ったまま逮捕されたら仲間は警察に垂れ込んだと思う」と語り、ダニーの傷の手当てしようとする。彼の背中を見たメアリーは、アンクルが虐待していると悟った。
メアリーがアンクルの元へ向かおうとすると、ダニーは同行を希望した。メアリーはダニーを車に待機させ、アンクルの事務所へ乗り込む。鞄を返してダニーを許すよう要求すると、アンクルは不遜な態度を取った。メアリーはアンクルの手下たちが自分を殺そうとするのに気付き、2人とも始末した。彼女は拳銃を構えようとするアンクルも射殺し、残る手下も殺害した。慌てて車に戻ったメアリーは、ダニーに「マズいことをした。最悪」と吐露した。
メアリーはダニーを連れてアパートに戻り、「出掛けて来る。私の部屋には入らないで」と釘を刺した。メアリーはソファーで眠り込んだダニーに毛布を掛け、車でベニーのオフィスへ赴いた。ベニーはメアリーに、「アンクルが殺された。コズロフはウチが縄張りを狙ったと思ってる」と話す。ベニーの息子であるトムと組織の幹部を務めるウォルターも、話し合いに同席した。ベニーはアンクルが属するルカ・コズロフの組織との抗争を望んでいないが、トムとウォルターは「むしろ抗争が必要だ」と主張する。ベニーはトムに、「明日、会合を開く」と告げた。
目を覚ましたダニーはメアリーの言い付けを守らず、彼女の部屋に入った。クローゼットを調べた彼は、大量の銃が隠してあるのを発見した。メアリーが戻ると、ダニーは再びソファーに戻って眠っていた。しかしメアリーはダニーの行動に気付き、翌朝になってから「部屋に入るなと言ったでしょ」と説教した。「なんであんなに銃があるの?」と問われた彼女は、「アンタは銃なんて見なかった」と告げた。メアリーは「ドアに鍵を掛けて。何があってもドアを開けちゃダメよ」とダニーに言い含め、車で出掛けた。
ベニーはメアリーとトムを伴ってルカの屋敷へ赴き、話し合いで解決しようとする。しかしルカはウォルターの仕業だと睨んでおり、復讐を口にする。ベニーが「もしもウチの人間の仕業なら、処罰すると約束する」と言うと、ルカは「償いの印にウエストエンドの縄張りを寄越せ」と要求した。ベニーは「考えておこう」と告げ、ルカの屋敷を後にした。オフィスに戻ったトムは、ベニーに「あいつらは疑いを掛けて縄張りの分配に利用する気だ。アンクルを殺した犯人を見つけるしかない」と進言した。
メアリーが「犯人はウォルターよ」と言うと、トムは否定して「犯人を差し出さないと」と父に促した。メアリーが「ウォルターでいい。アンクルを狙ってたってルカが言ってた。アンクルの死を望んでたのよ」と主張すると、ベニーはウォルターの始末を命じた。メアリーはダニーを連れて、公園へ出掛けた。ダニーは「アンクルはどうなったの?もう心配いらないと言ってたけど」と尋ね、メアリーが「奴は消えたの」と言うと「マジかよ」と興奮した。
ダニーが改めて銃に言及して「何の仕事をしてるの?」と訊くと、メアリーは「警備よ」と嘘をついた。彼女はホットドッグを購入しつつ、ジョギングに出るウォルターの行動を密かに確認した。ダニーはメアリーと防波堤に佇み、「母さんはいなくなった。父さんは1年前に殺された。引き取ってくれた婆ちゃんも死んだ」と語った。「その後は?」とメアリーが問い掛けると、彼は「児童保護局は施設に送ろうとした。逃げ出して公園で暮らしていたけど、アンクルの所へ連れて行かれた」と話した。
次の日、メアリーはダニーに「鍵を掛けて外には出ないで」と指示し、公園へ赴いた。メアリーはジョギングに出たウォルターを尾行し、トンネルに入ったタイミングで射殺した。同じ頃、ルカは手下たちを差し向け、ベニーのアジトを襲撃させた。ベニーは助かったが、5人の手下が殺された。トムは報復しようと訴えるが、ベニーは「奴らの仕業と断定できるまで抗争しない」と却下する。トムは納得せずに「だったら俺が仕切る」と言い、側近のオマールに「奴らの仕業だという証拠を掴め」と命じた。トムがメアリーの家を訪れた時、ダニーは大音量でテレビを見ていた。ブザーが鳴ったのでダニーは焦り、慌ててテレビを消した。
トムは玄関の鍵を持っており、勝手に中へ入った。ダニーを見たトムは、「メアリーはどこだ?電話に出ない」と言い、彼女との関係を尋ねる。「近くで会った。アンタは警備の仲間?」とダニーが口にすると、トムは「警備の仕事か。笑わせる」と告げる。彼は「帰ったら電話しろと伝えろ」と言い、部屋を後にした。メアリーが帰宅すると、ダニーは勝手にクローゼットを調べていた。メアリーが叱責すると、彼は「アンタは嘘をついてた」と睨む。ダニーはトムが来たことを伝え、彼との関係を質問する。メアリーが「前の彼氏で、今は兄弟みたいな関係よ」と言うと、ダニーは「アンタの仕事は警備じゃない。ホントは何の仕事してるの」と責めるように尋ねた。
メアリーはダニーと口論になってしまうが、すぐに反省して抱き締めた。彼女はダニーに、「トムのことは気にしなくていい。大事なのはアンタと私だけよ」と述べた。メアリーが会いに行くと、トムは「コズロフが襲撃しきてた。アンクルの死を利用して親父を潰す気だ」と話す。彼はオマールにルカの手下を捕まえさせ、ベニーの前で拷問していた。手下が全て白状したので、ベニーはメアリーに「今度の金曜にルカがファミリーの全員を集める。お前とトムで伝言を届けてくれ」と指示した。
ベニーはトムからダニーのことを聞いており、「迷子を拾ったそうだな」と言う。メアリーが「怪我してたから助けただけ」と釈明すると、ベニーは「ウチのディナーに連れてこい。妻のミーナが誕生日だ」と告げた。次の日、メアリーはダニーに新しい服を買い与え、ベニーの家へ連れて行くと説明する。彼女はベニーが面倒を見てくれた人だと言い、「父さんは私と母さんに酷いことをしてた。だから逃げて、しばらくは路上生活だった」と語った。
メアリーはダニーに、アンクルのことは話さず別の素性を語るよう指示した。彼女は偽のプロフィールをダニーに覚えさせ、「ベニーがどんなに優しくしても信用しちゃダメ。彼は怖い人よ」と説いた。ディナーに参加したメアリーはベニーと2人になり、組織を抜けたいと話す。ベニーは「明日まで待てるな。今日の主役はミーナだ」と告げ、メアリーは承諾した。トムはダニーの素性を調べており、メアリーに「父親を殺したのはウチだと気付く可能性がある」と言う。「無いわ」とメアリーが否定すると、彼は「親父に話したら、どう思うかな。問題を増やすな。あのガキに関わるのは危険だ」と語った。トムが「ヨリを戻したい」と持ち掛けると、メアリーは「ずっと愛していたけど、あの頃とは違う」と告げた。
翌朝、メアリーはダニーから、「いつでも来ていいってベニーに言われた」と聞かされる。彼女は不安を抱き、「クローゼットにお金があったでしょ。私に何かあったら貴方の物よ。覚悟しておいて。あのお金を持って逃げなさい」と語った。夜、メアリーはコズロフ邸の前でトムと合流し、「抜けたがってると聞いた。親父はお前を手放さないぞ。お前は多くを知り過ぎた」と言われる。2人は見張りを始末して屋敷に潜入し、一味と銃撃戦になった。
ルカは逃げ出しており、トムは脇腹に怪我を負ったメアリーを連れて屋敷を後にした。メアリーは心配するトムを冷たく拒絶し、「もう私を守ってくれなくていい」と言って立ち去った。トムはベニーの元へ戻り、「メアリーは抜けさせない。ガキのことで話がある」と告げる。メアリーは帰宅して傷を手当てし、体を休める。ダニーが「治ったら出発しよう。遠い所へ逃げるんでしょ」と話すと、彼女は「ベニーからは逃げ出せない」と弱音を吐いた。ダニーは眠り込んだメアリーを残し、ベニーのアジトへ赴く。オフィスに通された彼は、メアリーを解放するようベニーに頼む。「お前には関係ないことだ。首を突っ込むな」とベニーが言うと、ダニーは拳銃を構えた。するとベニーは軽く笑って「お前は間違ってる」と言い、父親を殺したのがメアリーだと教える…。監督はババク・ナジャフィー、原案はジョン・スチュアート・ニューマン&クリスチャン・スウィーガル、脚本はジョン・スチュアート・ニューマン&クリスチャン・スウィーガル&スティーヴ・アンティン、製作はポール・シフ&タイ・ダンカン、製作総指揮はグレン・S・ゲイナー&タラジ・P・ヘンソン、共同製作はアンドレア・アジェミアン、製作協力はマーク・アンソニー・リトル、撮影はダン・ローストセン、美術はカール・スプラグ、編集はエヴァン・シフ、衣装はデボラ・ニューホール、音楽はフィル・アイズラー、音楽監修はピラー・マッカリー。
主演はタラジ・P・ヘンソン、共演はダニー・グローヴァー、ビリー・ブラウン、ジャヒ・ディアロ・ウィンストン、ニール・マクドノー、マーガレット・エイヴリー、ザンダー・バークレイ、ラデ・シェルベッジア、エリック・ラレイ・ハーヴェイ、アドブエレ・エビアマ、オーウェン・バーク、ボー・クリアリー、テレーズ・プラーン、ジェームズ・ミロード、アレックス・ポーテンコ、ジーン・ラヴィン、アイロン・アームストロング、ホセ・ゴンザルヴェス、ケヴィン・オピーターソン、ウラジミール・オルロフ、アルジャリール・マギー他。
『エンド・オブ・キングダム』のババク・ナジャフィーが監督を務めた作品。
脚本はTVドラマ『デイズ・オブ・アワ・ライブス』のジョン・スチュアート・ニューマン、これが初長編のクリスチャン・スウィーガル、『バーレスク』のスティーヴ・アンティンによる共同。
メアリーをタラジ・P・ヘンソン、ベニーをダニー・グローヴァー、トムをビリー・ブラウン、ダニーをジャヒ・ディアロ・ウィンストン、ウォルターをニール・マクドノー、ミーナをマーガレット・エイヴリー、アンクルをザンダー・バークレイ、ルカをラデ・シェルベッジア、レジーをエリック・ラレイ・ハーヴェイが演じている。クールに決めた主人公、車と銃、ドラッグと犯罪組織、都会的な雰囲気を醸し出すソウル・ミュージック。
オープニング・クレジットの映像表現からして、かつてのブラックスプロイテーション映画を意識して作られているんだろう。
当時のブラックスプロイテーション映画は(っていうか白人映画でも同様だったけど)、主人公は男性ってのが基本だった。しかし、『コフィー』という作品でパム・グリアが主人公を演じ、注目を浴びた。
たぶん本作品は、『コフィー』を意識している部分が大きいと思われる。ちなみに使われている音楽は、まずタイトルからして分かるかもしれないが『Proud Mary』。これは絶対に外せない。っていうか間違いなく、そこからタイトルを考えているはずだし。
もちろん、ここはCreedence Clearwater Revivalのオリジナル版じゃなく、Tina Turnerのカヴァー版だ。
他には、The Temptationsの『Papa Was a Rollin' Anthony Hamiltonの『Comin' from Where I'm From』など。時代の統一感は無いが、黒人のソウル・ミュージックを使っている。
ただ、それが効果的に響いているかというと、これが微妙なんだよね。
終盤、メアリーがダニーを拉致した一味の元へ乗り込んで戦うシーンに『Proud Mary』が流れるんだけど、ものすごく軽快で明るいのよ。でも、そこって緊迫したシリアスなシーンのはずなので、まるで合っていないんだよね。どうせなら、もっと徹底してヒロインをクールに造形しちゃった方が良かったんじゃないか。
メアリーはアンクルと手下たちを射殺する時、早くも焦りの色を見せているんだよね。でも、そこは「相手の動きを全て察知し、余裕の態度で表情一つ崩さずに片付ける」ってな感じで演出した方が良かったんじゃないかと。殺した後も激しく動揺しているけど、ここも「泰然としている」という形でいいんじゃないかと。
もちろん、すぐに焦りを見せた方が、感情は伝わりやすいよ。でも、この手の映画の場合、それが必ずしもプラスになるとは限らない。
ハードボイルドとして、感情を抑制した方が味わいが出ることもあるのよね。アンクルと手下たちを殺したメアリーは、慌てた様子でオフィスから逃げ出す。その後もずっと、彼女は「自分の犯行だとバレないか」とオドオドしている。
つまり彼女がクールに決めていられたのは最初の短い時間帯だけで、映画の大半はビクビクしているのだ。
ヒロインを早くから窮地に追い込むことで、緊張感のある雰囲気を醸し出そうとしているんだろう。
でも、そういうのってブラックスプロイテーションとは全く別のベクトルに思えるんだよね。考えてみれば、『コフィー』もヒロインが簡単に焦ったり慌てたりしていたんだよね。なので、ひょっとすると、そういうトコまで模倣したのかねえ。
ただ、そこは『コフィー』じゃなくて、『グロリア』(もちろんジーナ・ローランズの方ね)を真似ても良かったんじゃないかと。
っていうかガキが生意気な辺りとか、何となく『グロリア』に似ていると感じる部分もあるんだよね。
ただ、『コフィー』や『グロリア』に比べると、やはりヒロインの魅力ってのが大きく違うんだよなあ。まず、冒頭シーンからして引っ掛かる。
「標的に子供がいると知ってショックを受ける殺し屋」というトコから入るのは、ものすごくベタではあるが、それは別にいいとしよう。ただ、「なぜ事前に下調べをしていないのか」と言いたくなる。
殺しの仕事を受けたら、確実に遂行するために準備をするのが普通でしょ。その準備に「相手の家庭環境を調べる」ってのが含まれないにしても、部屋へ乗り込むのなら「その時、部屋に標的しかいないか否か」ってのは絶対に調べておく必要があることでしょ。
そういう準備を怠っていることが明白なので、「ミラーに子供がいると知ってショック」という導入部がバカバカしく思えてしまう。「殺し屋が主人公。標的に子供がいたのでショックを受けて」とか、「殺した相手に子供がいたので真実を隠して面倒を見る」といった話は、「どこかで見たような」と感じる人も少なくないだろう。
それは勘違いや思い込みではなく、実際に映画の世界では良く使われてきたアイデアだ。なので、そこに新鮮味は無い。
そして、使い古されたアイデアに変化を加えたり、今までに無かった切り口から描いたりするようなこともしていない。
良くある話を、良くある話のままで、何の捻りも無く使っている。ストーリーの部分が既視感たっぷりでも、まだ勝ち目は充分にある。映画ってのはストーリーが全てじゃなくて、映像という力を持っている。
しかし映像の方面でも、そんなに面白味は無い。
好意的に言うと「手堅くまとめている」ってことになるのかもしれないけど、この映画で必要なのは交通法規を生真面目に遵守する安全運転じゃないでしょ。やり過ぎじゃないかと思うぐらい、ケレン味をアピールしてもいいんじゃないかと。
まあ過剰かどうかはともかくとして、ケレン味ってのが皆無なのよね。あと、大きな弱点として、「子役が可愛くない」ってことがあるんだよね。それは見た目の問題じゃなくて、キャラクターとして可愛げが無いのよ。
そりゃあダニーの置かれている環境を考えれば、やたらと反抗的だったり生意気だったするのは分からんでもないのよ。だから、それでも同情心が全てを凌駕すれば何の問題も無いんだろうけど、「事情は分かるけど、なんか不快だな」という印象なのよね。
そのせいで「こいつを命懸けで守ってやりたい」という感情が、なかなか湧いて来ないんだよね。
メアリーは罪悪感があるから、ダニーを必死で守ろうとするだろう。でも、そういう彼女に、全面的に同調できないという問題があるのよ。売人の使い走りという設定なので、ある程度の年齢にしておく必要はある。
だけど、そういう理由を除外するなら、もっと年齢を低く設定した方が何かと都合がいい。その方が、同情心を誘ったり「可愛い子供」と思わせたりするには絶対にプラスだ。
じゃあ売人の使い走りという設定が必要不可欠なのかと考えた時、そうでもないでしょ。
「メアリーがダニーを守るためにアンクルを始末する」という手順は絶対に踏まなきゃいけないけど、それはダニーがアンクルの使い走りじゃなくても消化できるでしょ。メアリーは自分の犯行を隠蔽するため、「アンクルを殺したのはウォルターだ」と主張する。そして彼女はベニーを丸め込み、ウォルターを射殺する。
でも、ウォルターが「無実の罪を着せても構わないようなクソ野郎」ってことは全く描写されていないので、メアリーが酷い女にしか思えないぞ。ルカがウォルターのことを変態野郎と称していたけど、その程度の情報しか無いからね。
それに、仮にウォルターがクソ野郎だったとしても、アンクル殺しについては無実なんだから、やっぱりメアリーの行動には問題があるぞ。
まだ「ベニーやトムがウォルターを犯人だと決め付けた」ってことならともかく、メアリーが騙して罪を着せているからね。終盤、ダニーはメアリーが父親を殺した犯人だと知るが、それでも彼女を拒否することは無い。
「最終的に受け入れる」ってことじゃなく、1秒たりとも彼女に怒りをぶつけたり復讐心を抱いたりすることが無い。問い掛けられたメアリーが涙で「アンタが気になってたから捜した」などと語り掛けると「母親のような存在」として受け入れる。
でも、彼は父親を「バカ親父」とは言ってるけど、虐待されていたとか、そういう描写や言及があるわけではない。
なので、「メアリーとダニーの疑似親子関係に破綻の危機が一度も訪れない」ってのは、色んな手順を飛ばしている雑な展開にしか思えないぞ。(観賞日:2020年4月1日)