『パーフェクト・カップル』:1998、アメリカ

ヘンリー・バートンは、南部の州知事ジャック・スタントンの選挙参謀に誘われていた。ジャックは民主党から大統領予備選挙に立候補したのだ。ジャックが読み書きの出来ない成人の苦労話を聞いて涙を流すのを見たヘンリーは、選挙参謀になることを決めた。
選挙事務所で仕事を始めたヘンリーだが、選挙スタッフのジェニファーやテリーは何の技術も持っておらず、苦労が続く。それでもヘンリーは、選挙コンサルタントのリチャードやデイジー達と共に、勢力的に行動した。ジャックは予備選3週間前の公開討論会で、対立候補のマーティンとニルソンを上手くやり込めた。
そんな中、ヘンリーの知人で黒人擁護新聞の記者マーチが、ジャックがベトナム戦争の徴兵拒否で逮捕されていた過去を突き付けてきた。ヘンリー達は、マスコミに叩かれた場合の対策を練るためにも、ジャックの過去について調査すべきだと考える。ジャックの妻スーザンは、精神疾患で入院していた元スタッフのリビーに調査を依頼した。
リビーはヘンリーに、ジャックが今までに大勢の女性と浮気していることを告げた。彼女の予言した通り、スーザンの美容師キャシミアが、ジャックと愛人関係にあったというネタをタブロイド紙に売った。ジャックはスーザンとテレビに出演して夫婦の絆をアピールするが、キャシミアはジャックとの会話を録音したテープをマスコミに公表する。
ヘンリーは、その会話がジャックの携帯電話を盗聴して編集した物だと気付く。リビーはテープを作ったのが弁護士ランディだと気付き、彼を脅して告白分を書かせた。デイジーはテレビ番組に出演して告白分を読み、キャシミアの不正を暴いた。
予備選は、ハリスとジャックの一騎打ちの様相を呈して来た。そんな中、ヘンリーの元を、ジャックの友人でバーベキューレストランを営むウィリーが訪れる。ウィリーは娘ロレッタが妊娠し、父親がジャックだと言っていることを告げた。
若い黒人娘を妊娠させた疑惑がマスコミに流れ、ジャックの支持率は低下する。そんな中、ハリスが心臓発作で入院し、選挙戦が続けられない状態となる。だが、ハリスの妻から指名されたピッカーが後を引き継ぎ、支持率を確実に上げていく…。

監督&製作はマイク・ニコルズ、原作はアノニマス、脚本はエレイン・メイ、共同製作はミッシェル・インペラート、製作協力はマイケル・ヘイリー、製作総指揮はニール・マクリス&ジョナサン・D・クレイン、撮影はミヒャエル・バルハウス、編集はアーサー・シュミット、美術はボー・ウェルチ、衣装はアン・ロス、共同衣装デザインはゲイリー・ジョーンズ、音楽はライ・クーダー。
出演はジョン・トラヴォルタ、エマ・トンプソン、ビリー・ボブ・ソーントン、キャシー・ベイツ、エイドリアン・レスター、モーラ・ティアニー、ラリー・ハグマン、ポール・ギルフォイル、ダイアン・ラッド、ロブ・ライナー、ロバート・クライン、キャロライン・アーロン、ミケルティ・ウィリアムソン、トニー・シャローブ、レベッカ・ウォーカー、トミー・ホーリス、ブライアン・マーキンソン、ベン・ジョーンズ、J・C・クイン、ネッド・アイゼンバーグ、アリソン・ジャネイ、オニール・コンプトン、チェルシー・ロス、ボニー・バートレット他。


ビル・クリントン大統領夫妻をモデルにしたベストセラー小説『プライマリー☆カラーズ/小説大統領選』を映画化した作品。原作者はアノニマス(作者不明という意味)となっていたが、後にニューズ・ウィークの記者ジョー・クラインだと判明した。
ジャックをジョン・トラヴォルタ、スーザンをエマ・トンプソン、リチャードをビリー・ボブ・ソーントン、リビーをキャシー・ベイツ、ヘンリーをエイドリアン・レスター、デイジーをモーラ・ティアニー、ピッカーをラリー・ハグマンが演じている。「ウィノナ・ライダーに似ている」と言われている選挙スタッフのジェニファー役は、ステイシー・エドワーズ。

主演のジョン・トラヴォルタは、ジャック・スタントンというよりビル・クリントンに成り切っている。どこからどう見ても、クリントンに似せてキャラクターを作っている。ワイフ役のエマ・トンプソンは、そもそも出番がそれほど多く用意されておらず、あまり印象に残らない。
クリントン大統領をモデルにしているので、下世話なイロモノ映画かと思ったら、全然違った。ものすごくマトモに作られた政治映画だった。だけど、マトモだから面白いってわけではなく、むしろイロモノ映画として作られた方が面白かったかもしれない。

この作品は公開直前、ちょうどモニカ・ルインスキー事件があったことで、話題となった。
しかし、逆に事件があったことが、この映画にとってマイナスに働いている。
映画で描かれているスキャンダルなんて、実際の事件に比べれば大したことは無いのだから。

この映画、コメディーのジャンルに分類されているようだが、コメディーではない。
一応は、前半はそれなりにコメディーっぽさを見せている所もある。
しかし、中盤辺りからはコメディー色はすっかり薄くなっていき、完全にシリアスなドラマへと変貌していく。

この映画のポイントは、「ハリウッドには民主党の支持者が多い」という所にあると思う。ジャック・スタントンも、モデルとなっているクリントン大統領も、民主党なのである。これが共和党の大統領なら、徹底的にコキ下ろす内容になったのかもしれないが。
ジャックは、確かに女癖は悪いが、しかし政治家としては「リベラルな思想を持ち、社会的弱者や貧しい人々を助けようとする」人物として描かれている。イヤな男ではなく、弱点はあるが人間的魅力を持つ人物として、どちらかと言えば好意的に描かれている。

この映画は、選挙の現実を描き出す。
理想のためには、キレイごとだけでは生きていけない。政治の世界では、理想を実現するために時には汚いこともやらねばならない。
そういうことを示す。
そして、果たしてジャックという男が大統領にふさわしいのかどうか、彼の選挙戦略が良かったのかどうか、その判断を観客に委ねる。
ただし、その問い掛けは、「どちらが良かったでしょうか」という形ではなく、「これで良かったんですよね?」という風に受け取れる。
最終的には、「失望させないでくれ」とクリントン大統領にエールを送っているようにも思えるのだが、深読みしすぎだろうか。

 

*ポンコツ映画愛護協会