『プロムナイトII』:1987、カナダ

1957年。ハミルトン高校に通うメリー・ルーは教会へ行き、懺悔室の神父に3ヶ月ぶりの告解をする。彼女は口紅を塗りながら、「私は罪を犯しました。両親の言い付けに従わず、多くの男子生徒と関係を持ちました」と話す。クーパーが「大変な罪だ。悔い改めなさい」と諭すと、彼女は「まだあります。それは楽しんだこと」と笑みを浮かべ、自分の電話番号を懺悔室の壁に書いた。メリー・ルーはプロムのパーティーでクラスメイトのビル・ノーダムと踊り、指輪をプレゼントされた。しかしビルが飲み物を取りに行っている間に、メリー・ルーはバディー・クーパーと会場の裏へ行ってキスを交わした。メリー・ルーがビルをダンスの相手に選んだのは、父親が金持ちだからという理由だった。
2人が抱き合う様子を見たビルは激しい怒りを燃やし、メリー・ルーはクーパーを連れてパーティー会場に戻った。ビルが現れて「来い」と言うと、メリー・ルーは「アンタは邪魔よ」と拒否した。ビルがトイレで鏡を見つめている時、個室ではクラスメイトの男子生徒が悪戯のために爆竹を用意していた。しかし教師が来たので、男子生徒は爆竹をゴミ箱に捨ててトイレを去った。ビルは爆竹を拾い、ステージの上にある通路に行く。クイーンに選ばれたメリー・ルーがステージに呼ばれると、ビルは爆竹に火を付けて落とした。するとメリー・ルーのドレスに火が付き、たちまち燃え広がった。慌てたビルは「誰か助けろ」と言うが、教師も生徒も立ち尽くすだけだった。
現在。ハミルトン高校に通う3年生のヴィッキー・カーペンターは、今年のクイーン候補に挙げられている。彼女は最後のプロムに備え、新しいドレスを購入しようと考えていた。父のウォルトはドレスの購入費を出そうとするが、母のヴァージニアは買うことを認めなかった。敬虔なクリスチャンであるヴァージニアは、娘とクレッグの交際も快く思っていなかった。クレッグがヴィッキーを迎えに来ると、彼女は「バイク乗りの不良と」と不快感を漏らした。クレッグはヴィッキーに、十字架のネックレスをプレゼントした。
その日、科学オタクのジョシュは授業で野菜を使ったラジオを製作した。彼は得意げに「この瞬間が科学史に残る」と言うが、スイッチを入れると装置はショートした。モニカはジョシュから好意を寄せられているが、まだプロムのパートナーは決めていなかった。クレッグの父親はビルで、現在はハミルトン高校の校長を務めていた。クレッグは卒業後の進路について、父に「大学は1年遅れて行く。働きたい」と告げた。
ヴィッキーはパーティー用倉庫に忍び込み、プロムで着るドレスを物色した。大きなトランクを見つけた彼女が開けると、1957年のプロムで使われたクイーン用の衣装が入っていた。ヴィッキーはプロムで使えると考え、ローブと王冠を持ち去った。トランクが開けられた瞬間、校長室に飾ってあった写真パネルのガラスにヒビが入った。それは1957年のプロムで撮影された写真で、気になったビルは車で教会を訪れた。しかし彼は中に入らず、そのまま走り去った。その様子を見た神父は、成長したクーパーだった。
ヴィッキーが美術室へガウンを持って行くと、モニカは「事件から使っていないのよ」と使うことに賛同しなかった。ヴィッキーはジェスがロッカーで泣いているのを見つけ、心配して声を掛けた。ジェスは交際していた相手に電話を掛けても出てもらえないこと、妊娠していることをヴィッキーに打ち明けた。夜、1人で美術室に行ったジェスはローブを着用し、王冠の宝石を外した。すると怪奇現象が起き、ジェスは宙吊りになって死亡した。ジェスは窓ガラスを突き破って校舎の外に放り出され、ローブと宝石は元の場所に戻った。クーパーはメリー・ルーの写真を飾り、彼女が死んだ時のことを思い出していた。彼が祈っていると、メリー・ルーの写真が台から落ちた。
翌朝、ジェスの死は自殺として処理された。ヴィッキーは昨夜の出来事を知らされた後、メリー・ルーの墓へ出向いた。プロムが予定通りに開催されることに対して、ヴィッキーはモニカに「生徒が死んだのに中止しないなんて変だわ」と述べた。クイーンの座を狙うケリーがジェスを侮辱するような言葉を吐いたので、ヴィッキーは憤慨した。食堂で昼食を取ろうとしたヴィッキーは、恐ろしい幻覚に見舞われて逃げ出した。水を飲んで落ち着こうとした彼女は、また幻覚を見た。帰宅したヴィッキーは、大学へ進まず1年間は働いて過ごす考えを両親に明かした。ヴァージニアが「この家では認めない」と言うので、彼女は激しく反発した。ヴィッキーは自室で鏡に向かい、口紅を塗った。微笑を浮かべたヴィッキーは我に返り、慌てて口紅を拭き取った。
翌日、モニカはジョシュから改めてプロムに誘われ、自分からキスをした。体育の授業中、ヴィッキーはケリーの指示を受けた女子生徒からバレーボールを顔面にぶつけられて倒れ込んだ。意識を失った彼女は、自分がメリー・ルーと呼ばれて大勢の人々に追い込まれる悪夢を見た。「私はメリー・ルーじゃない」と叫んで目を覚ますヴィッキーの姿を見たビルはパーティー用倉庫へ行き、トランクを確かめて1957年の出来事を思い返した。
教会へ出掛けたヴィッキーは懺悔室に入り、メリー・ルーの幻覚を見たことをクーパーに話した。クーパーは激しく動揺しながら、「自分を見失ってはいけない。心から悔い改めなさい」と述べた。ヴィッキーは自室で怪奇現象に襲われ、夜遅くにメリー・ルーの墓を訪れた。そこへクーパーが現れると、彼女は「メリー・ルーにまつわる何かが起きてるの」と訴えた。教会に戻ったクーパーは祈りを捧げ、悪魔を追い払う儀式を執り行った。彼はメリー・ルーの墓前へ行き、聖書を読もうとする。しかし急に手が震え始め、落とした聖書が自然発火して消滅した。クーパーはビルの元へ行き、メリー・ルーが悪霊となって戻って来たことを話す。ビルは相手にしなかったが、クーパーは身を守るための十字架を渡した。
ヴィッキーは精神的に不安定になり、クレッグの前で不安を吐露した。ケリーはジョシュにプロムの投票結果を細工するよう頼み、買収しようとする。ジョシュが拒否したので、彼女は腹を立てて去った。ヴィッキーはケリーに挑発され、その顔がメリー・ルーに見えたので衝動的に平手打ちを浴びせた居残りを命じられたヴィッキーは、黒板に浮かび上がる「ヘルブ・ミー」の逆さ文字に気付いた。黒板に歩み寄ったヴィッキーは、黒い腕に捕まった。黒板の中に吸い込まれた彼女は、不気味な笑みを浮かべた。メリー・ルーはヴィッキーに憑依して教会へ行き、クーパーを殺害した。
翌日、ヴィッキーは自分の体を撫で回した科学教師のクレイヴンに対し、特殊能力を使ってガスバーナーの炎を噴射した。ヴィッキーはシャワー室で自分を心配したモニカに、辛辣な態度を取った。ヴィッキーはモニカを誘惑する態度を取り、怯えて逃げ出す彼女を始末した。彼女はクレッグをセックスに誘い、早くするよう要求した。クレッグが困惑してた「ヴィッキー?」と呼び掛けると、彼女は「違うよ」と冷たく告げる。ヴィッキーはクレッグの首を押さえ付け、壁に叩き付けて失神させた。彼女は校長室へ行き、ビルを誘惑した。メリー・ルーだと気付いたビルに、彼女は「主役は私よ。覚えておいて」と言い放った…。

監督はブルース・ピットマン、脚本はロン・オリヴァー、製作はピーター・シンプソン、製作総指揮はピーター・シンプソン&ピーター・ヘイリー、共同製作はレイ・セイジャー、製作協力はイラナ・フランク、撮影はジョン・ヘルツォーク、追加撮影はブレントン・スペンサー、美術はサンディー・キバルタス、編集はニック・ロトゥンド、衣装はマヤ・マニ、音楽はポール・ザザ。
出演はマイケル・アイアンサイド、ウェンディー・ライオン、ジャスティン・ルイス、リチャード・モネット、リサ・シュレイジ、テリー・ホークス、ビヴァリー・ヘンドリー、ブロック・シンプソン、ベス・ゴンデク、ウェンデル・スミス、ジュディー・マーベイ、スティーヴ・アトキンソン、ロバート・ルイス、ロレッタ・ベイリー、ハワード・クルシュケ、デニス・ロビンソン、マイケル・エヴァンス、ジョン・ファーガソン、ラリー・A・マッサー、グレン・グレツキー、ヴィンセント・ゲイル、カーク・グレイソン、ポール・マクガフィー、デヴィッド・ロバートソン他。


1980年の映画『プロムナイト』の続編。ただし登場人物は異なるし、ストーリーにも繋がりは全く無い。
監督のブルース・ピットマンは、これが長編3作目。
脚本のロン・オリヴァーは、これがデビュー作。
ビルをマイケル・アイアンサイド、ヴィッキーをウェンディー・ライオン、クレッグをジャスティン・ルイス、クーパーをリチャード・モネット、メリー・ルーをリサ・シュレイジ、ケリーをテリー・ホークス、モニカをビヴァリー・ヘンドリー、ジョシュをブロック・シンプソン、ジェスをベス・ゴンデクが演じている。

冒頭シーンから、大いに引っ掛かる。
そもそもメリー・ルーが大勢の男子と関係を持っているアバズレであるならば、それは同級生のビルだって知っているはずだ。メリー・ルーがアバズレであることを隠しているならともかく、そういうのを全く気にしていない様子だし。
なので、そんな女にビルが本気で惚れてプロムの相手に誘っている時点で、設定として無理を感じる。
なんか導入部から粗さが目立って、すんなり物語に入り込めないんだよね。

あと、メリー・ルーが「金持ちの息子だから」ってことでビルをプロムの相手に選んだのなら、他の男との関係がバレるのは出来る限り避けたいはずで。
ところがクーパーとの関係がバレても彼女は全く悪びれないどころか、引き離そうとするビルを「アンタは邪魔よ」と邪険に突き放すんだよね。
それは「バレたからビルを利用できないと考えて開き直った」ってことなのか。
ただ、そもそも「金持ちの息子だから」ってことで男を利用しようと目論むような奴が、アバズレであることを全く隠さずに色んな男と関係を持っているのは、キャラとして一貫性を欠いているように思えるんだよね。

ヴィッキーが母親にドレスの購入を認めてもらえないのでパーティー用倉庫を物色するってのは、「他の選択肢があるでしょ」と言いたくなる。
まずは「母に内緒で父に金を出してもらおうとする」ってのが、真っ先に浮かぶ方法だ。
また、既に持っている緑のドレスを手直しして使うことを考えてもいいだろう。あるいは、片っ端から知り合いに当たってみるのも1つの手だろう。
他の選択肢も全て塞がれたのなら、「仕方なく昔の衣装を物色する」ってのも分からんではないよ。でも、いきなり「古い衣装を物色」ってのは、大いに違和感がある。
だって、そこにあるのは全て古い衣装だからね。

しかも、じゃあヴィッキーはドレスを拝借するのかと思ったら、なぜかローブと王冠を持ち去るのよね。そんなの、どう使うつもりなのか。
で、それを美術室に持ち込むと、ジェスがローブを着用したり王冠の宝石を外したりするんだけど、どういう心情なのかサッパリだよ。彼女が密かにクイーンに憧れていたとか、ヴィッキーに嫉妬していたとか、そういうことは全く無いんだし。
宝石を外す行動に関しては、もはや強引な理由を思い付くことさえ無理だわ。
手で外そうとしたら外れないからって、わざわざ道具を使ってまで外すんだぜ。まるで心境が分からん。

ビルがハミルトン高校の校長になっていることが明らかになった時、「有り得ないだろ」と言いたくなる。あんな事件を起こしておいて、罪に問われることも無く済んだのかよ。どう考えたって警察は動くはずだし、そして動けば絶対にビルの犯行はバレるだろ。
ビルは金持ちの息子という設定だから、父親が裏から手を回して逮捕を免れたのか。だったら、そういうことに言及すべきだし。
あと、罪に問われずに済んだとしても、なんで母校の校長に就任しているんだよ。あんな事件を起こしたんだから、もう学校には関わりたくないと考える方が納得できるぞ。それと、せめてメリー・ルーの当時の衣装は処分しようとするだろ。なんで大事に保管しているんだよ。
それと、幾ら古い出来事でも、当時は大きく報道されたはずだし、学校の逸話として今も残っているはず。それなのに、現在の生徒は誰もその事件について知らない様子なんだよね。それも変だろ。

ヴィッキーはジェスの死を知らされた後、メリー・ルーの墓へ行く。でも、どういう理由で墓地を訪れたのかはサッパリ分からない。その時点では、まだ彼女はメリー・ルーのことなんて知らないはずなんだし。
メリー・ルーの悪霊に憑依されていたってことなのか。でも憑依されていたとしても、墓地へ行く必要は無いよな。
その後、ヴィッキーが幻覚を見るシーンや怪奇現象に襲われるが何度も出て来るが、これも整合性が取れていないんだよね。
メリー・ルーが憑依しているのなら、ヴィッキーが幻覚を見たり怪奇現象に見舞われたりするはずがない。一方、メリー・ルーの悪霊がヴィッキーを怖がらせているのだとしたら、「ヴィッキーが口紅を塗って我に返る」という行動は辻褄が合わない。
それに関しては、メリー・ルーが憑依していると解釈しないと変だ。

あくまでも推測に過ぎないが、たぶん場面によって「メリー・ルーがヴィッキーを怖がらせる」「メリー・ルーがヴィッキーに憑依する」という状況をコロコロと入れ替えているんじゃないかと思うんだよね。
そのせいで一貫性が無くなり、恐怖よりも違和感が圧倒的に強くなっちゃってるのよ。
っていうかさ、悪霊として復活したメリー・ルーの目的が、まるで見えて来ないんだよね。
ヴィッキーを怖がらせて、それで彼女は何を得られるのか。

終盤に入るとメリー・ルーは完全にヴィッキーの体と意識を乗っ取っているけど、それが狙いなら最初からそのために行動すべきだろう。
で、ヴィッキーの体を乗っ取る目的は復讐のためかと思ったら、プロムでクイーンを狙いに行くんだよね。
そうなると、メリー・ルーがプロムの前にクーパーを殺すのは要らない行動になっちゃうだろ。
っていうか、復活した目的が「ヴィッキーの体を借りてプロムクイーンになる」ってのは、悪霊として陳腐にしか感じないわ。

クーパーはビルの犯行を知りながらも彼を憎まず、「自分も同罪だ」と罪悪感を抱いている。
でも、それは変だろ。どう見たって、メリー・ルーはビルの身勝手な怒りと愚かしい行動のせいで死んだのだ。
もちろんビルの前で取ったクーパーの態度は不愉快だったが、「だから自分もメリー・ルーを殺したようなモノ」という考えに至るのは無理がある。
「メリー・ルーの悪霊が俺たちを殺す」と考えているのも、やっぱり変だし。メリー・ルーが恨みを抱いて復讐を目論むとしたら、その標的はビルだけだろ。

でも実際にメリー・ルーはクーパーを殺すので、「なんでだよ」と言いたくなる。
百歩譲って自分を助けなかったクーパーにも恨みを抱くとして、それでも真っ先に殺そうとするのはビルじゃないと変でしょ。
あとさ、クーパーがビルの犯行を知っているのなら、やっぱりビルが罪に問われずに済んでいるのは変だろ。クーパーは知っていながら黙っていたのかよ。
1957年の事件が「ビルとクーパーしか知らない」という設定になっているのは、あまりにも強引すぎるわ。

ヴィッキーを乗っ取ったメリー・ルーはクーパーを殺した後、モニカも始末する。でも、モニカを殺す理由はサッパリ分からない。プロムのライバルってわけでもないし、自分の目的を邪魔する存在でもないし。
その後もメリー・ルーが殺人を繰り返すのかと思いきや、今度はクレッグ、ビル、ウォルトを立て続けに誘惑する。この内、クレッグだけは壁に叩き付けているが、これまた狙いが分からない。だからと言って殺しているわけではないし、意味不明で中途半端なだけの行動だ。
で、そのくせビルは殺さないんだよね。クーパーは簡単に殺しておいて、なんでビルは生かすんだよ。行動理念がデタラメにしか見えないぞ。
で、最後はヴィッキーの腹からエイリアンのように這い出たメリー・ルー(悪霊ではなく実体)がクレッグを襲うんだけど、色々と支離滅裂だわ。

(観賞日:2021年12月26日)

 

*ポンコツ映画愛護協会