『ポーキーズ』:1982、アメリカ&カナダ

1950年代のフロリダ。エンジェル・ビーチ高校に通うピーウィーは母親に起こされ、勃起した股間を慌てて隠した。母親が部屋を出た後、ピーウィーは定規でペニスの長さを測る。それは毎朝の日課になっており、「どういうことだ、短くなってる」と彼は苛立つ。同級生のトミー、ミッキー、ビリーが登校すると、ウェンディーが駆け寄ってくる。トミーが「売ってる店があった」と報告すると、彼女は「あのチビ、思い知らせてやるわ」と告げて立ち去った。
何も知らないミッキーに、トミーとビリーは事情を説明する。2人はピーウィーを男好きのウェンディーとセッティングし、セックスするチャンスを与えた。しかしピーウィーが最初からスキンを装着していたので、ウェンディーは腹を立てたのだ。そのピーウィーが登校し、トミーたちを見つけて話し掛ける。その夜にトミーたちはヤリマン女とセックスする計画を立ててしたが、ピーウィーは自分も参加させろと要求した。トミーたちは彼を馬鹿にしながらも、参加を承諾した。
バスケ部コーチのブラケットは女性教師のハニーウェルに好意を寄せており、天使のような存在だと思っている。しかし先輩のウォーレンは彼女のことを「ラッシー」と呼び、その理由をブラケットが尋ねると「体育倉庫へ連れ込めば分かるさ」と答える。ピーウィーは女性教師のウォーカーが挨拶に応じただけで気があるんじゃないかと言い出し、トミーから「おめでたい奴だ」と馬鹿にされる。肥満体の女性教師であるハルブリッカーは口うるさい性格で、男子バスケ部員たちの行動に目を光らせている。
その夜、ピーウィーとバスケ部の仲間たちは、森の中にある小屋へと赴いた。するとビリーたち3人組が待ち受けており、奥の部屋でヤリマン女のチェリーが準備を済ませていることを告げる。性病でないことを確かめるために服を脱げと言われ、ピーウィーたちは素直に従った。トミーは仲間のスティーヴ、ティム、フランク、ミートをチェリーに紹介し、奥の部屋に引っ込む。彼らは黒人男のコンクリンを窓から連れ込み、チェリーにセックスしているような声を出させた。
ビリーたちはセックスの最中にチェリーの夫が窓から乱入して暴れたように偽装し、ピーウィーたちを脅かした。すっかり信じ込んだピーウィーたちはコンクリンに追われ、裸のまま逃げ出した。ピーウィーは全裸のままハイウェイを逃走し、ミッキーの兄である警官のテッドに見つかった。ピーウィーはハンバーガー店の前でたむろしていた仲間たちの元へ連れて行かれ、騙されたことに激怒した。
ムショ帰りであるカヴァナーがバイクで女を連れて店に現れ、息子であるティムを怒鳴り付けて家に帰らせた。ピーウィーが女とセックスしたい気持ちを訴えるので、ミッキーは「こうなったらプロに頼もう。ポーキーズだ」と言い出す。ビリーとトミーは「あそこはヤバい」と反対するが、ミッキーは「奴だってビジネスは歓迎するはずだ。キューバの女を何人も仕入れたらしい」と語る。「金曜の試合の後、みんなで行かないか」とミッキーが提案すると、仲間は乗った。
次の日、ウェンディーは大勢の生徒たちが見ている前で、トミーに入手してもらった超特大コンドームをピーウィーにプレゼントした。ウォーレンはブラケットから「彼女と2回デートしたけど、インテリ好みらしい」と聞かされ、馬鹿にした態度で「倉庫に連れ込め。そうすれば全て分かる」と告げた。夜、ピーウィーたちは5人で売春宿のポーキーズへ行き、女を買って楽しもうとする。しかし100ドルを巻き上げられ、沼に落とされてしまった。
激怒したミッキーはポーキーに掴み掛かろうとするが、また沼に落とされる。そこへポーキーの弟である保安官のウォレスが駆け付け、難癖を付けて車のライトを壊した上に罰金まで脅し取った。まだ怒りの収まらないミッキーは仕返しに行こうとするが、テッドは「袋叩きに遭うだけだ。おとなしく家に帰れ」と忠告した。ティムは転校生であるユダヤ人のブライアンに差別的な態度を取り、決闘を要求する。ティムは劣勢に立たされたところで仲間が握手を促すが、彼は拒絶して立ち去った。
ピーウィーはハンバーガー店でバイト中のウェンディーに偽名を使って電話を掛け、架空の人物を呼び出すよう頼んだ。それはエッチな意味の人物名だったが、ウェンディーは気付かずに大声で呼び掛けた。ようやくピーウィーの仕返しだと気付いた彼女は、軽く笑いながら「粗チンのくせに」と告げた。ミートはプリンストンの奨学金を貰えなかったことで苛立ち、店で酒を飲んで荒れていた。そこへ警官2名が来て飲酒に気付くが、ブライアンが言葉巧みに丸め込んだ。
一人でポーキーズに殴り込んだミッキーが、仲間の元へ戻って来た。彼は激しく殴られた様子だったが、「奴の手を砕いてやったぞ」と得意げに語った。翌朝、ティムは顔に傷を作って現れた。ユダヤ人に喧嘩で負けたために、カヴァナーに殴られたのだ。それを知ったコンクリンは、ウォーレンに「ティムのことで話が」と持ち掛けた。ブラケットがハニーウェルを口説いて倉庫へ連れて行こうとすると、ハルブリッカーが来て「けがらわしい」と批判した。ハニーウェルが罵倒すると、彼女は「ハレンチ行為でクビにしてやる」と告げた。それでもハニーウェルは怯まず、「やれるものならやってみろ」と言い放った。
ハニーウェルはウォーレンを連れてロッカー室に入り、男の匂いに激しく興奮した。「この匂いを嗅ぐと、たまらなくなる」と彼女は言い、ウォーレンにセックスを求めた。セックスの喘ぎ声が犬の遠吠えのように響き、ウォーレンは「ラッシー」の意味を知った。その声は、練習をしていた生徒やコーチたちの耳にも届いた。事情を知っているピーウィーたちやブラケットは笑い、ハルブリッカーは熟練コーチのグッドナウに苦言を呈した。ウォーレンが戻って「急な腹痛で。呻き声が聞こえたでしょ」と下手な嘘をつくと、グッドナウは「そろそろ君もエンジェル・ビーチとお別れだな」と告げた。
練習後、ミッキーは仲間たちから「またポーキーズに行くのか」と言われ、「安心しろ、馬鹿な真似はしない」と告げる。ピーウィーは「女たちがシャワーを浴びるぞ」と告げ、トミーとビリーを誘って女子シャワー室を覗きに行く。ウェンディーたちは覗きに気付くが、笑ってピーウィーたちに呼び掛けた。トミーが覗き穴から舌を出すと、ウェンディーはボディーソープを擦り付けた。トミーがペニスを穴に突っ込むと、そこにハルブリッカーが来た。トミーはハルブリッカーにペニスを掴まれるが、何とか逃げ出した…。

脚本&監督はボブ・クラーク、製作はドン・カーモディー&ボブ・クラーク、製作総指揮はハロルド・グリーンバーグ&メルヴィン・サイモン、製作協力はゲイリー・ゴッチ、撮影はレジナルド・H・モリス、編集はスタン・コール、美術はルーベン・フリード、衣装はメアリー・マクラウド&ラリー・ウェルズ、音楽はカール・ジットラー&ポール・ザザ。
出演はダン・モナハン、マーク・ヘリアー、ワイアット・ナイト、スーザン・クラーク、アレックス・カラス、キム・キャトラル、ロジャー・ウィルソン、シリル・オライリー、トニー・ガニオス、カーキー・ハンター、ナンシー・パーソンズ、スコット・コロンビー、ボイド・ゲインズ、ダグ・マクグラス、アート・ヒンドル、ウェイン・モーンダー、チャック・ミッチェル、エリック・クリスマス、ビル・ハインドマン、ジョン・ヘンリー・レッドウッド、ジャック・ムルカイ、ロッド・ボール、ジュリアン・バード、ビル・フラー、ウィル・ニッカーボッカー、ビル・ウォーマン、ロジャー・ウォーマック、ゲイリー・マース他。


『暗闇にベルが鳴る』『ブレーキング・ポイント』のボブ・クラークが監督を務めた作品。
脚本も兼ねるのは、1972年の『死体と遊ぶな子供たち』以来で、これが4作目。
ピーウィーをダン・モナハン、ビリーをマーク・ヘリアー、トミーをワイアット・ナイト、チェリーをスーザン・クラーク、ウォレスをアレックス・カラス、ハニーウェルをキム・キャトラル、ミッキーをロジャー・ウィルソン、ティムをシリル・オライリー、ミートをトニー・ガニオス、ウェンディーをカーキー・ハンターが演じている。

1978年から始まったイスラエル映画『グローイング・アップ』シリーズの影響をモロに受けているというか、それを模倣したお色気青春モノだ。
ちなみに日本でも、『パンツの穴』(1984年)という映画があったし、TBS系ドラマ『毎度おさわがせします』(1985年)もあった。
「性」への興味津々な思春期の年頃の男子どもが、バカな騒動を繰り広げるってのは、いずれも同じだ。
ただし「青少年の性欲のみを追求するエロくて安いコメディー」としては共通だが、その2つは音楽という部分の意識が薄かった。

この映画は『グローイング・アップ』と同様に、「舞台となっている時代のヒット曲を流す」という意識がある。そういう部分に至るまで、『グローイング・アップ』を模倣しているわけだ。
Hank Williamsの『Lovesick Blues』だけは1949年のリリースなので少しズレているが、それ以外はPatti Pageの『Mocking Bird Hill』(1951年)、The Plattersの『Only You』(1955年)、Chuck Berryの『Maybelline』(1955年)、Eddie Fisherの『Anytime』(1951年)、The Weaversの『Goodnight, Irene』(1950年)、Hank Williamsの『Cold, Cold Heart』(1951年)、The Crewcutsの『Sh-Boom, Sh-Boom』(1954年)など1950年代のオールディーズ・ヒットが使われている。
ただし、それが効果的に使われているのかというと、答えはノーだ。「ラジオからチラッと聞こえてくる」とか「ダンスパーティー会場で微かに聞こえてくる」という程度に留まっており、雰囲気を作り出すBGMとして利用しようとする気配は感じられない。前述した曲が、見ている中で印象的に響いてくるってことは全く無い。
もっとヒット曲を利用すれば、「青春ドラマ」としての雰囲気も高まっただろうに。
別に「青春ドラマ」の雰囲気を高めなきゃいけないってわけじゃないけど、せっかく多くのオールディーズ・ヒットをサントラとして持ち込んでいるのに、それを有効活用しないってのは勿体無いでしょ。

冒頭、ピーウィーが寝ていると、母親が起こしに来る。母親が部屋に入って来たので、勃起しているピーウィーが慌てて股間を隠すが、痛がりながら「筋肉がつった」と言う。
そういうシーンで始める構成からして、「これは下ネタ満載のコメディーですよ」ということをアピールしている。この映画はコメディー映画だが、笑いを作るために用意されているネタは、ほとんど下ネタだ。
ただし残念ながら、下ネタ満載のコメディーとしての完成度や充実度は、お世辞にも高いとは言えない。
この映画が駄作なのは、下ネタだらけのコメディーだからではなく、「下ネタだらけのコメディー」としての質が低いからだ。

ビリーたちが登場すると、「黒人の男を手配してある」ということを喋る。何のために手配したのかは分からないまま、その会話は終わる。
ウェンディーが登場し、ビリーたちがピーウィーと彼女をセッティングしたこと、ピーウィーに腹を立てたウェンディーが何か企てていることが明らかにされる。
ミンディーが同級生グループと一緒にいるミートに声を掛け、「ウェンディーに訊けって言われたの。なんでミートなの?大きいから肉の塊っていう意味なの?」などと言う。
その様子を、ウェンディーと仲間2人で見ている。

「見せてやろう」とミートが告げるが、仲間が「やめとけ、この子は1年生だ。今度停学になったらプリンストンへ行けなくなるぞ」と制止する。ピーウィーがビリーたちの元へ来て、今夜の計画に参加させるよう求める。
卵を使ったイタズラで同級生グループに騙されたピーウィーは、ミートに試そうとする。でも同級生グループに騙されて生卵を額にぶつけてしまい、ミートを怒らせる。
同級生グループの1人は、バルブリッカーに声を掛ける。
ブラケットとウォーレンがハニーウェルについて話している。

その他にも幾つかのシーンがあるのだが、とにかく無駄にゴチャゴチャしているし、主要キャラクターが多すぎる。
ピーウィーだけを主人公にして話を進めたら弱いから、群像劇っぽく構成しようと考えたのかもしれない。
ただ、何しろ無名キャストばかりだから顔だけで判別するのは難しいのに、キャラクター紹介をガッチリとやってくれるわけではないから、誰が誰なのか良く分からない。そもそも役名からして、その段階では、ほとんどの人間は分からない状態なのだ。
だから、その後のストーリー展開の中でも、その時に喋っているのが誰なのか、しばらくは分かりにくいまま観賞することを余儀なくされてしまう。

最初は「エロ妄想たっぷりのバカなガキどもが、バカなことをやらかすバカな話」として、頭カラッポで楽しめる下品で低俗な話として進んでいたはずだ。
ところが、ピーウィーたちがポーキーやウォレスに騙されたり脅されたりして金を巻き上げられるエピソードが入ると、そんなに能天気に笑っていられなくなる。
そういうクズの大人たちに対する怒りが生じるからだ。
そのエピソードには、何の笑いも用意されていない。ただ単純に、ポーキーたちに腹が立つだけだ。

ポーキーやウォレスが『ポリス・アカデミー』のハリスみたいにマヌケな部分のある悪役キャラで、主人公は対等の立場で立ち向かえるぐらいの存在で、すぐに仕返しをしてくれるのであれば、スッと溜飲が下がるし、そこも含めてコメディーとして見ることが出来る。
だが、本作品の場合、「バカな若者が卑劣な大人に騙され、酷い目に遭う」という形であり、すぐに報復してスッキリすることも出来ない。それどころか、ミッキーは仕返ししようとして、また痛い目に遭うのだ。
そんな形にしてあるもんだから、そこに笑いの要素が入り込む余地が無いのだ。
おバカなコメディーのはずなのに、なんでマジに観客の怒りを喚起させるような要素を入れるのかと。

同じようなことが、「ティムがユダヤ人のブライアンを差別する」というエピソードにも言える。
そこに怒りは湧かないけど、そんなマジな要素を、なんで入れるかね。そこから発せられる笑いなんて、何も無いでしょうに。
これが人種差別をネタに変換しているような類の映画だったら、そこから笑いが生まれることもあるだろう。だけど、人種差別については、完全にマジなテイストで描写しているんだよな。
で、どうやって解決するのかと思ったら、ティムが父親と決別した後に「ブライアンがミッキーのためにポーキーをやっつける計画を立て、ティムが心を開いて彼を受け入れる」という展開を用意する。
そのエピソードも、当然のことながら笑いに繋がっていない。

そんな風に、話が進むにつれて、「おバカな下ネタ喜劇」としての色合いが薄まって行く。
「ハニーウェルがロッカー室でのセックスに大興奮して犬の遠吠えのように喘ぎ、それが生徒たちの耳にも届く」という風な、おバカ丸出しの下ネタばかりを並べていればいいものを。
変にマジなテイストを盛り込んだせいで、艶笑喜劇としても煮え切らず、だからと言って青春ドラマとして質が高くなるわけでもなく。
結果、見事に中途半端な仕上がりとなってしまった。

(観賞日:2015年4月22日)

 

*ポンコツ映画愛護協会