『ポーキーズ2』:1983、アメリカ&カナダ

エンジェル・ビーチ高校に通うピーウィーは目を覚まし、前夜にウェンディーとセックスして童貞を卒業したことを思い出す。チンコが勃起しないので、彼は「どうした、立てよ」と呼び掛ける。集中しても全く反応しないので『世界風俗地理』の本を開いて写真を見ると、すぐに勃起した。ピーウィーは興奮して吠えるが、母親が来たので慌てて誤魔化した。ピーウィーが登校すると、仲間のトミー、ミッキー、ティムが「初体験はどうだった?」と尋ねる。ピーウィーは「いつでもやってる。相手には事欠かない」と強がるが、みんな彼が童貞だったことは知っていた。
「ウェンディーは俺の虜だ」とピーウィーが得意げに言うと、「ウェンディーはそう言ってないぜ」とトミーたちは笑った。ウェンディーが自分にゾッコンの様子を見せたので、ピーウィーは勝ち誇った。そこでトミーたちはピーウィーをからかおうと考え、「こっちにも女を回せよ」と持ち掛けた。ピーウィーは快諾し、同級生のステムリックに「どんなバカとでも寝る女はいないかな?」と尋ねた。しかし「ウェンディーだ」と言われたため、ピーウィーは腹を立てて彼の妹を侮辱した。
ビリーはシェークスピアの舞台で森の精の王を演じることになっているが、トミーたちはバカにして笑った。ピーウィーはフランクにも「どんなバカとでも寝る女はいないかな」と尋ねるが、やはり「ウェンディー」という答えだった。ピーウィーが他の女を挙げるよう要求すると、フランクは「音楽部のビッグ・エドナだ」と言う。ピーウィーはウェンディーと会い、「みんなが誰とでも寝る女だと言ってる」と苛立ちを吐露する。ウェンディーが「噂はデタラメよ。貴方と寝たのは好きで、セックスしたかったからよ」と話しても、ピーウィーは納得しなかった。
そこでウェンディーは、中学2年生の時に裸で泳ぐ同級生の男子たちを眺めていたら「男とやりたがる女」と噂を流されたことを説明した。ピーウィーが笑顔になると、彼女は「チェリー事件の復讐に手を貸すわ。ブライアンも味方よ」と述べた。ピーウィーはエドナに会い、「話を聞いたぜ。強い奴らを紹介する」と告げる。しかしエドナはフランクが話していたような女子ではなく、ピーウィーの説明を聞いて激怒した。その様子を見ていたブライアンは、ピーウィーにプランBを提案した。
ビリーが一人で芝居の練習をしていると、トミーたちが来てバカにした。そこへジョン・ヘンリーという先住民の生徒が来てビリーに挨拶し、芝居に出ることを告げた。ピーウィーはトミーたちの元へ行き、「最高の女とやらせてやる。夜中の墓場で変貌する」と告げた。だが、トミーたちはピーウィーが何か企んでいると見抜き、からかうための計画を立てる。ピーウィーは遊園地で踊り子をしているサンディーを雇って囮に使い、トミーたちを脅かそうと企んでいた。しかしトミーたちはピーウィーの交渉を盗み聞きし、サンディーに金を払って自分たちの計画に引き入れた。
演劇部の講師でピーウィーの母親でもあるミセス・モリスは、生徒のミートたちに芝居の練習を積ませていた。しかしアンソニーは女装させられて困惑し、ピーウィーは醜いコスチュームのせいで部員たちに笑われた。そこへ正道教の教祖であるフレイヴェル牧師が女性教師のバルブリッカー、それに大勢の信者たちを引き連れて現れた。フレイヴェルが「こんな芝居は上演禁止だ。シェークスピアは卑猥だ」と言うので、モリスは一行を引き連れてカーター校長の元へ赴いた。
フレイヴェルがシェークスピアの台詞の卑猥さを非難すると、カーターは聖書にも同じような言葉があることを指摘した。フレイヴェルは納得せず、カーターと激しい口論になった。カーターが汚い言葉で罵ると、フレイヴェルは「戦うぞ」と宣言した。ブライアンは怪物のメイクを施したスティーヴを墓場へ隠れさせ、ピーウィーはサンディーとトミーたちを車で案内する。するとサンディーはピーウィーを誘惑し、セックスに誘う。すっかり騙されたピーウィーは裸になるが、サンディーが突然死の芝居をしたので狼狽する。彼は慌ててトミーたちを呼ぶが、「彼女は死んでる」と言われてショックを受ける。トミーたちは「警察を呼べばムショ行きだ」とピーウィーを脅かし、「死体を埋めるんだ」と言う。ピーウィーはトミーたちが雇った2人組に威嚇発砲を受け、裸のまま逃走した。
KKKの男は講堂へ潜入し、舞台に「インディアンは出て行け」と書いた人形を吊るした。ジョンが『ロミオとジュリエット』のロミオを演じることに反対しているのだと、ビリーは悟った。ジョンは降板を申し出るが、モリスは「私たちはな脅しに屈しない。決断するのは貴方よ」と言われて続投を決めた。カーターは市長やゲブハート議員を呼び、芝居の稽古を見学してもらう。フレイヴェルが「教育委員会に報告して上演禁止にしてもらうぞ」と言うと、市長は「委員会は市議会と関係の無い独立組織だ。一応は検討して連絡する」と告げる。ジュリエット役のウェンディーは、父の友人であるゲブハートに「大丈夫だ」と言われて安堵した。
トミーは火付け役であるバルブリッカーを酷い目に遭わせてやろうと考え、女子トイレの便器に蛇を入れた。何も知らずにトイレへ入ったバルブリッカーは、絶叫して飛び出した。カーターは芝居の稽古に励む生徒たちを集め、「反対派が市会議員と教育委員会に訴え、強引に公聴会を開く。その結論が出るまで、芝居はお預けだ。しかし授業の一環として練習すれば、文句は言われない。何としても芝居は上演する」と話した。
ウェンディーはピーウィーたちを連れてゲブハートの元へ行き、改めて協力を要請する。するとゲブハートは、「フレイヴェルは選挙の票を動かす力がある。しかし委員会は選挙に無関係だから、提訴を一蹴する。市議会は努力したという言い訳が立つ」と語る。彼は「帰って校長に聞いてみろ。教育委員会は上演を許可したはずだ」と告げ、ピーウィーたちを帰らせる。しかし彼は秘書から反対署名が5千人も集まったと知らされ、フレイヴェルと会うことにした。ジョンはKKKの暴行を受け、激しい怒りを燃やした。ゲブハートがフレイヴェルと組んだこともあり、教育委員会でシェークスピア劇の上演と演劇クラブの活動禁止が可決された…。

監督はボブ・クラーク、脚本はロジャー・E・スウェイビル&アラン・オームズビー&ボブ・クラーク、製作はドン・カーモディー&ボブ・クラーク、製作協力はゲイリー・ゴッチ&ケン・ヒーリー=サイモン、製作総指揮はメルヴィン・サイモン&ハロルド・グリーンバーグ&アラン・ランズバーグ、撮影はレジナルド・H・モリス、美術はフレッド・プライス、編集はスタン・コール、衣装はメアリー・E・マクラウド、音楽はカール・ジットラー。
出演はダン・モナハン、ワイアット・ナイト、マーク・ヘリアー、ロジャー・ウィルソン、シリル・オライリー、トニー・ガニオス、カーキー・ハンター、スコット・コロンビー、ナンシー・パーソンズ、ジョセフ・ランニング・フォックス、エリック・クリスマス、ビル・ワイリー、エドワード・ウィンター、イルゼ・アール、シッセ・キャメロン、アート・ヒンドル、アンソニー・ペーニャ、ロッド・ボール、ラッセル・ベイツ、ピート・コンラッド、ジャック・マルケイ、チャック・ウォール他。


1982年の映画『ポーキーズ』の続編。
監督は前作に引き続き、『暗闇にベルが鳴る』『ブレーキング・ポイント』のボブ・クラークが担当している。
脚本は『ブレーキング・ポイント』のロジャー・E・スウェイビル、『マイ・ボディガード』『キャット・ピープル』のアラン・オームズビー、ボブ・クラーク監督の共同。
ピーウィー役のダン・モナハン、トミー役のワイアット・ナイト、ビリー役のマーク・ヘリアー、ミッキー役のロジャー・ウィルソン、ティム役のシリル・オライリー、ミート役のトニー・ガニオス、ウェンディー役のカーキー・ハンター、ブライアン役のスコット・コロンビー、バルブリッカー役のナンシー・パーソンズ、カーター役のエリック・クリスマス、モリス役のイルゼ・アール、ミッキーの兄のテッド役のアート・ヒンドルなど、前作から数多くのキャストが続投。
他に、ジョンをジョセフ・ランニング・フォックス、フレイヴェルをビル・ワイリー、ゲブハートをエドワード・ウィンター、サンディーをシッセ・キャメロンが演じている。

前作のピーウィーたちは、売春宿の「ポーキーズ」で楽しもうとするが金を巻き上げられるなど酷い目に遭わされ、最後の最後で店を破壊していた。
しかし今回は、その「ポーキーズ」も、経営者のポーキーも登場しない。
前作で店は全壊しているが、建て直すことは出来るし、別の店を始めることも出来る。また、店を再開しないにしても、ポーキーを登場させることは出来るはずだ。
っていうか『ポーキーズ』の続編なんだから、そういう方向で考えるのが自然な流れだろう。

しかし、それが不可能な理由がある。それは、「前作のラストから物語が始まる」という構成になっているからだ。
つまり、ポーキーと「ポーキーズ」が復活するための時間が無いのだ。
だが、そのせいで『ポーキーズ2』(原題も『Porky's II: The Next Day』)というタイトルと内容が合わなくなっている。
そもそも前作のラストから始めなきゃいけない理由は無いわけで。
それよりも、やはりポーキーや「ポーキーズ」を登場させた方が良かったんじゃないのか。

前作は1978年から始まったイスラエル映画『グローイング・アップ』シリーズをモロに模倣した、お色気青春モノだった。そこで「舞台となっている時代のヒット曲を流す」という演出も模倣し、1950年代のオールディーズ・ヒットを何曲もBGMに使っていた。
その演出は一応、今回も受け継がれている。
しかし前作のヒットを受けて突貫工事で製作したからなのか、使われるオールディーズ・ヒットは6曲だけ。そして映画を見ていても、まるでBGMが聞こえて来ない。つまり、まるで印象に残らないってことだ。
まあオールディーズ・ヒットを有効活用できていないのは、前作も同じだったけどね。

使われる楽曲だけでなく、下ネタの分量も極端に減っている。
前作はピーウィーが童貞卒業に並々ならぬ情熱を燃やしていたこともあり、「若者の性に対する欲求」ってのが大きく扱われていた。それに伴って、おのずとエロ関連のネタが多くなっていた。
しかし今回は、童貞を卒業したことで満足したのか、ピーウィーがセックスに対して全くと言っていいほど興味を示さない。
サンディーとはセックスしようとしているが、それは誘われたから燃え上がっただけだ。自らの意志で、積極的にセックスするための行動を取ることが一度も無い。彼を使わない部分でも、下ネタは少ない。
そうなると、もはや『ポーキーズ』の続編である意味が無いんじゃないか。
オールディーズ・ヒットと下ネタって、この映画の肝となるべき要素でしょ。

前作のピーウィーは、とにかくバカにされまくる不憫な存在だった。
彼はポーキーから酷い目に遭わされるだけでなく、同級生からも嘲笑や悪戯の対象になっていた。
もちろん、同級生は彼を嫌っているわけではなく、「からかったら面白い」ということで標的にしているだけなのだが、悪戯の内容は行き過ぎており、ほぼイジメと言ってもいいような状態だった。
ただ、ポーキーズを巡る話では他の同級生も被害に遭うなど、他の要素も入っていることで、「ピーウィーがイジメを受けている」という印象は薄まっていた。

前作のラストから物語か始まるので、ピーウィーは相変わらず同級生からバカにされる存在のままだ。
しかも彼はウェンディーと恋仲になったため、前作から引き続いて「ウェンディーがヤリマン扱いで侮辱されている」という要素もあるので、「恋人もバカにされている」という状態になる。
その一方、前半は「仲間全員の敵」が登場しない。
そのため、トミーたちは一方的に「ピーウィーを苛めて喜んでいるクソみたいな奴ら」になってしまう。

だから普通に考えると、「ピーウィーが復讐しようと目論んだのに、トミーたちに見抜かれて酷い目に遭わされる」というシーンが到来した時に、ただ不愉快になっても不思議ではない。
しかし、ピーウィーが調子に乗って裸になり、サンディーとセックスしようとするので、騙されて逃げ出す羽目になっても「自業自得」としか思えない。そういう意味では、上手く処理していると言えなくも無い。
ただ、そもそもトミーたちがロクでもない連中ってのは事実なので、やはり「痛い目に遭う」という展開はあった方がいいと思うんだけどね。
あと、墓場でピーウィーが騙されるシーンは、無駄に長くてダラダラしているなあ。もっと短くスッキリと収めた方がいいぞ。
この「無駄にダラダラしている」ってのは、バルブリッカーを蛇で脅かそうとするシーンでも同様だ。悪戯を仕掛けるシーンで必ずダラダラするって、どういう演出プランだよ。

それ以外の部分でも、構成が雑で散らかっているという印象が強い。
例えば、ピーウィーがサンディーを雇って復讐を企み、トミーたちが裏をかく計画を立てるというエピソード。
それだけを進行させて「ピーウィーが酷い目に遭う」という着地まで到達させればいいものを、途中で「芝居の稽古が進むが、フレイヴェルが上演禁止を要求する」という展開を挟んでしまう。
そうじゃなくて、エピソードを串刺し式にして順番に並べた方が、絶対にスッキリするはずだ。途中で他のエピソードを挟むことで、サンディーが関わるスケッチの流れが停止して分断されてしまう。そこにメリットが何も見当たらない。

前作と同様、それまでは「ピーウィーを馬鹿にして苛める不愉快なクソ野郎」だったトミーは、途中で「芝居の上演禁止を企む連中」という敵が登場すると、「みんなで戦うリーダー的存在」のポジションに移動する。
芝居に関連して彼はビリーやジョンを馬鹿にしていたはずだが、そういうのは「無かったこと」にされている。
そしてバカにされる対象だったピーウィーも、何の恨みも持たずに彼と協力して行動する。
前作ではポーキーと仲間たちが「共通の敵」になったことで高校生たちが一致団結したわけだが、今回はフレイヴェルと仲間たちが同じ役回りを務めるわけだ。

そもそも、トミーたちがピーウィーを一方的に攻撃するだけで何の罰も受けずに終わっているのは引っ掛かるし、共通の敵を登場させることで全員を団結させる構成が上手く行っているとも思えない。
しかし、それよりも厄介な問題は、「共通の敵との戦いが始まると、マジなテイストが一気に入って来る」ってことだ。
これも前作と同じパターンなのだが、そこは改善した方がいい部分なのに、そのまんま踏襲しちゃってるのよね。

前作の場合、ポーキーズを巡る争いがメインになると、マジに観客の怒りを喚起させるような状態になっていた。
それだけでなく、なぜか「ユダヤ人のブライアンが差別を受ける」という人種差別の要素まで盛り込み、話が進むにつれてどんどん「おバカな下ネタ喜劇」から遠ざかっていった。
今回は、カルト教団がシェークスピアを卑猥だと批判し、上演禁止を求めて過激な行動に出る。
そこにKKKが加わり、「黒人と先住民を排除せよ」と暴力的な行動を取る。

カルト教団とKKKだけでなく、腐った政治家も「ピーウィーたちの敵」として配置される。
ゲブハートは「市議会懸案の条例案が私の票で決まる。どっちに転ぼうと私には関心が無いので、それを武器に使う。私の票が欲しければ協力しろと」と言い、ピーウィーから「汚い取り引きだ」と批判されると「偉大なアメリカは妥協の上に成り立っている」と告げる。
そうやって協力を約束していたが、選挙に影響すると感じた途端にフレイヴェル側へ寝返るという腐った部分を見せ付ける。

そんな風に、政治や人種差別といった真面目な要素を持ち込んでいる。前半はそうでもないのだが、後半に入ると色濃くなってしまう。
そもそも今回は最初から「艶笑喜劇」としての色が薄かったのだが、ますます笑いの要素が減退してしまう。
じゃあ「高校生が悪党どもを退治する」という勧善懲悪のドラマとしてのカタルシスで満足させてくれるのかというと、そういうわけでもない。
っていうか、そんなモノを本作品に求めている観客は、たぶん皆無に等しいと思うしね。
お気楽に楽しめるバカな喜劇を貫けば良かったのよ。

(観賞日:2017年3月4日)


第6回(1983年)スティンカーズ最悪映画賞

ノミネート:作品賞

 

*ポンコツ映画愛護協会