『プレデターズ』:2010、アメリカ

傭兵のロイスは失神したまま、どこかの上空を落下していた。意識を取り戻したロイスは、激し狼狽とした。パラシュートは開いたが、 高度が低かったため、彼はジャングルの地面に叩き付けられた。立ち上がって周囲を見回していると、クッチーロという男が同じように 落下した。彼が所持していた銃を構えたので、ロイスは落ち着くよう促した。その時、空から降って来た男が地面に叩き付けられて死んだ 。パラシュートが開かなかったのだ。
突如、茂みの中から銃撃を受けたため、ロイスとクッチーロは慌てて身を隠した。ロイスは撃って来たニコライという男の背後に回って銃 を突き付け、「俺たちは敵じゃない」と告げた。クッチーロもニコライも、突如として光に包まれ、気が付くと空を落下していたという。 3人とも、自分たちの居場所がどこなのか全く分からない。そこへ武装したイザベルという女が現れ、「パラシュートを見た」と告げた。 ロイスたちは、その場所へ向かうことにした。彼らが去った背後に、ハンゾーという男が現れた。
ロイスたちがジャングルを歩いていると、スタンズとモンバサという2人の男たちが殴り合っていた。木の上には、パラシュートが 引っ掛かって動けなくなっているエドウィンという男がいた。ロイスはパラシュートを撃ち、エドウィンを落下させた。誰も状況が理解 できないまま歩いていると、ハンゾーが巨大オブジェを眺めていた。そのオブジェの下には、多くの骨が積み上げられていた。
こへ連れて来られた理由について全員が考える中、ロイスは「何が起きたかも、その理由もどうでもいい。問題は、どう脱出するかだ」と 言い出す。彼が一人で見晴らしの良い場所を探そうとするので、イザベルは「離れない方がいい」と忠告する。しかしロイスは「じゃあ 付いて来い」と冷淡な態度で告げた。仕方なく、他の面々は彼に付いて行く。しばらく進む中、イザベルが「少しは休まない?アンタ、 名前は」と問い掛けると、ロイスは「リーダーをやりたいなら、やればいい。付いて来たければ、そうしろ。俺はベタベタするのは嫌いだ 。一人がいい」とぶっきらぼうに告げた。
ロイスは、イザベルがイスラエル諜報特務庁の狙撃手、スタンズがFBIに追われていた強姦殺人犯の死刑囚、ニコライがスペツナズの 隊員、クッチーロが麻薬カルテル暗殺集団のメンバー、ハンゾーがヤクザの用心棒、モンバサがシエラレオネの革命統一戦線の兵士である ことを知っていた。エドウィンに関しては医者ということしか分からなかったが、みんな大物ばかりであることから、ロイスはイザベルに 「俺たちは選ばれたんだ」と言う。
一行がしばらくジャングルを進んでいると、パラシュートで落下した檻があったが、中身は空っぽだった。周囲に目をやると、他にも檻が 落下していた。仕掛けられていた罠が発動したため、ロイスたちは慌てて回避する。その近くには、全方位を見回せる場所に陣取って死亡 している男の姿があった。持っていた手帳を調べると、男はアメリカ陸軍特殊部隊の隊員だった。ただし、男はアフガニスタンに配備 されたはずだった。ロイスは「こいつが狙ったのは俺たちじゃない。もっと大きな何かだ」と口にした。
見晴らしの良い場所に辿り着いた一行は空を眺め、そこが地球ではない別の星だと悟った。一行は未知の獣の群れに襲われ、発砲して応戦 する。銃を持っていないエドウィンとスタンズは、必死に逃げ回った。獣に追い詰められたイザベルは、死を覚悟する。だが、どこからか 笛の音が響くと、獣の群れは退散した。エドウィンの「何が起きてる?」という疑問に対し、ロイスは「俺たちは同じ目的で拉致された。 相手は狩りを楽しんでる。俺たちが獲物だ」と告げた。
ロイスたちは、クッチーロの姿が見えないことに気付いた。「助けてくれ」という声のする方へ行ってみると、クッチーロが背中を向けて 座っていた。イザベルが近付こうとすると、ロイスが制止して「罠だ」と告げた。彼はクッチーロの近くに石を投げ込み、罠があるのを 確認した。助けることは不可能なため、一向はクッチーロほ置いて立ち去ることにした。イザベルはクッチーロを長く苦しませないよう、 狙撃して死なせた。
ロイスは一行に、「奴らは走らせようとしてる。走れば死ぬぞ」と警告した。イザベルが「どうする?」と尋ねると、彼は「敵の居場所を 見つける」と告げ、猟犬が去った方へ足を向ける。しばらく進むと、敵のキャンプらしき場所に辿り着いた。すると、未知の生命体が大木 に吊るされていた。その時、見えない敵が攻撃を仕掛けて来た。モンバサが犠牲になる中、他の面々は川へダイブして逃亡した。
ロイスは一行に、「敵が1人じゃないことは分かった。エネルギーベースの発射武器を使い、何かで姿を透明にしてる。我々より大きくて 強い」と語った。彼はイザベルに視線をやり、「教えてやれよ。さっきの生物に会った時の反応からして、正体を知ってるんだろ」と言う 。イザベルは、1987年にグアテマラのジャングルで特殊部隊が遭遇した謎の生物について語る。その生物によって部隊は1人を覗いて全員 が殺された。唯一の生き残りが報告した生物の特徴と、さっきの生命体は酷似しているのだという。
イザベルの説明により、敵が赤外線を使って人間を探知していることが分かった。ロイスは「隠れていると見せ掛け、おびき出してから 集中攻撃を仕掛ける」というプランを一行に語る。ロイスたちはジャングルで陣取るが、敵は近付いて来ない。罠を警戒していると考えた ロイスは、エドウィンを囮として走らせた。敵がエドウィンを追い掛ける中、イザベルが狙撃した。敵は倒れるが、イザベルは自分の弾丸 が命中していないことに気付いた。その時、ノーランドという男がロイスたちの前に現れた。敵を仕留めたのは彼だった。
ノーランドはロイスたちは、自分も狩りの標的として拉致されたが、ずっと逃げ延びて来たことを語る。ノーランドは一行を自分のアジト に案内した。ノーランドは「奴らは2つのタイプに分かれている。ここを支配しているデカい奴らが、小さい奴らを飼っている。奴らは 人間を連れて来ては、狩りをして殺している。たまに生贄の方が殺すこともあるが、奴らは学習して適応する。いつも奴らは3人で、船を 使って星にやって来る」と述べた。
ロイスが「どうすれば殺せる?」と訊くと、ノーランドは「生き残りたければ、ここにいろ」と告げた。スタンズが星から脱出する方法を 尋ねると、ノーランドは不可能であることを示唆する。だが、ロイスは敵の船を奪って脱出しようと考える。イザベルが「操縦の方法は 習ったの?」と問い掛けると、彼は「キャンプに吊るされている奴がいただろ。あいつ、自由になるためなら、何でもするはずだ。敵の敵 は味方だからな」と告げた。
ロイスたちが休息していると、部屋に煙が充満してきた。一行を皆殺しにしようとするノーランドの仕業だった。ロイスたちを閉じ込めて 逃げ出したノーランドだが、敵に見つかって殺された。ロイスたちは部屋から脱出するが、エドウィンは一人だけはぐれてしまう。他の 面々は、彼を置き去りにして出口を目指す。だが、エドウィンが敵に襲われそうになった時、ニコライは助けに戻った。そのニコライは敵 に殺され、外に出た直後にスタンズも犠牲となった…。

監督はニムロッド・アーントル、キャラクター創作はジム・トーマス&ジョン・トーマス、脚本はアレックス・リトヴァク&マイケル・ フィンチ、製作はロバート・ロドリゲス&ジョン・デイヴィス&エリザベス・アヴェラン、共同製作はビル・スコット、製作協力はトム・ プロッパー、製作総指揮はアレックス・ヤング、撮影はギュラ・パドス、編集はダン・ジマーマン、美術はスティーヴ・ジョイナー& ケイラ・エドルブラット、衣装はニーナ・プロクター、特殊メイクアップ&クリーチャー効果はグレッグ・ニコテロ&ハワード・バーガー 、視覚効果監修はロバート・ロドリゲス、音楽はジョン・デブニー。
出演はエイドリアン・ブロディー、トファー・グレイス、アリシー・ブラガ、ローレンス・フィッシュバーン、ウォルトン・ゴギンズ、 オレッグ・タクタロフ、ダニー・トレホ、ルーイ・オザワ・チャンチェン、マハーシャラルハズバズ・アリ、ケアリー・L・ジョーンズ、 ブライアン・スティール、デレク・メアーズ。


ジョン・マクティアナン監督による1987年の『プレデター』、スティーヴン・ホプキンス監督による1990年の『プレデター2』と続いた シリーズを久々に復活させた作品。
監督は『モーテル』『アーマード 武装地帯』のニムロッド・アーントル。
ロイスをエイドリアン・ブロディー、エドウィンをトファー・グレイス、イザベルをアリシー・ブラガ、ノーランドをローレンス・ フィッシュバーン、スタンズをウォルトン・ゴギンズ、ニコライをオレッグ・タクタロフ、クッチーロをダニー・トレホ、ハンゾーを ルーイ・オザワ・チャンチェン、モンバサをマハーシャラルハズバズ・アリが演じている。

一応はシリーズの第3作という扱いになるようだが、2作目は無かったことにして、1作目の続編として作られている。
この作品では、プレデターの中にも種族同士の対立関係があるという設定が持ち込まれている。
今回のプレデターは、これまでの2作に登場した連中とは別の種族という設定だ。
ロイスたちが戦う相手は、リーダーのミスター・ブラック、小型偵察機を装備しているファルコナー、プレデター猟犬を操るドッグ・ ハンドラーという新種のプレデターたちだ。

この映画には、「殺人能力を持った様々な職種、様々な国籍の面々が集められ、異星人の狩りの標的にされ、様々な武器を使って戦う」と いう設定が持ち込まれている。
まるでビデオゲームをそのまんま映画化したような作品だ。
そして、そういう基本設定だけで思考がストップしてしまったような仕上がりになっている。
自分がコントローラーを操作できないアクションアドベンチャーゲームを見せられているかのような感覚になる。

登場キャラクターの特徴に関しても、職種や国籍といった初期設定の部分で、ほとんど終わっている。
エドウィンだけは謎を秘めた設定にしてあるけど、他の面々が全て殺人能力を持っているんだから、こいつも殺人医師ってのはバレバレだ 。ちなみに殺人医師と言ってもスティーヴ・ウィリアムスのことじゃないよ(分かってるつーの)。
そのエドウィンは終盤、穴に落とされたところで神経毒を塗ったメスを使ってイザベルを傷付けたり、引っ張り上げたロイスを殺そうと したりして本性を現すが、今さら仲間を殺して何の意味があるのかと。
アホかと。

エドウィンは「向こうの世界ではモンスターだったけど、こっちでは普通だから、ここに居たくなった」などと言い出す。
だけど、そのままだったらプレデターに殺されるんだぞ。
なんでプレデターからテメエを助けてくれるであろう仲間を殺そうとしているのかと。
そういうエドウィンの行動は、「彼がクソ野郎だと確定したので、反撃したロイスが神経毒で麻痺させ、ブレデターをおびき出す囮として 使う」という展開に持って行くための、下手な御都合主義にしか思えない。

最初にロイスたちに襲い掛かる生物をプレデター猟犬にしており、プレデターが登場するまでに時間を掛けている。
だが、その間にキャラを掘り下げたり、人間ドラマを充実させたりしているわけではない。
『ゴジラ』や『ジョーズ』のように、モンスターが登場するまでに時間を掛けることで緊迫感を煽るという効果が得られることはある。
ただし、この映画の場合、前2作と種族が違うとはいえ、最初から敵の正体は分かっていることもあって、登場するまでに勿体を付けても 、あまり効果が得られているとは思えない。
どうせ単純な中身なんだし、さっさと登場させちゃえばいいのに、と感じる。

プレデターは狩りをするためにロイスたちを集めるのだが、メンバーの選び方や連行の方法はおかしなことになっている。
まず、狩りを楽しむつもりなら、「パラシュートが開かずに墜落死する」という人間が多く出るような事態は避けるべきだろう。
もう何年も前から狩りを続けているのに、「狩りを始める前の段階で死者が出る」という事態を防ぐための方法を何も考えてないのか。
学習しろよ。
あと、標的がジャングルに降下したら、すぐに威嚇攻撃でも仕掛けて、すぐに戦闘モードへ突入した方がいいはずだし。

傭兵のロイスやスナイパーのイザベルなど、戦闘部隊に属しており、銃の扱いに慣れている兵士を標的として連行するのは理解できる。
でも、医師のエドウィン、死刑囚のスタンズ、ヤクザのハンゾーに関しては、人選がおかしいでしょ。
まだハンゾーはともかくとして、エドウィンやスタンズなんて、ジャングルでの戦闘において役に立つような能力は持ち合わせて いないぞ。
「殺人者」というザックリとして括りで選ぶから、そんなことになるのよ。
こっちも、やっぱり「学習能力が無いのか」と言いたくなるぞ。

エドウィンやスタンズたちをメンバーに入れているのは、シナリオとしては「みんな銃を使う兵士ではつまらない。キャラクターの差別化 を図りたい」という意識があったんだろうと思う。
それは分かるんだけど、じゃあエドウィンやスタンズが己の持つ能力を活用して敵と戦うのかというと、そんなことは無い わけで。やっぱり役立たずなわけで。
まあ、他のメンツにしても、持っている銃の種類が違う程度で、特技を活用して敵と戦い、その特徴をアピールするようなことは無い けどね。
っていうか、そもそもプレデターは圧倒的に強くて、人間は「やられ役」なので、戦闘スキルで強い個性を持たせても、あまり意味が無い けどね。

ハンゾーだけが唯一、日本刀を使ってプレデターと一騎打ちをするという大きな見せ場を与えられている。
ただし、そのシーンは明らかに浮いているけどね。「ヤクザ」と「サムライ」を混同しているような印象も受けるし、そこだけ急に チャンバラ映画の撮り方になるし。
あと、細かいことを言うと、殺陣も少し違和感があるかな。やや桐谷健太に似ているルーイ・オザワ・チャンチェンが剣道経験者ってこと でなのか、ちょっと剣道っぽさの強い殺陣になっているんだよね。
ソード・アクションのコレオグラファーがいなくて、本人に委ねたってことなのかな。

(観賞日:2012年8月31日)


2010年度 HIHOはくさいアワード:7位

 

*ポンコツ映画愛護協会