『パワーレンジャー』:2017、アメリカ

地球、新生代。パワーレンジャーはリタ・レパルスとの争いに敗れて次々に命を落とし、レッドレンジャーであるゾーゴンが最後に残った。ゾーゴンはアルファ5に通信を入れ、「ここを隕石で破壊しろ、ふさわしき物を捜し出せ。真の勇者を見つけるのだ」と言う。彼が5つのパワーコインを地中に隠した直後、リタが金の杖を手にして現れた。彼女は「ジオ・クリスタルがあれぱ宇宙を支配できた」と告げて、ゾーゴンを始末しようとする。ゾーゴンが「一緒に死ぬんだ」と口にした直後、隕石が飛来した。リタは激しく吹き飛ばされ、海中に落下する。ゾーゴンは意識を失い、その向こうには宇宙船が着陸していた。
現代のアメリカ、田舎町であるエンジェル・グローブ。アメフト部のスター選手である高校生ジェイソン・スコットは、友人のダモと共に深夜の牛舎から牛を連れ出した。雄を盗み出すつもりだったジェイソンだが、雌だと気付いて焦った。パトカーのサイレンが聞こえたので、2人は慌てて車に乗り込んだ。ジェイソンは猛スピードで車を走らせ、パトカーの追跡を逃れようとする。しかしトラックを避けようとして運転を誤り、衝突事故を起こしてしまった。
3週間後。ジェイソンは土曜日の補習に参加するため、父のサムが運転する車で高校に到着した。サムが呆れた様子で「最悪の馬鹿だな。友達を庇って得意顔か」と批判すると、ジェイソンは面倒そうな様子を見せる。サムが「大事なシーズンだった。アメフトのスター選手の道も断たれた」と言うと、彼は生意気な言葉を吐いて車を降りた。彼が教室に入ると、コルト・ウォレスが馬鹿にした。コルトがビリー・クランストンに嫌がらせをしていると、ジェイソンが止めに入って挑発する。彼はコルトのパンチをかわして平手打ちを浴びせ、「俺に近付くな。彼にもだ。それがルールだ」と通告した。
キンバリー・ハートは「今すぐトイレに」というメールを受け取り、補習の教師が来ても構わずに教室を出て行く。彼女がトイレに着くとチアリーディング部のアマンダとハーパーが待ち受けていた。アマンダが「タイに私の写真を」と指摘すると、キンバリーが「あいつは嘘つきよ」と告げる。アマンダは「貴方抜きで前に進むわ」と言い、集合写真をハサミで切った。アマンダとハーパーは、縁を切ると宣言して立ち去った。キンバリーは長髪を短く切り、教室に戻った。
補習を終えたジェイソンはビリーに声を掛けられ、先程の礼を言われる。ビリーが「ちょっと付き合わない?出来れば今夜がいい」と口にいると、ジェイソンは保安官事務所に行く必要があるのだと告げて断る。「実は手伝ってほしい」とビリーが明かすと、彼は自宅軟禁中であることを打ち明けた。するとビリーはGPS装置に細工できると言い、道具も持っていると告げる。ジェイソンが「7時には帰らないと」と話すと、彼は7時前に家へ来るよう指示した。
帰宅したジェイソンは、母のビヴァリーが彼を擁護してサムと口論になる声を耳にした。ジェイソンは自転車を飛ばし、ビリーの家へ行く。ビリーの母のキャンディスは、有名人のジェイソンが訪ねて来たので驚いた。ビリーはファラデーケージを使い、ジェイソンのGPS装置を解除して自宅にいるように偽装した。彼はジェイソンに、父が亡くなって約7年が経ったこと、父が金鉱で働いていたこと、一緒に古い物を探していたことを語った。
ビリーは父の車をジェイソンに運転してもらい、立入禁止になっている金鉱へ赴いた。車を降りたジェイソンが戸惑っていると、ビリーは「僕は自閉症スペクトラムだ。ユーモアや皮肉は分からないが、何でも記憶できる」と語った。彼はジェイソンに、大きなケースを運ぶ手伝いを頼んだ。ジェイソンはケース運び終えると、その場を去った。同じ頃、川沿いの崖上に座っていたザックは双眼鏡を覗き、「また来たな。クレイジー・ガール、いつも時間通りだ」と呟いた。その視線の先には、崖の上でヘッドホンを装着し、ヨガのポーズを取って立つトリニーの姿があった。
日が暮れそうになる中、ジェイソンは車で金鉱を去ろうとするが、人の気配を感じて様子を見に行く。するとキンバリーが上着を脱いで、湖に飛び込む様子が見えた。彼は慌てて湖を覗き込み、キンバリーの名を叫んだ。すると湖から上がっていたキンバリーが背後から現れ、「知らない人に名前を呼ばれるなんて、変な感じ」と言う。「知り合いだろ。タイの元カノだ」とジェイソンがと告げると、キンバリーは「歯を折ってやった」と言う。ジェイソンは微笑を浮かべ、「もう治った」と述べた。
ビリーはケースに入っていたダイナマイトを崖に埋め込み、「父さん、僕はやるよ」と呟いた。ジェイソンはキンバリーから「ここで何をしてたの?」と訊かれ、ビリーと一緒に来たと答える。キンバリーは彼に、「ビリーなら前にも見掛けたわ。私の家は山の向こう側。たまに気分転換で来る」と語る。「こんな町が私を惨めにさせるなんて」と彼女が漏らすと、ジェイソンは「僕もだ。事故で皆を失望させた」と同調する。キンバリーが「こんな町、出ればいいのよ。私ならそうする」と言うと、彼は「行こう」と誘う。キンバリーが「無理よ」と笑うと、ジェイソンは「試すか?バンがある」と口にした。
ビリーはダイナマイトを爆破させ、大きなを聞いたザックは慌てて現場に駆け付けた。彼が詰め寄って「何してる?」と怒鳴ると、ビリーは「調査だ」と答える。キンバリーと共に現場へ戻ったジェイソンは、急いで仲裁に入った。ザックに「爆破魔め」と非難されたビリーは、「やり過ぎた」と釈明した。そこへトリニーも来て、「逮捕されたいの?立入禁止区域よ」と忠告する。直後に崖崩れが発生し、大きな結晶体が出現した。ザックは何かが埋め込まれているのに気付き、ハンマーで削って破片を手に取る。彼はビリーの制止を無視し、破片を割って赤いパワーコインを取り出したす。
守衛が来たので、ジェイソンたちは車で逃走する。しかし列車と激突し、車ごと吹き飛ばされた。同じ頃、嵐で漁を切り上げた漁船の面々は網を引き揚げ、大量の魚の中に女性の遺体が入っているのを見つけて驚いた。翌朝、ジェイソンは、自宅のベッドで目覚めた。大怪我は無く、ズボンのポケットにはパワーコインが入っていた。キンバリーとビリーも大きな怪我は無く、家に戻っていた。3人は無意識に人間離れした怪力を発揮してしまい、困惑の表情を浮かべた。
登校したビリーはコルトに嫌がらせを受け、頭突きを食らうが全く痛みは無く、向こうが倒れて失神した。ジェイソンはキンバリーと話し、帰宅した記憶が無いことを確認する。2人が食堂へ行くと、ビリーはコルトを撃退した出来事を同級生たちに得意げな態度で喋っていた。キンバリーはビリーを呼び出して「何か変よ」と言い、ピンクのコインを台に置く。ビリーは青、ジェイソンは赤のコインを横に並べた。すると台が熱くなり、食器が沸騰して弾け飛んだ。ジェイソンはキンバリーとビリーに、金鉱へ行こうと持ち掛けた。
マイネン保安官は港に着き、漁船の冷凍庫の中に保存された遺体の確認に向かう。彼が冷凍庫に入ると、突如として遺体は暴れ出した。ジェイソンたちが金鉱に行くと、ザックの姿があった。ザックは彼らに、トリニーも来ていることを教える。ジェイソンたちが一緒に行動するよう誘うと、トリニーは無視した。彼女が超人的な能力で崖を登ると、キンバリーは後を追った。トリニーが崖を飛び越えて逃げると、他の面々は後に続く。最後のビリーは失敗するが、崖下にある洞窟湖に落下して無事だった。
5人は湖に浮かび、コインが光っているのに気付いた。ザックは黒、トリニーは黄色い光だった。ビリーは「下に何かある」と水中に潜り、他の4人は後に続いた。5人は水の壁を抜け、謎の空間に落下した。遺跡のような場所に辿り着いた5人が先へ進むと、宇宙船があった。ドアが開いたので5人が足を踏み入れると、アンドロイドのアルファ5が現れた。アルファ5はコインを持った5人を歓迎し、台の上に立つよう指示した。5人が警戒しながら台に乗ると、マトリックスに封印されていたゾードンが出現した。アルファはゾードンに、パワーコインが戻ったことを知らせた。
ゾードンはアルファから「彼らは貴方を知らない」と言われ、「宇宙の運命を子供たちに託すのか?」と懸念を示す。彼はジェイソンたちに、「君たちはパワーレンジャーだ」と告げる。アルファは「6500万年前、星の生命源であるジオ・クリスタルを守る戦いでゾードンの部隊が全滅した。コインは君たちを選んだ。クリスタルと地球を守るのだ」と説明するが、5人は信じようとしなかった。ゾードンは5人を激しく弾き飛ばし、リタが人類を石化させる映像を見せたる
ゾードンは5人に、それは悪夢ではなく未来の現実だと通告する。「リタは怪物ゴールダーの創造主であり、クリスタルが失われれば地球は死滅する。リタは世界を支配し、破滅させる。リタを殺せと。11日しか時間は無い」と言われても、5人は受け入れようとしなかった。他の4人が先に船を去る中、最後に残ったジェイソンはゾードンから「君はレッド。リーダーだ。リタも元々はレンジャーの仲間だったが裏切った。力を求めて道を誤った。仲間を連れ戻せ。皆を鍛えてリタを止めろ。これは君の宿命だ」と告げられた。
ジェイソンは4人の元へ行って説得を試み、「船に戻ろう、強制はしない。明日の4時、俺はここに来る」と述べた。帰宅したザックは、病気で寝込んでいる母に薬を飲むよう促した。トリニーは母から何があったか話すよう詰め寄られ、不機嫌そうな態度を示した。「みんなで宇宙船を発見した。私はスーパーヒーローよ」と彼女が生意気な態度で語ると、母は「尿検査するわよ」と怒鳴った。ジェイソンはサムから、壊れた車について「直すかどうか自分で決めろ」と言われた。サムは保安官から「貴方の船で酷いことがあった」と説明を受けて、パトカーで港へ向かった。薄汚れた姿で蘇ったリタは、ゴールダーを造るために黄金を集め始めた。彼女は「ジオ・クリスタルで宇宙を支配する」と言い、近付いたホームレスを惨殺した。
翌日、ジェイソンたちは金鉱に集結し、宇宙船へ向かった。ゾードンは5人に、「自分のために力を使わない。敵に攻撃されない限りは戦わない、決して正体は明かさない」というパワーレンジャーの掟を語る。彼は台に乗るよう指示し、「変身してスーツを着用しろ。集中すればモーフィン・グリッドに繋がり、変身できる」と教える。しかし5人は変身できず、アルファは雑根があると指摘した。ゾードンは変身できなければスーツ無しで訓練すると告げ、ピットへ連れて行くようアルファに指示した。
ゾードンアルファは岩を使ってリタの手下の戦闘部隊を再現し、5人を攻撃させる。アルファの監視下で、5人の訓練は開始された。翌日以降も訓練が続くが、変身は出来ないままだった。アルファは5人に、クリスタルの位置は失われていると伝える。ビリーは単独で調査し、ドーナツ店にクリスタルがあることを突き止めた。サムの船で殺された船員の葬儀が執り行われ、テレビのニュースでは現場から消えた黄金との関連性を警察が調べていることが報じられた。
ジェイソンたちから褒美を求められたアルファは、「この無効に人生を変える物がある」と崖を登らせる。すると、そこには恐竜をモデルにした5体のロボット「ゾード」が置いてあった。アルファは「君らの手足だが、今は操れない。変身してスーツを着用する必要がある」と説明するが、ザックは勝手に乗り込んで操縦する。ゾードはコントロールできずに暴走するが、何とか制止した。ザックが全く反省せず軽い調子を見せたので、ジェイソンは激怒した。2人が喧嘩になると、ビリーが仲裁に入った。彼はブルーレンジャーに変身したことに気付いて喜ぶが、すぐに元の姿へ戻った。 ビリーはジェイソンから再び変身するよう促されるが、方法が分からなかった。
ゾードンは「変身できなければレンジャーではない」と言い、家に帰るよう5人に命じた。ザックは金鉱に泊まると言い、トリニーは一緒に残ることを決めた。ゾードンはアルファに、「彼らは失格だ。私がリタを倒す」と告げた。ここから抜け出す方法を尋ねると、アルファは「彼らの変身が必要です。その力で貴方は解放される」と教えた。宇宙船に戻って来たジェイソンは、その会話を聞いて「自分が復活するためか?」とゾードンを批判した。「クリスタルを守るためだ」とゾードンが主張すると、ジェイソンは「俺たちを甘く見るな」と声を荒らげた。ゾードンが「君たちには無理だ。クリスタルが敵に渡ったら地球は全滅だ。私はコインを埋めて、次のレンジャーに希望を託した」と話すと、ジェイソンは小言はウンザリだ」と去った。
リタは宝石店を訪れ、ゴールドを見せるよう店員に要求した。店員は彼女の目を盗み、通報スイッチを押した。リタは商品を食べ、店員のネックレスも奪い取った。黄金の杖が大きくなるのをリタが見ていると、保安官が駆け付けた。リタが警告を無視したので保安官は発砲するが、ダメージを与えられなかった。リタは店を爆破し、その場を後にした。一方、ジェイソンたちは5人で野宿し、ザックが「お互いを知らないなら変身できないんだ」と言い出した。彼は順番に自分のことを詳しく語ろうと提案し、最初に自己紹介した。するとビリーは、父との思い出について語った。トリニーは転校を繰り返していることを話し、普通であることを求める両親との不仲を明かした。5人はキャンプを終わらせ、自宅に戻った。
トリニーの寝室にリタが出現し、ジオ・クリスタル探しを手伝うよう要求した。トリニーが脅しに屈せずに拒否すると、リタは不敵な笑みで「明日、この町を破壊する。私に尽くすなら助けてもいいわ」と告げた。キンバリーはジェイソンの元へ行き、「変身できないのは私が正直じゃないから」と話す。彼女はアマンダが非公開でシェアしてきた写真をタイに見せたと告白し「副校長室でアマンダのお父さんは娘の醜態を見せられた。彼の視線に耐えられず、嘘をついて彼のせいにした」と言う。ジェイソンは彼女に、「ちゃんと向き合え。人として最低になるな」と助言した。
トリニーはメールでジェイソンたちを呼び出し、リタが現れたことを伝える。彼女は5人に、リタが「翌朝に町を破壊する。漁船に来い」と言っていたことを話す。すぐにジェイソンが漁船へ向かおうとすると、誰も賛同しなかった。ビリーは「変身できないのに」と消極的な態度を見せて、ゾードンに知らせるべきだと主張した。するとジェイソンは「ゾードンは自分の復活のため俺たちを利用してる」と言い、自分たちでリタを倒そうと持ち掛ける。4人は同意し、武器を手にして漁船へ向かった…。

監督はディーン・イズラライト、『パワーレンジャー』創作はハイム・サバン、『スーパー戦隊シリーズ』創作は東映、原案はマット・サザマ&バーク・シャープレス&ミシェル・マルロニー&キーラン・マルロニー、脚本はジョン・ゲイティンズ、製作はハイム・サバン&ブライアン・カセンティーニ&マーティー・ボーウェン&ウィク・ゴッドフリー、製作総指揮はアリソン・シェアマー&ブレント・オコナー&ジョン・ゲイティンズ&チューヤン・ロン&ジョエル・アンドリック&鈴木武幸、共同製作はアルドリック・ラオリ・ポーター&スティーヴン・メイネン、撮影はマシュー・J・ロイド 美術はアンドリュー・メンジース、編集はマーティン・バーンフェルド&ドディー・ドーン、衣装はケリー・ジョーンズ、視覚効果監修はショーン・フェイデン、音楽はブライアン・タイラー、音楽監修はシーズン・ケント。
出演はデイカー・モンゴメリー、ナオミ・スコット、RJ・サイラー、ベッキー・G、ルディー・リン、エリザベス・バンクス、ブライアン・クランストン、デヴィッド・デンマン、マット・シヴリー、コディー・キーズリー、ロバート・モロニー、アンジャリ・ジェイ、サラ・グレイ、モーガン・テイラー・キャンベル、キャロライン・ケイヴ、ケイデン・マグナスン、リサ・ベリー、ウェズリー・マッキネス、ジョン・スチュワート、フィオナ・フー、クレイトン・チッティー他。
声の出演はビル・ヘイダー。


東映スーパー戦隊シリーズのローカライズであるアメリカのTVドラマ『パワーレンジャー』シリーズの第1作『マイティ・モーフィン・パワーレンジャー』を基にした作品。
監督は『プロジェクト・アルマナック』のディーン・イズラライト。
脚本は『リアル・スティール』『フライト』のジョン・ゲイティンズ。
ジェイソンをデイカー・モンゴメリー、キンバリーをナオミ・スコット、ビリーをRJ・サイラー、トリニーをベッキー・G、ザックをルディー・リン、リタをエリザベス・バンクス、ゾードンをブライアン・クランストン、サムをデヴィッド・デンマンが演じている。
アルファ5の声をビル・ヘイダーが担当している。

なぜアメフトのスター選手で将来が約束されていたはずのジェイソンが、なぜ牛泥棒というアホすぎる行動に出たのか、その理由は全く分からない。
後で「実は」という手順があるのかと思ったら、何も無いのよね。
一緒に牛を盗んだダモは親友のはずだが、それ以降は二度と登場しないので関係性が全く分からないし。
牛泥棒の件で2人の関係は変化している可能性が高いし、どちらも相手に対して思っていることもあるだろうけど、そういうことにも全く触れないし。

キンバリーはアマンダたちに絶縁されると髪を短く切るが、なぜなのか良く分からない。そもそも、トラブルの原因も良く分からない。
こちらに関しては、後半に入って明らかにされる。そして明らかにされた時に感じるのは、「完全なる自業自得じゃねえか」ってことだ。
信頼してくれた親友の恥ずかしい写真を恋人に送り、それがバレたら恋人のせいにして、怒りを買ったら恋人を殴るって、最低のクソ野郎じゃねえか。
そんな奴が苦悩を見せても、まるで同情できないよ。そんな奴が「ちゃんと向き合え」と言われて前向きな気持ちに変化し、変身ヒーローとして戦う様子を描かれても、応援する気持ちなんて微塵も湧かないよ。
むしろ被害者であるアマンダの方をヒロインにした方が良かったんじゃないかと感じるよ。

ビリーは唐突に自分は自閉症スペクトラムだと打ち明けるが、だから何なのかと言いたくなる。それがストーリー展開に大きく絡んで来ることなんて全く無いし。
っていうか、それがストーリーに絡んで来ないって、明らかにシナリオとしての欠陥だろ。
たぶん、「それぞれが悩みを抱えている」ってことから「それを打破して前に進もうする」という成長物語を描こうとしているんだろうと思うのよ。
でも、それと変身ヒーローとしてヴィランと戦う物語が、上手く融合していないのよね。

ジェイソンが急に「町を出たい」と言い出す展開が訪れ、「田舎町に閉塞感を抱いている若者たち」という色んな映画で使われてきた設定が浮き上がる。
だけど、この要素も上手く使いこなせていない。
そもそも、ジェイソンにしろキンバリーにしろ、「この町にいたくない」と思うようになったのは、テメエのボンクラが原因でしょうに。
決して田舎町が閉鎖的だったり封建的だったりして、息苦しさを感じているってことではないのよ。

ゾードンはジェイソンたちが集まると、今から戦闘訓練を開始して鍛えると言い出す。
だけど、時間が全く足りないでしょ。あと11日しか無いんじゃないのかよ。それで戦闘経験の無い素人を今から鍛えてリタに勝てるようにするのって、絶対に無理だろ。
あと、レンジャーに変身できない時点で、「こいつらは資質が無い」と判断して諦めろよ。
生身の訓練シーンとかどうでもいいから、「変身できるようになるまで」のトコでドラマを描けよ。

ジェイソンたちが野宿をするシーンで「お互いを知らないなら変身できないんだ」とザックが言い出し、順番に自分のことを詳しく語る流れになる。
開始から1時間10分ぐらい経過してメインキャラの自己紹介パートって、どういう計算なんだよ。わざわざ説明しなくても、タイミングが遅すぎることは誰にでも分かるよね。
そもそも、そこで台詞で説明するんじゃなくて、そこまでの流れの中で観客への説明を済ませておくべきなのよ。そして、それが済んでいれば、互いに自己紹介するという形を取って観客に説明する必要なんて無いはずなのよ。
必要な手順を完全に忘れていて、慌てて消化しているとしか感じないのよ。

そこまでも断片的な描写はあるんだけど、そこで観客にハッキリと分かるように描いておくべきなのよ。
それをやらないから、ただの二度手間になっている。
ザックと母のシーンにしても、トリニーと家族のシーンにしても、そこまでもチラッと触れているわけでね。
あとさ、ザックが病気の母と死別することへの不安を抱いているとか、トリニーが両親と不仲だとか、そういうのって「変身して敵と戦い、地球を救う」という任務と何の関連性も無いでしょ。

「ゾードンは復活のために利用してる。俺たちはヒーロー失格だ」とジェイソンは仲間に言うが、それなのにリタを倒しに行くのは矛盾してるだろ。変身も出来ないのに、リタを倒せるはずがねえだろうに。
いつの間に「町を救う」という使命感に燃えるようになったんだよ。そういう心情の変遷なんて、何も描かれていなかっただろうに。ヒーロー失格なら、町を救おうとする必要なんて無いだろ。
ジェイソンは「大嫌いな町だけど破壊されるのは耐えられない」とか言うんだけど、そんなの、ちっともカッコ良くねえからな。ただのアホだとしか思えないからな。
全く歯が立たずに捕まってビリーが殺されるけど、無策でリタに挑む彼らの行為がアホすぎるので、悲劇に浸ることが出来ないのよ。

そんでビリーの死を受けて残った4人が変身できるようになるのだが、それだと高揚感に繋がらないでしょ。それどころか、不快感さえ覚えるわ。
なんで変身するために、仲間の死という大きすぎる犠牲を払わなきゃいけないのかと。
ゾードンが自分の復活の代わりにビリーを蘇らせているけど、そこの都合の良さも呆れるだけだし。そんなに早くビリーを生き返らせたら、彼の死がバカバカしいモノになるだろ。
あと、ビリーが復活するから全員で変身できるんだけど、それでも高揚感は無いからね。あまりにも長く引っ張り過ぎたことも、「もういいわ」と気持ちを萎えさせることに繋がっちゃってるし。

エンドロールを除くと上映時間は115分で、5人が初めて変身するのが映画開始から90分。どう考えたって、それは遅すぎるでしょ。そこまで引っ張っても、何の得も無いぞ。
最初から何作も続くシリーズ化を想定していたらしいけど、「スーパーヒーロー誕生篇」なら最初の変身まで長く引っ張ってもOKとは言えないし。しかも、この映画がコケたからシリーズ化は難しくなったし。
「変身して戦って勝利し、歯が立たない敵が現れて壁にぶつかり、そこを乗り越えて最終決戦ではゾードも使ってメカバトル」という流れでも良かっただろうに。そういうのが無いから、一発目の戦いから早々とゾードに乗って戦う展開になっちゃってるし。
あと、変身した後、ちょっと戦うと素顔を晒したままメカバトルに突入するのは、シルヴェスター・スタローンの『ジャッジ・ドレッド』を思い出すダメな演出だし。

どうやら初めての変身シーンが遅すぎるのは、青春ドラマを描こうとした結果らしい。前述した「若者たちが悩みを抱えて云々」ってのは、ようするに青春ドラマとしての方向性なのだ。
だけど、「これは特撮ヒーロー物ですよ」と言いたい。言い含めたい、言いくるめたい。
特撮ヒーロー物の中に青春映画の要素を取り込むという考え方をすべきなのに、青春映画の中に特撮ヒーロー物を取り込む形になっている。それは考え方が逆なのよ。
あと、「青春映画だから最初の変身が遅くてバトルの割合が少なくなるのは仕方が無い」なんてことは、絶対に無いからね。
特撮ヒーロー物としてのストーリーを進めながら、青春ドラマを描くことだって出来るからね。この映画は、そういう方法を取らなかっただけだからね。

(観賞日:2022年4月8日)

 

*ポンコツ映画愛護協会