『プリティ・プリンセス2/ロイヤル・ウェディング』:2004、アメリカ

ジェノヴィア国の王女であるミア・サーモポリスは、プリンストン大学を卒業した。21歳を直前に控えた彼女は、保安局長のジョーと共に飛行機でジェノヴィアへ向かう。祖母であるクラリスが女王を退位し、その座を継承することになったからだ。ジェノヴィアの法律では、21歳を迎えると王位継承権が生じるのだ。宮殿ではミアの誕生日パーティーが開かれ、彼女は国のしきたりに応じて参加した独身男性全員と踊る。友人のアガサと再会したミアは、ニコラスという青年の靴を誤って踏んでしまう。謝罪するミアに、ニコラスは笑顔で接する。彼もダンスの相手の1人だった。他にもミアは、おませな少年のジャックなど複数の男性と踊った。
翌日、宮殿を探索したミアは、隠し部屋を発見した。部屋の小窓からは、クラリスが出席している議会の様子が見えた。モターズ首相が議事を進行すると、メイブリー子爵は甥のデヴロー卿にも王位継承権があると名乗り出た。パリモア卿が「法律では、独身女性が王位に就くことは出来ない」と言うので、モターズは結婚までの猶予期間をミアに与えるべきだと提案した。彼は1年の猶予を考えていたが、パリモアの主張が通って30日に決まった。ミアは憤りを感じるが、「絶対に王位を継承する」と心を燃やした。
ミアは王位を横取りしようと企むメイブリーとデヴローに怒りを覚えるが、クラリスはあえて2人を宮殿へ招待することにした。デヴローがニコラスだったので、ミアは驚いた。ニコラスが挨拶すると、ミアは思い切り足を踏み付けた。クラリスが親友のミリーをジェノヴィアへ呼び寄せたので、ミアは久々の再会を喜んだ。クラリスの秘書シャーロットは、ミアに結婚相手の候補者である男性の情報を見せた。その結果、ミアもクラリスも共に気に入ったのは、アンドリュー・ジャコビー公爵だった。
ミアはリポーターのエルシー・ペンワージーたちが取材する中で、アンドリューと公開デートを行った。ミアはアンドリューから曾祖母の婚約指輪を送られ、わずか1週間で彼との婚約を決めた。メイブリーはニコラスに、ミアを誘惑して結婚を妨害するよう指示した。王位を継承することが亡き父の悲願だと聞かされているニコラスは、戸惑いながらも承諾した。ミアに声を掛けたニコラスは、彼女に嫌味を浴びせて言い争いになった。ミアは女中たちから逃げるために彼を連れて物置部屋へ入り、なおも言い争いを続けた。しかし物置部屋でミアがニコラスと2人きりになったことを知ったジョーは心配になり、クラリスに報告した。
ミアはクイーンとしての振る舞いを学び、クラリスの公務を見学する。クラリスは宮殿で数名の市民と会い、その陳情に耳を傾けた。彼女はミアに、「これがジェノヴィアのしきたりなの。全員に対して正直で公平に接しなさい。力になれなくても、気に掛けていると示すことが重要よ」と教えた。ミアは閲兵式に参加するが、メイブリーが蛇のオモチャを使って彼女の乗る馬を驚かせた。恥をかいたミアは、納屋で涙を流した。ジョーはメイブリーの策略だと見抜き、「王妃と王女に何かあれば、ただでは済まさない」と脅しを掛けた。
アンドリューと共にティー・パーティーに参加したミアは、ニコラスがエリッサという女性と一緒にいるのを見て動揺を隠せなかった。2人きりになった時、ミアは彼と激しい言い争いになる。しかしニコラスから強引にキスされると、それを受け入れてしまう自分がいた。取り乱した彼女は、ニコラスと共に噴水へ落下してしまった。ミアはクラリスから、女王にふさわしい行動を取るよう説教された。
独立記念日のパレードに参加したミアは、養護施設で暮らす幼女のキャロリーヌが年上の男の子たちにイジメられている現場を目撃した。馬車を停めさせたミアはキャロリーヌに優しく声を掛け、彼女と仲間たちにティアラを与えてパレードに参加させた。ミアはクラリスの許可を取り付け、議員や政府高官が冬の別荘として使っている城を子供センターとして使用することを決定した。特権を奪われる議員たちからは反発の声も上がるが、ミアは有無を言わせなかった。
ミアは世界中の王女たちを招待し、独身最後のパジャマ・パーティーを開いた。クラリスはリクエストに応えて、歌を披露した。一方、ニコラスはメイブリーに「彼女なら国を任せてもいいんじゃないかな」と告げる。すぐにメイブリーは、「お前、惚れたな」と見抜くが、「お前の幸せが一番だ。彼女と会って、降参したと行って来い」と応援する素振りを示した。しかし彼はニコラスに内緒で、エルシーに電話を掛けた。ミアはニコラスに誘われて宮殿を抜け出し、彼と密会して楽しい時間を過ごす。だが、エルシーの派遣したカメラマンが、その様子を盗撮していた。それに気付いたミアは、ニコラスに裏切られたと思い込んでショックを受ける…。

監督はゲイリー・マーシャル、キャラクター創作はメグ・キャボット、原案はジーナ・ウェンドコス&ションダ・ライムズ、脚本はションダ・ライムズ、製作はデブラ・マーティン・チェイス&ホイットニー・ヒューストン&マリオ・イスコヴィッチ、共同製作はデヴィッド・シャーフ、製作総指揮はエレン・H・シュワルツ、撮影はチャールズ・ミンスキー、編集はブルース・グリーン、美術はアルバート・ブレナー、衣装はゲイリー・ジョーンズ、音楽はジョン・デブニー、音楽監修はドーン・ソーラー。
出演はアン・ハサウェイ、ジュリー・アンドリュース、ヘクター・エリゾンド、ヘザー・マタラッツォ、ジョン・リス=デイヴィス、クリス・パイン、カラム・ブルー、キャスリーン・マーシャル、レイヴン、キャロライン・グッドオール、ラリー・ミラー、トム・ポストン、ジョエル・マクラリー、キム・トムソン、ショーン・オブライアン、マシュー・ウォーカー、スペンサー・ブレスリン、アビゲイル・ブレスリン、トム・ハインズ、ジェーン・モリス、シア・カリー、アンナ・ホワイト、メレディス・パターソン、キャシー・ローウェル、エリック・ブラッグ、スコット・マーシャル、ベス・アン・ギャリソン、サンドラ・テイラー他。


2001年の映画『プリティ・プリンセス』の続編。
監督は前作に引き続いて『プリティ・ブライド』『カーラの結婚宣言』のゲイリー・マーシャル。
前作の脚本を担当したジーナ・ウェンドコスは、今回は原案のみ。脚本は『ノット・ア・ガール』のションダ・ライムズが担当。
ミア役のアン・ハサウェイ、クラリス役のジュリー・アンドリュース、ジョー役のヘクター・エリゾンド、リリー役のヘザー・マタラッツォ、シャーロット役のキャスリーン・マーシャル、ミアの母ヘレン役のキャロライン・グッドオール、美容師パオロ役のラリー・ミラー(前作はアンクレジットでの出演)などが前作から続投している。
メイブリーをジョン・リス=デイヴィス、ニコラスをクリス・パイン、アンドリューをカラム・ブルー、アサナをレイヴン、パオロをラリー・ミラー、パリモアをトム・ポストン、モターズをジョエル・マクラリー、エルシーをキム・トムソンが演じている。他に、近衛隊長のキップ・ケリー大尉をマシュー・ウォーカー、ジャックをスペンサー・ブレスリン、キャロリーヌをアビゲイル・ブレスリンが演じている。
監督の身内も何人か出演しており、前述のキャスリーンは次女。警備係のシェイズ役は末の息子であるスコット。擁護施設の教師役は長女のローリー。結婚式で指輪を乗せたクッションを運ぶ幼児はスコットの息子のサムだ。

まず驚いたのが、ミアが「今まで恋をしたことが無い」という設定になっていること。
おいおい、前作でマイケルとカップルになったはずじゃなかったのかよ。マイケルの存在が「いい友達」と軽く流されているのは、あまりにも酷いぞ。
そりゃあ、マイケルを演じたロバート・シュワルツマンでは訴求力に欠けると考えて相手役を変更したかったとか(フランシス・フォード・コッポラ監督の甥なんだけどね)、相手役のキャラ設定を一般人ではなく貴族にしたかったとか、色々な事情はあるんだろう。
でも、だからって前作で明らかに「恋する男女」になったはずのキャラクターを友達扱いで済ませてしまうってのは、ミアが嫌な奴に見えちゃうよ。

前作は「普通の女子高生がプリンセスになる」という話で、「ヒロインの戸惑い、反発、順応」「周囲の人々の変化、利用を企む者や妨害する者の出現」「王国サイドのヒロインに対する偏見や拒否反応」「庶民の生活と王室のギャップ」などの要素で作品を構築することが出来た。
しかし今回は最初からミアが王女として登場し、しかも始まってすぐにジェノヴィアへ移動するので、「庶民から王女へ」という転換も、庶民と王室のギャップも使えない。
そこで今回は、「ミアの王位継承と結婚」ということで話を進めて行こうとしている。
だけど、中身がヌルくてスッカスカだ。

オープニングからミアのナレーションが入り、前作でミアに起きた出来事、主要キャストの現在(ヘレンがミアの高校時代の教師だったパトリックと再婚しているとか)、そして今回の舞台設定を軽く説明する。この間、ミアの顔を見せようとしない(後ろ姿や髪の毛で顔が隠れる横顔だけ)。
そして誕生日パーティーに登場した時に初めて顔を見せるのだが、その演出意図が全く分からない。
そのシーンまでミアの顔を隠しても、何の効果も無いと思うんだけど。
むしろ、「それまでは普通の女子大生の雰囲気だったけど、メイクと衣装で見事にプリンセスらしくなりました」という変身を見せた方が、まだ何かしらの効果は得られるんじゃないか。で、「だけど中身は何も変わっていない」という見せ方をするとかさ。

誕生日パーティーでミアはアガサを見つけて「久しぶり」と大喜びするのだが、こっちからすると「誰だよ、こいつ」という印象だ。
実際、前作のキャストではなくて、この2作目が初登場なのだ。そのパーティーでミアの友人として登場する他の面々も、やはり初登場だ。
そりゃあ、ジェノヴィアで物語を進めて行く以上、前作で仲の良かった「庶民としての友人たち」を登場させることが難しいのは分かる。
だけど、新顔ばかりなのに「みんな以前からの親友」として示されると、戸惑いがあることは否めない。

しかし、もっと問題なのは、アガサもそうだが、場面ごとに異なる脇役キャラを登場させ、いちいちスポットを当てるという作業をやっていることだ。
そのために本作品は出演者がものすごく多いのだが、それは作品を散漫な印象にしている原因の一つだ。
そりゃあ、マセガキのジャックとか、指示があるまでお辞儀を続ける女中のブリジッテ&ブリジッタとか、警備係を志望して張り切っているライオネルとか、個性的で面白い脇役キャラもいる。
でも、そっちに気を取られ過ぎていると感じるのよ。

メインの面々や物語を充実させた上で脇役キャラの個性も出すことが出来ていれば問題は無いけど、メインの部分が痩せているし、魅力的じゃないんだよな。
むしろ、メインの恋愛劇よりブリギッテ&ブリギッタが出ているシーンの方が面白いという始末。
だったら、スポットを当てる脇役キャラを絞り込むとか、そういうことが必要だったんじゃないかと。
まだブリギッテ&ブリギッタは全編を通じて何度か登場するだけマシで、そのシーンにしか登場しないのに、不必要にフィーチャーしているキャラもいるんだよな。

議会でパリモアが「30日間で結婚できなければミアに王位継承権は与えられない」と主張すると、それが簡単に通ってしまうのは、かなり強引な展開だと感じる。
だったら、ミアが議会から快く思われていないことを示しておくべきだ。
っていうか、議会を悪役にする意識は乏しくて、メイブリーだけを悪役に据えているようなので、それなら「メイブリーが議会を掌握し、30日間の猶予という提案を通させる」とか、「メイブリーが法律を狡猾に利用し、30日間の猶予という提案を通させる」とか、そういう形にでもすれば良かったのでは。
それと、議会の様子をミアが覗いている意味が全く無いぞ。後から聞かされるという形でも一緒だ。

クラリスから「女王にならないのなら、結婚しなくてもいいのよ」と言われたミアは、亡き父の肖像画から「勇気とは恐れないことではなく、恐れよりも大切なことがあると判断できることだ」という声を聞いて「550年に渡る我がレナルディー家の王たち。私はパパの隣に並びたい。パパの子供として責任が果たせることを証明したい」と力強く宣言する。
5年の間に、王女としての強い自覚を持つようになったのね。それはすげえ違和感があるし、王女としての自覚を強く持っちゃうとキャラとしての面白味も薄れるぞ。
それに、ミアはその宣言の直前には「私は友情で結婚するのではなく、恋をしたいの」と言っているんだよな。
それなのに「恋よりも王位継承のための結婚」と、迷いなく決断しちゃうんだよな。それもどうなのかと。

「ミアは誕生日パーティーでニコラスと会って好感を抱いたのに、王位継承権を横取りしようとする相手と知って腹を立てる」という展開にしたいはずなのに、パーティーのシーンにおけるニコラスの好感度アピールが弱すぎる。
ただ単に「足を踏まれても優しかった」というだけだからなあ。
せめて、もうちょっとミアとニコラスの時間を取ってもいいだろう。
なぜかミアは、その程度のことで彼に惹かれたようなことを後から口にしているけど、それだと単なる尻軽にしか思えんぞ。

ミアはアンドリューの写真を見て即座に気に入っているし、婚約指輪を贈られて素直に喜んでいる。だから「そのまま結婚すればいいんじゃねえの」と思ってしまう。
ところが、婚約発表までは嬉しそうだったミアが、お茶会では急に納得していないような表情を見せる。
それは引っ掛かるなあ。
結婚を心から望んでいないのであれば、求婚をOKする時も、婚約発表の時も、「表向きは喜んでいる様子を示すが、実際は迷いや揺らぎがある」ってのを描いておくべきだ。

それと、アンドリューが性格や態度に問題のある男ならともかく、すんげえ好青年なのよね。だから余計に、「彼でいいんじゃねえの」と感じてしまう。少なくとも、ニコラスよりは遥かに結婚相手として上だと思うぞ。
ところがミアは、ニコラスに文句を言いながらも、ずっと彼に惹かれている様子なのだ。
「顔を合わせると口喧嘩ばかりだけど互いに惹かれ合っている」という、ロマコメでは良くあるパターンをやりたいのは分かるんだけど、それがスムーズな描写になっていない。
そこはニコラスの立ち位置が上手くないってのも問題なんだよなあ。
ベタベタだけど、「メイブリーが身内をミアの結婚相手にしようと目論んで彼女に接近させるが、ミアは貴族ではなく庶民階級のニコラスに恋してしまう。しかしジェノヴィアの法律では、結婚相手は貴族でなければならないと定められている」という話にでもした方が良かったんじゃないか。
ニコラスを「王位継承権を争う敵」という役柄にしたことが、物語が上手く転がらない一因になっているような気がする。

ニコラスはメイブリーから「ミアを誘惑しろ」と命じられるのに、彼女と会うと嫌味を言って口喧嘩になる。
それは作戦としては失敗のはずなのに、ニコラスが「失敗した」と悔やむことは無い。その後、ミアを誘惑するための行動は、そんなに多く見られない。
そもそも、ニコラスがミアに接触することが少ない。もっと積極的に彼を使うべきでしょ。
「ミアに詫びを入れて悪化した印象を改善し、彼女に気に入ってもらおうとする。しかし本気で惹かれ始め、罪悪感を抱くようになる」という展開にすべきじゃないのか。
そもそも、「誘惑しろ」と命じられた奴が、なぜ口喧嘩ばかりするんだよ。それはキャラの動かし方が違うんじゃないか。

ニコラスがミアを誘惑する作戦が少ない中で、メイブリーが閲兵式でミアに恥をかかせるというエピソードが用意される。
それなら、もう「メイブリーがミアに妨害作戦を仕掛ける」という部分に重点を置いて、それとは別にニコラスがミアに惹かれる話を進めてもいいんじゃないかと思ったりもする(誘惑しろという命令は出されずに)。
ただ、メイブリーはミアに恥をかかせているけど、それで王位継承が危機に陥るわけでもないので、まるで無意味なんだよな。

ぶっちゃけ、ミアがアンドリューと婚約した時点で、もう積んでいると言っても過言ではない。
そこからメイブリーが出来るのは、その結婚を潰すことしか無い。閲兵式で恥をかかせたところで、結婚が白紙に戻るわけではないのだ。
だから「結婚を阻止するために何をすべきか」ということでメイブリーを動かすべきなんだが、そこのピントがズレている上に、閲兵式以降はメイブリーがミアを妨害するための行動がすっかり無くなってしまう。
ニコラスだけじゃなく、メイブリーの動かし方も不足している。

前述したように、「ミアはニコラスと会う度に文句ばかり言うけど、最初からずっと揺るがずに惹かれている」という形なんだけど、彼のどこに惹かれたのかサッパリ分からん。
最初の印象が良くても、その後で王位継承権を狙う卑劣な奴だと知って激怒したはずだ。
それでも惹かれるほど、ニコラスが魅力的な人物には到底見えない。
こいつが「王位継承権を狙う男」というマイナスを補ったり凌駕したりするほどの、優しさや力強さなどの加点対象となる魅力を発揮しているシーンなんて、まるで見当たらないぞ。

そのように、まるで魅力的には見えないニコラスに惚れて、婚約相手であるアンドリューをないがしろにするミアも、好感度が低くなってしまう。
アンドリューが好青年なだけに、不憫に思えてくる。
あと、ニコラスはいつ頃からミアに本気で惹かれるようになったのか、そこがボンヤリしているんだよなあ。
しかも、誘惑作戦を全く遂行しない内に惹かれているので、そうなるとメイブリーから誘惑するよう命令されたという仕掛けの意味が無くなってしまうし。

ミアの好感度を上げるためなのか、「パレードで見掛けた施設の子供たちを参加させ、城を子供センターとして利用することを決める」という展開がある。
だが、それだけで「ミアが王女としてふさわしい」ということにしてしまうのは、あまりにも安易だ。
パレードで偶然に目を留めた孤児たちに優しく接しているけど、それは「お姫様の気まぐれな優しさ」でしかない。
他にも困っている人々は大勢いるはずで、「数名の孤児を助けたから、ミアは王女としてふさわしい」とは言えないでしょ。

ミアはニコラスとの密会をカメラマンに盗撮され、「彼が自分を罠に掛けた」と思い込んで腹を立てたり嘆いたりする。
だが、もしも本当にニコラスが騙していたとしても、彼を一方的に非難することなど出来ない。
アンドリューという婚約相手がいながら、夜中にこっそり抜け出して他の男と密会するというのは、あまりにも軽率だし、王女にあるまじき行為だ。
そんな行動を取っているミアが批判されるのは、当然と言える。

しかも、ミアはミアは「結婚すべきか、ニコラスへの愛を選ぶべきか」という迷いを示すことはあっても、ニコラスにベタ惚れしていることでアンドリューに対して罪悪感を示すことは全く無いんだよな。
ミアがアンドリューとキスをして「ときめきを感じない」と告げた時に、「実は僕もだ」とアンドリューに言わせることで「彼もミアを心から愛しているわけじゃないから、ミアは悪くない」ってことにしているんだけど、そういう問題じゃねえよ。
相手がどう感じているかという以前に、婚約者がいながら他の男にベタ惚れしていることに対する罪悪感を抱きなさいよ。

一度はアンドリューと話し合って「ニコラスに惹かれているけど、女王になるために結婚しよう」と決意したミアが、結婚式を途中で投げ出してしまうのは、ものすごく無責任で身勝手な女にしか見えない。
それは「式を途中で投げ出した」という行為だけが問題なのではなく、そこまでのミアの行動や考えの数々が、そのことを「無責任で身勝手だ」と感じさせるのだ。
本当なら「そりゃ仕方ないよね」と感じさせ、応援したくならなきゃいけないはずなのに、そういう気持ちが全く沸かない。

そしてミアは、なぜか堂々と「私は良き女王になる自信がある。独身のままで王位を継承する」と宣言してしまう。
しかも、議員の連中はホイホイと賛同し、法案改正の動議が可決されてしまうのだ。
長年に渡る伝統や法律を、ミアの演説だけで簡単に否定してしまうのだ。
いかにもアメリカンな展開だとは思うけど、その安易な解決方法には、まるで賛同できないわ。
むしろ不快感さえ抱いてしまう。

(観賞日:2014年4月9日)

 

*ポンコツ映画愛護協会